第2章05 これって、あれだよね?あれ!
その店は、マレリアの店と書いてある札が立っていた
(なんかそのまんまねぇ、と言うか何の店だかわからないじゃない!)
扉を開けると、鈴の音が店内に木霊した
「いらっしゃぁい、あら?ティニア様じゃないですかぁ
もう修行はいいんですか?」
「こんにちは、マレリアさんちょっと買出しですよ、この子のね」
私の頭を優しくなでる
「あらぁ、もう彼女ができたんですか?妃にでもするんですか?」
その言葉にびっくりする
「き・・・妃?!」
妃って、王家とかそういう貴族が使う言葉だよね?!
「冗談はそれぐらいにしてくださいよ」
ティニアは、店内を回ってみる
「その子、セレネっていうんですけど。寸法とかいろいろ測って
適当に見繕ってくれませんか?」
「はい、えぇと」
私のほうを見るマレリア
紫色の髪と緑の瞳と整った顔。美女って本当にいるんだなぁ
呆然と見つめてしまった
ふと、我に返って
「始めまして、セレネです。セレネ・アキータといいます」
簡単に挨拶をする私をジーと見るマレリア
「・・・へぇ、珍しいわねぇ。光属性?生まれて始めてみましたわ」
「はやくしてほしいなぁ、マレリア」
催促を促すティニア
「はぁい、お待ちを。えーと、このサイズだと・・・これなんかどうかな?」
マレリアが着ていたのと同じような服を出す
それは、私の世界で見た事のある服
「ちゃ・・・チャイナドレス?!」
マジ?!うっそぉ。
赤い服に、刺繍が施してあり、なおかつ、太ももまである
スリット・・・
どう考えても、どう見てもチャイナドレスだった
(『香苗様?今、どちらに居りますか?』)
(うあっ・・・驚いた・・・今ね、マレリアの店ってところで
着るもの買ってるよ)
(『あぁ、あの店ですね。今行きます』)
思念通信を終え、その服を見る
・・・ジーンズとかがいいなぁ・・・
スカートも良いけど、スパッツがあるともっといいかなぁ〜
・・・ないと思うけど・・・
良く、見渡すと・・・
そこにあるもの・・・
「・・・あるし・・・ティニア、これ!と、このTシャツだけでいい!」
手に持った品は、青みのかかったズボン
ベルトを通す部分もあり、左右前後には小物が入るようになった袋
そう、ジーンズパンツ又はジーパン、今だとデニムと言うかもしれない
なんで、こんなところに?
そう思っていると、店に誰かが入ってきた
「いらっしゃぁい、あら、フェンリルじゃない〜」
フェンリル?
その名前を聞いて、振り向くとそこにいるのは
日焼けをしたような薄黒い肌をした1人の女性
ピンクの瞳に、白いロングヘアーをポニーテールにしている
活発そうに見えるが、とてもかっこいい容姿をしている
「こんにちは、どう?お店のほう」
「フェンリルのおかげで、繁盛してるわ。この服もあなたが教えてくれたものですもの」
まさか・・・チャイナドレスを??
もしかして、このデニムも??
疑問がどんどん増えて、混乱寸前の私
(『香苗様、この服のデザインは先祖から伝えられている女神シエラ様が
残したといわれている、伝書に載っていたものなんですよ』)
へぇ・・・そ・・・
え?!
「お店の前にね、これが落ちてたの。誰か知らない?」
彼女の手にあるのは、どう見ても私の財布
でも、それはフェンリルがとりに・・・あれ?
どうなってるのよ!
(『私がフェンリルですよ』)
(え?)
「これ、あなたのでしょ?もう落としちゃだめですよ」
「あ・・・ありがと・・・」
渡すときに、こっそりといわれた (豹になってきますね)
と・・・やっぱり、この女性フェンリルなんだ・・・
「じゃ、たまたまよっただけだから。またね」
「またおいでね〜」
手を上げて出て行く
「え〜と、お代金は、ティニア様がお支払いでよろしいですか?」
「あっ、よろしく」
「かしこまりました。こちらが、お品でございます」
袋に入れられた、荷物をもらおうとしたが、ティニアが横からそれを取った
「女性に、持たせるわけないじゃん」
ニヤと笑い
私は、ちょっと苦笑してしまった
フェンリルは、外に待っていた
ちゃんとお座りして、こう見るとあの女性とこの豹が同じとは思えない
そこら辺がやっぱり、異世界なんだろうなぁ
「この次は?」
「あぁ、お前の武器を買いに行ってから、食事を取って
その後、魔道士協会に行って検定の申し込みをしよう。
それで今日のお買い物はおしまい」
肩に、荷物を背負って歩いていく
今度は、武器か・・・
人を傷つける武器
日本では、武器を持っていたが人を傷つける事は絶対になかった
でも・・・きっと、この世界では・・・
そう思うと、気が沈んでしまう香苗
その異変に気づいたのだろうか、ティニアの腕が私を覆い寄り添う
びっくりして、引き離そうと思ったが
なんか、優しく包む腕そして、ティニアの鼓動が聞こえると
これも悪くないな・・・
そして、武器屋に向かう男女2人と豹1匹だった
これって、何かカップルみたい
内心笑ってしまった