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天學編入7

前回から一週間以内に投稿できましたが、その分情けなくも量が短いです。

言い訳としては、話を区切り良く進めていきたかったからです。


ではどうぞ。

 綴、結、雛子、氷上双子の五人は、コールドパールの寮があるたてものへと向かっていた。

 道中の会話はいろいろと盛り上がったが、多くの話題は綴のことだった。だから、必然的に綴は質問攻めにあっていた。


「さっきの模擬戦、すごかった」

「アレだけの実力があれば、本来第七階級をゆうに超えているはずなのですが…」

「いえ、そんなことありませんよ。結は警備隊ナンバースリーで、会長はゴールドパールのトップで、二人とも僕より凄いじゃないですか」

「その位置付けは去年までの段階での話です。今年から編入した八尾くんには通用しないでしょう」

「そもそも、警備隊ナンバーツーに勝った時点で私よりは強い」

「お二人とも買いかぶりすぎですよ。それに…」


 強さだけが全てじゃない。

 そう言おうとしたギリギリのところで、綴は言葉を飲み込んだ。


「え、何?」

「いえ、なんでもありません」

「そう言われると気になってしまいますね」

「私も気になるなぁー、センパイ」


 綴は何かを言い淀んだことで、雛子ががからかい、雪乃がそれに便乗する。今まで黙っていた雪乃が、実にいいタイミングで会話に混ざる。

 隣で申し訳なさそうに、且つ呆れがちにため息をついている雪穂を見るに、二人のこの流れは恒例なのだろう。


「内緒です」

「えー、いいじゃないですかー、教えてくれたってー」

「お姉ちゃん、他人の詮索は失礼だよ」


 度が過ぎたと思ったのか、雪穂が姉の無礼を咎める。

 彼らは能力者であってノーマルとは異なるが、今回その違いは関係ないだろう。「親しき中にも礼儀あり」というのは、人として重要なことだ。


「申し訳ありません。八尾先輩」


 決まりが悪そうな顔の雪乃の横で、頭を下げる雪穂。怯えているのか、緊張しているのか、はたまたさっきの雪乃の言動が相当恥ずかしかったのか、薄っすらと目に涙を浮かべなが、小動物のように縮こまっている。側から見れば、まさに「守ってあげたくなる女の子」だ。もしくは…(以下省略)。

 そんなことを考える綴だが、しかし、その謝罪の矛先が自分となると複雑な気分である。菜緒曰く綴はサディストだが、(本人曰く)決して意地悪ではない。「苛めたくなっちゃう」という考えが頭をよぎらないわけではないが、きちんとTPOをわきまえるのが綴である。

