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5ch「安価・お題で短編小説を書こう」スレで自分が書いた奴  作者: 友人B
お題『ああああ』『自動販売機』『殺人事件』『書き出し→「親父が失踪した」』『ヒーロー』
7/92

契約不履行

使用したお題『ああああ』『殺人事件』『ヒーロー』

「今日のテストちょー最悪! それに絶対変だった!」


 私はカバンをベッドへ放り投げながら叫んだ。いろいろ意味がわからない。納得もできない。


 まずなぜ自分だけ追試を受けねばならないのかということだ。確かに私の成績はそれほどよくない。が、わざわざ平日の放課後に居残りさせられるほどではない。もっと頭の悪い奴もたくさんいる。

 それにおかしいことはそれ一つじゃない。私は諸悪の原因を放り出したカバンから摘まみだして愚痴った。


「しかも何よこれ、選択肢が変でしょどう考えても」


 集中してテストを解こうとしているときですらそのおかしさに戸惑わされた。今見直してみるとなおのことおかしいことに気付く。

 まず選択肢がおかしい。普通日本語で選択肢があるのなら「あ、い、う」とか「い、ろ、は」だろう。英語だったら「A、B、C」というのは鉄板だ。だというのにこのテストは、なぜかその選択肢がものすごくランダムだった。

 具体的に言うと、1問目の選択肢は「あ、い、う」なのだが、2問目は「あ、か、さ」となり、3問目には「あ、た、ま」となっている。

 最後の8問目にいたっては「い、る、か」だった。ふざけているとしか思えない。私はこれ以上ないほど顔を顰めながら呟いた。


「あのクソ赤田、ホント狂ってるんじゃないの?」


 前々からなんか妙に絡んできて嫌な奴だと思っていたけど、今日にいたっては確信した。担任の赤田は絶対おかしい。

 だいたい今日の追試もそうだ。人が嫌々テストを受けてるっていうのに妙に笑顔だし、テストの答え合わせをしたらものすごくがっかりした表情をしていた。

 教育熱心で私の成績に一喜一憂しているのだろうか? そういう教師には思えないんだけどなぁ……。


「まあいいや、一応答えを確認しようかな」


 私は気を取り直してテストの見直しを始めた。別に真面目というわけではなく、一年前の高校受験のとき嫌というほどテスト直しをさせられ、今では間違った答案を残しておくとなんか気持ち悪いのだ。赤田のことは忘れてテスト直しを始める。

 赤田に答えを教えてもらっていたので、それを参考にしながらテストの問題を解き直す。ぶつぶつ呟きながらペンを動かす。


「ええと、私の間違った選択肢が『ああああいすみる』で50点と、間違いは2,3,6,7問目……」


 テストの緊張がなくなったからか、答えがわかっているからか、はたまた選択肢が突飛だったことの動揺がないからか、とにかく解き直しは順調に進んだ。どれも基本問題とほんのちょっとした応用問題だった。

 ペットボトルのジュースを飲みながら教科書片手にすぐに終わらし、見直しをする。うん、今度は選択肢も全部正解と同じなった。


「2問目が『か』で、3が『た』、6が『し』の7が『て』ね。うん間違いない……あれ?」


 私は追試テストの上の部分を見た。そこに文字が浮かび上がっている。なんで? と思ってよくよく見てみると、どうやらペットボトルから垂れた水滴がそこに垂れて文字になっているらしい。

 私はそれを怪訝な顔で眺めた。


「左が結、女で、右に約、書? なにこれ、あぶり出し?」


 火で文字が浮き上がってくるあれに似ていたので、思わず私はそう呟いた。水で文字が浮かび上がるなんてものあるんだろうか、仮にあったとしても、これは何の単語だ?

 ジュースの中身はまだ残っていたので、それを使って他の文字を浮かび上がらせる。左右の間に一文字と半分開いていた隙間に文字が埋まる。


 出来上がった単語を見た瞬間、全身に鳥肌が立った。


「あおいー? 今担任の赤田先生が来たんだけどー、なんか大事な用事があるっていらっしゃってるわよー? 降りてきなさいー」


 私はものすごい勢いで部屋のドアへと振り向く。私だけが気付いている異常事態に、お母さんは気付いていない。

 赤田はただおかしいだけじゃない。ヤバイ。そのことをこのテストの回答と隠し文字で確信したからだ。テストに間違いがあったとき、なぜ赤田がものすごくがっかりしたのか今更になって理由がわかった。気持ち悪い。そしてマズイ。


 私は急いで自室を出て、階段下にいるはずの母親に叫んで警告した。


「お母さん、ダメ! そいつ追い払って! 絶対ヤバイやつだから! お願い!!」


「急に大声出してどうしたのよ? もう上がってリビングで待ってもらってるわ。何をそんなに慌て……あれ、先生? どうかなさいましたか?」


「ダメ! お母さん逃げて!」


 背後から近づいてきた赤田が何を手に持っているかお母さんは気付いていない。私は叫んだが、どうやら手遅れだったようだ。

 次は私の番かもしれない。そう思うと怖くて腰が抜けてしまい逃げることもできなくなった。誰か助けて、お父さん早く帰ってきて、と心の中でこの場を解決してくれるヒーローの登場を切に願った。




<わかんなかった人用の解説を一応>

テストの答えは上から順に「あ、か、た、あ、い、し、て、る」になります。あとはまあ何とか察してください

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