第2章08 裏口検定・・・しかも!?
食事も終わらせ、向かった先は魔道士協会
「うぁ・・・」
下は−10度、上は60度近く見上げる
その建物は、まるで国会議事堂
「む・・・無駄にでかいなぁ」
正直な感想を言う
「検定を行って級を取らないと魔術を使ってはいけないんです。
その費用が馬鹿にならないので、実際級を取ってなくても使っている人が
多いですね。」
解説しながら、中へ入っていく
そこは、大きなフロアーになっていて
中央に、鷹のマークの入ったじゅうたんが敷いてあった
「うへ・・・CIAとかFBIみたい・・・」
映画で出てくるようなマークを見てつい、そのように思えてしまった
中央の受付に行くと
「いらっしゃいませ。ご用件を承ります」
ベレー帽の様な帽子をかぶり受付をする女性
「登録番号1−22323−33のティニア・ディスティーニですが、
来週の検定試験の申し込みに来ました。あと、この子は、新規で申し込みです」
「判りました。少々お待ちください・・・・ティニア様ですね。級はA−でよろしいですか?」
「はい、あと、この子なんですが、普通の魔力測定器だと・・・壊れるかもしれないので・・・」
「はぃ?そうでございますか。判りました、減衰室で計りましょう、22番でお待ちください」
「こっちだよ」
ティニアに腕を引っ張られながら、何が何やら判らずに
22番まで行く事が出来た
1人の男の人が私を待っていたらしく
「えーと、ティニア様のお付人の方ですね?こちらへどうぞ」
私とティニアが別れ別れになり
1つの個室に入れられた
そのとき、体に脱力感が襲った・・・
なに?
――魔力を一定以下に下げるための減衰室です
魔力が大きすぎると、測定値が壊れてしまうので
強い人とかはこの中で計るんです
そういうの、嫌いだから体の中のみ解呪しますね
ふぅと楽になった
「えっと、お名前は?」
「セレネ・アキータです。18歳」
「セレネさんですね。では、魔力を計りますので気を楽にしてください」
ふぅ・・・楽にしちゃうと・・・魔力出ちゃうんだよね・・・
あ・・・それを計るからいいのか・・・
ふっと気を緩めた瞬間
魔力メーターの針が振りきり
なおかつ煙を噴出した
あ!すぐに、気をため魔力をとめる
「うそだろ・・・」
男の人が驚いたような顔をしつつ
「お・・・お待ちください!」
あわてて、部屋から出て行ってしまった
ちょっと不安になった私は、フェンリルと交信を試みる
(ねぇ、フェンリル?)
(『何でしょうか?香苗様』)
(あのね・・・機械壊しちゃった・・・テヘ)
(『はぁ・・・香苗様、貴女は光の民で在るんですよ。いくら、
高価で性能がいい魔力メーターでも気を緩めたらすぐに壊れますよ!
当たり前です・・・』)
思念通信でも、フェンリルのあきれた顔が目に浮かぶ
(どうしたらいいかな?)
(『なるようにしかなりませんよ・・・』)
だよね・・・
プスプスと煙を吐いているメーターを見る
それは完全に真っ黒になり使い物にならないだろうと見て判った
どうなるなろう・・・
心配になっていると、ひとりの老人・・・またか?
同じような格好でなおかつ顎鬚・・・
「ふぉふぉふぉ、お主かのぅ?魔力計測器を壊したという女子は」
「え?はぁ・・・そうなんでしょうね・・・」
「ふむ・・・ワシによう目を見せておくれ」
「はぁ・・・こ・・・こうですか?」
ふむぅ〜と細い目を私の瞳をじっと見ていた
「・・・ほぅ、その目は偽りの瞳じゃの・・・その、髪もそうかのう」
な・・・この人・・・何者?!
――この人・・・どこかで見たこと在ると思ったら、月の賢者の末裔じゃないかしら・・・
え?そんな偉い人なの?!
「な・・・なに、言ってるんですか・・・」
フォフォフォと笑って男たちを外に出るように言い
2人だけになってしまった
・・・こういう、重い空気・・・嫌いなんだよね・・・
「ようこそいらっしゃった、光の民よ」
え?
「なっ・・・」
言葉にならなかった、いきなり私の正体?を見破られてしまった
「その、偽りの魔術を解いてくれないかのぅ。天に召される前に
見たいのじゃ・・・神の姿を・・・」
そう言って、何かを祈るようなしぐさをする老人
はぁ・・・
私は、一時封印をといてもとの姿になった
と言っても、元々はこの黒髪に黒瞳なのだが
この世界では、これが普段の格好らしい
「おぉ〜」
感激したのだろう、私の手を握り
「お会いしとうございました・・・」
細い目から薄らと涙が流れていた
「あなたに会えて、うれしいです。ですが、
困った事に、私は招かざるものなのです」
「といいますと・・・」
「この世界の危機を救うべく来たのでは在りません
たまたまなのです・・・いわゆる、落神です・・・」
「そんな事・・・落神なぞ言ってはなりませぬ。
貴女様は、我々の女神であるのですぞ
この老いぼれ、いつでも味方になりますぞぃ」
「ありがとうございます。えっと、早速なのですが」
「なんですじゃ?」
「私、光の民が降臨した事は誰にも言わないでください。
そして、出来れば・・・検定も受けずに取りたいのですが・・・」
ずうずうしいことを言う私だが・・・
「何じゃ、そんな事ですかぇ!すぐにでも発行させるですじゃ。
お会いでき・・・本当に・・・嬉しい限りですじゃ!
それでは、老いぼれは失礼いたしますじゃよ」
と、ノコノコと歩いてゆき出て言ってしまった
うあ・・・即了承?
外にいた、若い男の人は、もういいですよ
と言われ受付まで歩いていくと
「この場でお待ちください」
そう言って、待たされること10分
何かブレスレットの様なものを持ってきた男たち
「セレネ様でいらっしゃいますか?」
神官服の様な白い服を着ている男が尋ねてきた
「あ、そうですけど」
「魔道士協会オルト支部理事長より、検定合格の品をお持ちいたしました」
そう言って、私の左手に付けるブレスレット
「あの・・・これは??」
「これが、検定合格書の代わりになるものです」
それは、金色に輝いていてとても綺麗だった
ティニアが驚いて私の腕を取った
「こ・・・これは!」
「え?なに??」
「ま・・・間違いじゃないのですか?」
「いえ、私には判りませんが、オルト支部始まって以来です
S+級のブレスレットが出るのは」
S+?
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S+!!!?
「はぁ!?な・・・なんだってぇ〜〜〜っ」
その声は、フロアー全体に響き渡った
結局、S+級を覆す根拠がないわけで
そのまま、級をもらい検定を受けなくてすんでしまった
受ける気満々で勉強していたのだが
まぁ、それもいいだろう・・・