第4章02 大丈夫、彼女強いから
(どう、フェンリル)
(『まったく問題ありません』)
(そう、やばくなったらすぐに呼ぶのよ)
(『御意』)
エントランスへ出ると、飛行術を展開し飛び上がる
割れた石から魔力をトレースし、目的地へと着地する
「フェンリル、状況は?」
「まったく持って問題ありません」
ぐったり倒れているメリルを見ると後ろ手で縛られている
首には封魔拘束具が取り付けられていた
(苦しかっただろうに・・・)
古代技術を使った封魔用の拘束具は普通の人には、特別な工具が無い限り解呪できない代物だが
私にとっては、まったく問題ないものだった
それに、手をかざすと鍵が開くような音と共に地面へと落ちた
――魔力の消耗が激しいわね・・・香苗
(うん・・・)
彼女の額へ手をかざし魔力を注ぐ
注いだ魔力のせいなのか、彼女の体が輝く
「うっ・・・」
やさしく包み込むような感覚に浸る彼女
「フェンリル様・・・」
なぜ、フェンリルを呼んだのかが私には解らないが・・・
「がんばったね、ゆっくり休みなさい」
と、優しく頭をなでる
心が休まる声に反応して体の力が抜けていく
そして、可愛い寝息を立て寝てしまった
(これで大丈夫)
「さて・・・と」
後ろで未だに戦っているフェンリルに渇を入れた
「ちょっと、フェンリル!いつまでやってるの!帰るわよ!」
汗ひとつたらさずに、打ち合いをしている
「奴等お灸を添えておきますので、お先にお帰りください」
「殺しちゃだめよ」
「御意」
はぁ、あきれた顔をしてメリルを抱きかかえ移転魔法で王城へと帰った
翌日
メリルがおきた雰囲気を感じた私は、寝かせていた私の部屋へと入った
「起きた?朝ごはん食べられる?」
「・・・ここは・・・」
「ディスニー城よ。ここは私の部屋」
彼女が寝るベッドへ腰をかけた
「ごめんね、私の魔力分け与えたらあなたの封印解けちゃったみたいなの」
バッと頭を抱えた
私は、その手をやさしく下ろすように撫で下ろす
赤く燃えるように輝く髪を撫でると火の粉のように赤い粒子が散らばる
「何故・・・」
「燃えないかって?そりゃー私の部屋ですもの」
優しく撫でる
普通の人なら、手も燃え尽きるほどの熱だろう
だが、熱さもまったくないように彼女の髪を撫でている
「あなたは・・・いったい・・・」
「私も封印してるの」
私は一本髪の毛を抜き彼女の前に見せる
「よーく、見てるのよ」
その長い髪を左手で持ち、右手を撫でるように滑らせていく
「そ・・・そんな・・・まさか・・・」
七色に輝く1本の髪があった
「光・・・の民・・・」
「そう、あなたが火の精霊の器を持っていることも・・・」
この娘にある魔力の器が人間の者ではなかった
彼女に魔力を与えているときに気づいたのだが
「・・・・」
「理由が何であれ、あなたはあなたなんだから。その器が誰であれあなたということは変わりないのよ」
優しく彼女の髪を撫でる
押し黙っていた彼女が語りだした
「私は、体が弱かったんです。余命が無いことも感じていました
彼女・・・ディネスは私に尽くしてくれました。私のためなら何でも
そして、私は言ったんです。あなたの願いを言って見なさい。と・・・」
白い手をぎゅっと握る
「彼女は言いました。『あなたと共に生きて行きたい』と・・・
その時、壊れかけていた魔の器を彼女が・・・彼女が!」
彼女は叫んだ
「私はそんなこと望んでなかった!彼女と一緒に・・・ずっと一緒に・・・」
目をつぶり、涙を流していた
「私の器と対等になったときには、魔力を使い果たし・・・消滅しました・・・その時の副作用で、髪は赤く燃え盛る炎のようになり・・・
村を燃やしてしまいました・・・私はそこから、逃げ出し・・・ある組織に入りました。そこで、自分は魔術を独学で学び・・・この髪を、封印したんです・・・」
「そう、でもあなたは分かっているはずよ。あなたの中に、その子がいることを・・・感じてるはずよ貴女は。どうしたいの?彼女の思いを・・・貴女は、答えを出しているでも、実行に移せないだけ行動に移せないだけ彼女の思いを・・・無にしちゃだめ」
私は立ち上がり
「よく考えなさい。人間は考えることが出来る。貴女は、精霊にとても近くても人間なんだから。」
扉まで歩き
「お昼にまた来るわ」
そう言って部屋を出た
壁に寄りかかりため息をつく
(酷い事・・・言っちゃったかな・・・)
――いいえ・・・そんなことないわ。後はあの子しだいよ。大丈夫あの子なら乗り越えられるわ
(そうだね・・・あの子強いし)
フェンリルが彼女の部屋に入った
救おうとする彼女の強い意志が私まで伝わってくる
後は頼んだよ