陽気な天狗と鬼の金棒
妖怪もののオリジナル小説です。
いわゆるホラーものや伝奇モノのように、伝承の妖怪を掘り下げている訳ではございません。
また、人によっては鬱展開にとられるような描写もありますのでご注意を。
暗い、暗い、暗い。
どこまでも暗い、どこまでも深い。
ここは、森の中だ。
視界に永遠に広がるように見える、思える、そびえ立つ木々。
「はぁっ……はぁっ……」
湿った土を踏みしめ、僕は漆黒を歩き続ける。
何分経過しただろう。
何時間経過したんだろう。
頭の中を雑多な言葉が飛び交い頭蓋を反響するイメージにとらわれるが、脳はもはやそれを瑣末なノイズとしてしか認識しなくなっていた。
何が思考を占めようが、もう僕はどうでもいいのだから。
あるいは、僕はまだ『決意』を固めることが出来ず、無意識に絶え間ない現実逃避を脳内で執行しているのかも知れない。
死に場所などを求めて延々と森をさまよっているのが、その根拠だと言えた。
……この期に及んで情けない。森の中なら、どこでどう死のうと同じじゃないか。
もっとも、自分を情けないと思える感覚すら、もうすぐ消えて無くなるのだろうけれど。
「はぁっ……はぁっ……ぐっ」
地面からそれほど隆起もしていない木の根に足を取られ、転ぶ。
見上げると、それは周囲のものと比べてひときわ目を引く、大樹のようだった。
平均的な高さの木々が連なるこの森において、天に至る野心を殊更増幅したかのような、異端の樹木。
僕のようだと、自嘲が漏れた。
「……ああ」
もう、歩けそうにない。
大樹の幹に背を預け、足を投げだす。
息をつくと、精神を飛び交う文字群は成りを潜め、代わって現実の感覚が鋭敏になってくる。
耳に聞こえる虫の音。
寒波による空気の冷ややかさ。
鳥目にでもなってしまったかのように、次第に両目を侵す、黒色。
……現実味の無い光景だ。
これから命を絶つというのに、僕の五感はひどく虚ろな心待ちだった。
背負っていたリュックサックを地面に下ろす。
様々な有象無象の中から、束ねられた一本のロープを取り出した。
どこで死んでも同じといっても、餓死するつもりは毛頭ない。
死に場所を選んでいたというのは半分は言い訳なんかじゃない。この枝なら、僕の体重に耐えることができるだろう。
僕はロープをほどき--。
ざわ、と。悪寒のようなものを感じた。
「………………」
自殺を前に、曖昧だった五つの感覚。
でも、六つ目はどうだろう。
五感で知覚出来ないものを知覚する、第六感は……?
「何を泣いているのですか?」
気のせいだと思っていた存在は、五感にも干渉を始めてきた。
僕は上を見る。
ありえないものを見るだろうと警告する第六感に逆らって、見る。
そして、やっぱり見ないほうが生物の理にかなっていたと、後悔した。
常識に生きる生物ならば。悪寒を感じた時点で、僕は逃げるべきだったのだ。
「やれやれ……。仕事とはいえこうも毎回、遭遇した人間に同じ顔をされるというのも、少々飽き飽きしてきますね」
大木の頂点に直立しているその人影は、少女の声を用いてそう言った。
ロープを取り落とす。
ニ、三歩後ずさり、それでも足りずに尻餅をついた。
そう、もう、歩けそうにないから。
僕がそれから逃げる機会は、永遠に失われただろう。
何故なら……だって、あの人影は……背中から翼を生やしていて……
「よっと」
頭上からの声と共に、影が目の前に落ちてくる。
直立のまま落下したというのに、『彼女』は全く衝撃を感じた様子はなかった。
はらはらと落ちるのは、黒い羽。
堕天使でも舞い降りたかと、脳は解釈する他なかった。
「もっとも、貴方の場合は仕事ではなく私直々の招待なんですけどね。ああ……
これも一つの運命というものなのでしょう。ではさっそく!」
「う……うおっ!?」
ふわり、と体が浮く。間髪入れずに、視界が高速で飛び去っていく。
「…………っ!!」
足元から規則正しい、木と木がぶつかるような軽快な打撃音。
信じられない、信じられない。
影……いやもう曖昧な表現はしない。その少女は僕を横向きに抱きかかえて跳躍し、木々の枝から枝に飛び移りながら高速で走り始めたのだ。
「すぐに到着しますから。風が冷たいでしょうけど、我慢してて下さいね」
柔和な声でそう口にし、目を細める人外。
少女は顔の上半分を、仮面で覆っていた。
鼻の意匠が……やけに長い。
「くすくす。……そんなにおっぱいに視線を注がれると、ちょっと困っちゃいます」
「だ……誰が注目するか!」
あまりにも平然と女が語るので、こちらも徐々に混沌とした頭がマシな程度に収まってきた。確かに先ほどから跳躍に合わせて和風っぽい服装の胸が異様なくらい躍動してはいるが、今指摘すべき事柄はそこじゃない。
「お前は何者だ! ぼ、僕をお姫様だっこなんかして連れ去って……どうする気だ! いい、今すぐ下ろせ!」
「ようやくまともに私に話しかけてくれましたね。嬉しいです。でも貴方の申し出を受け入れることは残念ながら出来ないのですよ……逢磨くん」
「な……っ!」
少女の含み笑いと共に、更に風景が加速する。
突然顔面にガサガサと枝葉が直撃し、目を閉じた。
再び視界を展開すると……映し出されたのは、眼下に広がる遥かなる森の海。
そして黒い羽を散らす翼を羽ばたかせて飛翔する、女の上半身。月光に照らされる優雅な微笑。
「もうすぐ終点です。だからお眠り下さい、人間さま」
首を回し、少女の視界を共有する。
森の先に……ああこんなものは存在しないはずだ、樹海なんかに……集落なんて。
そして……天ほどの大きさの壁。歪みを持った透明な……。
常識と非常識を分ける、それは境界線だったのかも知れない。
透明な膜に衝突した架空の衝撃を、確かに五感に得たと自覚したのと同時に。
僕は、意識を失った。
サクリファイス ~あやかしの乙女達~
・陽気な天狗と鬼の金棒
そして僕は目覚めた。
最初に見えたのは木の天井。ほのかな陽光が顔を照らし、温もりを提供する。
夢か……とお決まりの台詞を口走ろうかと思ったものの、眼球か脳髄がおかしくなったのでない限り、そのようなオチは愉快な物語の終幕を告げるエンドマークにはなりえそうになかった。
僕は和室にただ1人、布団に寝かされていたらしい。
床は畳が敷かれ、床の間には掛け軸と、鞘に収められた日本刀。どう見ても僕や僕の家族の趣味ではなく、ここは自宅の寝室などでは断じてない。ついでに言うなら病室でもないだろう。
「あ、起きたんですね」
障子が開き、1人の女が入室してきた。その容姿を一目見て、僕はまだ悪夢の渦中に居るのかと極めて無難な決断を下す。
あの妙な仮面こそ外しているが……間違いない。
漆黒の翼と声色が、彼女を『奴』だと証明している。
「お早うこざいます、逢磨くん」
「……人攫い」
「くすくす、ご挨拶ですね。実に三日ぶりの会話だというのに」
謎の人外少女は、僕を抱き上げた時と同じ柔らかな笑顔で受け流した。
