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天學編入3

今回は短めです。


どうぞ‼︎

 朝のHRが終わり、休み時間。

 編入生・転校生にはいつの時代どの世界にも決まった定があるが、綴もそれに違うことなく他の生徒に囲まれていた。


「俺は熊田映司。エージって呼んでくれ」

「私は片瀬出雲よ。よろしくね」

「白川結。ヨロシク」

「ダニエル=ブラウンだ。みんなからはダンと呼ばれてる。これからよろしく」


 綴の近くに座っていた四人がそれぞれ自己紹介をしてきた。


 この学園では、生徒に指定の座席はない。個人用に貸し与えられているロッカーはあるが、座席はその時空いていた席に座るというシステムである。この席には担任である芹香の指示で座ったが、あくまでも「その時最初に気づいた空いている席」がそこだっただけだ。


「こちらこそ改めまして。僕は八尾綴です。気楽に綴と呼んでください」

「綴、お前堅いなぁ。気楽って言うんなら、タメで話そうぜ」

「気にしないでください、エージ。これは、癖みたいなモンなんですよ」


 明るく話しかける映司に綴は少し驚いたが、表には出さずにこたえる。

 綴としては、SIMSで実戦部隊にいたということでもう少し敬遠されると思っていたのだ。実際に、クラス内の生徒の視線には好意的なものに混ざって敵か味方か迷っているような、疑惑的なものが少なからず存在する。

 然し乍ら、この四人は只々好意的である。そのことに綴が驚きを感じるのは仕方がないことだろう。

 一方、映司は敬語が癖になるという環境が想像できずに首を傾げていた。


「小さい頃からSIMSに居たので、同年代がおらず殆ど敬語しか使っていなかったんです。だから、タメ口に慣れていなくて」


 口調の理由を説明する綴だか、正確にはタメ口には慣れている。一緒に生活している菜緒にはタメ口で接しているのがその証拠だ。ただ、「尊敬している目上の相手以外はある程度の信頼が持てない限り隙を見せない」という無意識な判断が、タメ口で話すのを良しとしないのだ。


「なるほど。ならば、少しずつ慣れてくれればいい。だろ、エージ」

「そうだな、無理言って悪かったよ」


 綴説明を受けて申し訳なさ半分気不味さ半分な映司に、ダニエルが助け舟を出した。どうやら、後先考えない言動を取る映司に対して、その手綱を握るのがダニエルのようだ。


「ありがとうございます、ダン。エージも、そんなに気にしないでください」


 続いて綴も明るく振る舞うことで、場の空気が重くなることは回避された。


「話変わるけど、今朝のラット騒動を片付けたのが八尾くんって話、ホント?」


 意図的にか偶然か、ナイスなタイミングで話題を変えてきた結。


「そうですよ。職員館による途中で、偶然遭遇したので」


 抑揚の無い声で問いかける結に、特に気にすることなく綴は答えた。


「そうなんだ」

「へぇ、流石はプロ」


 結に次いで、出雲が感嘆の声を出す。他の男子二人も、無言のまま同様の表情をしている。


「それにしても、調整に失敗して暴走させるなんて、三階生も迷惑なことしてくれるわね」

「いえ、彼らの調整はちゃんとできていましたよ。効果も素晴らしかった」

「え、そうなの?」


 正直過ぎる感想を述べる出雲の意見を、綴が否定する。

 これには四人とも頭上に疑問符を浮かべていた。


「だったらなんで暴走するのよ?」

「あのラットは眼が赤い光を帯びたので、おそらくイヴィルの小精霊か何かに憑かれていたのが原因かと。まあ、それを見抜けなかったのは彼らの落ち度ですが」


 スラスラと説明する綴、四人は心底驚いたという視線を向けている。それは、近くにいて話が聞こえてきた生徒も同様に。


「そいつは大目に見てやれよ、綴」

「私以上に厳しいこと言うわね」

「目から放つ邪気を捉えるのは、ほぼ不可能」

「…流石わプロフェッショナルといったところか」


 三者三様ならぬ四者四様の感想を述べる一同。


 霊的な存在であるイヴィルには善霊と悪霊がいるが、悪霊に取り憑かれたものは邪気と呼ばれる赤い光を放つ。それを見極めることが、悪霊に憑かれたものとそうでないものを区別する最も有効であるとされるが、同時に最も難しいとされる。それができるものはプロとして働く者の中でも少ないと言われる程である。

 プロ中のプロが集まる「仮面付き」の間ではできて当然の技術だったので、綴はその辺の感覚がズレているのだ。


 四人の反応を見て、綴は認識を改めなければと反省した。


「でも、邪気が眼からってことはその小精霊はステージ1だったのよね?当然、浄化したでしょ?」

「もちろん。これでもプロ名乗ってたんです。抜かりありませんよ」

「なぁ、邪気を眼から放つ=ステージ1ってどーゆー事だよ?」


 出雲の言葉に、質問を返す映司。


「バカだバカだって思ってたけど、あんたってホント大馬鹿なのね」

「一言二言余計だな、お前。否定はしねぇけど…。で、いいから説明してくれよ」


 二人の会話を「否定はしないですか…」と苦笑いを浮かべながら綴が説明する。


「イヴィルにステージがあるのは知ってますか?」

「それは知ってる」

「彼らはステージによって邪気の放ち方が微妙に違うんです。ステージ1だと眼から、ステージ2だと眼の周りに現れる朱脈から、ステージ3だと全身に広がった朱脈から、それぞれ邪気を放つんですよ」

「ハァー…知らなかったわ」

「あんたもしっかり四階生の時に講義で習ってるはずよ」

「う、うるせぇ。座学は苦手なんだよ」


 出雲と映司のじゃれ合い(?)が始まった。どうやら、出雲は映司にちょっかいを出すのが癖のようだ。


「でも、浄化したなら一安心」

「ああ、ステージ1の小精霊も放置しておくと取り返しがつかなくなるからな」


 その光景に慣れている結とダニエルは、二人を放置して綴との会話を続行する。


「ステージ1ならイヴィルだけを浄化する事ができますが、ステージ2になってしまうとそれも難しくなりますからね。最悪、宿主も一緒に消滅させる必要が出てきますから」

「それに、ここには能力者しか居ないからな」

「能力者が憑かれると厄介」


 ステージ2に成長したイヴィルは特殊なオーラを纏い、生命力が強くなる。もし、宿主よりも生命力が強くなると元の自我は崩壊し、また、宿主を殺してもイヴィルだけ別の宿主に鞍替えされる可能性がある。そのために、ステージ2のイヴィルは宿主を「殺す」のではなく「消滅させる」のが基本的な対処法である。

 さらに、結が言うように、能力者がイヴィルに憑かれた場合、イヴィルの成長速度が速くなり、さらに宿主の能力を学習する事がある。

 故に、ステージ1の段階で浄化するのが望ましいのである。結たちが、安心するのは当然だ。


(ただし、小精霊は群れで行動しますから、近くに巣があるのだとしたら…。嫌な感じですね)


 綴だけが気づいたこの懸念が、のちに現実の厄災となるのはそう遠くない未来の事である。

複数人での会話って難しいです。それぞれで口調を変えないといけないのがなんとも大変…(ー ー;)


できるだけ近いうちに、バトルシーンを入れたいと思ってます。うまく書けるか心配ですが。




今後もよろしくお願いします!

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