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第2章06 どうしよう、やっちゃったよ!私

始めてみる武器の店

日本では絶対に見る事のできない刀剣類の数々

おもちゃ屋などで陳列しているように

武器が山ほど並べられていた

バスタードソードと言われる、大きな両手剣

ショートソードと言われる、細身の片手剣

モデルガンショップで売られているボウガン

弓道で使うような弓もあった

もちろんナイフもある

しかし、日本と違うのがどれも金属と木で作られた物

石油などで作られたプラスチックがない

そもそも、科学の進歩がないこの世界ではしょうがないことだろう

いろいろなものがあるのだなぁと、品々を見て回る

そうすると、一角だけ展示しているような空間が広がっていた

「へぇ、今日は展示品があるようですね」

ティニアが興味があるらしく、一緒についていく

展示してあったのは、細身の綺麗な剣

装飾もさほどなくとも、その剣は大事に使われていたのだろうと

見て判断できた

鞘に小さな白く輝く宝石のようなものが付いている

綺麗・・・

なぜか、懐かしく思えるその剣

触ったことも見たこともないのに、いつも身につけていた

そんな感じがした

その下に書いてある商品の説明を読む

『この剣は、私たちの女神であるシエラ様がご愛用されていた

剣と言われ光の民である者しかこの剣を抜くことができないと

されています。未だかつてこの剣を抜く事のできるものは、未だかつておりません』

光の民・・・女神シエラ・・・

ティニアの家に置いてあった書物からもその言葉はいくことなく

出てくる言葉だった

七色に輝く髪そして、金色に輝く瞳

金色の瞳は稀に生まれて来るらしく、その人は神の子として

扱われてきたといわれる

でも、私は両方を兼ね備えているわけで

もしかしたら・・・と、変な事を考えてしまった

「ねぇ、ティニア・・・もしかしたら・・・だけど」

剣に見とれていたティニアは、こっちを振り向かずに返事をする

「この剣ね・・・私、触ってみたいんだけど・・・」

何か考え込んでいるように腕を抱えて悩みこむ

確かに、私ならこの剣を抜けるかもしれない

異世界から来た、そして、七色の髪、金の瞳

でも、周りに人がたくさんいる

私がもしも、この剣を抜いてしまったら騒ぎになる

きっとそのような事を考えていたのだろう

「そうですね・・・オーナーに聞いてみましょう」

そう言い残して、店員に何か話していた

ティニアから剣へと視線を向けた

懐かしい・・・そんな思いが強くなる

――もう、そのときなのですね・・・

え?

突然、誰かに話しかけられた・・・

周りをきょろきょろと見渡しても今は私しか周りに誰もいなかった

もう一度、剣のほうを見る

(もしかして・・・この剣?)

――始めまして、私はシエラ、シエラ・エルフィード

(え?!・・・うそ・・・けんがしゃべ・・・てる?)

――驚く事はないわ。喋っているわけじゃないの

良く見ると、鞘と剣に付いている白い宝石が薄らと光を放っていた

――貴女と、心の中で会話をしているわ

  そう、聖獣フェンリルと同じね

(フェンリルを知っているの?)

――えぇ、私と生涯共に生きたたった一人の友人ですもの

(そうなんだ・・・じゃぁ、女神シエラって・・・)

――私よ、本人はもう地球に帰ったけどね

(地球に帰れるの?!本人?)

――私は、本人から作られた思念のようなものよ。

  本人は、招かれた者だから帰れるわ。でも、貴女は、招かれざる者

  普通なら来る事のなかった光の民

  今、この世界は全く平和ですもの・・・来るべき者ではなかった

(え?)

――残念だけど、貴女は世界に帰る事はできないわ

(う・・・うそ・・・)

帰る事ができない、地球に・・・そんな・・・

帰れると信じていたのに

薄らと涙を流した

大きな失望感、そして絶望・・・

どっと押し寄せる、不安

(・・・無理なんですね・・・帰る事は・・・)

――できるかもしれない・・・でも、時間はかかるわ

  100年200年かかるかもしれない・・・

(無理じゃない!そんなに私生きてられない!)

――大丈夫よ、光の民は年を取らないから

  その代わり、得るもの失うものがある事だけは

  知っておいて頂戴。いずれ、ティニアと言う

  者も、寿命で天に召されてしまう・・・

  しかし、あなたは生きないといけない・・・

  その覚悟だけは、ちゃんとしておいて

真っ暗になったところから一筋の希望の光が見えた

気休め程度だったが、私にはそれがうれしかった

希望はある、ならそれなりの生きかたをすればいい

父から教わった言葉・・・

『生きるもの、出会いと別れは一緒』

そして

『楽しく生きろ。』

なぜか、その言葉がとても励みになっていた

今も・・・

父さん・・・ありがとう・・・いつも励ましてくれて・・・

きっと大丈夫だよね・・・

私は、作ったはずだ。この世界を知る事、そして

この世界で行きぬいていく事を目標に・・・

大丈夫、どうにかなる・・・

(大丈夫、帰れなくてもここで楽しく生きていく。そう決めたから)

――そう、でも忘れないで。貴女は地球人って事を

(えぇ)

すっと目を瞑った

この数日でいろいろな事があった

ティニアにもあった

魔術を知った

剣術も習った

書物でこの世界の事を知った

フェンリルもの会った

マレリアさんにも会った

そして、シエラさんにも

まだ始まったばかりだ!