素顔のほうは鼻の高い化け物ではなかったようで、状況と境遇が別設定の下に構築されていたら、その微笑に思わず可愛いとでも漏らしていたかも分からないが。見とれていたかも知れないが。
今のこの展開の中では、胡散臭さが拭えない。
「気分はどうです?」
「最悪だ」
「それは大変です。確かにあの結界は人間を昏倒させる効果がありますからね。という訳でおでこを拝借」
「お前の存在が最悪だと言っている」
正座して額に手を当てようとするのを軽くあしらう。
上半身の和服に反し、下半身の装飾はどうやらロングスカートであったらしい。どうりで激しい跳躍走行が出来るわけだ。
「何だお前は……お前は何だ。ここは何処で、お前は何が狙いなんだ」
「ふむふむ、結局はそこに行き着くわけですね。……いいでしょう。正体を明かします。ことここに至っては私は逃げも隠れもしません」
「貴様は逃げも隠れもしなかった。僕をさらった」
「私の名前は潤香ツブテ。あやかしの隠れ里にて食料調達の役目を担う、天狗です」
両手を膝に添え、流麗なお辞儀をする少女。
唖然とせざるを得ない。
「……何だって?」
「私の名前は潤香ツブテ。あやかしの隠れ里にて食料調達の役目を担う天狗です」
ご丁寧に復唱して下さった。僕は布団から体を起こし、少女の表情に微塵も嘘偽りの類が伺えないことを確認した後、台詞を紡ぐ。
「自害を再開するも一興」
「床の間の刀を取らないで下さいね」
やんわりと腕を掴まれた。少女……ツブテだったか?も立ち上がり、視線を合わせる。
「テングとは何だ?」
「山の奥深くに住まうという妖怪です。鼻が高く尊大で、空を飛び木々を走り、迂闊な人間が山に侵入を試みようものなら音もなく滑空して……」
「深山に帰れ妖怪。 ……まったく、冗談じゃない」
辟易を表す動作としてばりばりと頭を掻く。誘拐犯に妖怪を自称された人間として、極めて自然な対応だろう。
「それを信じろって言うのか? 僕は天狗にさらわれて、人間界から天狗達の住まう領域に隔離されたと。馬鹿馬鹿しいにも程がある……程があるにも馬鹿馬鹿しい」
「いえいえ、誤解が無いよう申し上げますが、別にここは天狗が溢れる天狗天国ではないのです」
自分で言った台詞が面白かったらしく、再度くすくす笑いを零す天狗少女ツブテ。
「私はその……一身上の都合により天狗社会から脱退しておりまして。この村… …あやかしの里には天狗は私一人しかいません。ここは天狗の里というよりは、妖怪達の里なのです」
「ろくでもない場所に連れ込まれたもんだな……。あやかしの里……?」
海馬に検索をかけ、思い出したくもない中学時代の日本史の記憶を呼び覚ます。 ……わざわざ言うまでもない。この日本という極東の島国において、そのような名前の村は習った覚えは無かった。
「はい、ここはあやかしの里の一角、私の自宅たるお屋敷ですよ。正式な家人と呼べるのは私だけ。他にも使用人として三匹ほど妖怪を雇ってはいますけどね」
その声に呼応するかのように、障子の外、廊下の向こうからとたとたと慌ただしい足音が聞こえてきた。……勘弁してくれ、更に何か良からぬことが起こるのか?
「まあ、たまに賑やかな猫又さんが使用人達と戯れに遊びに来てしっちゃかめっちゃかにお屋敷を荒らしてくれたりもしますし、心を読めるお姉さんが顔見せに来訪したりもしますよ。外に出れば鬼が喧嘩を売りに襲来してきて危険ですが、私が付いていれば大丈夫です」
つきましてはお目覚めついでに、もしも逢磨くんの体調さえ良ければ使用人達にも自己紹介の場を設けさせていただきたいのですが……と、ひたすら冗長な意味の分からない能書きをまくし立てられたところで、
「ツブテさま~~! お兄ちゃんは目を覚ましましたか~~~!?」
不躾な大声と共に、更に謎人物が乱入してきた。
「舞檻、舞切。逢磨くんはおっきしたばかりなのですから、あまり五月蝿くしちゃ駄目ですよ」
「わ~っ!! 起きてる起きてる~! ひゃっほう! 三日もおねむしてたから舞檻、ず~っと心配してたんだよ~! ね、舞切」
「うんうん! もうキスでもしなきゃずっと眠ったままなんじゃないかって思ってたの~! 舞切も心配で心配でご飯が喉を通らなかったの!」
突然現れた二人の人物……いや、妖怪か? に対し冷静な態度で臨むツブテ。
ずいぶんと背が低く、少女というよりは幼女と呼称するのが正しいであろう体躯。両手の指先が辛うじて見える程度の妙に袖の長い和服を着て、その上からエプロンを装備していた。
だが、そんな服装などという情報を瑣末の彼方に追いやるものがある。
ツブテが天狗なら、こいつらは、獣人だとでも言うのだろうか。
二人、いや二匹の幼女には……動物と思しき耳と、尻尾を持っていた。猫やらウサギやらとは違い、一見しただけでは何の獣かは分からない。つややかな茶の毛色から、何となく肉食獣の類ではないかといぶかしむ。 ……この状況下では洒落にもならない話だが。
二匹の幼女、あるいは妖女は片方の髪型がポニーテール、もう片方がツインテールである以外、外見が瓜二つだった。ポニーテールの方がややテンションに異常をきたしていることも付け加えておく。
「一匹足りないようですが……。舞檻。舞塗は何処ですか?」
「舞塗はお兄ちゃんのおでこにつけてた手ぬぐいを取り替えに行ってるよ! 私達の中で一番おりこうさんだからね!」
「だから私達はこうして思いっきり遊んだり仕事を押し付けたりできるの~!」
「なるほどなるほど。 貴方達ニ匹のお給与の三割は舞塗のものですね」
「ええ~っ! そんなの不条理だよツブテさま~!」
「舞切は舞檻と舞塗と仲良し三姉妹でいたいから、お小遣いも平等にして欲しいの~! ちょっとでも均衡が崩れたら姉妹喧嘩が勃発して誰か死んじゃうかも知れないの!」
ツブテと二人の妖怪と思われる幼女の姦しい言葉の乱舞が響き渡る。
「そだ! ツブテさま、お給与の話は置いといて、お兄ちゃんの具合は大丈夫?」
「舞切、お兄ちゃんがいつ元気回復してもおかしくない頃だったからそわそわして飛んで来たの!」
「勿論元気ですよ。ねぇ逢磨くん……あら?」
「あれ?」
「ひれ?」
そこで、ようやく乱入者から僕に視線を寄せて気が付いたのだろう、疑問符を織り交ぜたツブテの声が聞こえた。
妖怪どもが会話に集中している間に部屋を抜け出した僕は、追跡を巻くため足を早める。
誘拐犯が仲間とのんびり雑談に興じ、自分は一切肉体を拘束されていないというのなら、これもまた当然の帰結。
僕の名前は鳥山逢磨。
常識に生きる一人の人間生物として、これより敵地を脱出する。
◆◆◆
「…………!?」
補足された。
テンションの高いポニーテールとツインテールの妖女コンビに。
「お兄ちゃん! 目を覚ましてくれてよかったよ! 舞檻、とっても嬉しいよ!」
「舞切もすっごく嬉しいの! 舞塗も戻ってきたらきっと大喜びするに違いないの~!」
前方。そして後方から、二人の得体の知れない少女の声に阻まれる。
………どういうことだ?
