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天學編入2

小説書くのって大変ですね。キャラ設定からシナリオまでいろいろと。

でも楽しいです!


テスト期間中なのに何やってんだって思いながらも、つい勉強ほったらかしになって…。


それはそうと、題名を変更しました。物語とタイトルがなんだかミスマッチに思えて仕方なかったんです。でもこれなら大丈夫です。


まあそんなことよりも、3話目どうぞ‼︎

 当事者の四人は一通り事情聴取を受け、実験をしていた二人の生徒は現場の検証と後片付けのため実験棟に連行、もとい移動した。

 綴と菜緒は、一応被害者ということもあって、目的地でもあった職員館に向かうよう指示された。


 そして、ここが職員館。東京都の一・三倍の面積を有する學園で働く職員の本部である。


「十拳さん‼︎『ゴールドパール』の次席ともあろうものが、何問題起こしてるの⁉︎」

「…ヒゥッ…!…ごめんさない…」


 警備部担当職員–泉 菜々–に叱られ小さくなる菜緒。



 ちなみに、『ゴールドパール』とはこの學園にあるメインコミュニティーの一つである。

 天學では、生徒は必ずどこかのメインコミュニティーに参加しなければならない。そして、そのコミュニティーのならで実力によるランクをつける。

『ゴールドパール』における今の次席が菜緒、そして今の管理責任者が泉だ。ゆえに泉は、ゴールドパールの生徒に厳しいと、学内でもそこそこ有名である。



「そんなに怒らないであげてください、泉先生。彼女も列記とした被害者なんですから。むしろ、事態収拾に協力してくれたのですから、褒めてあげてはいかがです?」

「しかし…」


 怒る泉を、もう一人の女教師が諌めるも、泉は止まらない。


「それに、実際に解決してくれたのは彼だ。えっと…君、名前は?」


 そう言って、泉は綴に向き直った。


「八尾 綴。例の編入生ですよ」


 しかしそれに答えたのは、女教師–坂本 芹香–だった。


「なんだ坂本、知っているのか?」

「はい、SIMS時代の同僚ですよ。私は彼のサポーター兼オペレーターだったんです。ちなみに、ストッパーとしての権限はまだ生きてますから、そのつもりでよろしくお願いしますね、綴くん」


 自分と綴の関係を説明しながら、芹香は綴に微笑みかけた。


「はい、お久しぶりです、芹香さん」

「三年ぶりくらいかしら?サポーターを菜緒ちゃんに引き継ぎして以来よね」

「そうですね。今日はもう少し早い時間帯来るつもりだったんですが、すみませんでした」


 綴は、泉と芹香に頭を下げた。


「顔上げて。泉先生も言ったように、君は問題を解決したんだから、こっちがお礼を言うのが礼儀でしょう。ありがとう、八尾 綴くん」

「私からも例を言おう。ありがとう」


 編入した時点でこの学園の生徒であると思っている綴にとって、ラットの問題を解決したのは生徒としての義務感からであって、職員2人から頭を下げられると困ってしまう。


「やめてくださいよ。怪我人は出なかったんですし、これで万事解決です」


 遠回しにこれ以上のお礼を拒絶する。


「それに、もうすぐ登校完了時間ですし」

「そうですね。では、綴くん。ホームルームに向かいましょうか」


 意外と時間が過ぎていたので、それを綴が指摘した。芹香は綴を連れて職員館の一室から出て行った。


「君も、自分のホームルームに戻れ。私は後から向かう」

「分かりました」


 菜緒と泉も授業のために、部屋を後にした。






 移動中の綴と芹香。

 以前にも述べたが、天學の敷地は広い。非常に広い。ゆえに、生徒のために「移動教室」という制度はほとんど存在しない。

 しかし、教師は別である。朝は必ず職員館によって、出勤手続きをしなければならない。すると必然的に、朝はない距離を移動してホームルームに行くことになる。

 今日、朝職員館に立ち寄る予定だった綴は当然覚悟の上だったが、想像以上に長かった。


「毎日こんなに移動するんですね。ご苦労様です」

「そうね、最初は辛かったけどもう慣れちゃったわ」

「そうですか…」


 芹香の言葉に素直に感心する綴。彼の知っている以前の芹香は、能力者のなかでは、あまり身体は強くなく体力も少なかった。

 ゆえに、綴としては少し嬉しかったのだ。



「あの、そういえば、僕ってどこの階級に所属するんですか?」


 綴は今朝、朝食の最中に菜緒と話した内容を思い出し、答えを知っていそうな芹香に疑問を投げかけた。


「あれ、聞いてないの?第六階級よ」

「聞かされてません。いきなり六階生ですか…すごい待遇ですね」

「そんなにこの学園は甘くありません。あくまでも、公平な審査と調査の結果の判断です。そもそも、プロでの実績を持つあなたは、本来この学園のに来る必要はないんですよ。そういう意味では、学園は綴くんのことを過小評価しすぎです」

