遺伝子シャッフル
お読みいただきありがとうございます。
体の疲れやすさと眠気は続いていて、なかなかユリルさんの講義が順調に行かない。
順調といえば、シロはますます大きくなってきている。
いまでは十キロを超える。
元の体重の三倍近い。
獣医さんは大きくなる理由は、異世界から来たからとしか考えられないと言っていた。
そのほか体に異常はないようだ。
獣医さんは触診だけでなんで分かるのかと、帰ってからユリルさんに聞くと(未だ小心者でお医者様本人に聞きただせない・・・自分を変えねば。)
「医師はコブラかカッチャの出がほとんどですから、見ただけで異常があるかないかくらいは、すぐに判断できます。」
「コブラ?カッチャ?」
「コブラというのは爬虫類で、カッチャというのはカーネの流れの種族です。」
(ユリアさん・・・またわからない言葉が出てきているよ。)
「すみません。わかりません。」
教えを請うことにする。
ユリアさんの話は長かった。
途中で寝てしまったので(決して退屈であったためではない。体調のせいである。)二日がかりの説明だった。
ざっくりとユリアさんの説明をまとめると、(誰のため?私のためである。)
この世界は科学力を発達させるより、人間の能力を上げることに主眼をおいていたそうな。
空を飛ぶのに、私たちの先人は機械の力を使った。この世界の人たちは鳥の能力を自分たちの力にした。
生命工学。
遺伝子操作。
あらゆる場所で遺伝子操作が進んだ。
神という存在が生命を司るならそれは反逆だ。
信仰と発展のせめぎあいは続いた。
そのうち、兵器としての活用もされるようになった。
隷属人種を産み、その上に君臨するという図式もできた。
世界はきしんだ。
そして起こった。
神の怒り
世界大戦
遺伝子が変質するウイルスがばらまかれた。
それにより、世界は歪み破壊された。
全人類の90%がそのウイルスに罹患した。
人はDNAの中に進化の歴史を刻んでいる。
その分岐を交差させる。そういうウイルスだ
罹患した人類の30%が脊椎動物以外の分岐や複数の分岐と混じった。
それは、もはや人の範疇ではない。
それらはキマイラと言われるようになった。
混じっていびつな存在ゆえに、人よりそれは純粋な意味で強かった。
残りの60%が脊椎動物。
罹患しなかった10%がいま現存している国々の祖になる。
かつて世界には10億人以上の人間が暮らしていて、全世界に居住範囲を広げ食物連鎖の頂点に立っていた。
いま人口は一億人に激減している。
何故か
動物混じりは進化ツリーで近接しているものとしか、子供を作れないからだ。
犬混じり《カーネ》は狼混じり《ルプス》とは番えるが、うさぎ混じり《コエッリオ》とは子供を作れない。
個体数が少数の動物混じりは滅亡していった。
同じ種族は固まって生活するようになっていくのは当然だろう。
しかし同族混血はキマイラを生み出し始めたのだ。
キマイラとの戦いも続く。
キマイラ同士では子供を作れない。
動物混じりとの混血で可能なため常に手を伸ばしてくる。
際限な続く戦い。
ある時異世界から人がやって来た。
純血種たる人族。
どういった仕組みなのか未だに分からないが、異世界人がいる国はキマイラが生まれなくなった。
異種族でもどちらかの形質が出て子供を作ることができるようになった。
それだけではなかった。
異世界人は奈落の侵食を抑えることができた。
異世界人は世界をまたぐ時に、異能を身に付けた。
それがキマイラに対して破壊力を示すときは逆に領土を広げることもできた。
救世主ともいう存在を 戦神子 という。
動物混じりの話にもどる。
名前で出種族がわかるのだそうだ。それによってある程度付き合う人間をしぼり込めるので必要なのだ。
今私の見知っている人たちでは、
ユリル=ディーナ=アイリスは名前 種族 姓の順で
ディーナは人間の女性。
人だけが雌雄で名前を違えるそうだ。
リカード=シンミャ=ライオリアス
シンミャは人間の男性。
侍女たちは、レシュさんが狐でクレイさんがうさぎ、セリーンさんが鳥だそうだ。セリーンだけ鳥というのは、鳥族は混血が進んでいるからだそうだ。
私を看てくれているお医者さんはウロコもあったし目も人とは違っていたから、爬虫類系なのだろうというとユリルさんが頷いた。
表に形質が現れるもののほうが多い。
侍女さんたちに聞くと、レシュさんはしっぽ。
狐のしっぽですよ!
いずれ仲良くなって見せてもらいましょう。
クレイさんは見せてくれた。
あまり現れていないタイプで、耳が少し尖っていて白い毛がちょこっと生えているだけだった。
セリーンさんもスカートを少し上げて見せてくれた足に羽毛があった。
セリーンさんって鳥目なのかしら。
気になる。
獣が人化イコール獣人ですが、この話はあくまで人に獣の遺伝子が混ざるという設定にしました。猫耳っ子は出にくいですね