第2章03 うはっ!聖獣ですよ!
検定試験1週間前になったころ
私は、いろいろな魔術を試してみた
9割は、成功するのだが1割は失敗
現代ヒストリア語は日本語にたとえるとカタカナに似ている
だから、ほぼ100%で間違えることはないのだが
古代語になると、1割は間違える
起動さえしない
というか、何もしないでイメージだけでも十分使える
ティニア曰く、魔女に匹敵するかもしれないと言われたが・・・
19になりそこないが、魔女ってねぇ・・・
何かイメージが
検定試験のS級以上はこの文字をある程度覚える必要があるが
初歩の初歩だけである
その前予習のためにティニアは勉強していたらしいが
私にとっては、漢字とひらがなである
「セレネさん、この文字教えてください」
と、3週間前とまったく逆の立場になってしまった私たち
私は彼に魔術を、彼は私に剣術を教えてもらうことで立場上同じになっている
「それはね、『大地の恵みよ、偉大なる光の精霊よ、我に従い傷つく者に祝福をそして幸福をもたらしたまえ』って
なってるわね。たぶん、医療とか治療の古代文字だと思うけど・・・聖術かな・・・」
といって、彼に渡された本を返す
「ありがとうございます。そうだ、今から街に行きませんか?来週検定ですし」
「え?今から?」
「はい、どうでしょう?」
この世界に来て、一度も街に行ったことがない私
もちろん拒否する理由もなく
「うん、行きたい!」
数十日ぶり、初めてである街への遠出に心弾ませていた
「準備しますから、庭で待っていてください」
と言い残し、部屋を出た
「街かぁ、どんなところなんだろう。やっぱりファンタジーゲームみたいなのかな」
十分ここもファンタジーなのだが・・・
数分後、私は特に何ももつものがないので手ぶら
ティニアは何かいろいろ持っているようだ
荷物を馬に乗せた
「セレネさんは、馬に乗ったことは?」
「ないよ、でも飛んでいくから。」
「そうですか、わかりました。でも、街の近くになったら歩いてくださいね」
「そのときは、ティニアの馬に乗るv」
「はいはい、ちゃんと追いかけてくるんですよ」
「はぁぃ」
そういうと、私をおいて先に行くティニア
急いで魔術を展開する
手に集中する、淡い青白い光が指先を照らす
体の中から湧き出る魔力を手に送り出す
(このぐらいかな・・・)
そのころには、私を中心にして風の渦をまいていた
そして、それを空中で古代文字を書く
【風の精霊よ、我に従え。共に戯れ、天近くまで舞い上がれ】
よし
『フィラト!』
香苗の体が宙に浮く
「よし」
トンっと、足を蹴ると一気に上空へ飛んだ
3週間ほどしか勉強していないが、この世界に来てから記憶力がいい
というよりかは、思い出しているような感覚があった
この世界での目標は、古代の歴史を探ること
ついでに、元の世界に戻る魔術も探す
それが、私の目標
この飛行魔術を見つけたのはごく最近
ある文献に、書いてあったので試したら出来てしまったというのがいきさつである
まぁ、楽しかったので遊び程度でしかなかった
ティニア曰く、誰も成功していない飛行魔術だから人前には出すなといわれた
空中で蹴ったスピードは速度を落とすことなく飛んでいく
まるで、風の抵抗がないように
水平線が見える景色を堪能しながら気持ちよく飛んでいると
強い魔力の波を感じた
(何?)
精霊たちの痴話喧嘩で小さな魔力がぶつかり合うのか感じたことは
多々あるがこれは違う・・・
口笛を吹きティニアに合図を送る
それに気づき顔を上げ、どうした?という表情を浮かべた
彼の手元に淡い青い文字が浮かんだ
【ツよい、マリョクはどうヲかんジた。キニなル、ムカッテいい?】
それを見て彼はうなずき、方向はどっちかと合図を送ってきた
私は、彼から右斜めの方向を指差し、40と指で合図した
ここの距離は、ディスという単位らしく、
1ディス約100mぐらいらしい
彼も合図した方向に転換し走り出す
20秒もしないうちに目的地に着いた私は近くへ降り
周りを見渡す
(近くか・・・こっち!)
