天使と悪魔とニンゲン
使用したお題:『【始】のつく言葉』『革命』『クロワッサン』『人狼』『先生』
僕の中には天使と悪魔とニンゲンがいる。僕が何かに困ると、すぐにしゃしゃり出てきて余計なことを言い出す。
例えば道に千円札が落ちていたとき、天使と悪魔とニンゲンが出てきてそれぞれこう言った。
「お金を落とした人がいないか、まず周辺を探しましょう。それでも見つからなかったら警察に届けましょう。落とした人はきっと困ってますよ」
「貰っちまおうぜ。子供ならともかく、大人にとって千円なんて大したことねー金額だよ。こっそり自分のものにしたって誰も困らねーし、バレやしねーよ」
「落ちてたって言って、お母さんに渡そう」
三人それぞれの意見を聞いて、だいたい両極端な天使と悪魔の意見は聞かず、いつもニンゲンの言うことを聞いてしまう。今日もニンゲンの言う通りにして、お母さんにお金を預けた。
また学校の宿題を忘れたときはこうだった。
「きちんと謝りましょう。先生だって素直に謝れば許してくれますよ」
「宿題やってきたけど忘れたってことにしちゃえば? どうせホントにやったかどうかなんてわからねーし、明日にゃ先公だって忘れてるよ」
「無言でやり過ごそう。言われたらその時謝ろう」
ニンゲンの言う通りにした。
母親と一緒にデパートに来た時はこうだった。
「ワッフルかクロワッサンにしましょう。美味しいですし、家族みんなで分けて食べることもできます」
「なんでも好きなおやつを買っていいって言ったんだぜ? だったら菓子に決まってんだろポテチチョコアイスもいいなゼリーヨーグルトとにかく旨そうなもん片っ端だ!」
「ガムにしよう」
ニンゲンの言う通りにした。
忘れた宿題と、新しく出された宿題でものすごく大変そうだった時はこうだった。
「もちろん全部やりましょう。宿題は自分のためにやるモノです。同じ宿題忘れで二度先生に嘘をつくことになっちゃいますよ? すぐ開始しましょう」
「別に初めてじゃないんだし、やらなくていいんじゃね? また今日も黙ってりゃバレないってきっと」
「昨日忘れた分はきっちりやって、新しい方は半分やろう」
ニンゲンの言う通りにした。
自室で一人、ゲームをしている時はこうだった。
「1日1時間までです。もう夜遅いですし、すぐやめて早く寝ましょう。寝坊しますよ?」
「別に怒られなきゃ何したっていいじゃんか。硬いこと言わずに朝までやろうぜ!」
「部屋を暗くして部屋の外にバレづらくしてから、1時間だけやろう」
ニンゲンの言う通りにした。
そして今日も一日が終わり、僕は布団の中に入った。
温かい布団の中で微睡んでいると、ふと不安になった。これでいいんだろうか、と。
(確かに、ニンゲンの言う通りにするのが一番だった。千円をお母さんに預けたらもちろんお母さんはそのまま財布に入れた、でも罪悪感があるからその後の買い物の時僕の好きなモノを買っていいって言ってくれた。
その時、歯に良いガムを選ぶことで、僕が拾った千円以上のお菓子を買っても許してもらえた。
宿題のこともそうだ。結局僕は、新しい宿題の半分をやってない。でも先生はたぶん許してくれるだろう、他に生徒もいるんだからいちいち僕のことだけを構っていられないはずだし。
ゲームだってやりすぎた。でもバレないから誰も怒ってない。でも本当にそれでいいんだろうか。こんな誤魔化しや自分勝手なことをしていて。
ニンゲンの言うことばかり聞いていたらダメなんじゃないだろうか。あのニンゲンは、ひょっとしたら悪いことを企む狼なんじゃないだろうか。
僕の中で革命を起こして、あのニンゲンの意見を聞かないようにした方がいいんじゃないだろうか……)
「大丈夫ですよ、あなたの中にいるあのニンゲンは信用できます」
「大丈夫だぜ、あのニンゲンは信用できる奴だぜ」
「大丈夫、私を信じて、今日はもうお休みなさい」
僕は、彼らの、言う通りに、した。




