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天學編入4

遅くなりました。


週一のペースで書こうと思ったのですが、意外と大変です。正直、侮っていました。



では、どうぞ!

『表世界』と『裏世界』とは、文字通りの表裏の関係ではない。裏と表を繋ぐ道『ゲート』は複数ありそれぞれ決まった場所と繋がっているが、大陸や島の形、生態系や生物の進化など多くの違いが存在する。

 裏世界に存在する国も、当然表世界と異なる。

 そもそも国というよりも、世界規模の大型コミュニティーが複数存在し、世界にあるそれぞれの主要都市に名前を貸しすことで勢力範囲を広げている。

 その勢力は大きく分けて三つある。

 ノルウェーゲート周辺に本拠を構える『アースガルズグラウンド』

 ニューヨークゲート周辺に本拠を構える『ロイヤルフローデン』

 そして日本ゲート周辺に本拠を構える『高天ヶ原』

 この三つを総じて「三大コミュニティー」と呼ばれる。これらの傘下として、世界各地に中小コミュニティーが存在している。

 三大コミュニティーそれぞれが軍を所有しており、表世界からの要請があった際には最寄りのゲートが位置するコミュニティーから、戦力を派遣することになっている。

 しかし、軍の役目はそれだけではない。大きな争いはないものの、属領が疎らに位置するために小さな衝突は少なくないために、その抗争鎮圧がもう一つの役目だったりもする。

 そんなわけで、軍は決して人手に余裕があるわけではないのだ。

 それは高天ヶ原が所有するSIMSも例外ではなく、それを補うために設立されたのが『学制警備隊』である。彼らは中小規模の事件を担当する、いわゆる警察の役目を担っている。



 ◆



 学制警備隊隊舎、通称「龍の巣」。

 そこが、今綴が訪れている場所である。

 今朝芹香から伝えられた学制警備隊入隊要請の話をするために、泉がいる龍の巣に足を運んだのだ。


「なぜですか‼︎…編入したばかりの生徒の入隊を認めるなんて‼︎」


 綴が本部の司令室のドアを開けたとたん、女子生徒の声が飛んできた。


「警備隊は遊びではありません!危険が常について回ります!最悪の場合、命を落としかねないのですよ⁉︎そのような詳細も知らない編入生の入隊を認めるなんて…」

「待て、シャロン。まだ認めていない、と言うより入隊希望ではなくこちらから入隊要請をかけたんだ」

「へ…!」


 泉に抗議している女子生徒–シャロン=ウルハート–は、泉の言葉につい間抜けな声を出してしまった。

 学制警備隊は、シャロンが言ったようにお遊びの組織ではない。役目が警察というだけで危険だが、その上相手にするのは全て能力者だ。必ず月に一度、一人は怪我で緊急病棟に搬送されるし、年間死者数は五十人を超える、かなり厳しい仕事内容だ。

 そのため志願者は少ないが、入隊試験をパスすると将来SIMSへ入隊する際高待遇を約束される。なので、自らの腕に自信のある者や、職員が選んだ猛者のみが集う。

 職員が選抜するのは、毎回学園内で名の知れた強者どもである。二も関わらず、編入生が入隊すると聞いてシャロンが驚くのは無理もないのである。


「…し、しかし…‼︎」

「…あの、すみません」

「おお来たか、八尾」


 自分が勘違いしていたことに気づいても尚折れようとしないシャロンの言葉を遮って、綴が口を挟んだ。

 泉は綴が話に入ってきたのを好機とを見て、強引にシャロンとの話を中断した。

 部屋に一歩入ったところで気まずそうに立っている綴の下まで来て、部屋に招き入れた。


「あの、彼女との話はよろしいのですか?」

「ん?…ああ、君のことを話していた」

「僕ですか?」

天學ここでは、編入生は決して多くないが編入生を警備隊に勧誘したことは初めてでな…。当然危険な任務になるから彼女は君の身を案じているんだ」

「え、そんなに危険なんですか⁉︎」


 大して興味もなく、場の流れを読んで付き合いで話を振った綴は、泉の言葉に本気で驚いた。入隊どうこうで、上司と部下が身を案じて(・・・・・)口論をするほどだと思うと、さすがの綴も心配になってくる。

