第3章02 香苗、王都にいく〜(2)の巻
ティニアが、馬に乗る私に近づいてきた
「もしかして、シエラ様ですか?」
と、呟く
「ん?なんのこと?」
にこりと、笑みを浮かべ
とぼけるシエラ
「いえ・・・何でも在りません」
(馬って、始めて乗るよ〜♪たのしぃ〜)
――香苗は、馬に乗ったことないんだね。
あっちでは、車?
(うん、電車と車かなぁ・・・乗馬って成金ぐらいしかやらないしね)
――ふぅ〜ん
「ティニア、後どのぐらい?」
「そうですね。260キナマイナ(約250km)ぐらいですかね」
(約、6時間か・・・シエラ?お尻いたくない?)
――ん?大丈夫よ。姿勢さえちゃんとしてれば
でも、クッションが在れば楽でしょうね
(ちょっと待ってね。『風の妖精よ、我に従い思念に基づく形をかたどり出現せよ。【フレイズディス】』)
呪文を発動すると、セレネのお尻にクッションの様なものが出てきた
――へ〜、これはいいわね。呪文書作ったら売れるかもよ
(あはは、考えておくわ。にしても静かね・・・)
――・・・
(シエラ?)
――黙って!
(!)
『・・・ティニア・・・』
小さく囁く
「えぇ・・・囲まれましたね・・・何人か判りますか?」
(フェンリル!)
(『前3、左右2、後1です・・・武器は、左右1ずつ弓
前3後左右1は刀剣です・・・厄介ですね、王家の暗部らしき服装です』)
「前3後左右1刀剣、左右1弓・・・ティニア・・・あんた、親父さんに狙われてるの?」
「そんな覚えはないよ・・・」
「ふぅん、じゃぁなんで・・・王家の暗部が来てるのよ」
冷静に普段の顔をしていた
「きっと・・・僕が狙いだよ」
「アンタが?」
「うん・・・たぶん」
「なんで?アンタをつけ狙う必要があるの?」
「それは・・・女王が僕を国王にする・・・つもりらしい・・・」
「ま・・・待って!確か、あんた第2王位継承者だっていってなかった?」
「あれは、建前・・・」
(あの・・・これって、もしかしてなんですけど・・・)
――言わないでいいわ・・・当たってるから・・・
とんでもないのに巻き込まれたわ・・・
知らなかったとはいえ・・・まさか、ティニアが第一王位継承者候補だとはだとは・・・
「まぁ・・・いいわ、ねぇ〜近衛騎士さん!ちょっと休憩しない?」
「あぁ、かまわないが。休憩を取るとしよう」
見晴らしのいい草原のど真ん中で休憩を取る・・・
「セレネさん・・・こんなところで休憩とって良いんですか?」
「問題ないよ」
ギリギリと、組み立てていく香苗の弓
この世界でもこのような歪の弓は見たことないだろう
「よし出来た」
2本矢を持つと立ち上がる
「じゃー、宣戦布告としますか〜・・・」
キュゥィッ
弦が伸びる音がする
そして、放つ
シュッ
風を切る音が鮮明に聞こえた
そして、振り返りざまにもう一発
シュッ
(よし)
――お見事!
300m先でドサドサと何かが落ちる音が
かすかに聞こえた
狙いは、魔力が一番高い所を狙って撃ったつもり
たぶん、監視していた暗殺者だろうけど
民間人だったらどうしようと言う考えは全く無かった
顔とか見えないし・・・しょうが無いよね
持っていた、弓に付いていたネジを一本はずすと
はじける音と共に瞬時に分解される弓
重力に反発するように浮いている部品らは
自我があるように決められた場所へ入っていった
「まぁ・・・あとは、来るの待ちましょう」
ティニアに入れてもらった飲み物(紅茶に似ている)をすすりながら
敵が行動するまでふけっていた
「ん?来たよ」
黒い覆面の人間がうちらを囲んでいた
慌てる近衛騎士たち
冷静沈着なティニアと私
『あら、どちら様ですか?』
「・・・死を向かえる者に名乗る必要もなかろう・・・」
手には、弧を描くように曲がった剣を持っていた
暗殺などに使われる剣だ
『そうですか・・・私は、セレネです。セレネアキータ
以後、お見知りおきを』
にこっと笑う私
苦笑するティニア
刹那 キィン
鞘に収まっている剣が先ほどの男の持った剣とぶつかった
『穏やかではありませんね』
「やり手か・・・」
すぐに間合いを取る
『いえ、そんなたいそうな者ではありませんよ』
「ならばっ!」
男が手に集まる魔力を放った
そのエネルギーが直撃すると、その爆風で土ぼこりが舞う
「手ごたえなかった・・・なっ!?」
埃が段々なくなると、1人の人影が見えてきた
「はぁ・・・何をするんですか・・・」
「ま・・・まさかっ!直撃を食らったはず!」
驚愕の顔を隠さずにいられないと言った口調だった
「こんなので?まさかぁ〜、まぁある程度技量が判ったので・・・」
今度は、私の番
同じように手には赤い火の玉が現れた
しかし、先ほどの魔力をはるかに凌駕する魔力を持っていた
「このぐらいでは死なないでしょう?」
男の目が見開く
「ひ・・・引け!」
シュンといなくなるが・・・
「もう来ないようにして上げます。どっか飛んで行ってください!」
そして、その魔力の玉を放った
玉・・・いや、弾は自我を持ったように
逃げてゆく敵に向かって行った
そして、数秒後
反動の後、大きな爆音と共に
深淵なる黒髪が風に舞った
「ふぅ・・・もう来ないでしょ・・・」
ティニアがとてもつらそうな顔をしていた
「大丈夫、死にはしてないでしょう・・・でも、数日は動けないかもしれませんね・・・」
「なら・・・いいんだけど・・・」
ほっとしたような顔を見つつ踵を返した
「さ、行きましょう」
何事もなく?邪魔者を追っ払った私たちは
目的地、王都へと向かうのだった