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猫を追いかけて異世界  作者: ふー
策動編
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お祭り 前編

お読みいただきありがとうございます。


季節ものではありません。

だって、収穫祭ですから(爆)

「今年の収穫祭は、大々的に行え。」


 皇帝ティルルは会議の席で指示した。

 奈落マレフィスクとの境界が落ち着き、国内の政治体制も皇帝が《ティルル》が前皇帝派を更迭、戦神子サヤとの契約と慶次が続いている。

 キマイラの侵入が少なくなり、新しい領土・資源・産物が見つかり、帝国が抱えていた経済的危機も峠を越えた感があり、人々の顔も明るくなってきているとの手応えもある。

 その中での、収穫感謝祭だ。



 レシュに幻惑をかけてもらって、街歩きを楽しむのがマイブームになっている沙耶は、今日も街に出ている。

 目的の場所に着くと、幻惑を解いてもらう。


「サヤ様!」

 目ざとく見つけた子供が走り寄ってくる。


「サヤ様、いらっしゃいませ!」

「ヴェブ=ママ、いる?」

「うん。」

 両脇が子供で鈴なりになりながら、歩く。


 シオの母親は今、孤児院で働いている。キンヨンダだということは伏せてシガルト(とかげ)を名乗っている。シオもそうだ。

「はい。頼まれていたもの。」


 薬をヴェブに渡す。

「神子様自らでなくてもよろしかったですのに。」

 恐縮して知るが、サヤからシオの様子が聞けるので嬉しそうだ。




「お祭り?」

 ヴェブが入れてくれたお茶を飲む。


「はい。今年は帝国を上げて行うそうですよ。」


「それで、皆ウキウキしているの?」

 街を歩いていた時に、感じたことだ。


「帝国上げてなんてすごいですね。」


「楽しみです。」

 レシュも聞いては落ち着いていられないようだ。


「どんなお祭りなの?」


「それは、その日のお楽しみです。」

 話してくれる気はないようだ。

 まあ、楽しみは取っておいてもいいのだが。





「街にはいけないぞ。」

 ティルルにお祭りのことを聞き出そうとすると、そういう答えが帰ってきた。


「え、どうして!」


「直轄地から、領事たちがやってくる。」


「まさか、その時一緒に挨拶しろとは言わないよね。」


「もちろん同席だ。夜歓迎の会が開くことになるのでその時も参加だ。」


「嫌だと言ったら?」


「言ってもいいぞ。そのあと一ヶ月外出禁止にする。」

 クールな皇帝陛下降臨です。




「行きたかったな。」

 うなだれる沙耶。


「そうですね。」

 うなだれるレシュ。


「皆は行って来ていいよ。」


「でも。」


「お土産を買ってきてくれればいいから。」


 セリーンが、小首をかしげる。

「サヤ様、もしかしたらですが皇帝陛下は、ご一緒に街に出てお祭りを楽しみたかったのでは?」


「え?」


「領事の方々がいらしゃるのは、祭りの前です。ご挨拶ならばその時でしょう。歓迎の夕食会は開かれますが、皇帝が列席するのは一回のみです。基本的にお祭りは三日間続きますが、三日とも空いていないなんてことは、ないですよ。」


「本当?」


「ただし、サヤ様は人気がありますから、あちこちからお誘いはあると思いますが、一日ぐらいは街に出れるはずです。」


「そう言われれば、そうですね。皇帝陛下もお忍びのお出かけに誘って見られては?」

 クレイも頷く。






「ティルルは街に出たことはある?」


「皇帝になる前はな。」


「じゃ、久しぶりに出てみない?」


「会食があるぞ。」


「少しの間だけでいいから。お願い。ティルルと一緒にお祭りを楽しみたいの。」

 元の世界での沙耶はできることは自分でというスタイルで、重い荷物を一人で持ち、部屋の模様替えでタンスを動かすのも自分でやり、照明器具の取り付け、オーディオ機器の配線となんでも一人でこなしてきた。

 結果、『お前は一人でやっていける。おれは必要じゃない。でもあいつには俺が必要だ。』と去られてしまうパターンが多かった。


 今回は優秀なセコンドがついていて、

『可愛く上目遣いにお願いすれば落ちます。』と言われたのでそのように振舞ってみた。


「・・・・」

 いけそうか・・・・?