今度は足音すらしなかった。
廊下を走っていたら突然突風に襲われた。いきなり風が吹いて来た事自体は不自然な事では無かったが、気がつくと瞬間移動でもしたかのように、こいつらは権限していたのだ。
……妖怪。
「ところでお兄ちゃん、何処行くところだったの~?」
「厠なら反対側だよ?」
首を傾げながら、二人は徐々に距離を詰めてくる。
その顔面に浮かぶにやにやとした笑みは何だ。僕を取って喰うつもりか?
「あ、舞檻分かっちゃったよ。お兄ちゃんが何をしたいのか」
「なんなの~? 舞檻~」
「お兄ちゃんは……鬼ごっこをして遊びたいんだ!」
「なるほど! 分かったの!」
大気が消失したかのような緊迫が、一瞬。
僕は恥も外聞も無く、真横に跳躍した。
脳髄をよぎった未曽有の危機感に身を任せて。
着地をすれば、そこはもう、外側の地面。
庭園を目の前にした、外に面した廊下。日本屋敷の構造。
「ひゃんっ!」
地面に転がりながら、僕は一瞬彼女らを見る。妖女二人が真正面から額をぶつけ合い、昏倒したところだった。
「……あっはははははは! すごいやお兄ちゃん!!」
「私達を見切れるなんて、大したもんなの~!」
「……何だ、それは………」
僕は再び、失敗を繰り返す。天狗に遭遇し、逃走を忘れたのと同じように。一瞬
視線を寄せただけのつもりだったのに、そのまま眼球は釘付けになってしまった。
僕は超人じゃない。他人より五感が研ぎ澄まされている訳でもなければ、第六感が開眼した訳もない。
ツブテ少女や目の前の二人が妖怪だという話だって、鵜呑みになんて出来ないでいる。
だから普通なら、今の行動には無理があるのだ。たった今、少女の捕縛を紙一重で退けたという芸当は。
まだ具体的に、相手に何もヤバいことをされていない段階からほぼ不意打ちで『何か』を仕掛けられて、仕掛けられた直後に機敏な回避が出来るものだろうか?
ツブテは僕をいきなり誘拐した。
しかし二人の幼女はあくまで僕には二人の幼女にしか見えず、行動原理の情報すら不足しているのだ。
……僕は初対面の相手を何の手がかりも無しに危険人物と認定出来るような観察眼なんて持ち合わせてはいない。僕はただの平凡な17歳の少年なんだから。
でも、そんな普通の人間でも、事前に何が起きるか感づいていれば。
初めから少女が自分にいきなり飛びかかってくるのを、薄々想像できていれば。それが少々飛躍した想像であろうとも。
僕の黒目は、キャッチしていた。
だから脳内のサイレンを点灯させ、恐怖からの回避行動を実現させることができた。
それはほんの些細なサイン。
何かが光ったのが見えた。それだけだ。
笑みを浮かべながら近づいてくる幼女の丈の長い着物の袖……その両の手元で、銀色の何かが光ったから……!
「舞檻ね、お友達がいるんだ。そのお友達とは、よく遊ぶんだよ」
「うん。舞切もよく遊ぶの。舞檻と舞塗と三匹で、その友達と。……体を切り合う、楽しい遊びを」
ゆらりと立ち上がった少女二人は両手を上げている。長い袖が肘のあたりまですとんと落ちて腕が露出して。
その先端が、鎌だった。
色白の腕が、ある境から銀色の刃へ。
さっきまでのぞいていたはずの小さな指など、どこにも見えない。
「そのお友達はすばしっこいから結構楽しめるの。でもお兄ちゃんは人間さんだし舞切達と遊ぶのは初めてな訳だから。……縛りを設けてあげるの」
「舞檻と、それから舞塗。今から数を数えるよ。目を瞑って百数えてあげるよ。お兄ちゃんはその間に、舞檻達の目の届かない所まで、走っていいよ。百数え終わったら、舞檻達はお兄ちゃんを捕まえにいくよ」
「「お兄ちゃん、お逃げなさい」」
僕はその言葉に………甘える。
幼女二人に、言い知れない怖気と狼狽。
笑いたければ、笑うがいい。
あやかしの里と、人攫いの女は言っていたか。
村というよりは、下町のような雰囲気だった。
木造で瓦屋根を備えた古風な家が均等に並び、軒を連ねる光景。
そんな画の中を、そろそろ息を切らして走りから小走りくらいには動作を退化させつつある人間一匹というのが、僕の状態だった。
……やみくもに、ただ誘拐犯のアジトから離れるだけの目的で走ってきた訳だが、果たしてこの方角を移動してこの『里』を出ることは出来るのか。
天狗に遭遇した夜の、最後の光景が頭に浮かぶ。謎めいた半透明の壁に包まれた、森の中の集落。
あの映像が真実なら、この『里』は四方を森に囲まれていることになる。なら真っすぐ走っていけばいずれは森に出られるのか。
どんなに歩いても同じ場所に戻ってきてしまうという童話の森の話を連想し、気分が悪くなる。
妖怪の住まう里?
ならばこの世界は、妖怪達の妖気で満たされ、何らかの妖術が施されているんだろうか……。
「っ!?」
太陽の位置からどうやら時刻は早朝であるらしく、通りは閑散としていて人影一つ見あたらなかった。
だから道の角にさしかかった時、向こうから近づいてくる何かに気付き、僕はあわてて建物間の隙間に隠れようとする。
人間界の街なら助けを求めるだろう。しかし妖怪達のテリトリーだというのなら、用心に越したことはない。
しかし、僕が隠れる前に、相手は僕の存在を認知したようだった。
マズったか……?
「!」
もしもこれが漫画や小説の世界だったら、そんなマークが灯っていただろう。向こう側から近づいてきた少女(ここまで『少女』と記述する機会が多いのもいささか由々しき話だ)は僕の方を見るや否や、踵を返して走り去ってしまった。
……何だ? 逃げられたのか?
