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猫を追いかけて異世界  作者: ふー
異世界召喚編
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13/112

旅の始まり

お読みいただきありがとうございます

 世界の地図によると、ラールヴェル帝国の奈落マレフィスクとの境界には海と面しているところがある。

 一行はその海に面している港街に向かっている。

 強大ではないが海軍もその港街に駐在している。

 港街ナッソーの近海は帝国の生活圏内であり、また近接していない国との交易の玄関口である。

 キマイラの出現が痛手になる地域なので、最優先の訪問地だ。



 季節は夏だ。だが、北にある帝国は日本の蒸し暑い夏に比べたら天国だ。

 馬車の窓を全開にしておけば風が気持ちいい。

 城外に出たところでシロは馬車から降りて、先になったり後になったりして付いてくる。

 基本、猫は持久型ではない。

 またそのうち、馬車に乗ってくるだろう。



 帝都ボスラでの騒ぎですっかりのぼせてしまった沙耶はやっと落ち着くことができた。

 (優勝パレードみたいだった。)

 もちろんパレードの主役になったのは初めてだ。


「向こうの世界でこのようなことはご経験が?」

 リカードさんが馬を寄せてくる。


「いいえ。ありません。初体験です。」

 戦神子というものに対する期待をひしひしと感じた。


「そうですか。堂々としていらしたので、安心しました。」


「某国の皇太子のご成婚パレードを参考にしました。」

 張り付いた笑顔で手を振り続ける。

 大変な職業です。

 精神的に。

 あの中で寝ていたシロは大物です。


 道は綺麗に石畳が敷かれていて、馬車の振動も少ない。

 だが、現代に生きてきた身としては城を出た途端に道だけというのは寂しく感じる。

「帝国の北から南までどのくらいかかりますか?」


「馬で一ヶ月ほどです。東西もだいたいそのくらいです。御子様がいらしてから広がっています、」


「そんなにすぐ効果って出るものなのですか?」


「出ます。御子様が世界に馴染んで、皇帝陛下と契約をなさればもっと広がるでしょう。」

 話が出たので以前から気になっていることを聞いてみた。


「契約ってもしかして結婚とかですか?」


 リカードさんは笑う。

 横で聞いていたレシュも笑い始める。

「神子は男の可能性もありますし、年回りが合わない場合もありますから、契約=結婚ではありません。」


「侍女の言うとおりです。契約とは国に対し加護・・・奈落マレフィスクとの境界を維持することと出産のリスクを少なくすることと引き換えに、皇帝と同等の権力を約束するというものです。」


