第5章04 なんか陰険な奴やな
市長の屋敷だと言われるところに着く
「・・・なんか、趣味悪いね・・・」
そこはまるで、魔王の屋敷のように暗い雰囲気に包まれていた
「なにか・・・あるような気がします・・・」
フェンリルが呟く
「メリア・・・セリス・・・ここで留守番!」
「えーまたですかぁ〜」
「私も行きたいです・・・」
二人とも行きたがっていたが、何かあっては遅い・・・
「まだメリアもセリスも若いの・・・だから、大人しく待ってて
そうね・・・フェンリルと対抗出来るぐらいの技術を持ったら一緒に行くこと許すわ・・・でも・・・まだ――」
香苗はその屋敷を見る
誰もが入る事を拒絶するような建物
嫌な予感がする・・・
「まだ・・・こういう所に入るのには早すぎる・・・」
「分かりました・・・セレネ御姉様」
「分かったわ、姉さん・・・フェンリル!貴女には、絶対に勝つからね!」
ビシッと指を刺してライバルだ!と言っているように
「いつでも御相手いたしますよ、メリア様」
無表情のフェンリルだったがほんのり微笑んでいるようにも見えた
「フェンリル行きましょう・・・メリア、もし何かあったら
剣を抜きなさい、きっと何とかなるでしょう」
「はい・・・姉さん」
そこに入ると、召使いが出迎えてくれた
「ようこそ・・・バルン州ミッカド市へ・・・」
すぐに香苗は気づいた
この子が隷属の印が押されている事を
(ここまで・・・汚染されていたのね・・・)
と言う事は、この市長と言う奴もきっと・・・悪ね・・・
しかも、この子の腕や脚には青いあざが見て取れた
「あ、君、ねぇちょっと来て・・・ごみが着いてるわ。取って上げる」
私はその娘の額に手を置いた
隷属の印が一瞬にして消えると、声を上げようとした彼女を魔術で止めた
彼女の心にそのまま伝える
『貴方に危害を及ぼすことはしません。そのまま、頷くだけでいいです。
聞いてください、いいですね?』
驚いていたようだが、すぐに冷静を保ってくれた
こくりと頷く
『私は、ディスニー王国 近衛士のセレネです。ここには、
視察で訪れました。貴方以外に、奴隷として扱われている人はいますか?』
こくりと頷く
『そのまま、右手で数字をあらわしてください。』
そうすると、親指以外が伸ばされた
『4人ですね?』
こくりと頷く
『貴女の、隷属の印はもう無効化されましたが、まだ少し泳がさせてください。もし、耐えられない罰を受けようとなったら』
私はいつも持っている非常用のペンダントを渡した
『これに、「助けて」と念じなさい。そうすれば、少し遠いですがディスニー王国の保護施設まで送ってくれます。いいですね、耐えられないときのみ使うんですよ・・・でなければ、こいつを逮捕出来ません・・・こいつが許せないのなら協力してください?できますか?』
強く頷いた
『貴方たち以外の者を助けたいのですが・・・周りをうろつくわけには行きません・・・そのペンダントを奴隷として扱われている者の額に当てなさいそうすれば、術は無効化されます・・・その後、念じれば言葉を返さずに会話が出来ます・・・盗聴の恐れがあるので、それを使いなさい・・・私との交信もそれで出来ます。何かあったら私の事を念じなさい。額につけて会話が終わったら、相手の手の甲に置いて「友よ」と念じなさい。そうすれば、刻印が出ます。危機の時はその子も保護施設に送ってくれます。転送されると言う事を知っているのは貴方だけにしてください。いいですね。トラブルを防ぐためです。つらいでしょうが・・・我慢してください・・・』
頷くと私はすぐにその手を離した
「ごめんなさい、はい取れた。」
「申し訳ございません、御手数おかけいたしました。ご主人様はこちらです・・・」
先ほどと違い、見違えたような瞳になっていた
「ありがとう・・・」
そして、彼女が誰も聞こえない声で呟いた
「お気をつけて・・・」
私はそれに頷くと謁見室に入った
そこには、エグゼクティブチェアにずっしりと座った
いかにも運動していませんと言っているような体格の大きい男が座っていた
「ようこそ、・バルン州ミッカド市へ。市長をしております、ブブカと申すものです。どうでしたかな?街の方は・・・」
「いいとはいえないようですね・・・先ほど、手厚い歓迎があったところです」
「ははは・・・申し訳ない・・・ジュール一家には少し手を焼いておりましてね・・・」
いけ好かない・・・やつだ・・・
「そうですか・・・少し滞在したいと思っています。」
「是非そうしてください。でも、夜中の街は危険ですので」
「ご忠告ありがとう、では・・・」
すぐに踵を返し、部屋を出た
(『香苗様・・・あの子は?』)
(そう・・・あの子も犠牲者・・・何か匂うわね・・・フェンリル・・・
隠密に調査して)
(『御意』)
すぐに、フェンリルの姿が消えた
門を出ると、疲れきったメリアの姿あった
「メリア!何があったの!」
すぐに、抱きかかえ治療魔法をかける
緑色に光る香苗とメリア
肩で息をしていたのが段々と収まってきた
「姉さん・・・ちょっと張り切りすぎちゃった」
「何があったか話して見なさい・・・」
「実は・・・」
1時間前
「また、留守番ですね・・・」
「そうだねぇ・・・!」
4・5人がメリアの周りを囲んだ
「誰!私たちに用?」
すぐに剣の柄をつかんだ
「貴様は、ブブカの手下か!」
「違うわ!勘違いしないで!」
相手もメリアも臨戦態勢に入っていた
「では、何者だ!」
「あんた!人を訪ねるときは自分から名乗れって言われなかった?!」
セレネ姉様直伝!
「貴様からなのれっ!」
いきなり、飛びかかってくるとすぐに剣を抜いて交わした
セリスも結界を張り誰も入れさせないようにする
金属が弾く音が鳴り響く
「クッ!女の癖にやりやがる」
「女だからって舐めるなよ!」
先ほどとは違う低めのアルトボイスの声で言った
「女だからって手加減はしねぇぞ!」
「ふっ、莫迦が!」
その時、剣が真っ赤に燃えあがった
「なっ!なんだ!!」
相手の剣はまるで溶けるようにグニャリと曲がっていた
鉄が真っ赤になって
「ま・・・魔剣かっ!」
「そんなもんじゃないさ・・・魔剣ではないな・・・残念ながら」
そして、燃え盛る剣を相手に向けると
「まだやるのか?」
「くっ」
もう一人の法を見ると、結界を破ろうと必死になっている男たちがいたが
まるで歯が立たないように見えた
男は、口笛を吹き何か手で合図をしていた
そうすると、皆散るように逃げていく
「くそっ!」
そう言って逃げて行った
「そう・・・そんなことが・・・」
(きっと・・・レジスタンスね・・・少し興味がある)
――彼らを使うって事?
(戦力はあったほうがいい・・・)
「ねぇ、メリルその奴らどっちに行ったか分かる?」
「たぶん、あの山のほうだと・・・」
後ろを振り向くと、まだ夕暮れだと言うのに松明の様な明かりが見える
(あそこね・・・)
フェンリルを抜かした3人が向かう先は、レジスタンスのアジトになった