いや、もしかしたらツブテの部下か何かかも知れない。僕の居場所を知らせに戻ったのかも……と、疑心暗鬼故の冷静さを欠いた思考が勝手に開く。
しかしツブテの仲間とするには、今の少女は背丈こそ小柄だったものの、屋敷を出る前に相まみえた少女とは、似ても似つかない外見だったけど。
ちらりとしか見えなかったが、フリルのついたドレスと、背中からは虫の羽のようなものが生えていたような気がする。
ドレス姿に虫の羽の、小柄な少女。
………………。
まさかな。
ツブテは言っていたんだ。妖怪達の住処だって。
いつの間にか、超常的存在を前提にして脳細胞を働かせている自分を自覚する。
僕はどうやら頭がどうにかなってしまってしまったようだ。
「ん……?」
名称不明の少女が僕の存在に気付くまでには、少し間があった。視線が正面に固定されておらず、頭が斜め上を向いていたような……。
何となくそれが気になって同じように首を傾けると、立ち並ぶ木造家屋の中に、大きな看板を屋根に掲げた建物があることに気づいた。
『甘味処かんみどころ ゆんゆん亭』と書かれている。
……妖怪が経営する和風喫茶店だろうか。
先ほどの小柄な女子は、この店を目指して歩いていたのかも知れない。早朝の時間帯から来ているというのなら二十四時間営業なのだろうか。
ならばさっさとこの通りは立ち去るべきだ。これ以上正体不明瞭な連中に関わってなど、
「おい、そこのてめえ」
いられない、と、言おうとしたの、だが。
「てめえだよ、そこの人間。何をしている」
三度目の正直。
僕は今度こそ振り返る暇もなく、全速力で逃走をはかった。
――殺気。
これもまた、第六感だ。
「待ちやがれ!」
背後でだん、と地面が蹴られる音。
頭の上を影が通り過ぎたな、と思った刹那、声の主は真正面に着地を果たしていた。
その姿を見て、僕は三度硬直する。
二度あることは……三度あると。
それは今日から…僕の嫌いな定型句になるに違いなかった。
「見回りしてたら人間の匂いがしたんで来てみたら……お前は誰だ? 『食糧庫』から逃亡でもしやがったのか?」
顔のつくりや体型から、こいつも女であるらしい。随分と粗野な喋り方をしているが。
それよりも……容姿だ。
もう僕はそろそろ、笑うしかないかも知れない。
ああ、お前なら知っているよと開き直り、頼りない妖怪関係の知識を語ってもいいかもと、絶望と共にそう思う。
「鬼……」
誰にでも分かる特徴だった。
両のこめかみ辺りから生えた巨大な角。所々が破れ裂かれた、虎柄の着物。
そして片手で軽々と持ち上げ肩に担いでいる、巨大な金棒。
「しかし妙だな……。人間どもは『結界』でおびき寄せている以上全員おねんねしてるはずなんだが……そして目覚める前にメシに加工されるはずなんだが」
訳の分からないことをぶつぶつと呟く鬼。
袖はバッサリと切り落とされ、生傷の多い腕が露出している。右目の位置には眉から頬にかけて引っ掻いたような傷がつき、その影響からか、左右では瞳の色が違うように見えた。
恐ろしい。
今までで最大の恐ろしさを放つ女が現れた。
「……まあいいさ。その程度の謎なんざどうだっていい。ただ、目の前に人間がいるってんなら」
鬼の少女は空気を穿つ音と共に、トゲのような突起に覆われた金棒を僕に突きつけた。顔面ぎりぎりの位置にその先端が近づく。
「殺したくなるってのが鬼の心理だ。人殺しは初めてでね。金棒も腹の虫を鳴らしているぜ? くっくっく」
今朝からずっと、色々な笑顔を見せられてきた。その中でも飛び抜けて残虐で邪
悪な笑みを頭に貼り付け、鬼は金棒を振りかぶる。
僕は……死ぬのか?
僕は死にたかった。自分で命に幕を下ろそうと、自殺の名所と言われているのを聴いて、森に足を踏み入れた。
その結果……なんだこの茶番は。
これは実は自殺に成功した僕が見ている夢か幻?僕はせめて、これが幻覚なのかどうかをいまわの際に確かめてやろうと、目を見開いてその時を構える……。
……だから、凶悪な少女が血相を変え、金棒を引いて飛び退いたのを目の当たりにした。
「お兄ちゃん、みいいつうけたあぁああ~!! おっ待たせえぇ~! きゃはははははは!」
「あれあれ~、鬼ごっこの筈なのにお兄ちゃんが本物の鬼さんに絡まれて針の筵なの~。お兄ちゃん、その鬼さんはちょ~っぴりアブナい雰囲気の妖怪ひとだから遊ぶのは止めた方がいいの!」
「……鎌鼬かまいたちの姉妹どもかよ」
鬼少女は舌打ちをして、幼女二人を無遠慮に睨みつける。幼女はそれに臆するどころか、『でも私達にとっては鬼ばらですらオモチャなんだよ!』とばかりに満面の笑みを崩さない。
「畜生が……この人間、あの堕天狗の家畜なのかよ……」
今何と言った?
「そうだよ!」
「そうなの!」
肯定するな。
「けっ……ならますます殺意が湧いてくるな……。坊主憎けりゃ袈裟まで憎い。あいつに一泡吹かせるにゃ絶好の、機会……」
「駄目だよ鬼さん。お兄ちゃんは舞檻と舞切と舞塗のお兄ちゃんで、ツブテさまの恋人なんだから」
「そうなの鬼さん。お兄ちゃんを殺したいっていうなら、ツブテさまに土下座でもして頼めばいいの」
「誰があんな女に! あ~もういいや、元々お前らにまともな言葉なんざ通じねえってことは分かりきってたことだもんなぁ……その鎌、鬼のように壊してやるよ!」
鬼は幼女二人に襲いかかる。より距離が近かったポニーテールの方を叩き伏せようとして、
「あはは、……やっぱり鬼さんは鬼さんだよね」
……人間たる僕には、何が起きたのか即座には判断出来なかった。
少女の体を中心に、渦巻き状に砂埃が舞い上がったような……と思うのと同時に、標的は金棒の軌道から消えていた。
「知ってる鬼さん? 今はちっちゃい女の子に手を出したりすると……すっごいしっぺ返しを喰らっちゃう時代なんだよ?」
「そうそう。ガードが厳しいらしいの。妖精の修理屋さんが話してたの。危ない写真とかを持ってるとそれだけでお縄についちゃうらしいの」
「知るかそんな物!」
鬼が振り向くは明後日の方向。いつの間にかそこに二人とも移動を果たしていた獲物に再度振りかぶる。……これも空振りした。つむじ風と同時に妖女は姿を別の場所に転送している。
「鬼さんこちら~」
「手の鳴る方へ~」
「なめんじゃねえぇえ~!!」
くすくすという笑いが四方八方縦横無尽に聞こえてきて、一人の鬼を取り囲んでいるような気分になる。僕は鎌や金棒が届かない場所に非難することも忘れ、棒立ちで戦闘模様を眺めることしか出来ない。
「ちいぃっ……一匹足りなくても五月蝿い奴らだぜ……むしろ逆に益々生き生きしてるような……ああムカつく!」
「あはは、惜しいね、こっちだよ~」
「あはは、惜しいね、こっちなの~」
鎌少女らは、心底この殺伐とした戦いを楽しんでいるようだった。しかし何度目かの鬼の攻撃をひらりと逃れて正面に回り込み立ち止まったところで、二人はため息をついて上目遣いに鬼を見る。
「う~ん、何だか飽きてきちゃったよ」
「鬼さんが本気出してくれなきゃつまんないの」
「本気出してないのはてめえらだろうが!あたしと戦う気なんて最初からねえんだろ! お前らあたしをからかってんのか? からかってんだろ鼬ども! 今日こそ駆除して……」
「そういえば舞切、舞檻は何でこんな所で鬼さんと戦ってるんだっけ?」
「舞切にも分からないの。そろそろお腹も空いてきたしツブテさまも心配してる頃だろうから、早くお屋敷に帰った方がいいかも知れないの……だから」
「……そうだね、ねえねえ鬼さん」
渾身と思われる一撃も捌き、鎌を掲げた妖怪幼女は鬼少女の前に並んで立つ。僕の目がおかしくなったのでもない限り、二人の幼女は両足が地面についていないように見受けられた。
「「バラバラに切られて、千切れちゃいなよ」」
妖怪の鎌が、唸る。人間の僕には、その一連の動作を目で追うことは不可能だった。
「ぐ……あ、………………っ!!」
ジェットコースターが苦手な人間が悲鳴すら上げられず速度に恐怖するように、
鬼を相手にした幼子の遊びは瞬く間に絶叫をも打ち消して終わりを告げた。
何か質量のある風が吹いたなとまず感じ、直後に顔面にぱさりと布状のものが付着する。そして風が止み、訪れる静寂。
付着したものを剥がしてみると、それは赤い飛沫のアクセントが施された、虎柄の布だった。
足元にも同じ布が破れ散らばっているのをじっと見ている僕をよそに、「一丁上がりだね」という無邪気な声がどこからか聞こえる。
僕は妖怪少女が鬼に何をしたのか怖くて確認することも出来ずに、足元を見続ける。
……『殺し』が顕現した。
頭痛がしそうな、理解しがたい展開の連続。
森をさまよい歩いていたら天狗にさらわれて妖怪の住まう里に隔離され、下手人のアジトを飛び出したら鬼に襲われ殺されかけた所を二人の幼女が両手を鎌に変えてさっそうと現れ鬼退治。
……僕は何故此処にいるんだ? 何故こんな奇妙不可思議な状況に立ちあっている?
