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第5章06 初めての車窓から置き土産



囁くように風が舞う

ひゅーぅっと

そこから、3人の人間らしきものが

市長の屋敷へと歩いて来る

3人の内2人は帯剣しているが

もう一人はとても幼い

子ずれなのだろうと誰もが思った

「おい、ここから先は市長様の御屋敷だ!」

門番が私に言う

そうでしょう、だってその本人に用があるのですから

「お願い」

私がそう呟くと、メリアの姿が一瞬にして消えた

いや、門番の背後に

枯れた太めの木を折るような音が2つ鳴り響いた

そのまま歩いて行く

硬直しているように動かない門番

数メートル離れてから地に伏せる音が聞こえた


「おい、門からの定時連絡がないぞ」

一人の通信士が言った

通信士と言っても、音を伝える手段がないため

屋敷まで伸びた紐を引っ張るという原始的な通信手段しかない

だが、その定時連絡がないのだ

香苗が倒してしまったから

「ちょっと見てこい。どうせ寝てるんだろう」

「分かった」

そう言って、待機所を出るとそこには一人の女の子が居た

「なんだ?迷い込んできたのか?ほら、ここから出た、で――」

その後、男が声を発する事もなく意識を暗闇に放した

メリアの手套によって

「おい、どうしっ!」

倒れていた同僚の姿を見て抜刀しようとするがそれも遅く

彼女の抜刀した柄の部分によって次々と倒して行く、圧倒的な強さで

一人の女性によって待機所に居たものすべてが意識を失った

そして、その前を歩いて来る香苗に合流する

「殺してはないわね?」

「・・・はい・・・」

「よろしい」


その数分後の屋敷内では、何が起きているのか分からず慌てる姿がたくさんあった

キィン、ガシュッ

切り刻まれる音が廊下に木霊する

「な・・・なにが・・・」

一人の騎士が翻弄する

コツコツと誰かが近づいてくる

窓から差し込む月の光がによって

相手の姿が見えてくる

黒いブーツにズボン、そして黒い服

黒い髪、黒い瞳

しかし、手や首などの肌はとても白かった

「お・・・おまえは・・・誰・・・なんだ」

その容姿は、とても神秘的な・・・ものだった

「・・・セレネと言います、市長さんはそちらですか?」

その男の後ろにあるドアを見つめる

「く・・・来るな!こ・・・ここから先は、誰も入れさせない!」

ガチガチと震える手で持つ剣はとても弱弱しく見え何か空しく思えた

「そんなへっぴり腰では、殺すにも殺せませんよ?」

そして、私はその人を無視し通り過ぎるとき

目を細め

「・・・戦の前でビクついている餓鬼が、えらそうな事ほざくな」

香苗はその部屋へと入っていく


「だ!だれだ!・・・セレネ様・・・こんな夜遅く・・・どうされたんですか」

ほほ〜、ここまで平然を保てますか

殴りこんできたんですよ?

さすが肝が据わっています

「いえ、ちょっと近くを寄ったものですから・・・少し御話をしましょう」

そう言って私は、近くのソファーへと座った

とりあえず話題を作らないといけませんよね

「御話・・・ですか?」

「えぇ、前市長の事です。独自の調査で分かった事なのですが」

香苗は手を合わせさする

彼女には、何か考え事をするとこういう行動になる癖がある

「どうにも不可解な事がありましてね・・・」

「不可解ですか?」

「そうです・・・選挙前に事故死・・・と言うのは、何かと不思議な事があるのだなぁと・・・思いましてね・・・当時の調査をしていた人達にお会いしようと考えて行ったのですがね・・・」

「・・・で?どうでしたか?」

「全員白骨化してました・・・死因はいろいろ、圧迫で死んでいたり

数箇所の刺し傷による出血死、絞殺による窒息死もありました・・・」

「ほう・・・」

「で・・・おかしいと思うんですよ・・・なんで、関係者殆どが死んでいるのか・・・死体を何故そのままにしているのか・・・変じゃありませんか?」

「そういう偶然もあるし、死体の方は気づかなかったのでしょう」

まだしらを切りますか・・・いい度胸です・・・

「で・・・やっと見つけたんです・・・証人とやらを」

ピクリと眉を動かす

眉、動かしましたね・・・それは、何かまずいと思ったと考えましょう

私が求めていた行動です

「そ・・・その証人とやらは?なんて」

「その子は、市長がジュール一家と結託し殺しを依頼したと・・・

そう言っているのですよ」

ニヤリと笑う私

どうも、こういう展開が好きで・・・

「バ・・・・バカな事があるか!うそだ!そんな話は絶対うそだ」

「そうですか・・・ちょうど、その方もいらっしゃるんですよ?