「はぁ…。でもそれは仕方ありませんよ。『仮面付き』の任務内容は部外秘ですし、それに僕の場合は『綴理』としての仕事が多かったですから」


 芹香は少々不満気な表情だが、綴はあまり気にしていない。学園の対処に納得していた。


 SIMSでの綴の所属は、『敵勢力秘密処理班』。名前から分かるように、その活動は外部には「秘密」である。

 さらに、綴は指定養成機関(アカデミー)を卒業していない、謂わば「イレギュラー」である。訳あって特別入隊したが、綴の存在を内外ともにあまり知られたくないと考えた上層部の意向で、「綴理」と言うコードネームで活動していた。外面的には、綴は雑務担当の下っ端という扱いだ。

 つまり、SIMS幹部クラスの権限を有しており、尚且つ「綴理」のコードネームを知らない限り、他人が綴の実績を本当の意味で知ることはできないのである。


「そうだ。あなたに『学生警備隊』への入隊要請が来てるわよ」

「僕にですか?」

「ええ。君には、公開されている限りでもプロとしての十分な実績があるし、警備隊の顧問は泉先生だから、今回のラット騒ぎもあって更に熱く勧誘されると思うわ」

「そうですか…分かりました。放課後にでも、泉先生のところに行ってみます」

「そう。ありがと」


 綴は、頭の中で午後の予定を思い出しながら答える。


 そうして二人は、ついに六階生のクラスがある棟に到着する。







 その頃、四階生のクラス棟。


「菜緒ちゃん」


 菜緒は廊下で後ろから声をかけられ振り返った。そこには今朝方、ラット騒動の後片付けのために別れた女子生徒–木戸 飛鳥–が立っていた。


「大丈夫?」

「泉先生に『次席が問題起こすとは何事だぁ!』って怒られちゃった」

「私たちの所為で、ホントごめんなさい!」


 飛鳥は菜緒に謝罪した。目に涙を浮かべているとこを見ると、相当本気で申し訳ないと思っているようだ。


「いいよいいよ!誰も怪我してないし、実際に対処したの、綴さんだから」

「そう言ってもらえるとありがたいかな」


 菜緒が笑いかけると、飛鳥も目元を濡らしたまま微笑んだ。


「そういえば、その綴さんだっけ?あの人何者⁉︎自慢じゃないけど、ラットの波動調整、効果だけは抜群だったと思ったのに、あんな簡単に沈めちゃうなんて」

「あの人は特別だよ」


 さっきの、自責の念に潰されそうだった姿が嘘のように、勢い良くまくしたてる飛鳥に、内心驚きながらも菜緒は答えた。


「今度紹介するから、素性とかは本人から聞くといいよ」


 そう言って、飛鳥の質問に対する回答を誤魔化した。


 サポーターとして綴とともに生活しているが、実のところ菜緒はSIMSの隊員ではない。

 菜緒の潜在能力は非常に優れている、まだ完全には制御しきれていない。十年前に綴に助けられてから、彼に対して精神的依存がある菜緒は、能力が暴走した時にそれを押さえ込めるのが綴だけなのだ。

 菜緒の才を手放すのが惜しいと考えた上層部は、半ば強制的に綴のサポーターを芹香から菜緒に引き継がせた。そうすることで、菜緒の手綱を握っていようとしたのだ。


 そんな訳で、SIMSの正隊員でない菜緒は、綴のことをどこまで話していいのか、素直にわからないのだ。


「ええ〜!気になるよ〜」

「我慢我慢!」

「教えてよ〜!」

「また今度ー」


 教室に着くまで、二人の会話はこの繰り返しだった。







 六階生のクラス棟、Aホームルーム。


「ねえ、聞いた?今朝のラット騒ぎ」

「聞いたよ。なんでも、技術部の四階生が生体波動の実験で、ラットを暴走させたんだとか…」

「なんであんたがそんなに詳しいのよ、ダン。にしても、暴走させるなんて相当雑な調整したのねぇ。じゃあ誰が止めたの?」


 教室の一角で、耳が早い生徒たちは、既に今朝のラット騒動の話で盛り上がっていた。


「え、そこに居合わせた生徒だってことしか…。それ以外は、知らない」


 ダンと呼ばれた男子生徒–ダニエル=ブラウン–も、そこまでの情報は手に入らなかったらしく、相手の女子生徒–片瀬 出雲–と二人して頭を死ねっていた。


「編入生だって」


 そこへ、いきなり背後から疑問の答えが提示される。


「あ、おはよう、ユイ。それホント?」

「なんで結が知ってるんだよ?」


 立っていたのは、とても眠そうな目をした女子生徒–白川 結–だった。


 余談だが、出雲と結は幼馴染みであり、結の読みは「ムスビ」だが、出雲が初めて結の漢字を見た時に「ユイ」と読み、ずっとそう呼んでいてしばらくしてから間違えに気づいた。それから出雲はすごく気にしたが、当の本人である結はマイペースで特に気にしていなかったため、使い慣れた「ユイ」で読んでいる。