夢ならそろそろ覚めてくれ。
そして僕をさっさと殺せ……。
「ひ………ぃ…………ああああああああ!!」
絶叫が、遅れて聞こえた。それは紛れもなく、殺された鬼のもの。
残響か? いや、これは……、
「ひあぁあ……み、見るなあぁあぁあ!!」
……残響ではなかった。
「あははは! 鬼さんこれで214回目の負け越しなの~!」
「ちょ~っぴりキレはよくなったみたいだけど、まだまだ舞檻達をハダカにするには程度が低いよ!」
「ひ、いぃい……ひぎぐうぅうううぅ……っ!!」
怒り狂い、金棒と殺気を振りかざしていた鬼の女は……今。ほぼ裸身でうずくまって執着に苛まれているところだった。
『ほぼ』という形容がされているのは、布切れがかろうじて破廉恥ハレンチな部分にへばりつき、肌の露出を8割ほどでぎりぎり食い止めている為。
鬼の目にも涙というが……初めて僕は、実例を見ている。
「っ! ……き、き、貴様あぁ!! 何あたしをじろじろと見てやがる!! あたしは鬼だぞ! 殺人という言葉を頭に掲げて最悪の大罪を具現化出来る、最凶の妖怪なんだぞっ!! 人間ごときが、人間ごときが……何であたしをそんな目でえええうぅうう! 馬鹿馬鹿馬鹿~っ!! 死ね死ね死ねっ、殺してやる~う!! つうかむしろあたしを殺せえぇええぇぇ!! うわあぁぁあああああん!」
……当然の心理だ。
予期せぬ事態によって全裸同然の状態にされて更にそれを異性に見られておきながら尚まんざらでもない反応が出来る女なんて、せいぜい漫画アニメライトノベルの中にしか存在しない。しかも年端もいかない子供に服を裂かれたという屈辱付きだ。場合によっては男でも泣き叫びたくなるというものだろう。
しかし……先ほどまであんなにも意気揚々と黒い哄笑で物騒な単語をまくし立ていた鬼人とはあまりにギャップがありすぎて、その……何だかなという感じだ。
「えぐ……ひっく、ぐすん………、くそお、私を殺せぇ~……。ううう、こんな思いするくらいなら生まれてきたくなかった……もう死んだ方がましだ………鬱だ死のう」
「駄目だよ鬼さん、自殺はぜ~ったい! 生きていればきっといいことあるから、ね?」
「それにこんな面白い鬼さんに死なれちゃったら、遊び相手が一人減っちゃってどんとはらいなの!」
「うるせえぇ! 心にもない慰めを口にするんじゃねええ!」
「頑張って頑張って~」
「頑張って頑張って~」
精神を切り刻みにかかる鎌幼女。泣きじゃくる鬼。
命を奪われかけた側としてはさほど可哀想だと思わないが……ここまでカヤの外にされるのも少し困る。
……いや、待て、僕は何を言っている?
今が逃亡の絶好のチャンスじゃないか。 殺されかけた状況でまだ棒立ちになるなんて……僕はどうかしている。 妖怪の里という異常空間ということを差し引いても。
「こらこら、もうその辺にしておきなさぁい」踵を返そうとした所で、滑らかな声が空気を震わせた。
……まだ何か出てくるというのか。 僕に考える余裕をくれ。
「あ、読心さ~ん」
「読心さんなの~」
「その呼び方だと『独身さん』みたいで何か嫌ねぇ。新しい名前が欲しいわぁ。」
先ほどまでいびっていた鬼を完全に放置し、妖怪二名は嬉々として走り出した。
そしていつの間にかそこに居た一人の女に飛びつく。
誰か教えてくれ。
下手物の皿は、あといくつなんだ?
「うげ……悟り女……っ!」
「あらあら、随分とご挨拶な反応ねぇ、八岐オヌさん。 ふふ、『踏んだり蹴ったりだぜ畜生』ね。 分からなくも無いけど。 そこの坊やは大丈夫?」
いきなり話を振られ、動揺する。 いや違う、この女は突然現れた時から、横目で僕を見ていた。……まるで僕に釘を刺し、縫いとめるかのように
「そんなに警戒しなくてもいいのよ。 横目でものを見るのはただの性分だから。 くっすくすくす。 ……あら、貴方が潤香ツブテの言っていた恋人さんなのね。近距離恋愛が出来て良かったわ」
こちらが何も喋っていないにもかかわらず(というか、此処に連れ込まれてから天狗以外とは一切会話していないが)、意味の分からない言葉を繰り返す女。こっちの笑顔は随分陰湿さが際立った感じだ……。
「陰湿ねぇ……。 私としてはそんなつもりはないんだけど。 私は人間とも妖怪とも親しくしたいのよぉ」
「……さっきから何を言っているんだ? 僕は何も喋っていない」
「ふふっ、やっと口をきいてくれたわね。 嬉しいわぁ」
にっこりと柔らかく笑う。
……局所麻酔をかけられた状態で胸を切り開かれているような気分だった。何かが痛みなく体内に侵入し、心臓にねじ込まれるような感覚。
何だ、この感覚は。
僕は今、こいつに何かをされているような気が……する。
「面白い比喩を使うのねぇ。 それにしても、ここまで台詞を排除して状況解説や心理描写に傾倒するキャラクターさんも珍しいわぁ。 貴方がこのシーンまでに台詞を口にした回数が何回か、時間を戻して読み返したい気分」
何の話だ。
「私は世界を表層と内面に分けて見ているの。 私には隠し事は出来ない。 世界の真理……もとい心理が私には見えているから。 初めまして人間さん。 私の名前は飛騨野こころ。 深層破りのサトリの妖怪よ」
袖を口元に添え、女は低く妖しく笑んだ。
死に装束のような、白い無地の着物。その為か、全体的に存在感の印象が曖昧で
幽霊のようにも見える。 いや、実際に幽霊なのかも知れない。
サトリの妖怪……と言ったか?