 もうひと押し。


「お願い。この世界に来てから、図書館以外にゆっくりティルルと話すのはネットでだけなんて、味気無さ過ぎる。ティルルはお祭りが嫌いなの?」


「嫌いだ。だが、それほど一緒に行きたいのなら、少しの時間でよければ付き合ってやる。」


「ありがとう!」





 挨拶やら会食やらを『お祭り』の呪文で完璧に(ここ大事です。さらっとやり過ごしましたが、ガッツポーズものです)やり過ごし外出です。


 門から出ようとすると、

「お前は馬鹿か?堂々と出る奴がいるか。人に囲まれてすぐ身動きできなくなるぞ。」

 とティルルに怒られた。


「じゃ、どっから行くの?」


「ついてこい。」

 そう言うと、逆に奥へと後宮へと戻っていく。


「戻っちゃうの?」


「黙って、ついてこい。」


 後宮のサヤが初めに使っていた部屋のワードローブに入ると服をかき分ける。

 そう言えば気になっていたことがあったっけ


「・・・この服って誰のだったの?」


「前の戦神子だ。とんだ浪費家で、コイツのおかげで国庫は破産寸前にまで追い込まれた。」


 そのすごい量だ。

「売ちゃえば?」


「ほとんど売った。」

 残っている服でも相当な量だ。


「ヴェブのところに持って行って、リメイクしてもらっていいかな?」


「リメイク?」

 ワードローブの奥の壁にあるいかにも怪しい紐を引っ張りながら、ティルルが聞く。


「子供達や働いてくれている人たちの・・・・うわ、これ抜け穴ね!」


「お前の服は作り直しだから、全部持って行ってもいいぞ。」


 ティルルは壁からロウソクを取ると『あかりの呪紋』をつける。あたりがほのかに明るくなる。

 ティルルのほりの深い顔が照らされて、陰影がはっきりして美しい。


(ティルルに美しいは褒め言葉じゃないだろな)


「ありがとう。でも私の服はここにあるのを見繕えば充分。」


「少しゆるいところがあると言って手直ししていただろう?」

 沙耶は少し赤くなる。前の戦神子は、沙耶より胸があったみたいで胸元がガバガバだったのだ。


「最近は前より直さなくてよくなったの。」


「胸が育ったのか?」


「・・・・・」

 無言で胸をそらしてみる。


「・・・まだまだだな。」



 がっくりである。

「だが、あの戦神子と同じ服はサヤには着させたくない。作り直すのは私の都合だ。」

 そう言って手を取る。


「え、え、え」


「通路は暗い。」


「あ、はい。・・・そうだ!『光あれ』」

 光量をました沙耶の『光』は、通路全体を明るくする。


「明るいな。」

 ティルルはロウソクを戻す。


「役に立った。これで、足元を気にせず歩けるね。さあ、早くお祭りに行こう。」






 隠し通路のさきには小さな部屋があった。


「待たせたな。」


「いえ」

 そこには沙耶のあったことのない男女が待っていた。


「エリサ。」


 女性の方がティルルと沙耶に近づくと幻惑をかける。

 レシュと同じ種族のようだ。


「すごい人出でございます。はぐれないようにお気お付け下さい。」


「いくぞ。」

 ティルルはさっさと扉を出ていく。


 今のテルルはいつもと違った外見なので、見失ったら見つけることは難しいだろう。


「待って!・・ありがとうございます。」

 名を聞く暇がなかったが、礼を言うとティルルを追う


策動編と剣呑な章タイトルですが、しばらくはゆったりといきます。

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