キマイラ
死にネタです。
お気を付けください。
そんなにグロではないと思いますが
「何かいます。」
私は警告した。
シロの姿勢が低くなり、しっぽが激しく動き出す。
シロの見ている方を指差す。
「そっちからです。」
動物混じりでも本物のハンターにはかなわない。
しかもシロは、獲物を自分で獲っている現役だ。
それが解るのかみんなも警戒する。
シロの喉の奥から唸り声が響き出す。
口元が上がり、牙が覗く。
しっぽの毛が逆立つ。
「フィンさん!楔を打てば、大物はいなくなるのでしたよね。」
声を潜めていう。
「その通りだ。おい!楔を早く神子へ」
フィン領事の部下が楔を持ってこちらに来る。
草むらから、蛇が飛び出て楔を持ってきた部下の喉元に食らいつく。
シロが草むらに飛び込む!
「神子様を守れ!」
「草むらか!」
「ただの蛇のはずがない!」
「おい!しっかりしろ!」
それらの叫びが一斉にあがる。
草むらが激しく動き、大きな塊が二つ絡み合って転がり出てくる。
白い毛がむしり取られて舞う。
シロが飛びすざり一旦距離を置く。
脇腹に血が滲んでいる。
シロと絡み合っていたもの───キマイラだ。
「牽制しろ!」
「神子から離せ!」
リガードさんが私を背でかばう。
ウェイ隊長達がキマイラに向かう。
それは、赤黒い毛で覆われた体を持ち、頭はライオン、体は羊のようだが蹄のある場所はふくろうの爪のように尖っている。
フィンさんの部下を襲った蛇はそれのしっぽだ。
(これが・・・キマイラ)
狂おしい光を帯びた目が沙耶に向かう。
天敵。
キマイラにとって戦神子は天敵なのだろう。
周りに目もくれず沙耶に向かって来る。
UGAAAAAAA
シロがキマイラのしっぽの蛇を咥える。
HIYAAAAA
キマイラがシロに向かって吠え立て、その前足の爪を振り立てる。
間一髪で口を離して飛び下がる。
FUUUUUUUUU
シロの息がふいごのように荒い。
「シロ!」
沙耶は呼びかける。
逃げろというのか
頑張れというのか
わからない
そうだ!
「楔はどこ?」
「ここだ!」
蛇に食いつかれて倒れた男にウェイさんの部下のゲールさんが駆け寄って、楔をひろう。
「危ない!」
沙耶の目には、シロに向いていたキマイラが突然向きを変えて、ゲールに襲いかかるのが映った。
「うわああああ!」
楔をもっている腕にキマイラが噛み付く。爪がゲールの体に突き立てられる。
「神子様・・・楔で・・・受け取って・・・」
鮮血で真っ赤に染まった楔を差し出す。
沙耶は飛びついて楔を受け取る。
キマイラはゲールを離すと沙耶に向かおうとする。
そのあいだに体をねじ込むリガードとウェイ。
「こっちだ!こっちへ来い!」
懸命に挑発するリガード。
「神子!楔を地面に突き刺せ!」
と叫ぶフェン。
沙耶は楔を両手に持つと思いっきり地面に突き立てた。
「我、ここを人種の領地となすと言え!」
リガードがキマイラの爪を剣で防ぎながら叫ぶ。
膝をつき頭上に振り上げて全身の力を使って振り下ろす。
「我、ここを人種の領地となす。」
キマイラの勢いは衰えない。
「ダメ!」
「続きだ!忌まわしき存在よ、疾く、去れ、だ。」
「忌まわしき存在よ、疾く、去れ!お願い行って!」
キマイラの様子が明らかに違ってきた。
後ずさり素振りを見せ始めた。
そこへシロが再び襲いかかる!
前足の指をいっぱいに広げ、爪を出す。
爪が金色の光を帯びる。
前足がキマイラに向かって振り下ろされる。
剣でも浅くしか傷つかないキマイラの体が引き裂かれる。
キマイラは遁走を開始した。
シロが追う。
「シロ!ダメ!」
沙耶が制止する。
シロは立ち止まると、フウ~と息を次いで、受けた傷跡を舐め始めた。
あたりは血の海だ。
鉄と生臭い匂いが立ち込める。
沙耶はせぐりあげるのを必死で抑える。
「手当を!」
「無理だ。息がない。」
蛇は毒を持っていたのだろう、フェンの部下は息絶えていた。
ゲールのほうも時間の問題だ。
止血処理をしているが、腕はちぎれかけ腹部は臓器がみえる程の傷だ。
思わず目を背けてしまう。
「フェンさん、キマイラの糞を回復薬に混ぜれば、いいんでしょう?」
「いや、それだけではさすがに」
「やってみましょう。キマイラの糞ってどこにあるのですか?」
ウェイが沙耶の肩を掴む。
「苦しむだけだ。楽にしてやろう。」
そう言うと沙耶のからだをリガードに押しやりゲールのもとに行く。
ゲールの元に跪くと耳元に囁く。
「ゲール、何か言い残すことはあるか?」
「飲み屋に・・・つけが・・・」
「バカ野郎、そんな遺言あるか!」
「やっぱり、死ぬんですかね・・・隊長・・・うまく痛くないようにお願いします・・よ?」
「ああ・・わかった。」
ウェイは立ち上がって剣を逆さに持って・・・おろした。
殺してしまうつもりではなかったのですが・・・・
こんなに早く退場してしまうとは。
戦闘シーンって難しいです。