 しかし泉の様子を見るにそれは杞憂だったらしい。


「確かに危険だが、SIMSでの任務と比べれば可愛いものだろう。あそこで生きてこられた君なら十分やり切れるはずだ」

「それもそうですね。学制警備隊での任務の危険度がSIMSより高いことも稀だと聞いています」

「ちょっと待ってください!」


 突然、シャロンが二人の話に割って入った。


「SIMSで生きてきたとは、どういうことですか?」

「そのままだ。彼は訳あって今年から六階生として学園に編入するが、今まではSIMSの隊員として活動してきたんだ。これで、入隊要請の理由は納得したか?ウルハート」

「だ、だったらなぜ第六階級扱いなのですか?」

「それは…SIMSでの公開されている(・・・・・・・)実績を下にして、六階生相当と学園が判断したからだ」


 最も聞かれたくない内容をついたシャロンの質問に、苦い顔をした泉。


「六階生相当の実力では、決して安全圏はないはずです」


 この、シャロンの次の言葉が容易に想像できたがゆえに、尚更泉はバツが悪いといった表情をしていたのだ。


「ならば、どうすればなったくするの?」

「模擬戦をします。私以上の実力があれば、文句は言いません」


 シャロンの突然の申し出に、泉は「嫌な予想が的中した」といった顔をした。


「馬鹿を言うな。序列三十二位の君が相手では勝てる者の方が少ないだろ」


 泉は、呆れた声を出した。

 天學には「ランク制」がある。

 それは、課題任務の成果や模擬戦、階級ランク戦での戦果に応じて与えられる特典の合計点によって毎年更新される。

 上から三桁以内の実力者には序列が与えられ、二桁の者は化け物と恐れられている。二桁の生徒は既に課題任務としてSIMSの任務に参加することもあり、その実力は正隊員にも引けを取らないとされている。

 その中でシャロンは、序列三十二位である。泉が呆れるのも当然だ。

 しかし、この場でそのことを全く気にしていない者がいた。

 綴である。

 伊達にSIMSで生きていたわけではないという自負が、彼に自信を与えている。

 実際、彼は自らを過小評価しているが、今の彼にかなう能力者はSIMS内では、二十人もいないだろう。


「入隊の是非に関わらず、SIMS隊員としての実力を見たいというのが、素直な気持ちです。ですので私、シャロン=ウルハートは、八尾綴三階生に決闘を申し込みます」

「その決闘、お受け致します」


 シャロンの美しく輝くスカイブルーの瞳の、闘志のこもった強い視線を正面から受け止める綴の瞳にもまた、強い闘志が燃えていた。




 ◆




「泉先生、何してるの?」


 新年度の挨拶という形式的な行為のために龍の巣に足を運んだ結は、顧問の姿に気づき声をかけた。


「ん、白川か。ウルハートが編入生と決闘をすると言い出してな、まさか実際に決闘システムを起動するわけにはいかないからな、模擬戦とうことで闘技場の使用申請をしていたんだ」


 決闘システムは、学園の発行する「コード」を生体波動に刻むことで、どちらかの死を学園のメインコンピュータが確認するまで、殺し合いをさせるというシステムだ。なのでここ数十年、起動されたことがなく、綴達も決して殺し合いを望んでるわけではないということで、泉の提案で模擬戦をすることになった。


「編入生って、八尾くん?」

「何?…ああ、君は坂本のクラスだったな。SIMSでの経験を活かしてもらおうと警備隊への入隊要請をかけたんだが…」

「シャロンさんが突っかかった…と?」

「まさにそれだ」


 シャロンの思考パターンを把握しているのか、経緯を言い当てる結。警備隊三席である彼女は次席であるシャロンのサポートも仕事の一つであり、その結果二人はそれなりに仲が良くなった。

 自身の掲げる正義への絶対的自信をもつシャロンが、編入生の入隊と聞いて黙っていられないということを、結が想像するのはさして難しくなかっただろう。


「私も見たい」


 綴にとっては、ただ巻き込まれただけで気の毒に思うが、結にとっても綴の実力をこの目で見るということは非常に好奇心がそそられた。


「構わないが、手は出すなよ」


 泉の条件に、無言でコクリと首を縦に振ることで、承諾の意を示した。




 ◆




「ジャッジは私が行う。人体に攻撃を当てるときは、打ち身以上にひどくならないようオーラの密度を加減しろ。私の主観で、危ないと判断したら中止させるから、そのつもりで」

「「はい…!」」


 闘技場の中央で向き合う綴とシャロン。二人の距離は、およそ三メートルくらいだろう。

 少し離れたところから泉が二人を見守る。

 返事とともに、二人はどこからともなく武器を取り出した。

 シャロンはエメラルドグリーンのラインが走った白地のレイピア。綴は柄から刃先までが黒一色の日本刀だ。


「菖蒲色の系統魔術、『翳袋』(シャドーストア)。とても便利で慣れれば簡単ですがとても複雑な術式です」


『翳袋』は菖蒲色のオーラを媒体にして発動される系統魔術。闇影を司る菖蒲色のオーラの力で、物質を自らの翳のしまうことができる便利な代物だ。ただし、姿形は消えても質量は消えずしまった物質の重さの分だけ体が重くなるので、しまえる物質には限度がある。

 そもそも、系統魔術とはオーラを媒体にして術式を組み上げることで発動する、能力者の力である。術式の組み方は詠唱や印など複数存在し、また、武器に封印することもできる。

 術式が複雑になるほど発動に要する時間が長くなり、その分好きを作るので、実戦では単純な魔術を使うのがセオリーだ。


「ここでは七階生になってようやく習う魔術なのですが、SIMSにいたというのは本当のようですね」

「あれ、それも疑われていたんですか…?申し訳ないですけど、やるからには負けるつもりはありません」


 普通に会話しているが、すぐに二人の視線は真剣なものとなった。


「用意はいいな?…それでは、始め‼︎」


 泉の合図と同時に二人は動き出す。

いかがでしたでしょうか。あいも変わらず、拙い文書で面目無い。


ようやく今回、魔術を登場させることができて嬉しいです。

色々と細かい設定があるので、話が進むにつれてこの欄で説明したて行きたいと思います。


では、次回もヨロシク!

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