そうですよね?召使いさん」

ドアの方へと言い放つと、ユックリと扉が開き5人の召使いが入ってきた

「な・・・お前たち!何をしている!早く出て行きなさい!」

あせっていますね

その焦りが、ド壷へと導くんですよ

「申し訳ないのですが、その方が証人です・・・どうぞ御話ください」

「私は・・・あの、選挙戦の前日に・・・ジュール一家の幹部ら

が、市長の所へ来て「俺たちに協力してくれれば、お前を当選に導いてやるよ」って・・・そう言っていました」

あせりのあまりなのか、バンと机を叩き立ち上がると

「何を言っているんだ!貴様!”奴隷”の分際で何をたわごとを!」

言いましたね・・・重大発言言いましたよね・・・私聞きましたよ?

「おや?奴隷ですか?知っていますか?ディスニー王国では奴隷制度の禁止と言う法律があるのを・・・先ほど・・・市長は『奴隷の分際で』でいいましたよね?」

「そ・・・それは言葉のあやで・・・」

「そうでしょうか・・・実は、私がここに来た時、隷属の印を押された

この子たちがいたのを見ましてね・・・解呪して置いたのですよ」

「なっ・・・」

「そして、貴方を葬りさるために・・・ご協力をいただきまして・・・」

そういうと、一人の召使いの手には黒い手帳

残りの4人には、書類などが手にあった

「証拠集めをしていただきました・・・それでも・・・言い逃れしますか?」

「し・・・知らん!そんなもの!俺は知らんぞ!」

おやおや・・・まだ、しらんぞんぜんですか・・・

仕方がありません・・・

「・・・本当に、脳味噌腐った野郎だな・・・お前は」

先ほどとは全く違う、凍るような冷えた空気に変わる

「奴隷を人身売買で買い、尚且つ賊に前市長を殺させ

挙句の果てに、その賊は野放し。しかも、税を上げ

市民に批判を浴びている・・・そんな市長務まるのか?」

「くっ・・・・」

「国はねぇ・・・市民のためにあるんです・・・国のためじゃないんですよ

それは、市も同じこと市民の事を考えなければ・・・誰も付いてこない

誰もが知っていることです・・・ですがっ」

立ち上がり、市長に指をさす

「飾りの市長なんざ必要ないね!」

「き・・・・きさまぁ!!言わしておけば!」

刹那

国王軍の数十名が部屋に押し入ってきた

フェンリルと一緒に

そして、紙の様なものを市長に付きつける

「ブブカ・アルデニーロ市長、殺人強要及び収賄・横領・奴隷禁止法違反の

容疑として貴方を逮捕します!」

「なっ・・・俺は何もしらねぇ!しらねんだ!!はなせっ!くそぉ!」

連行されるブブカ

「なんか、いいところもって行かれた気分ですよ、隊長」

そこに居るのは、近衛騎士団長のマルチダだった

「そこが俺のいいところだ」

「でも、隊長ご自身で来るなんてめずらしいですね」

「あぁ、ティニア王が戻られたんでね。君たちを迎えに行くついでに

この逮捕状を渡してくれと言われてね。来て見れば」

外の奴ら殆どがメリアがしとめてくれていた

といっても、気絶や骨折などの致命傷に当たらない程度に手加減をして

「こうだからなぁ・・・なんか、唖然としててよ。そうしたら、こいつが『どうぞ、主がお待ちです』なんて言うじゃねぇか・・・まったく、お前らどうにかしてるわ。そうそう、新しい市長なんだがな。お前に一任するとよ!」

「わ・・・私がですかぁ!」

「あぁ、これが任命書だ」

一枚の紙を渡され見ると、任命欄には何も書いてなかった

「そこに誰でもいいから名前書きゃいい」

いいやつですか?

ん〜確かに一人います・・・ですが・・・うむぅ〜

「確かにいるのですが・・・まぁいいでしょう。その任承ります」

「オウ!頼んだ!こいつは俺が何とかする。早く帰ってこいよ

王様がうずうずして仕方がないらしいからな」

「分かりました」


そして、数日後の市長任命式

「メルト・バルスキー、貴殿を、バルン州ミッカド市の市長に任命する。

ディスニー王国 国王ティニア・ディスティーニ 代読・・・おめでとう」

「ありがとうございます」

ワァーーー

市民全員が盛大な拍手と喝采を上げていた

こうして、ディスニー国初のダークエルフの市長が誕生し

それが話題になり、活気付くと共に

鉄鋼製品の価格を値下げ等をし仕事に飢える人も減っていった


こうして、私たちの一回目の旅が終わった

何事もなく・・・終わるのがいいのだが・・・

そうも言っていられないのもこの世界の特徴なのかもしれない



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