 公共の場でこの光景は、彼にとってあまり、いや、結構よろしくない。


「気にしてませんよ。だから、そんな顔しないでください」


 優しいスマイル全開で、雪穂に話しかける。

 雪穂も安心したのか、落ち着いた表情で顔を上げる。心なしか、緊張も少し溶けているようだ。


「さあ着きましたよ。ここがゴールドパールです」

「結構大きいですね」


 建物の大きさに驚く綴。今日の彼は驚いてばかりだ。


「当然。ここは生徒の五分の一が暮らしてる」

「…」


 コメントを返す結だが、思いの外寮の建物が気になった綴には、彼女の言葉は届いていないようだった。


 しばらく眺めて気が済んだのか、


「それじゃあ、僕はこの辺で失礼します」

「何を言っているのですか?今日から君もここに住むのですよ?」

「へ?」


 思わず間抜けな声が漏れる。


「寮に入るのは生徒の義務って言わなかったかしら?」


 填めたというわけではなく、純粋に自分の過去の言葉をたどる雛子。

 対するは、状況を飲み込めていない綴。

 その時、タイミングを計ったかのように綴の情報端末が悲鳴をあげた。


「…もしもし」

『あ、綴くん?芹香だけど、いいわすれてたことあったの』

「…なんでしょうか?」

『君の部屋、ゴールドパールの方に移ることになるからよろしくね』


 予想通りの内容に、綴は一度ため息をつく。そして、


「いくつかしつもんしていいですか?」

『何かしら?』

「SIMSの方の部屋はどうなるんですか?」

『そのままよ。学園の生徒になったからってSIMSでのあなたの立場はたいて変わらないわ。出動頻度は減るだろうけど、いざという時は召集がかかるわよ』


 だから部屋はそのままよ、とあっけらかんと言う芹香。

 綴はもう一度ため息をついた。


「服や家具などの私物をまだ移動していないのですが…

『それなら午前中のうちに済ませたから安心して』

「このこと、菜緒は?」

『もちろん知っています』


 電話を片手に、目を閉じて通話をする綴。その顔は決して穏やかな表情をしていない。

 別に鬼の形相というわけではなくいたって普通の顔だが、知り合って間もない結たちでも、彼からにじみ出る「怒」の気配を感じ取ることができた。


「…?」

「結、どうかしましたか?」

「いえ、なんでも」


 綴の言葉に何かを違和感を感じたらしい結だったが、何が気になったのかわからず、声をかけた雛子に対して曖昧な返事をする。

 一方綴の方はというと、相変わらず静かに苛立っていた。


「最後の質問です。何故事前に知らせなかったのですか?」

『こちらの手違いで連絡がいかなかっただけど。本当は今朝言おうと思っていたのだけど、うっかりしていたわ」』


 わびれもせずにさらっと口にする芹香。


「…ハァ」

 ブチッ、ツーッ、ツーッ、ツーッ


 大きなため息をした後、無言で通話を切った。

 電話の向こうでは、「あれ、綴くん、なんか怒ってた?」と芹香は頭に疑問符を浮かべていた。


「…大丈夫ですか?」


 心配そうに声をかける雛子。他の三人も恐る恐るといった表情をしていたわ。


「ええ、まあ。じゃあ、入りますか…」


 既に怒りを鎮めた綴は寮の扉を開けると、


「遅い!」


 ご立腹の菜緒が待っていた。

 腰に手を当て若干前のめりになっているためか、どこかから「プンプン‼︎」という効果音が聞こえてきそうだ。


「菜緒…」

「何やってたんですか?」

「まぁ色々とあったんだよ。また後で話すからさ」


 電話での精神的ひろうのためか、模擬戦→学生警備隊→生徒会と、立ち話で説明するのが億劫だった綴は、問い詰める菜緒に対してうまく誤魔化した。


「それより菜緒。部屋変わること知ってたんだよね?なんで今朝言わなかったの?」


 突然、綴の声が妙に落ち着いたものになる。その顔は、穏やかだが決して獲物を逃さない、誤魔化しは通用にないといった表情をしている。


「あー、ごめんなさい。単純に言うの忘れてました。綴に連絡が入ってないって知らな知らなかったし、全部芹香ちゃんが手配してくれるっていうから…うっかり」


 何かを叱られている幼子のように小さく萎れる菜緒。


「…ハァ。別に怒ったりしないから安心して」


 綴へ連絡がいかなかったのは芹香のミスであって、菜緒の行いが故意でないとわかれば、綴としては菜緒を責める理由はないし、筋違いだ。

 一同はエントランスのソファーのところに移動して会話を再開。


「菜緒、さっきも気になったけど、二人は知り合い?」


 今まで綴と菜緒の会話を傍観していた結が、話題を変えてきた。


「綴は私の恩人です。訳あって、三年前から一緒に生活してたんです」


 このセリフに、どういうことだろう?とあまり話を飲み込めていなかった結たち五人だったが、すぐに何か納得がいったようだ。


「菜緒が特例で外部に部屋を持っていたのは、そういうことだったのですね」


 雛子が言葉だけでなく、手を叩くという動作でも合点がいったというのを表した。

 所属が義務である寮に菜緒が今まで入らずに済んでいたのは、綴がいたからだ。精神的な安定を綴に依存している菜緒は、綴のそばでないとダメなのだ。なので、SIMSの上の人間が学園に手を回して特例を認めさせていたのだ。菜緒が普通の女の子だったらこんなことはしなかっただろうが、あいにくとそうではない。彼女の能力者としての素質は素晴らしく、ただ、制御できていないため、暴走するのを恐れてSIMSもこのようにするほかなかったのだ。


「じゃあ菜緒のルームメイトは綴くんなんだね」

「はい」

「ところでさ、菜緒ちゃんとセンパイってやっぱりソーユー関係なの?」

「…ちょっと、お姉ちゃん…!」


 雪乃が菜緒ワクワクといった感じですり寄ってきた。

 どうやら美味しい餌をめっけたようだ。


「そういう関係ってどういう関係のこと?ノーちゃん」


 側から見て雪乃の言わんとしていることは明らかだったが、唯一菜緒だけは理解していなかった。

 ちなみに、ノーちゃんとは雪乃と雪穂を区別するために菜緒だけ(・・・・)が使い出した雪乃のあだ名だ。当然、雪穂はホーちゃんである。


「だからソーユー関係って言ったらソーユー関係だよ!」


 少々エキサイトしている雪乃。さすがに具体的な言い方は避けながらも、菜緒に何を言いたいかをニュアンスで伝える。

 が、当の本人はあいも変わらず気づかない。きょとんとした表情で首を傾げている。


「んも〜っ!だから!ゴニョゴニョ」


 じれったくなった彼女は、菜緒の耳元に直接耳打ち。


「…⁉︎」


 さすがに理解したのか、今度はみるみる顔を赤くしてあわてだす。


「な、何言ってるの⁉︎そ、そんなんじゃなってば‼︎」


 面白いほど慌てふためく菜緒に、綴、結、雛子は暖かい笑顔を向けている。


「慌てるあたりが怪しいねぇ〜。実際はどうなの?センパイ」

「菜緒が言った通り雪乃ちゃんが期待することは何もありませんよ」


 笑顔で菜緒の発言を肯定する綴。だが何故か僅かに悲しそうな顔をする菜緒。どうしたのだろうか、と少し心配する綴だが、大したことではなさそうだと判断しスルーという選択肢を選ぶ。

 こんな会話をしばらくしてから今日は解散となり、皆それぞれの部屋へと移った。

どうしても文章が拙くなってしまっている気がします。話数こなせば良くなるのかな…?


久しぶりに設定紹介。


八尾綴

17歳。(設定紹介と言っておきながらいきなりで何ですが、彼の過去は謎が多いというか謎にしておきたいことが多いというか…)

「仮面付き」の部隊では、最年少ながらエース的な存在。


十拳菜緒

15歳。彼女はずっと精神的問題があり三年前まで入院していた。三年前から綴と生活していて、その時から天學に通っている。現在第四階級。綴のことを最も尊敬している、というか依存していると言っても過言ではない。



あまり書くことが思いつかないので取り敢えずこの二人。

何か詳しく知りたいことがあったらコメントください。

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