帝国図書館
夜中の中庭に立っています。
ハーフムーンがほのかに明るい。
充電できるなら『電気』も扱えるはず。
どうすればいいのさ。
「電気でろ!」
「ライトニング・ボルト!」
「エレクトリカル・・・・」
ダメか・・・
照明機能はどうだ!
「ライト。」
「光あれ!」
おっ!おおおおおお
出た!
指の先に いーてぃーのような。
暗い。
もっと明るく
光量は徐々にだが大きくなっている。
こんなんで戦えるかしら?
できれば戦いたくないなあ
ほかに役に立つ能力が良かった。
食物の促成栽培とか。
照明の能力で夜も明るくすればいけそうかな?
悩んでいてもしょうがない。
前向きに行くって決めたんだ。
コノセカイニ ヒツヨウガナイト イワレタラ ドウシヨウ
「誰だ?」
突然声がした。
声のした方を向くと男の人が立っている。
暗がりに立っているのでシルエットだけでの判断だけど
「あの、ここは立ち入り禁止だったのですか?」
「いや。」
こちらに向かってくる。
明るいところに男が出てくる。
なかなか美男子ではないですか。
ちょっと目つきが怖いけど、そういうタイプって意外ともてたりするよね。
「何をしていた?」
久しぶりのタメ口がとっても新鮮。
「ちょっと秘密の特訓を・・・」
「『光あれ』」
「お・・あ・・み、見ていたんですか!」
「そこからな。」
「失礼します!」
逃げ帰りました。
翌日ユリル先生の講義が始まると早速聞いてみた。
「この世界には魔法というものは有りますか?」
ユリルは考えつつ問い返す。
「それは、自然の現象を自分の力にできる技ですね。」
「・・・そうだと思います。・・・そうですね。」
(魔法をこねくった言い方をするとそうかも)
「我々の中にはおりません。
魔法とまでは行きませんが、ちょっとした補助の呪紋を使えるものはおりますが。」
「これのこと?」
腕の呪紋を見せる。
「そうです。それは『ことは』の呪紋で今御子様が私の話す言葉を理解できるのはその呪紋のおかげです。・・・そういえば帝国の戦神子の中に『魔法』を使われた方がいらしたと記憶しています。」
「その方も異世界人だったのですか?」
「戦神子は皆異世界の住人です。」
「その人のことを書き残した文章とか有りますか?」
「王国図書室に文献がございますよ。
今日の講義はそちらでいたしましょう。」
「お願いします。」
「うわ~」
思わず声が出る。
壁一面一階から三階までびっしりと本が並んでいる。
「すごいですね。さすが帝国図書室。」
「先の皇帝の時に大分荒らされてしまったのですが、今の皇帝陛下がここまでになさって昔より蔵書が増えております。」
「『魔法に関する本』をこの中から探すのは大変ですね。」
「司書がおりますので、造作無く見つけられますよ。」
そう言うと沙耶をカウンターに案内する。
「ユリル嬢ちゃんだね。久しぶり。おや?見知らぬ匂いがする。」
カウンターには顔にシミの浮いたおじいさんが座っている。
目が白濁している。
「ギイ、この方は戦神子様です。」
「戦神子様。光栄にございます。記憶させていただきました。」
ギイと呼ばれた老人は深々とお辞儀をする。
「この老人はギイ=グアルディオラ=マーキス。王国図書館の生ける目録と皇帝からお言葉を賜っている人。私の古くからの友人でもあります。」
「はじめまして。沙耶=皇です。あのグアルディオラって初めて聞く名称なのですけど?」
「ほっ。番犬という意味じゃ。確かにここの番犬じゃから、ぴったりの名で有りましょう。」
と言うと、ほっほっと笑う。
「ギイ。魔法を使っていた戦御子様の記録が乗っている本はどこ?」
「魔法・・・・戦神子・・・」
顔を上向きにしてフンフンと鼻をならす。
「どのような魔法を使ったかで良いですかな。」
「どうやって使えるようになったかが書かれているとなおいいのですが。」
「なるほど。・・・魔法・・・魔法・・・これなら良いでしょう。
三階の西の棚二つ目の棚上から二段目左から・・・・十二番目。」
「ありがとう。さ、神子様参りましょう。」
「いつでもお待ちしております。」
螺旋階段を三階まで登る。
二階の東にテーブルと椅子が置いてある。
(人?)
座って本を呼んでいる人がいた。
あれ?
あの人は昨日の夜に中庭で会った人?
もっと近くでみようとしたらユリアさんに
「そっちは東です。」
と言われ引っ張られた。
「これです。」
金文字が打ってある2センチほどの厚さの本だ。
題字は・・・・・
「読めなかったのよね。」
お願いしますと差し出す。
「そうだと思いました。最近わかってきたのですが、ところどころ外見と恐ろしくそぐわないところがお有りになられますね。」
(あ、とうとう言われてしまった。そうです。残念美人なのです。だって、この外見ににあった生活をしてこなかったんです。)
「すみません。期待を裏切っていますよね。」
「戦御子様はとても気品がお有りになりますから、人は身構えがちですが、こんなに気安い方と知れば親しみがわくと思うのです。ただ」
「ただ・・なんでしょう?」
「戦神子というお立場は一般の民の中では、文字に神が入るように神格化していますので・・・」
「あまり馴れ馴れしくしてはダメということですか。」
「もちろん私たちには今までどおりでお願いしたいくらいですが、今回の巡視ではお気を付けになったほうがよいと思います。」
「わかりました。ありがとうございます。これからも気をつけることがあればいってください。知らないうちに人を傷つけないように。」
「以前そのようなことがお有りになった?」
『一緒のクラスなんて耐えられない』
『あいつがいるからクラス替えをして欲しい』
友人と当時の漫画のキャラクターに似ている人がいたので、親しみを込めてなぞらえていた。
それほど嫌だったなんて気づかなかった。
だから匿名で書かれたその言葉に怯えた。
当時のクラスの30名近くの人の中で私を酷く嫌っている人がいる。
どの人?
今すれ違ったあの子?
同じ当番のこの子?
掃除のとき私に机を拭かれるのも嫌なんだろうか。
いじめではないが、その一件で私は人に対して臆病になった。
あまり人に立ち入らなくなった。
喧嘩もしない代わりに相談事もされない。
だだの親しい人どまりの関係しか築けなくなった。
どうしても帰りたいと思わないのはその薄っぺらな人間関係しか築いてこれなかったからでもある。
「神子様?」
「ああ、すいません。この本は持ち出せますか?」
「ギイには顔が効きますし、融通の効く人ですから頼めば大丈夫ですよ。」
投稿初心者なので、試行錯誤中です。
今回は書きたいように書いていますので
言い回しのおかしいところがあれば、教えてくださるとうれしいです。