第7章02 お仕置きにいきますか(中編1)
こういうとき、お迎えが来るって言うと
一般民は、貸しきりバスとか自家用車とかだろうけど
富豪でも、リムジンとかベンツとかそういう類がいいなぁ
と、香苗は思うが・・・
ここは異世界、エンジンも開発段階で大きいし車サイズなんて
まだまだ、とりあえずメルト・バルスキー(現バルン州ミッカド市長)
にエンジンの構成などをある程度教えて置いたから
いいのが出来るはずである・・・魔術を使ったクリーンなエンジン
貴重な魔術師を使わずに馬も使わずに移動が出来る車が出来れば
産業発展の極めに成るだろう。まぁ、一応
私は、戦闘機エンジンの整備員だったからそういう知識も豊富だったので
教えておいたのだけど・・・まだ、完成したと言う声がかからない
と言う事で・・・いま、まさに!馬車と言う代物に乗っている。
コトコトと、車軸が回る音を聞いていると眠くなる・・・
「・・・暇・・・」
香苗の血液型は『B』なので、落ち着いていられないのだ・・・
むわぁ〜〜〜っ!もーだめ!限界!
馬車の上にある通気口を全開に開け顔を出す
「すみません、もう限界なんで散歩して来ます」
「は?ちょっ」
シュッという風の切る音と共に香苗は舞い上がった
それを平然と見ていた、メリアとセリス、そしてフェンリル
実は、この3人だけ連れてきた
残りの者は、何かしら理由を付けて引っ込ませたのだ・・・
敵陣地に行くのだから、卵を産み付けられちゃ困るしね
唯一精霊憑きには卵を産み付けられないのだ。
もちろん、聖獣にしても同様である
一人に一つしか器が無いため、とりあえず自衛手段を講じるためにも
精霊憑きじゃ無い者は家に置いてきた
「あの人は・・・全く落ち着かない・・・」
メリアがぼやく
「まぁ、御姉様ですからねぇクスクス」
セリスが笑いながらいった
「・・・主様・・・」
呆気に取られるフェンリル
馬を操っている魔族も卵を産み付けてやろうかと思っていたが
メリアはともかく、セリスから湧き出る聖の気で近寄れなかった
わざと少しずつ出して自分でも自衛手段を行っていた
そういう、冷静且つ賢い頭脳を持っているのがセリスなのだろう
フェンリルも同じことをしているのだが
「はぁ〜きもちいぃ〜・・・」
実際、こんな大空を飛ぶなんて考えたこと無かった
私が整備した戦闘機が大空に飛ぶところを見て
羨ましいと思ったことは、何度もある
でも、唯一思う事は『無事に帰ってきて』と言う願い
戦闘機を誘導して、見送るときの敬礼
パイロットもそれに気づいていつも敬礼してくれる
そして、いつも笑顔だ
だから、帰ってきて欲しい。私の仕上げた戦闘機と一緒に
そんな昔のことを思っていた
「私が、大空に飛ぶなんてね・・・しかも、飛行機と言う
機械じゃぁなくて、私一人で飛ぶなんてね・・・」
独り言を聞いていた、シエラが問いかける
『香苗?あんた、元の世界で何してたの?』
「あれ?言わなかったっけ?」
『いや、自衛隊に居たって事だけしか聞いてないよ』
「そっか、私戦闘機のエンジンを整備してたの。
F−15Jっていう、双発ジェットエンジンのね」
『F−15?聞いた事ないわね・・・私の頃は、零式戦闘機とか
だったから・・・その、ジェットエンジンって何?』
「あはは・・・」
そこからかいな・・・
説明してあげようと思ったとき
「―!?」
何かに感づき、前方を直視する
「・・・鷹?・・・いや、使い魔ね・・・」
きっと、私達の偵察にでも来たのだろう
その場に、滞空しながら考える
(どうしようか・・・ん〜、危害を加えようとしてるようにも見えなくもない・・・ん〜)
とりあえず・・・
香苗は、手に魔力を込める
その大きさは、ハンドボールぐらいの大きさだ
「『汝、森の精霊と契約を告ぐものなり・・・周囲を照らし、
隠れる物を照らし出せ・・・≪Suche≫』」
透明な、魔力の塊が緑色に染まるとそれを放り投げた
落下速度を上げながら、地面に設置すると
雫のように波紋を作り出した
それを落としながら思うことがある・・・
ここの魔術は、ほぼ地球の言語を利用したものが多い
今回のも、ドイツ語・・・だったはずだ・・・
そこら辺も何か関係あるのだろうか・・・
ふと思いながら探索を続けた
(・・・居た・・・2・・3・・5・・7・・・7人か・・・)
その時、フェンリルから念話が届く
(『香苗様、いま微かに魔力の波動を感じましたが・・・』)
(あ、それ私。ちょっと不穏な動きがあってね、探査魔法使ったの
ばれた?)
(『微かですが・・・聖獣並みの感覚じゃなければわかりません』)
(そ・・そう、あと数キロのところに魔族らしいものが潜伏してるから
とりあえず、全員起こしておいて。どうせ寝てるんでしょ?)
(『・・・その通りです・・・起こしておきます』)
(私も今戻るわ)
(『了』)
帰ってきたものの・・・
「・・・起きてない・・・」
「すみません、主・・・何度も起こしたのですが・・・」
「はぁ〜〜っ」
長い溜息の後
「こりゃぁ、殺しがいがあるもんだ・・・」
ド強いさっきを放つ香苗
ビクッ!と跳ね起きるメリアとセリス
「姉「さん」様」
何がなんだかわからない様子の二人
「・・・フェンリルが何度も起こしたっていってるけど・・・
何で起きなかったのかなぁ〜」
「そ・・・それはぁ〜」
「あの・・・ですね・・・御姉様」
あわわわっと、いいわけじみた事を言う前に
「いいわけ言うのかな?」
「「ごめんなさい」」
「よろしい、起きて早速なんだけど・・・お客さんみたい」
ニコッと笑う香苗
それに気づき、剣を握るメリア
そして、弓矢を取るセリス
「セリス、これ上げるわ」
差し出すのは、私の愛用していたアーチェリー
「え!でもそれは・・・」
「いいの、もうちょっと時期を待ったほうがいいと思ったんだけどね
いい機会だし、使って見なさい」
「は・・・はいっ!」
私のアーチェリーに持ち変える
「軽い・・・」
ふふっ、と笑う私
さて・・・どんなもんなんだか・・・