 皇帝と同等の権力って実感が湧きません。

 小市民には分不相応です。

「そんなものなくていいです。普通に暮らしていければ。返って肩がこりそう。」


 そう呟くように言うとレシュが呆れたようにいう。

「神子様のこと時々わからなくなります。自分の思い通りになるのはすごいことだと思うのが普通なのですが。」


「贅沢をすることが許されるということは、それなりの責任と仕事をしているってことだと思っているのです。責任が重くなるのはいやだなぁと、現実逃避です。」


「現実逃避かどうかは置いておくとして、ノブレス・オブリージュというお考えは皇帝陛下とおなじですな。あなた様なら陛下の心の闇を払ってくださるやもしれませんな。」


「皇帝陛下・・・まだお会いしていないのですが、ご挨拶しないで良かったのですか?」


「戦神子様に拝謁しない無礼を許していただきたい。」

 リガードさんが馬上で頭を下げる。


「いいえ!無礼なんてとんでもない。むしろこちらからご挨拶にうかがったほうが良かったのではないかと。なにしろ、シロ共々お世話になっているのですから。」

 沙耶は逆に恐縮する。



 隊長の馬がやってくる。

「神子様お疲れになったでしょう。」


「いいえ、馬車に揺られているだけですから。」


「そろそろ、中食にいたしましょう。」


 レシュはご飯作りを手伝いに行っている。

 沙耶も手伝おうとしたのだが止められてしまった。

 良い匂いが漂ってくる。

 お腹がなる。

 真っ赤になって周りを見回すが聞かれていなかったらしいので、ほっとした。

 乗っているだけだったのだが、体力は使っているらしい。

 そういえば、こっちに来てから運動らしい運動はしていなかった。

 太る体質でなくなってうれしい。

 城の中だけだったので、今日が本格的な異世界デビューだ。


 トレイに全粒粉のパンと温野菜と肉が乗っている。


「ご相伴よろしいですか?」

 リガードさんが近づいてくる。


「良かった。レシュも一緒にと誘ったのですが、断られてしまって。

 一人で食べるのは味気ないですから。」


「それはお声をおかけしてよかった。」


「できれば、隊長さんもご一緒してくださると嬉しいのですが。」


「ウェイ隊長を?何故とおききしても?」


「そんなに深い意味はないです。

 旅をする中で、してはいけないこととかがあれば教えていただこうと。」


「神子様はまじめな方ですな。

 そう頑張られなくともよろしいですよ。

 旅を楽しむくらいの気持ちで巡視なされればよろしい。」


「では、なおのこと旅行の諸注意を聞いておいたほうが、気分良く楽しめます。」


「そして神子様はなかなか頑固なところがおありだ。」

 笑って言うので怒ってはいないらしい。


「すみません。

 旅行好きだったのです。

 地元のスーパーに行って買い物したり、その土地の人に美味しいお店を教えてもらって食べに行ったり。

 ちょっと思い出して浮かれていまいました。」


「そうですな。この世界での初めての旅行なのですな。

 ではウェイを呼びましょう。」



 ウェイが隊員たちの輪から外れてやってくる。

 其の巨躯は、食事の乗ったプレートがおもちゃに見えるほどだ。


(あれ?食べるものが違う?)

 プレートに乗っているのは、煮込みのようなものがのっている皿のみだ。


 聞いてはいけない気がしたので、あとでレシュにでも聞こうと思い、

「お呼び立てしてすみません。

 お仲間との息抜きの時間に申し訳ありません。」


「いいえ。とんでもございません。

 神子様と食事をともになど、こういう場でもなければ、動物混じり(ミクスチャー)の我々には考えられないことですから。」

 そう言うとどっかと腰を下ろす。


「港街のナッソーというところに向かっていると、聞きましたが何日位で着くのですか?」


「ナッソーは帝都からそう遠くないので、天候に恵まれれば一週間で着きます。」


「やっぱりそのくらいはかかるのですね。」


「おや?もう嫌になりましたか?」

 リガードが揶揄する。


「そんなことありません!・・・・いえ、私のための荷物がほとんどなので、悪いなあと。」


 リガードとウェイは顔を見合わせる。

「そのようなことをおっしゃれた神子様は、おられなかったはずですよ。」


 当然だ。

 神の子として召喚されたのだから人にかしずかれて当然だと思うはずだ。


「そんなことはないと思いますよ。」

 いま召喚されている戦神子は現代人としたら、身分制のない社会から来ているはず、面映ゆい気持ちでいるに違いないと、我が身を引き比べて思う。


「なるべく夜は宿を取れるようにしておりますので、ご辛抱を。」


「大丈夫です。サバイバルツールも持ってきましたし。」


「サバイバ・・・なんとかとは?」


 指を広げて、

「これくらいの大きさの中にハサミとかナイフとかドライバーとかヤスリなどが・・・え~と・・入っている?ものです。」


 二人共よくわからないという顔をする。

「持ってきます。」


「おお~」

「これは!」

 差し出していろいろ出してみせると、感心した声をあげる。


「これは、隠器ですな。」


「そのようだな。」


 その言葉は、さやの方が知らない。

「オンキってなんですか?」


「隠し持った武器ということです。」

(武器ではないけど・・・飛行機に持ち込み禁止だから武器か)


「いや、良いものです。必ずもって歩かれるとよいでしょう。」


「確かに。」


「そうですか?まあ、いざと言う時は役に立ちますから。」

 本当に役にたつ日が来るとは、その時は思わなかった。



「レシュ。昼ごはん何食べた?」

「えっ?」


「わたしやリガードさんと違うものでしょう。」


「そうですよ。身分の差がありますから。」


「そうか~。やっぱりね。ウェイ隊長が食べていたものでしょう?」


「そうですよ。雑穀と肉の煮込みです。」


 モノクロのマカロニウエスタンを見たことがあるが、カウボーイがブリキのコップでコーヒーを飲み、チリビーンズのようなものをブリキの平皿で食べる。

 ものすごく美味しそうにみえた。

 ウェイ隊長のお皿もそのぐらい美味しそうだったのだ。

 食べてみたいなんていうのはわがままだろうな。

 そのための荷馬車だもの。

 一般人だが、そのくらいはわかる。

 食事の差が、自分をこの世界から疎外している気がするのは気のせいだ。

 それに自分の食べた料理も、現代人からしてみれば、豪勢な料理とは言えなかった。

 せいぜい、安いお肉の野外バーベキュー程度だ。

 固くて筋張っていた。

 シロは匂いを嗅ぐと、何処かへ行ってしまった。

 自給自足するつもりなのだろう。

 ますます野性味がましてくる。


リガードさんはわからない言葉が出ても基本流します。

大人な対応です。


少しづつ読んでくださっている方が多くなってくださるのが、と~~~~~~~てもうれしいです。

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