私の物語は・・・

意を決して目を開く

そうすると、ティニアは私の傍で立っていた

「どうしたんだい?」

「ううん、なんでもないの」

首を横に振り、平然を保つ私

やせ我慢・・・きっとそのように見えたのかもしれない

「大丈夫、楽しく生きよう」

ティニアから出た言葉・・・

ふと、父さんの面影が一瞬見えてしまった

止めようとした涙が・・・止まらない・・・

そのとき、ティニアは私を抱きかかえた

無理やりのように見えてとてもやさしく

「泣きたい時に泣きなさい、笑いたいときに笑いなさい

そうやって、人間は生きていくんです」

「ティ・・・ティニア・・・うぅ、ぅぇぐ・・・うわーん」

力いっぱい、ティニアを抱いた

たくさん泣いた

すべての不安・失望感・絶望すべて出し切るように

そして、希望の光を大きくするために・・・


私が泣きやんだ頃、ティニアが私の腕を解いた

「もう、大丈夫だよね?」

うん、と頷く

「よし、あの剣ね触らせてくれるって」

気づくと、その剣はもうショーケースに入っていなかった

泣いているときに持ち出されたのだろう

「おいで、客室に行こう」

目を赤くしながらティニアの腕につかまり歩いていく


客室に入ると、老人が1人と若い男の人が1人立っていた

「ティニア様、お久しぶりでございます」

丁寧なお辞儀をする老人

「えぇ、お元気そうでなりよりです。ディスア伯爵」

「その方ですか?」

私のほうを向き挨拶をする

「始めまして。私、ディスア・ブルディーカと申すものです、この店のオーナーでございます」

「あ、セレネ・・・セレネ・アキータです」

机に置いてあった、剣を私に差し出す

「こちらがご要望の剣でございます」

「あ・・・ありがとうございます・・・拝借させていただきます」

重たそうに、彼は持つが渡された私には紙のように軽かった

「あの・・・もし、この剣が鞘から抜けた場合どうするんですか?」

疑問だった、価格さえ書いていないこの剣

もし抜けた場合、いくらかかるのか

「もし、抜刀できた場合その剣は抜いた方に差し上げます。

そのように、言い伝えられてきたものですから。

それ以外の事は、何もする事はございません」

もらえるって事・・・

それはいいんだけど、あまり大事にしてほしくない・・・

顔に出たのだろう

「この剣がなくなったとなると、魔道士協会等が騒ぎ出すでしょうが

我々も光の民が降臨した等の情報は漏らしません」

「わかりました・・・」

それなら、大丈夫だろう・・・

私は、剣の柄の部分をつかみ

そっと、引き抜く

刀など抜く時出るスイッチのような音がした

鞘と剣がこすれるように抜ける剣

抜けきる剣は、淡い青色に輝いていた

刃こぼれもしていない、指紋などの油も付いていない

とても綺麗な刃をしていた

「ぬ・・・抜けた・・・」

隣にいた若い男が仰天のあまり一歩下がっていた

老人は平然として言った

「どうぞ、その剣をお持ち帰りください。光の民セレネ様」

先ほどとは違い、膝を付く

老人だけではなかった、隣にいた若い男性も

「この老いぼれが、光の民に会えることができもう言い残すことは

ございません」

な・・・

「馬鹿なこと言っちゃだめです!冗談でもそういうことは言ってはだめ!」

「これは・・・大変申し訳ございません」

「頭を上げてください・・・恥ずかしいです・・・」

「・・・失礼いたします」

そういって、やっと頭を上げてくれた

「このように、セレネ様とティニア殿下二人そろって見られるとは

我々、とてもうれしゅうございます」

「ティニアはともかく、私は・・・え?殿下?」

殿下・・・って、皇太子・皇族などの敬称で、皇太子・皇太子妃・皇太孫・皇太孫妃・親王・親王妃・内親王・王・王妃・女王などに用いる、あの殿下?

「ティ・・ティニア?」

ジトと見る私

なんか、冷や汗でもかいているのだろうか

私の視線から外れる瞳

「ご・・・ごめん・・・言ってなかったと思うけど・・・

僕、第2王位継承者・・・なんだよね・・・」

はい?王位継承者ですか?今、そんなこと言った?

言ったよね・・・絶対いったよね・・・

私、王子様に溜口聞いてたの?

あーでもない、こーでもないと・・・

うあぁ〜〜はずかしぃ・・・

顔を真っ赤にしてうつむいてしまう私

かれこれ、3週間も立っていたのにティニアが王子だとは全く持って

気づかなかった・・・そんな面影もない

「・・・」

「気・・・気にしちゃだめだよ・・・だって、光の民は神の存在なんだし

セレネを、特別扱いするような事もしないよ。普通でいようね。ね」

完全にパニックになっている私・・・

「ティニア!絶対に、『僕の妃になってください』とか言うなよ!」

「はぁ?!」

混乱して言った言葉はそれだった・・・


それから、20分ほどして混乱は落ち着いた私


一人の逸れ神と、一人の王子との物語

始まるまでまだまだの様子だった

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