第7章03 お仕置きに行きますか(中編2)
閉鎖都市ラグーンへいく途中だった
香苗が「お客様みたい」と言うと
馬車は止まった
「どうしたの?」
すでに、香苗を含む4人は馬車から降りて居た
そこに居る7人の魔族そして・・・
「アンタもグルだったわけね」
送迎のために来た2人の魔族もそこに加わって居た
「残念だが、あんたたちはここで亡き者になってもらう」
香苗以外全員が臨戦態勢になる
「ちょっと聞かせてもらってもいいカナ?」
「なんだ、冥土の土産に応えてやろう」
「ちょっとしたことよ」
光沢のない、黒い衣服はなんとも言いがたい神々しい姿の香苗
「ラグーンの市長の命令?」
「はっ、あんな奴の命令なんて聞けるか!気づいて居たんだろ?」
「まぁ〜なんとなくね・・・一応確認よ・・・そう、残党かぁ・・・」
フムフムと、納得したように頷く
「うん、OKとりあえず、ラグーンとの戦にはならないことがわかっただけでも、収穫」
ニコリと笑う香苗
「はっ、そんなゆうちょなこといってられる状態か?!」
「ん〜まぁ〜なんとかなるでしょ。4対9だけど・・・一人につき2人相手にすればいいわけだし・・・」
「こちらは魔族だぞ。何を根拠に!」
「こっちだって、精霊憑きが2人聖獣1その他・・・私だけど1居るからね」
ドッコイドッコイよ
と、言い放つ
「その余裕が、仇になるなよ!いくぞっ!」
その合図の前に、香苗が魔術を放っていた
地中から衝撃が走り、走り出そうとしていた魔族の一人が飛ばされる
「バーカ・・・そんな、『いくぞ』なんていったら、いつ来るか解っちゃうじゃない・・・」
呆れたように呟く
飛ばされた魔族は自慢の羽で宙に浮く
「キサマァ!!」
それを合図に、残りの者も突進してくる
香苗は、片手に剣を抜刀し構える
4人に向かって魔術波が放たれ、香苗は結界魔法で受け止めた
「セリス!」
後ろで2本の矢を構えていたセリスが矢を放つ
一人の魔族の右肩と左足に受けた矢はその場所を恰もなかったように
消滅させた
「ぐあぁああああああっ!」
勢いあまって、砂煙を上げながら転げる
そんな仲間も気にも止めずに、香苗に長剣が振り下ろされる
すぐさま右手に持っていた、長剣で受け流すと背中越しに
左手に蓄えていた魔力を魔族に放つ
ドンッ「ごはっ・・・」
鋭利な矢のようになった魔力の塊に、その魔族の背中に空洞が出来た
しかし、その時の香苗に隙が生まれた
一人だけならよかったが、その後ろにもう一人いた
―香苗!
剣を下に下ろしていた状態だったため、剣を受け止める体制になる
「主!」
それに察知したように、フェンリルの投げるナイフが相手の手の甲を貫く
貫いたナイフの剣止めに手の甲が当たり勢いあったため
その魔族は、左回転しながら転がり落ちた
まるで、その場でダンスを踊っているように
「サンキュ、フェンリル」
「い・・・いいえ」
フェンリルは、サンキュの意味が解らなかったらしいが、
礼を言っているのだろうと受け止めた
これで、残り7人・・・
楽勝だと思っていたが・・・
やはり、4対7はきつい・・・
ここで、封印を開封すると多くの敵を作ってしまう・・・
魔族自体、光の民を良い用に思ってはいない
それどころか、敵対心バリバリなのだ
それだけは避けたかったが・・・
「仕方がない・・・か」
封印を、解除しようとしたとき
なにやら、遠くから馬の音が聞こえ出した
リーダー格の男が、苦虫を噛み締めるような顔をする
「クッ・・・予定外の邪魔が入った!ここは引くが、
おまえの命はいつも狙われていることを覚えて置け!」
そう言い放つと、煙を巻いたように魔族たちが消えていった
皆、武装を解くと遠くから聞こえていた騎士らしき人物が見えてきた
胸にある紋章・・・
「ラグーン騎士か・・・」
ボソリと香苗は呟く
馬を止め男の一人が
「おまえたちか?ここで魔術を使ったのは!」
「えぇ、賊に囲まれたので仕方がなく」
穏便に済まそうと、嘘を付いた香苗
まぁ、嘘ではないのだが・・・
「賊とは、魔族か?」
「えぇ、9名ほどの」
「そうか・・・我々も、見回っているのだが・・・
何か取られたわけでもなさそうだな」
「えぇ、命が取られそうになっただけです」
「そうか・・・私は、ラグーン第1騎士隊長アフル・スーザーだ、
私の名前を言えば、謝罪金が貰えるはずだ」
「これはどうも、名乗られたからには私も言わなくては・・・
ディスニー帝国近衛隊長 兼 第5特務隊隊長の
セレネ・アキータです。お見知りおきを」
「せ・・・セレネとは・・・あの噂の・・・」
「黒い魔女とか、死神とかいったら、殺しますよ?あ・・・失礼、
打ちのめしますよ?」
どっちも同じような気がすると、後ろにいた同行者たちが思った
「こ・・・これは失礼・・・ラグーン市に、何か御用で?」
図星だったのだろう、声が裏返っていた
「えぇ、市長にお話が・・・先ほどの、魔族と・・・」
意味ありげに、目を細め
「ミラージュ妃について・・・」
その言葉に、目を見開き
「解りました。私が取り次ぎましょう、ラグーン市までご一緒いたします」
「お願いします」
ニコリと、笑みを浮かべる香苗だった
さぁ・・・どんな人なんでしょうね。ラグーン市長殿・・・
魔族と、ミラージュの件も一緒に片しちゃいたいなぁ