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僕と君 もう一つの「私達の愛」

作者: 蒼葉 樹

日本の、とある県のとある町。

僕達は、双子として産まれ、共に育った。


これは、僕達の小さい頃。

僕の、恋物語。




 *  *  *  *  *  *  *




「慎ー!早く行こう?

遅刻しちゃうよ!」


のんびり用意する僕を、栄美(えみ)が急かす。

彼女は僕の、双子の妹である。


「待って!もうちょっと!」


僕等の毎日は、こんな感じ。


この頃は、恋なんてまだ知らない。

ましてや兄妹の愛なんて、知る由もない。


僕の恋する相手が栄美だなんて、予感すらしていなかった。



あんな事になるまでは……。



「ねぇ慎、私達って何であんまり似てないのかな?」


不意に栄美がそんなことを聞いて来た。


「急にそんな事聞いて、どうしたの?」

「だってさ、兄弟とかって普通は何となく似てるじゃん。

私達なんて別々に暮らしてたら兄妹だなんて皆分からないんじゃないかと思って…」

「大丈夫だよ。僕達はちゃんと兄妹だよ」


口ではそう言った。

だけど、僕の栄美の見方が変わり始めたのは、この頃からだと思う。

栄美がそんな事聞くから。



その晩僕は考えた。

僕と栄美のことについて、沢山考えた。

僕達がもし、栄美とは兄妹でなかったら、僕にとって栄美は何なのだろう。


僕にとって栄美は家族であり、妹である。

僕が別の家族の子供だったら、栄美は僕の友達になるだろうか…。


結局その日は考え疲れてそのまま眠ってしまった。

栄美の眠る布団の隣りで…。




目が覚めると、そこには見たこともない世界が広がっていた。

辺り一面の花畑。

その中にぽつんと一人の可愛らしい少女が腰を降ろしている。

花の冠でも作っているんだろうか。

その子は僕の頭にそれを乗せて、楽しそうに笑っている。


僕まで幸せになってしまいそうな、可愛らしい笑顔で…。




それが夢だと分かったのは、栄美がいつものように僕を揺すりながら起こして来たから。


「慎、もう起きてよ!

私昨日みたいに遅刻するの嫌だよ!」


あ、又怒ってる。

僕はうっすらと目を開ける。


<栄美って…こんなに可愛かったっけ…>


ムスッとする彼女を見て、そんな想いが胸をよぎる。


……!?


自分の気持ちに驚いた。

僕は今まで、自分の妹を可愛いだなんて思ったことはない。


どうしてこんな風に思ってしまったのか。


<あの…夢の所為…?>


そう、夢に出て来た可愛らしい少女こそ、まさに栄美だったのだ。

僕はいつの間にか、彼女に好意を抱いていた。


だから、バレンタインが待ち遠しかったのは、言うまでもない。



「お母さん、もうすぐバレンタインだねぇ」


或る日学校から帰ると母と栄美の何気ない会話が聞こえて来た。


「そうね。栄美、今年は洋君にあげるんでしょ?」

「うん!喜んでくれるかなぁ」

「栄美のなら大丈夫よ。

こんな可愛い女の子がくれるチョコ、誰も断ったりしないわよ!」


ふんっ…。何て親馬鹿なんだ、家の母親は。

確かに栄美は可愛いよ。

でもダメ。栄美のチョコは、僕が貰うんだ。


「今年もくれるんだろ、チョコ?」

「あ、お帰り。チョコ?

だぁめ!今年は慎には無しだよ!」

「洋にあげるからか?」


分かってはいるが、一応確かめる。


「そ!だから…ごめんね?」


そんな悲しそうな顔するなよ。

こっちが悪いみたいじゃん。


「洋がお前のチョコなんか欲しがるわけないだろ!ま、せいぜい頑張れ!」

「もう慎ったら!本当にあげないからね!」


栄美の恋なんて、僕が応援するわけないだろ。

栄美を好きなのは、洋じゃなくて、この僕なんだから。



しかし、当日洋はちゃっかり栄美のチョコを貰って行った。

友達に見せびらかすほど、喜んでいた。


どうせ、僕達は兄妹だからダメなんだろ。

分かってるよ…そんな事…。


家に帰っても誰とも話す気力はなく、一人布団に倒れこむ。


コンコンッ…。


誰かの扉を叩く音。

僕はそれを無視して布団の上に寝転んでいた。


ガチャっ。


入って来たのは、栄美。

僕は彼女に背を向けるようにして寝返りを打つ。


「慎…。ごめんね…」


背後から聞こえる、泣きそうな声。

僕はむきになって、起き上がろうともしない。


その後彼女は何も言わずに部屋を出て行った。


廊下に来る人の気配がないか聞き耳を立て、姿勢を元に戻す。


ガサッ…と背中の下に何かが当たる音。

起き上がって見ると、小さな小箱が置いてあった。


栄美か…?

箱を開けると、小さなハートのクローバーの型をしたチョコレートが入っていた。

一枚の小さく畳んだメモも一緒に。


ゆっくりとメモを広げる。

それは、栄美の持っている、とっても可愛いハートのメモ。


それを読んだ後は、自然と顔がにやけてしまった。

今までのやきもちも吹き飛んでしまうほど。


僕は心の弾みを気持ち良く感じながら、母と栄美の元へと駆けて行った。




部屋に残された、一枚の小さなハートのメモ。

中に書かれていたのは栄美からのメッセージ。


「慎、意地張ってごめんね。慎のこと、ちゃんと好きだからね」



僕は単純だから。

君の「好き」が、兄妹としての「好き」って分かっていても。

凄く嬉しく思ってしまう。


それは、君が、大好きだから……。



――END――

慎って意外と純情なんだなぁと感じる作品でした。

皆さんにとって慎は良い男でしょうか??

是非ご感想下さい+゜*。:゜+(人*´∀`)ウットリ+゜:。*゜+.

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