羞恥心
面白いと思って頂ければ嬉しいのですが
服がない。
下着もない。
あるといえばある。
出張帰りだったので、着替え一式入っているが、洗濯していない。
その前に寸法が違っているはず。
スリムになっているので、パンツは問題なし!
上着も9号だからダブつかないだろう。
ええい!ノーブラ・ノーパン!上等じゃないか!
「向こうの部屋にある大きなカバンの方を持ってきてくださいますか。」
「はい。ただいま。」
セエルさん(まだ呼び捨てできない・・・)の指示で侍女が部屋を出でいく。
「あの~、洗濯ってできますか?」
「はい、汚れものでしたらこちらでお預かりいたします。」
下着は自分で洗いましょう。
「お願いします。」
「いちいちお礼を言われませんように。」
釘刺されちゃったよ~
「はい・・・すみません。」
「その言葉も必要ございません。」
「はい。す・・・」
持ってきてくれたカバンを開ける。
着替え付きで召喚ありがとう!!!
「何をなさっておられますか?」
「いえ、着替えようと・・」
「しばらく安静が必要ですので、ゆったりしたトーガでよろしいかと。」
「初対面の男の方とお会いするのに、少しはきちんとした服を着ないと失礼かと。」
(ノーブラ・ノーパンですが。)
「かしこまりました。でもこちらはあらっておきます。トーガより少しきちんとしたものであれば、失礼には当たらないと存じます。」
「では、お願いします。」
自分でどうこうできるというものではないとわかり始めてきた。
お風呂の気持ちよさとか羞恥心とか、洋服のくたびれ具合とか、旅行帰りのカバンの匂いとか、細かすぎて夢というのぞみは打ち砕かれつつある。
おっと!気を抜いたらイカン!
「それは、自分で洗います!」
ショーツとブラをひったくる。
侍女部下その1がこっちの剣幕に驚いている。
「いいえ!こちらで!」
思わずブラのヒモを引っ張り合いしてしまった。
(旅行だから1万円以上したブラなの~引っ張らないで~)
離しました。伸びたらきっともう買えない・・・
「優しくお願いします。」
小さい声で頼むしかなかった。無事で帰ってきてください。
パウダールームの横には6畳くらいのクローゼットがあった。この世界はやっぱり中世準拠なようで服は足首までの長い丈のドレスが多かった。
(これって誰のための服なの?)
いろいろ疑問はわいてくる。こういうところがご都合主義の最たる『夢』だと思うのだけど。
「にゃあ~」
「シロ!」
部屋に戻るとシロがベッドのうえでグルーミングの最中だった。
「居たんだね。無事?」
ゴロゴロ言ってくれてる。
なんだかとっても癒される。
「水は?お腹すいてない?」
シロに聞いてはじめて自分も喉が渇いて、お腹もすいていることがわかった。
「そちらが『シロ』様ですか。一緒に召喚なされたのですか?」
セエルさん、猫に様はないよ~
「そうです。」
「お水となにか猫の餌になりそうなものをお持ちしましょう。
それに神子様もなにか取られたほうがよろしいでしょう。」
「す・・・助かります。お願いします。」
「侍女長。」
部屋を出たところを呼び止められる。
「ライオリアス様。」
セエルは会釈をした。
「楽にしていい。どうだ、御子様は。」
「もう痛みは感じていらっしゃらないようです。」
「それは良かった。今は?」
「軽いものを召し上がっておられます。」
リカードの顔が動く。
「ほう。」
「取り乱してはおられません。ライオリアス様と合われる時に失礼だからとお召し物を変えようとなさいました。」
「教育はありそうだな。」
「はい。こちらとは違いますから戸惑っておられますが、理性的な方と思われます。」
「侍女長のお墨付きか。それはおあいするのが、楽しみだ。」
「ライオリアス様、僭越とは存じますが、神子様専任の指南係をお付けしてはいかがでしょうか。
わたくし共では満足に神子様のご下問にお答えすることができませんし、御子様も我々の仕事の邪魔をしているとあらぬ気遣いをなさっておられるご様子です。」
「ふむ。考えておこう。御子様が食事を済まされたら呼んでくれ。」
「かしこまりました。」