第2章04 いやぁ、街っていいものですねぇ
[オルト街]
言うなれば、そこは古代ヨーロッパのような街
レンガ作りの家や店、その前に並ぶ露店商
そして、人の波
「へぇ〜」
少し感心してしまう。初めて来る街だが
こうもにぎやかとは思わなかった
ふっと元の世界地球のことを思い出す
レンガの家なんて、滅多になく
コンクリートで作られたビル、ガラス越しで見るショーウインドウ
なんか、やっぱり異世界に来ちゃったんだなって
『香苗様は、異世界から来られたんですね。この世界より
科学が発展してそうな感じがします』
(うん・・・やっぱり、魔法があるからかなぁって・・・)
「え?!なんっでぇ?」
驚きのあまり、大声を出してしまった
それに気づいたのかティニアが心配そうにしていた
「どうしたんですか?フェンリルが来てから何か、変ですよ?」
「え?い・・・いやぁあははは」
笑ってごまかす私・・・情け無い・・・
肩身を狭く歩く
うな垂れている視線をフェンリルに向けた
『香苗様と私は主従関係で結ばれた云わば契約と同じ
貴女様が私を認めて下されなければ、意思の共有はなされません。
なので、この世界では普通なのですよ。あぁ、後ですね
私との会話は、思念・・・思うだけで会話はできます。
もし戦闘になった場合でもこれを使うことで有利になることもありますから
慣れてくださいね。』
(そ・・・そうなんだ)
『えぇ、あと。セレネと言う名前も偽名だということも知っています』
(だから、本名で言われたんだ)
『ですが、あまり本名を人に言わないほうがいいでしょう。
本名を使うと、呪術や、契約術などの対象になってしまいます。
その関係では、偽名はとても賢明な判断だと思いますよ、
ティニアさんに感謝してくださいね』
(そ・・・そう・・・)
ドン
何かにぶつかった、ゆっくり頭を上げると
なんか嫌な雰囲気の漂っている男
(ヤバ!ど・・・どうしよう・・・ん?)
「ごめんなさい」
すぐに、頭を下げて謝る
腰の角度は90度にもなるほど
「気をつけろ!餓鬼!」
が・・・がきだぁ?!
ムッとして突っかかろうと思ったとき
『香苗様、お気を確かに!これはやり過ごしましょう』
クッ・・・
「ケッ」
歩き去っていく男
『財布、すられましたね』
(はぁ、良いことないなぁ。ねぇ、フェンリル・・・)
私が言おうと思ったことを察したのか
『取ってきますね』
男を追う姿勢になったとき
フェンリルの考えが、私にも流れてきた
(フェンリル・・・殺しちゃだめよ?命を殺める時は、あくまでも
最終手段だからね)
『御意に』
にぃと、笑ったような表情をした
こう見るとカッコいいのになぁ
「あれ?フェンリルは?」
ティニアが、フェンリルの姿がいないのに気づいた
周りをきょろきょろ見渡す
「あの子、気まぐれだから。勝手に戻ってくるわよ」
「そっか、最初に服を買いに行こう。僕の行きつけの店があるから
行って見よう」
服だぁ〜いつも、男物だったからなぁ〜胸がきつくて〜
・・・うそです・・・あぁ〜きつい〜っていってみたぃ〜
女としての小さな悩みを心の中で叫ぶのだった・・・
(ぉぃ、小さくないぞ・・・作者!)
げっ・・・