晩餐会と戦神子
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《呪文》の効果で灯された瞬かない光に照らされた薄暗い廊下から中に入ると、そこは大広間で席に着いた2、30人が一斉に席を立ち、沙耶をむかえて拍手をする。
いわゆる歓迎の夕食会だ。
案内されて国王陛下の左の席に案内される。
日本の宮中晩餐会とかならば、先日のマエール国教会の教皇主催の晩餐会のように、他国者どうしチャンポンに座るのだが、今日はテーブルの左側が一列空いている。
これは多分に沙耶に随行してきたものが、ここに居並ぶマッシュール王国の重臣たちより身分が低いとされているからだろう。
沙耶としては、両脇を固められていないのでこの方が気が楽だ。
「王国のためにお越しいただいた『ルイーズの女神』に感謝の拍手を。」
司会みたいな役割の人が声を上げると、拍手が一段と大きくなる。
ウガリッドが手を上げて拍手を止める。
「ささやかだが、慰労の会を設けさせていただいた。楽しんでくれ。」
「ありがとうございます。」
(あれ?)
着席して気がついたが、空席がない。
そしてケンジがいない。
どうして?
「あの、マッシュール王国の戦神子様がお見えになっていらっしゃらないようですが、お加減でも悪くなられたのでしょうか?」
練兵場の寒空が異世界から来たてのケンジには応えたのだろうか?
「まあ、そういうことだ。食欲がわかないというので別室で軽くとらせることにした。」
「そうですか。それは心配でございますね。」
「いや、少々疲れただけだろう。『ルイーズの女神』が気にかけるほどのこともなかろう。」
(仲が悪いのかしら?でもケンジのことだがら、出たければ来るだろうし、『固っ苦しいのはパス』ということも十分考えられる。)
「そうですか。あの方がいらっしゃると場が賑やかになりますのに、残念でございますね。」
社交辞令ですよ?
ウガリッド国王は苦笑いと取れる笑みを浮かべた。
「たしかに賑やかにはなるな。」
その後はどうにかして帝国の国情を聞き出そうと、話題を振ってきていた。
食事はコース。
味はともかく、肉肉肉肉肉肉。
野菜を摂りましょうと言いたいくらいに肉食だった。
前菜は肉のカルパッチョ
サラダはハム入りサラダ
スープは多分テールスープ
カツレツとステーキのメイン二品
デザート
胃がもたれそうで、行儀が悪いが全部少しずつしか取らなかった。
「ユリル、胃がもたれて気持ちが悪い。なんか胃薬みたいなものは持っていない?」
「ございますよ。クナの葉を煎じたお茶が効くでしょう。今、お入れしますね。」
「お願い~。シオ、消身をといていいよ。」
「シオ、ご苦労さま。疲れたでしょう。食事をとってあるから、食べてきていいわよ。」
ユリルがケンジの毒気に当てられ気味のシオに声をかける。
「はい、そうします。サヤ様、ちょっと休憩しますからその間はどこにも行かないでくださいね。」
「いいから、ゆっくり食べておいで。」
シオはケンジより大人だ。母親と一緒に母親を守りつつ旅をして、辛い目にあっただろうにひねくれもせず、人の痛みを察することのできる子に育っている。
きちんを教育も受けてきているので、物腰も貴族の子弟のようだ。
将来楽しみな青年になるだろう。
それにしても
「胃が重い~」
起きていられずソファーで寝転び胃を撫でる。
「確かにあれは相当負担が来ますね。ユリル、私にもいただけますか?」
「皆さんにも入れましょうね。」
「・・・こうなるからケンジはバックレたのかな?」
「それもあるとは思いますが、あまりうまくいっていないという印象ですな。」
リガードが顎を撫でる。
「まあ、あのノリと合う人間はそう見つからないと思う。」
ということは、彼はこの世界ではまだ孤独なのか?
