母子バトル
使用したお題:『対決』『母』『サブミッション』
母と喧嘩した。
いや、これはもはや喧嘩などという生易しいモノではない。対決だ。戦争だ。殺し合い……はさすがに違うけど、それくらい真剣な戦いだ。
きっかけは些細なことだった。
些細な日常のあれやこれやが積み重なったことと、反抗期という人生最低な時期が重なった結果、起こるべくして起こった正面衝突が原因だ。青春というやつである。
とまれ、母と私は一切口を聞かずに、狭い家の中でお互いを牽制しあっている。今更後には引けず、絶対に怯んではならず、一歩たりとも引いてはいけない。
今日も今日とて無言の殴り合いが勃発していた。
まずは料理。これにはどうしても母が上手だった。
私のような若輩者が、母の長年の経験という一日の長をひっくり返すのは生半なことではない。おおむね常に敗退を余儀なくされている。
しかし私だって現代人の端くれ、図書館にいって埃の被った料理本ではなくインターネットを利用することにより、最新の美味しい料理のレシピを習得し披露して対抗する。奴の方が戦局は有利とはいえ、これならば攻めあぐねているようだった。
次に掃除。こちらは私の領域だ。
掃除の良し悪しというのはある程度の基本さえわきまえれば、あとは掛けた時間に比例するものだ。よって仕事で外出が多い母はどうしても一歩劣る。私が堅実に勝ち星を稼いでいける分野だ。
しかし、やはり特殊な汚れやゴミの分別などは経験が物をいうらしい。打撃戦の合間にサブミッションのような狡猾な一撃を食らわせてくるのだ。そのせいで実に情けないことに、たまに後れを取ってしまう。
最後に雑事全般。これは一長一短あるためどちらも甲乙つけがたい。
近所付き合いや細かい仕事に気付くのはいつも母だ。悔しいが勝てない。
だが近所の特売情報や品物のコストパフォーマンスなんかは私の方が上手だ。若者の広い視野と軽快なフットワークを甘く見てはいけない。
ゆえにここは勝ったり負けたりしている。逆に言えば、ここさえ押さえれば私の勝ちは揺るぎない物になるはずだろう。だから煩雑な雑事と言っても気を抜くこともできない。
そして今夜、私は最新の料理を綺麗に片付けたリビングに盛り付け、母の帰宅に合わせて料理を温めなおした。玄関が開く音がする。
ドヤ顔を見せつける私に対して、母はいつものように愚痴を言う。
「まったく、あなたは学生なんだから勉強を頑張りなさい。お母さんのことは気にしないでいいんだから、もう」
「だったら私にバイトの許可出してよ。母さんの給料だけじゃ家計苦しいの知ってるんだから。じゃないと私はまともに勉強なんてしてらんないんだからね!」
全く仕方ないなぁと不満気な顔で母は言う。が今日は何も文句を言わずに食卓に着いた。どうやら今日の勝負は私の勝ちらしい。
こうやって勝ち星を重ねて、バイトをする権利をもぎとってやるのだ。すべてはシングルマザーで私をここまで育ててくれた母の手助けをするために。
私は負けない!!