「そう、サトリの妖怪。 幽霊ではないのよぅ? サトリはね、生けるものの心を見通す目を持っているの。 貴方が今何を考えているかも筒抜けなんだからぁ」
「かなり厄介……いや、えげつない妖怪がいたものだな」
「厄介でもえげつなくても、居るものは居るんだから仕方ないわぁ。 存在するものは目を瞑ったってそこにあるの。 生きてようが死んでようが、箱の中に居る猫の存在は揺るがないようにね」
そういえば昔、思っていることが全て他人に筒抜けになってしまう人間が出てくる映画を見たような気がする。あれはこの妖怪のアレンジだったのだろうか。
「読心さん、この人間さんは私達のお兄ちゃんで、鳥山逢磨っていうんだよ!」
「なの~!」
鎌女どもがサトリの妖怪に頬ずりしながら満面の笑みで語りかける。それにあわせて何故かこちらを流し目で見るサトリ。
「へぇ……鳥山……ねぇ。それに逢磨か。いい名前ね」
「……含みがあるような物言いだな」
「ふふっ、気にしないで。貴方のご両親は悪くないセンスだと思っただけだからぁ。名前は大事ではあるけれど、これは別に伏線じゃないし」
「意味が分からん」
「それから、サトリは種族名だからね。私には飛騨野こころっていう名前があるの。飛騨市のヒダに野原のノ。それからコル・ココルのココロよ。覚えておいて」
妖怪に名乗られたのは、これで二度目だった。
覚えるも何も、僕は……。
「この里から逃げ出したいっていうなら無駄よ、鳥山逢磨」にこやかな笑顔はそのままに、こころは空気を切り裂く言葉を言い放つ。それこそ、心を抉るように。
「悪いけど、心を読むまでも無いのよぉ? 貴方はここから出たところで、行くあてなどありはしない。ここに囚われた時点でそれは明白なんだからぁ。この里は、そういう風にできているんだし」
「なっ………」
「あるいは潤香ツブテに魅入られた時点で決していたのかしら。中途半端な覚悟で死にに来ただけだったら、あやかしに連れ込まれない限りこの里には入れないものねぇ。……どちらにしろ終わりよ。貴方はあの子から逃げられない。この里からもね」
僕は、絶句する。
やってみなけりゃ分からないとかほざけ妖怪とか、そんな反論を無言のうちにひねり潰すほどに……その言葉には真実の響きが満ちていたからだ。
従うしかない。言い返すことも無意味。
存在しているだけで全てを平伏させる……真実。
「?? 読心さん、何を言っているの?」
「お兄ちゃんは逃げも隠れもしないよ。ツブテさまに好かれた人が逃げたりする訳ないじゃない」
「くっすくすくす。そうねぇ。それならいいんだけど。ふふっ。それじゃあ舞檻、舞切。まだ早朝だし人間さんはご飯もまだでしょう? 連れて帰ってあげなさいな」
「じょ、冗談じゃ……!」
「悪いことは言わないわ。女の子をあまり待たせるものじゃないわよぉ? …… 里を出たいっていうのなら、頃合いってものがあるんじゃなぁい?」最後の方で小声で囁くように何か言ってきたが、誘拐犯のアジトに逆戻りというのは断じて御免だった。僕は何の為に命からがら逃げ出してきたというのだ。
「人間さんには理解の及ばない所かも知れないけど、住めば都。ここもなかなかいい所なのよぉ? いい子だっていっぱい居るし。ねぇオヌさん?」
「………うっせえ」
無様な姿をさらしている鬼少女は、地獄のように低い声を吐き出し、何故か僕に
鋭利な視線を向ける。
「覚えてやがれ人間。あたしは必ずあんたに仕返ししてやるからな!」
次の刹那……彼女は消失した。
一瞬黒い光が辺りを包み込んだのを最後に、地面に散らばる布切れを残して、鬼はテレポートでもしたかのように居なくなった。
「照れ屋さんねぇ。それじゃ、ただの通りすがりの私も失礼させてもらうわぁ。
今度また、ツブテの所には、また今度顔を見せに行くからね、舞檻、舞切」
「分かった!」
「分かったの!」
「うおっ!?」
両腕をそれぞれ妖女にしがみつかれ、拘束される。
信じられないことに、振りほどけない。
「鳥山逢磨。また合いましょう。……その時はもっと、貴方の心に入り込みたいわねぇ。くっすくすくす! じゃあね」
「ばいばい読心さん! 早く帰ろお兄ちゃん! 舞塗が朝ごはんを用意して待ってるよ!」
「カラスは鳴いてないけど帰るの~!」
「ぐ……離せお前ら! どう考えても幼女の力じゃないだろうこれは! く、くそおおぉおお……」
なすすべもなく、僕はいつの間にか鎌から普通の両手に戻っている妖怪どもに引きずられ、屋敷へと返されるのだった……。
◆◆◆
「お帰りなさい逢磨くん。もぅ、お散歩をしたいのであれば私に一言声をかけてくれれば良かったのに。人間の逢磨くんの場合は、ほんの少しだけこの里は刺激が強いのですから」
「楽しかったですよツブテさま~!」
「いっぱいいっぱい遊んだの~!」
「………………」
引き戸が背後で閉ざされる音を聞きながら、僕は口を閉ざす。
誘拐犯のアジトの玄関では、背中から翼を生やした主犯の女がほのぼのとした面で待っていた。
「ん? どうしたんです遭磨くん。お腹でも空きましたか?」 ……どうやらこの妖怪、僕が逃げ出したなどとは最初から思っていなかったらしい。
幼女が追ってきていたのは本当に遊びたかっただけなのか。
分からない。
こいつは何を考えているのか。
「舞塗が朝ご飯を用意していますので、まずは食堂へ行きましょう。遭磨くんへの歓迎の宴です。人肉料理や魅惑の美酒を心ゆくまで堪能しようじゃありませんか」
…………っ!?