「さっきの泉先生から隊の連絡網が回ってきた」

「なるほど。さすが警備隊ナンバースリー」


 結は六階生にして、相当の実力者であり、学内総合序列も、上位にランクインしている。その実力を買われて、学生警備隊ナンバースリーの地位を与えられている。


 冗談半分で褒めた出雲に、真顔のブイサインで応える結。

 それを眺めていたダンだったが、ふとあることに気づいた。


「その回線の情報って、あんまし広てはいけないやつだったろ…?」

「「………」」


 ついうっかり喋ってしまった結は、ダニエルの指摘に対して、出雲と共に無言で応えた。


「図星かぁ…」


 警備隊ナンバースリーに呆れた視線を向けるダン。


「オハヨ。何話してんの?」


 その時、また別の生徒が話に入ってきた。


「ん?…エージ。いや実は、今朝…

「あ、聞いた?今日編入生が来るんだって」


 自分で質問したにも関わらず、男子生徒–熊田 映司–はすぐに自ら話題を変える。

 その態度に、出雲が「このヤロウ…」と呟きながら、額に青筋を浮かべているのは、ご愛嬌というやつだろう。


「編入生、このクラスなの?」

「みたいだぞ。さっきの廊下で芹香ちゃんと男子生徒が話してた」


 結が、実際に首を傾げながら質問すると、映司はさらりと答えた。


「マジかよ…」

「いきなり六階生って…実力で入ってきたんなら、そいつは化け物ね。今までそんな人聞いたことないけど」


 ダニエルと出雲は、それぞれの言葉で驚きを露わにする。

 それだけ、「最初で六階生入り」というのが凄いことなのだ。


「はーい、みんな座ってー」


 そうこうしていると、ドアから芹香がってきた。


「おはようございます。昨年度は段飛ばしで階級昇格できた人が数人だけだったで、今日からもだいたい同じメンバーで、一年間頑張りましょう」


 サラリと生徒の心を抉った芹香に、一同はムスッとした視線をぶつける。

 この学園の制度では、自力で資格を取得するれば昇進できる。つまり、資格の条件さえクリアすれば、簡単に飛び級ができる。実際、第四階級までは半分ほどの生徒が段飛ばしで昇格している。

 生徒たちは皆いち早く昇進するために、日々精進しているが、しかし、それに対して今の台詞は唯の皮肉にしか聞こえない。

 一言、芹香を弁護するとしたら、彼女は悪意からではなく素で言っている天然なのだ。


「今日は編入生を紹介します。八尾君、入ってきてください」


 芹香の指示に従って綴は教室に入った。


「彼は八尾綴君。彼はSIMSに所属しています」


 芹香の一言で、一瞬にしてクラス内がざわめいた。


「八尾君、何か一言どうぞ」

「八尾綴です。SIMSの実戦部隊に籍を置いているので、現場経験に関してなら多少なりともアドバイスできると思います。なのでヨロシク!」


 自己紹介を隣で聴いていた芹香は、驚いたかをして綴の脇腹を小突いた。


(実戦部隊にいたなんて言っていいの?)

(大丈夫だと思いますよ。『仮面付き』にいたことを公言したわけではないですし、今まで雑務扱いだったのは正式な養成施設の卒業証がなかったからです。だから天學に編入した時点で、その縛りも無くなったと思います)


 二人は他の生徒に聞こえないよう小さな声で話しながら、芹香の質問に対して、特に気にする様子もなく綴は答えた。


 芹香の懸念も理解できる。しかし、芹香は知らないが、綴の言う通り天學に編入したことで実戦部隊で活躍していたことを隠蔽するための情報操作は解除されている。ゆえに、『仮面付き』と呼ばれる『敵勢力秘密処理班』に所属すること以外は、明かしても問題ない。


 芹香は取り敢えず納得したようで、話を進め出した。

 綴は指示された自分の席に着き、担任である芹香の話に耳を傾ける。

 こうして、綴の天學6-Aでの初日がスタートした。

どうでしたでしょうか?

今回は少し長くなりましたが、楽しんで頂けたら幸いです。


今回は明かすべき設定がまだ出てきていない気がするので、説明は省きます。何か説明してほしい設定があれば、コメントください。


では次回もヨロシク!

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