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第4章01 これって?え?まさか・・・ねぇ

人は、人の上に上がりたいと考える

強くなりたい、そんな思いが人間の心を動かす

学力をつけて人より上に立ちたいと考える者

体力をつけて人より強くなりたいと考えるもの

争いも同じ

何かの上に立ちたい・・・そんな思いが・・・人間の心を動かすのだろう

でも・・・



でも・・・



争い以外で人間を動かすものも在る・・・

それは、人間しかもてない『優しさ』・・・そして・・・





「てぃーにあ」

いつもと変わらない、検定試験官の服装でティニアの執務室にはいる

「あぁ、セレネさん。どうしたんですか?」

あの事件から、4ヶ月・・・この世界に来て半年を向かえた今

王国も大体落ち着いて着た頃だった

「ううん、ちょっと暇になったから寄っただけ」

「そうですか」

テーブルとソファーが置いてあるところに座る

「なんか、王様っていう柄になってきたね♪」

「ちゃ・・・茶化さないでください」

恥ずかしそうに目をそらす仕草もかわいい

ふふと笑う、私

そんな、ティニアを見ていると何か心がホッとする

なぜだろう・・・不思議・・・

そう思っていると

「あ・・・あの、セ・・・セレネさん・・・」

何か、モジモジするティニア

「ん?なんですか??」

「え・・・と、ですね・・・え〜と・・・これ!なんですけど!」

手に持っていた何かの紙切れを渡す

「え?なに??」

「今度のオペラ公演に、い・・・一緒にいて・・・いってく・・くれませんか?」

え?!これ・・・え?まさかぁ・・・

「あ・・・あの・・・これって・・・」

「一緒に来てくれませんか!」

「え・・・え〜〜〜〜っ!」

これぞ、私の初の・・・そう人生初の、男性からデートのお誘いだった




後日・・・


「うわぁ〜・・・おおきぃ・・・」

そこはまるで・・・神秘な場所

すべてが真っ白、彫刻などを施して

そのとき、私たちの前に一人の男性が出迎えた

「ようこそ、我がマルアオペラへ」

どうしたもんでしょう、タキシードの様な服装で私たちを出迎えた男性

(どうして・・・こうも、この世界は美人が多いの・・・)

「こんにちは、マルア」

「いえ、ティニア閣下。お久しゅうございます」

隣にいる私を見ると

「そちらの方は?」

「あぁ、私の護衛騎士の方です」

「それはそれは・・・珍しいですね。ティニア閣下が女性の護衛を着けるとは」

「悪いかい?」

気分を悪くしたのか、ちょっと声が怖い

「いえ、お気を悪くしたのでしたら謝罪いたします」

うぁ・・・キザ・・・

「さぁ、どうぞ。こちらへ」

男の人に案内された場所は本当に特等席・・・というか、まえすぎ?!

「ねぇ、なんでこんな前に座るの?後ろの方が良くない?」

「そうなんだけどね、前の方じゃないと声が聞こえないのさ」

あぁ・・・なるほど・・・この世界じゃスピーカーやアンプ等の

設備もないしね・・・

ん?

昔の専門学校の頃を思い出した・・・

【みんなも知っているだろうが、ギリシャにあった公演場では王の話を

何千人に対して話していた。だが、全員がそれを聞いていたんだ。

どうしてだと思う?】

「そうだ・・・ねぇ、ティニア。壷よ!壷!」

「へ?何いきなり、壷?」

「そう、後ろの人にも聞けるようにする方法のひとつ!

まぁ、魔術を使えばいいんだろうけど、歌っている人に負担になるし

直に聞きたいなら、壷!」

ティニアには私の言っている事が全く理解出来なかったらしい

壷、これがキーワードになる

「えっとね、私の世界では魔術がなかったの。

だから、私たちの世界では壷をたくさん後ろの方に置いたの

壷って言っても同じ大きさじゃなくてたくさん種類の壷を置くの

なぜかと言うとね。共振って言う事を・・・まぁ、今日はいいわ。さっきの人に言っておいて。壷を置いたら、後ろの人も聞こえるよって」

「はぁ・・・」

今は、この一時を楽しみたい

おせっかいは後後・・・

えぃ、とばかりにティニアの腕をつかむ

「え?」

「うふふ」

王と、近衛騎士の組み合わせはとても珍しいかもしれない

確かに・・・


オペラも終局になった頃

その歌声に、魅了されていた

「声・・・綺麗・・・」

「あの人は、精霊の加護を受ける者なんだ。精霊の声は

心を豊かにするからね」

確かに、ずっと前魔術で精霊魔法を使った事がある

精霊、妖精とかまだ見たことないんだけど・・・

(精霊って・・・見えるの?)