至福の笑顔でさも当たり前のようにそんな言葉を吐くツブテを、僕は黙視することができなかった。
まだ僕の両腕を拘束している妖怪の腕を必死の形相で振り払う。……今までにない激しい抵抗に驚いたのか、奴らは腕を放して引き下がった。
「この……化け物がっ!!」
そして、本能から僕はツブテに怒鳴る。
それはもはや、ただの一時の感情による怒りではない。
種族上の立場が生み出す道徳観の違いによるもの。
「お、逢磨くん……?」
「お、お前らは何を考えているんだ! ふざけるな! 人を勝手に誘拐しておいてさも親しげに規定事項のように交流を図ろうとしやがって!」
「お、お兄ちゃん、落ち着いて……」
「触るなっ……!」
恐怖が呼び覚ます叫び。
訳の分からない世界に拉致されて、ただでさえ不安定になっていた精神は……ここに来て完全に瓦解した。
三匹の妖怪は、何を興奮しているのか分からないといった表情で、僕を見ている。
……恐らく、本当に分からないのだろう。
種族が違うのだから。
「人肉……だと?」
「……あ」
「人食いめ……ならばお前らは確かに妖怪だよ……。僕はこれ以上、こんな異常な世界になんて留まっていられない。何が目的かは知らないが、僕は妖怪などには関わりたくないんだ」
「そ、そうだよね、お兄ちゃん人間だもんね。人肉料理は好きじゃないかなあ… …。でも、でもね、ツブテさまは」
「行動で伝わらないなら言葉で伝達させてもらう。……僕を解放しろ、妖怪。僕はこの里を出て行く!」
「そんなの嫌ですっ!」
突然、ツブテが絶叫し、僕にしがみついてきた。
いきなりの行動に体がぐらつき、玄関の扉に背中をぶつけた。……運の悪いことに扉が外れ、さらに地面に叩きつけられる。
脳の中に銀河が瞬いたような錯覚を得て、僕は二度目の意識消失を味わうことになったのだった。
「………う」
「気付いたですか? お兄ちゃん」
二度目の覚醒は、やはり布団の上でだった。さらに周囲を確認する前に夢オチを否定してくれるオマケ付きだ。
「ここまで気絶してばかりの人間さんも珍しいのです。一度目は妖怪の賜物でも、二度目ともなると物語的なご都合主義を感じるですね」
「…………ここは何処だ。朝居た和室か?」
「そことは違う和室です。今朝のあの部屋はツブテさまの自室。ここが本来のお客様用のお部屋なのですよ」
僕が再び目覚めた部屋は、床の間に刀が無いなど、あの和室とは僅かな違いがあった。
もっとも、室内全体に闇が降りている為に、視界も最善とは言い難い状況だけど。……どうやら気絶している間に、朝から夜に飛んだらしい。
驚くべきことなのか当然のことなのか、僕に語りかけてくるその少女の姿を明瞭にする室内の明かりは、行灯だった。
「……お前も、妖怪か?」
「はい、妖怪ですよ。ツブテさまのお屋敷にて使用人を勤めております鎌鼬三姉妹の三女、舞塗と申します。お初にお目もじ仕りますです」
布団の脇で行儀よく正座している少女は、なる程、言われてみればあの二匹の鎌女と同じ出で立ちをしている。性格も随分と落ち着いたもののようだ。
ポニーテールとツインテールだった二匹に対し、こいつは頭の片側だけを結んだ髪型だった。片側ポニーテールとでも言おうか……。
頭を打った影響からか、思考が少しばかりぼんやりしているのを感じる。……起き上がる気力も起きない。
「ふん……今人食い妖怪に襲われれば、むざむざ餌食にされることしかできなくなるな」
「そんなことは起きないです。この屋敷に居る限り、お兄ちゃんが他の妖怪に食べられるなんて事態にはさせません」
「ツブテは人肉料理で僕をもてなそうとしていたがな」
「やはりそれが、怒った理由なのですね」
舞塗とやらは眉をひそめ、少し悲しげな表情を浮上させる。……何故か胸の中に釈然としない、謎めいた靄が渦巻いた気がした。
「ツブテさまもあねさま達も、悪気は一切ないのです。逢磨お兄ちゃんが人間の肉の料理に嫌悪感を示すことを知らなかっただけなのです」
「そのくらい知っていてもらいたいものだがな」
「妖怪は案外、人間のことは知らないのですよ。人間だって、現世や常世全ての妖怪の何もかもを知っている訳ではないですよね?」
「だから僕を、研究対象にでもする為に誘拐したのか? 宇宙人もかくやだな。ぜひとも記憶を消して現世に返していただきたい」
「……お兄ちゃんは、勘違いをしているです。ツブテさまがお兄ちゃんをさらったのは全くの私情によるものなのです。この里における人間に対する扱い云々とは、関係ないのですよ」
「だから、動機は何なんだ? 何故あの天狗は僕を連れて来たんだ。人食いと関係ないというのなら」
「ツブテさまは、逢磨お兄ちゃんに恋をしているのですよ。だから、側にお兄ちゃんを置いておきたかったのです」
舞塗は薄く微笑みながら、一切の躊躇もなくはっきりと、そう口にした。
………………。
ぼんやりしていた脳髄が、覚める。
「………………、何故?」
「恋に理由なんて必要ですか?」
時と場合によるだろう。そしてこれは明らかに問い詰める必要のあるケースだった。
「……いつからだ」
「お兄ちゃんが人間界……この里の外の世界に暮らしていた頃からです」
「馬鹿な。僕はあんな女を見たことは無いし、会話をしたことも無い。僕の17年の人生に妖怪なんて、一度も……」
そこまで言って、僕はようやく、本当に今更のように……気付く。
何故ツブテは、僕の名前を知っていたんだ?
僕に出会ったその瞬間から……。
「お兄ちゃんから見たら、そうなのでしょうね。お兄ちゃんは生まれてから今まで、おそらく一度たりとも妖怪に関わったことはないはず。怪異に遭遇したことも、妖術に誑かされたこともないでしょう。しかし、ツブテさまは、お兄ちゃんを見ていた」
「だから、それはいつからだと、」
「ずっと前から。そうとしか舞塗には申し上げられませんですね。ずっと前から、お兄ちゃんのことが好きでした……ええ、舞塗ではなくツブテさまがです」
「っ……教えろ!」
僕は、起き上がった。
起き上がる気力が、生まれたからだ。
「お、逢磨お兄ちゃん……?」
「いつからツブテは僕を見ていた……ツブテは僕のことをどれくらい知っているんだ!」
肩を両手で掴み、激しく揺さぶる。
自分でも、異常なほど気が高ぶっているのは分かっていた。奇妙な行動をとっていることは分かっていた。
ツブテはずっと僕を見ていた。
それ自体はどうでもいい。ストーカーめいた真似だとでも冷めた感想を紡いでピリオドを打とう。
だが……だが……、ツブテはどこまで僕を………見ていたんだ?
もしも……見ていたとしたら。
あの時もあの時も……そして……あ、あの時の光景も……。見ていたとしたら……!