気配がするほうへ走り出すと、そこには
怪我をした白い豹のような動物が男3人に囲まれていた
動物虐待とかそういうのが嫌いな私は即座にとめに入った
「そこ!何してるの!!」
凛と通る声が森に響いた
ざわついていた森も一気に静寂する
「誰だ!」
3人とも私のほうを振り向く
「動物をいじめるやつに!名乗るほどの器は持ってないわ!」
「んだと?!死にてぇのか!」
フンと、声にも出ないほどのため息をついて
「殺せるもんなら殺してみなさい・・・」
その冷えた声で言った
3人の中の1人以外は怯んだが1人だけ普通にしていた
(こいつ・・・戦いに慣れてるな・・・)
傭兵かと思ったが、そういう者もいるのだろうか?と疑問に思った
その男が、私に剣を向けた
「女を殺すのは、あんまりいい感じはしないが・・・
貶されちゃプライドが許さん」
と、一気に間合いを詰めた
私は一歩も動かない
振り下ろされた剣は、私から30センチぐらいのところで
鉄同士が当たる響いた音がした
「・・・ッ」
すぐに間合いを開ける
(手馴れてるな・・・)
「魔道士か?!」
「どうかしら、似たようなものよ」
「ふっ、所詮魔道士。結界を張ったって解除されちゃ
ただの人間だよ!」
札のような物を取り出し私に投げつけた
その時、私の結界にその札が張り付き
大きな音を立てた、稲妻が落ちるような大きな音
だが、ただ音が大きかっただけ
私の結界はまったく無傷だった
「なっ・・・解除札が効かない!」
「子供だまし?のつもり??」
ニヤっと笑い、私は攻撃魔法のひとつを宙に書き出す
「くそっ、お前たち!引け!」
と、言うとすぐさま2人は逃げていった
「あら、もうおしまい?」
悪魔のような笑みを浮かべる
最近、ここに来て私のキャラクターが変わっていくような気がする
はぁ・・・
「ッ、俺は、バスター、バスター・ディスアナだ!この勝負お前に預ける!」
と、苦渋の決断だったのだろうとても悔しがっていた
「あら、ご挨拶ありがとう。私は、セレネ。セレネ・アキータ。
いま。ティニア・ディスティーニと一緒にいるの」
「ディスティーニ?・・・あの、炎の賢者の・・・ふ、そうか
ちょいと、相手が悪かったな・・・また会おう!」
といい、立ち去ってしまった
会いたくないんだけどね・・・
そして、怪我をしている豹の方を向いた
「大丈夫?怪我」
膝を折りしゃがみながら同じ視線にする
『助けてくれて、ありがとう・・・』
うぁ、豹がしゃべった・・・普通なのかな?
しかも、女の子ぽい声
まぁ、ファンタジーだからv
「いえ、どういたしまして」
『あなた・・・私の声、理解できるの?!』
「できるといえばできるけど、近くによっていい?」
『命の恩人を拒絶するほどのことはしないわ』
「ありがと」
そっと立ち上がり、近くによって怪我の具合を見た
ほとんどが、剣の切り傷だが致命傷にはなっていない
結構深いな・・・
「ちょっと待ってね、今直すから」
『無理よ、私に魔力を当てても・・・』
「やってみなきゃわからないじゃない」
頬を膨らましながら言う
確か、ティニアが言ってたあの呪文使えるかな
掌に意識を集中した
「『大地の恵みよ、偉大なる光の精霊よ、我に従い傷つく者に祝福をそして幸福をもたらしたまえ』」
『へぇ、古代聖術が使えるの。でも、聖力が足りない。それに、その呪文は光の民が残したといわれる神聖術のひとつ、普通の人間では扱えないよ』
へぇ・・・これ神聖術なんだ・・・
ん?じゃーあの格好ならできるのかな?
意を決して、自分の力を解放した
【我の力をふさぎし者よ、汝の力を解き放て。ひと時の間、力を開放せん】
深淵の黒髪が、ガラスのように割れそこから七色の髪が浮き出てきた
うん。これならいけそう
『あ・・・あなた様は・・・』
「患者は、静かにしてなさい!」
と、叱る
同じ呪文を言うとすぅと傷口が閉ざされていった
これでよし
気を抜くと、7色に輝いていた髪の上にまた黒いものが覆いかぶさって
元の黒髪に戻った
「これでいいね、血だけはどうにもならないから。食っちゃ寝すれば
なおるから」
伏せの状態の豹がむくっとお座りの状態になった
こう見ると、立派な豹である
『突然、申し訳ないのですがこれは何かのめぐり合わせ・・・』
「なに?」
『私の主になってほしい
私は、光の民に忠誠を誓った聖獣の一人、2000年前からいなくなって以来
この世界の脅威を払ってきました。是非、あなたと一緒に旅をしたい』
ん〜・・・どうしよう。そういわれてもなぁ・・・
「どうしよう。ティニアがいないし」
と、呟くと
「いいんじゃない?何がわからないけど」
突然現れたティニア
豹も驚きすぐに襲える格好になった
「ま!待って!彼は味方よ!」
『そうですか、それは失礼しました』
たぶん・・・聞こえてないよね・・・はぁ
「えっとね、ティニアこの子飼っていい?」
言いにくそうに、言う私
突然、大きな豹を飼っていいかと言われたら
もちろん・・・
「かまいませんよ」
っていうよ・・・?は?いまなんて?
「え?いいの?」
「はい、ただし!世話は、ちゃんと見てください!それが条件です
あと、庭をみだらに荒らさないこと!」
豹の方をみて
「できる?」
『私は、聖獣。そんなこと容易いですよ』
「できるって」
「いいでしょう。しかし、その豹聖獣に似てますね・・・」
「え?だって、その子せ―」
『待って!聖獣って言わないでください』
「え?」
『聖獣は元々、ペットなどにしてはいけないと言う法律があります』
そ、そうなんだ・・・
『異例に、神に近い者は許されるとされているから。それは、
魔道協会が認定し、国王の承認を得てからの話』
ものすごいことをしてしまったようで
戸惑う私
そりゃ、聖獣だからって言うわけではなくて・・・
そこまで申請しないといけない獣を飼ってよいのだろうか
飼うって言うのもなんか変なきもする・・・
『しかし、私は主君に忠誠を誓った者。たとえ、世界を敵に回しても
私は、主の味方です』
なんか、かっこいい事言われた
ちょっと赤くなる
女の子じゃなきゃ、ほれてたかも。
と、思う私・・・
この、豹の名前はフェンリルというらしい
フェンリルって・・・あの、人間に化けられるといわれてる
あのフェンリルなのかな?