――あぁ、見えるわよ。あの人の上の方、目に魔力を注いで見てごらん

目に魔力を?

少し目に魔力を注いだ。黒い瞳が少しだけ金色になる

「あっ」

彼女の上には、水色の美しい衣を纏った女性が一緒に歌っていた

(あの子が・・・精霊・・・)

――水の精霊らしいな。

その姿に見とれる私

綺麗・・・

と、何か舞台の上の方で光った・・・

魔力を注いだ瞳は、視力までも上げていた

何かいる・・・黒い・・・服を着た・・・

「なっ!ナイフ!!」

すぐに、マントに仕込んであったナイフを取り出す

相手も、狙いをつけていた

狙いは・・・!彼女!?

「ティニア、彼女、狙われてる!」

「何だって?!本当か!」

「やばいよ・・・ナイフで狙い定めてる・・・あまり、大事にしたくないから・・・とりあえず、ナイフを弾き飛ばすね」

そう言って、ナイフに魔力を注ぐ

【風の恵みよ、立ち塞がる風を立ち去れ、この物に風の恵みが在らんことを】

ナイフに白い輝きが放たれる

(投げた!)

私も、タイミングを合わせてナイフを投げる

シュゥ

弾く音は、彼女の歌声に寄ってかき消される

失敗した事に気づくと壇上に乱入してきた

「歌姫!覚悟!」

女性の声

切り裂くはずの剣は何かに止められる

『ふぅん、私が楽しく歌を聴いていたのに・・・邪魔してくれたのあんた?』

彼女を庇うように立ち塞がる黒い服の女性

「せ・・セレネ!」

さっきまで左の席に座っていたはずなのに・・・

左を見るとそこには誰も座っていなかった

「何者!」

『何者でも何でもいいでしょ!まったく・・・デートが台無しよ!

この落とし前・・・どう埋めてくれるの?』

「私のナイフを落としたのはお前か?」

『あら、だったらどうするの?私も殺す?それとも』

長い髪を後ろへ払い、腕を組む

「逃げる?」

フフと、笑う姿はなんともいい用のない不敵な笑みだった

「くそぉ〜っ」

振り払う、細身の剣

「な・・・何!」

『あら、遅いわよ。それでも、この子を殺す予定だったの?』

私は、その剣を恰も簡単につかみ取った

「ん?私が逃がすとでも思った?」

はっと、気づき回りを見渡す彼女

先ほど、私が結界を張ったのだ

もう袋のねずみ

『貴女が、誰に雇われたかしらないけど・・・いい事教えて上げる・・・』

彼女の顔へ近づく私

『その雇われ主と、契約破棄しちゃいなさい。なんなら、私が契約してあげる』

「な・・・なにをっ!」

「ん〜、だって、貴女腕いいもの、殺しちゃうなんてもったいない」

もちろん、殺すことなんてしないけど。脅し文句ってやつかな

「そ・・・そんな事!勝手に決めるな!」

『いいじゃない、うちに来なさいよ。そこの、ティニア閣下の近衛騎士やってるものだから。貴女名前は?私はセレネ、よろしくね』

「メ・・・メリアだ・・・」

『そう、メリアちゃん。来てくれる前提で話すけど。もしも、雇い主に

殺されそうになったら、この』

ポケットに入っていたひとつの赤石を取り出す

ティニアに上げた例の石だ

『石を割りなさい。貴女の魔力を注げば割れるようにして在るから

そうすれば、私たち、近衛騎士がどっと押し寄せて、捕まえるから

もちろん。貴女は私の雇い主になるわけだから。免罪してあげるわ

どう?いい取引でしょ?』

「それを・・・信じろと?」

「信じる信じないは、貴方の勝手。任せるわ」

さっきの石を彼女に投げ渡す

『じゃ、結界をとくからすぐに出て行ってね』

「お・・・お前はいったい・・・」

そういう暇もなく、結界が消える


「セレネ!?」

「なんですか?ティニア」

「え?・・・あれ?」

「ん?どうしたんですか??」

「いや・・・さっき上で・・・」

「ん?」

とぼける私に気づかないティニア

(さーて・・・あの子どうなるかな)

――腕は、確かだ。フェンリルに妹が出来るからいいんじゃないか

(『妹・・・ですか?』)

(そ、妹)

――とりあえず、フェンリルあの子を尾行しなさい

(『ぎ・・・御意・・・』)

その後、あまりティニアとの進展もなかった私たち

また行こうか、と誘われ。はい と答える私

こんなハプニングがなかったら、いい雰囲気だったのにーーー

と、地団駄を踏む私だった・・・





「キタッ!」

その日の夜、彼女に渡した石が割れた・・・


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