「逢磨お兄ちゃん………痛いっ!」
ふいに、金物をひっかくような声が、聞こえる。
我に帰った。
爪は目の前の、幼き容姿の少女の皮膚に食い込んでいる。
血が、滲んでいた。
赤い、色の。
「……う、」
両手を離す。
舞塗は肩で息をしながら、震える瞳をこちらに向ける。
また、胸に痛み。
「……この舞塗が失礼な真似をしたというのなら……謝りますです。さすがに少し……お兄ちゃんを領空侵犯し過ぎたかも知れない………ですね」
「僕は……」
「舞塗は下がらせていただくです。何かご要望がございましたら、いつでもお申し付け下さい。音も無く参りますですので」
揺さぶられたせいで多少乱れてしまった着物と姿勢を正すと、挨拶をした時にツブテがそうしたように、両手を揃えて頭を下げた。
そして上げると同時に……その姿が消え、髪が舞い上がるほどの強風が室内を襲った。
行灯の火が消え、障子がけたたましい音を立ててひとりでに開いたかと思うと、
またひとりでに乱暴に閉じられる。
そして訪れる静寂。
「……………」
操り糸が切れたように、僕は布団に倒れ込む。
説明文を設けるにはあまりに名状し難い複雑な感覚が入り混じったため息が漏れた……。
◆◆◆
舞塗が食堂に戻ると、舞檻、舞切、そして主のツブテが彼女を待っていた。
「どうでした? 舞塗。逢磨くんは」ツブテの問いに、舞塗は無言で首を振る。
「逢磨お兄ちゃんは情緒不安定になっているです。そっとしておくことが今は賢明かと思われるのですよ」
「……やっぱり、その、お肉がなの~……?」
「はい。お兄ちゃんは大変気分を害してしまったようです」
「様子は、どんな感じだった?」
「情緒不安定と申し上げましたですよ」
「……お兄ちゃん、喜んでくれると思ったんだけどなあ……、お兄ちゃんが人肉を食べない人間だったなんて知らなかったもの」
「人間を食べる人間も世界には居るって猫耳さんは言ってたの……お兄ちゃんは違ってたってことなの~……?」
二匹の妖怪少女は消沈の面持ちで俯く。……ツブテもまた彼女らと同じ心境ではあった。
逢磨くんを初めて見た時、とても私に似た人だと思った。
こころさんとは全く別の意味で、あの人と気持ちを通じ合わせたいと思った。
この里が具現化しているこの森に逢磨くんが誘われたのは、運命という名の必然。
あやかしの結界は、逢磨くんのような人間を引き寄せる力を持っているのだから。
逢磨くんを捕まえれば、何もかも上手くいくと思っていた。……でも、拒絶されてしまった。
ツブテの心の中では、逢磨に罵声を浴びせられた記憶が鋭利な刃となり、精神を苛んでいた。
だが……もう一つ、それとは異なる別の感情も、彼女の中に泡立っていた。
ツブテが落ち込む舞檻と舞切に対し、表情だけは凛とした態度でことに臨むのも、あるいはその感情表現の種類によるものなのかも知れない。
「……あやかしの里には人肉しか食べ物が無いという訳でもありません。一部の非人肉食いの妖怪の為に畑や田園だってありますし、甘味処にも行けます。これからは、逢磨くんが同族の犠牲者関係の物に関わらないように配慮しなければなりませんね」
ツブテが席を立つと同時に、舞檻と舞切が食器の片付けに入る。
食欲が無かったらしく、食べ残しが皿の上に大分存在していた。それを見ながら、今後この献立は逢磨の前では禁止になるのかという落胆を、使用人達は呑み込む。
「舞塗、今日はもう休んでいただいて結構です。明日は肉を避けた朝食を用意してあげて下さい。逢磨くんは人間です。栄養配分も考えて」
「分かりましたです。ではお先に、失礼させていただきますのです」
舞塗は頭を下げ、食堂を出ようとする。……しかしツブテは、それを見つけてしまった。
「……? 舞塗、待って下さい」
「はい?」
呼ばれた少女は主に振り向く。勿論その時点で、何を問われるかは見当がついていた。
「その両肩の傷は、何ですか?」
「…………」
ツブテは目を僅かに細め、舞塗の身体を冷却するように見つめる。そこに傷の程度を気遣う配慮は皆無だった。
「これは……ん……お兄ちゃ、逢磨さまが………」
「逢磨くんがやったことぐらい分かっています。二階に上がる貴女の肩は無傷でしたからね。問題は、何故逢磨くんが貴女の肩を傷つけるような事態になったかということ、なのですが?」
声を低め、ツブテはゆっくりと、舞塗に近づいていく。
そしてほとんど身体が密着する位置に……彼女を真上から睨みつけられる、視線の殺気を最も高められる場所に立つ。
舞塗は後ずさることすら許されない。主人の尋問から逃げ出す使用人が何処にいるというのか。
「………逢磨くんがそんな行動に出るような精神状態を生み出したんですか?」
「……申し訳ございませんです。十分に配慮はしたつもりだったのですが、」
「何をしているんですか! 貴女は!!」
部屋中の壁に、ツブテの怒鳴り声が響き渡った。
不穏な空気に静止していた舞檻、舞切は、びくりと身体をこわばらせる。当の舞塗は表情を崩すことなく、しかし神妙にして彼女の叱責を受け止める。
「私は貴女に命じたはずです。逢磨くんを説得し、調子が良くなっていれば食堂に連れてきなさいと! 何故ますます逢磨くんを沈ませるようなことを!?」
激昂の理由は、おそらく逢磨と同じもの。
不本意な事態の連続にさらされ、決定的な一打によって精神の張り詰めた糸が切れたということ。
それは舞檻と舞切にとっても予想外であったのか、彼女らは静観することが出来ずに主に物申す。
「ツブテさま、落ち着いて!」
「舞塗に悪気はきっとないの!」
「貴女達は黙りなさいっ!! っ……舞塗、明日罰則を与えます。朝食は舞檻、舞切が用意すること。……いいですね?」
「…………、分かりました」
「分かったのなら下がりなさい。これ以上……今日は貴女を見たくもありません」
「失礼しました……です」
舞塗は頭を下げ、神妙な表情を、少なくともツブテに背中を向けるまでは保って、食堂を出ていった。
「ツブテさま、どうしたんだろうね……」
「あれだけツブテさまが怒るなんて珍しいの~……」ひそひそと会話を交わす舞檻と舞切。しかしそれはツブテの耳にもしっかりと聞こえていた。
「怒りたくもなりますよ……逢磨くんは私の大切な人なんです。……大切な、私の人間さまなのです……ふふ、逢磨くん……逢磨くん………」
ツブテはふっと微笑みを浮かべた。先ほどの激昂を歪なまやかしとして不器用に埋没させてしまうかのような、不自然な表情の変化だった。
ああ逢磨くん、好きです……好きです。こんなにも貴方を想っているのに、前途は多難なのでしょうか……。私が傷心を抑えて使用人達に気高く接しているこの
瞬間、貴方の心には何が映っているんでしょう?
もしもそこに私が居なければ、貴方の心を裂いて開いてそこに私の血を注ぎます。そこに私以外の誰かが居るなら抉り除いてさしあげましょう。
私は貴方のことが好きです。だから私を退けたことがとても不愉快でたまりません。
……ええ、いいですよ。これから好きになればいいのですから。
早く私のこと、好きになって下さいね。貴方を傷つけた愚かな娘は、ちゃんと処罰しておきますから。
くすっ、ふふふふふふっ……。
潤香ツブテ。
彼女の性格は『天狗』だった。
・陽気な天狗と鬼の金棒 終わり
閲覧ありがとうございました。
昔から妖怪やら幻想の存在やらが大好きで、脳内というマイ現実世界にそいつらを引きずり出して遊んでいたらこんな小説を書いていました( )。
今回は第一話で、続きがまだまだ存在しております。
ただ大まかな展開としては、天狗の少女と人間の少年が交遊し、間に数々の妖怪少女らが割り込んで色々かき乱していく……という感じに書いていく所存にございます。
次は鬼やら鎌鼬やらよりもポピュラーで人気のありそうな気がする『あの妖怪』の女の子が登場。物語に切り込んでいっちゃいます。
なるべく近いうちにアップしたいと思っておりますので、もしよろしければ第二話も三行ほどでも見ていただけると嬉しいです( )
それでは、失礼致しました。