私はユリルや侍女さん達に囲まれ、シロに癒されたからこの世界に馴染むことができつつあるし、愛着も湧いてきている。
「様子を見に行ってみようかな?」
とっても元気でした。
さみしいだろうなと思った私に言ってやりたい。
『こいつは能天気だ』
部屋を覗くと、宴会が繰り広げられていた。
ケンジの両脇にずらっと綺麗どころが・・・
「あれ?サヤッチ、どうしたの?晩餐会があるって聞いていたけど、もう終わったのか。」
「何しているんですか?」
思わず腰に手を当てて仁王立ちにて問いただしてしまった。
「今日一日頑張ったから、命の洗濯だよ。」
そう言うと両脇の女性を抱え込む。
キャーという嬌声が上がる。
「どうせ固っ苦しい晩餐会でオヤジばっかで楽しくないからね。別に俺がいなくても良さげな雰囲気だし、俺は綺麗なお花さんたちと食事をしていたというわけ。」
「食事だけですかぁ?」
「お酒も入っていますよぉ」
「だれ?こちらさま?」
「隣の国の戦神子。僕の先生。厳しいんだ。今日はこってりいじめられたよ。」
「いじめなんて!」
思わず言い返す沙耶に周りの取り巻き女性たちの視線がきつくなる。
「あら、かわいそう。」
「異世界からお出でいただいたばかりなのに、すぐにできるようになりませんよねぇ。」
「自分だって“お荷物”扱いだったように聞いておりますゲド」
「そういじめないであげてよ。ノリが軽くない、真面目優等生だっただけだからさ。」
こいつなにげに時々鋭いツッコミを入れる。
彼女たちの言葉よりグサッとくるじゃないか!
ケンジが隣の女性になにか耳打ちするが沙耶は見ていなかった。隣の女性もクスッと笑って小さく頷く。
「サヤッチ、もしかして晩餐会に俺が出ていないから心配してきてくれたの?」
「違います!」
「じゃあ、なんでこっちに来たの?俺に会いに来たんでしょう?ここには僕しかいないんだし。嬉しいな。」
ちょっと崩れた二枚目半のケンジは笑うととっても愛嬌がある。
それは沙耶も認める。
軽いノリは向こうの世界の平和だった空気を含んでいるようで懐かしい。
「ぐ、具合が悪いのならお見舞いでもと思ったし、ひ、一人で食事をとっているのだったら寂しいだろうなって思っただけだから、会いたかったわけでは決してないから。」
会いたかったわけではないということを強調したいがために、余計なことを口走ったような気がしたが、出てしまったものはもとに戻せない。
「さみしいよ。だから、この子達を呼んだんじゃないか。」
真顔で返すケンジ。
ホスト遊びの経験がない沙耶はこれがケンジのテクとは思わない。
「この子達はもう帰すから、サヤッチはもう少しここにいてくれないかな?」
「いえ、お元気そうですので私が退散いたします。お邪魔いたしました。」
「ねえ神子様、同じ戦神子同士もう少し親身になって差し上げれば?」
「そうよね、ご自分だってきた当時は、向こうが恋しかったはず。」
「私たちでは所詮お慰めしきれないところがありますわ。」
口々に言う女たち。
「ほら、明日からまた頑張るためにも付き合ってくれないかな。明日には帝国に帰ってしまうわけだし。」
そう言われると、自分もシロがいてくれたので助かったところがあるので、無下にできない。
「わかりました。でも、直ぐに帰りますから女性の方々は、いらしてください。」
「だって。サヤッチに誰か飲み物を。」
「お酒はいりませんから。」
「一人でシラフはつまんないよ~。ま、しょうがないか。」
目の前にグラスが置かれる。
「果実水です。」
肉攻めで喉が渇いていたので、ありがたく頂戴する。
酸味と甘みのバランスがいいさっぱりとした飲み物だ。
「美味しいですね。」
「ここの料理って味付けはともかく、肉が主体なんだよね。僕も肉は好きだけどそればっかりじゃ飽きちゃうよ。それにたっぷり塩コショウを使うから、しょっぱい。」
「胸焼けしました。」
「おかわりいる?」
「あ、もらっていいですか?」
昨日寝不足なのと、慣れない環境で疲れたのとが一気に出てともかく眠い。
「少し眠くなって来てしまいました。私はこれで失礼し・・・・」
目が・・・開けてられない・・・
部屋から女たちが出ていく。
ソファーに眠り込んだ沙耶とグラスを傾けるケンジの二人だけになった。
「サヤッチ、この世界は辛くないかい?」
すいません、ベタです。




