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テオロッド戦記 —異世界転移に巻き込まれた俺—  作者: ヨダカカツキ
第二章

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18/25

第十五話 新たなる旅路と、共闘と。

異世界に来てから、激動の数ヶ月だった。

いや、タツオの話を前提にするのであれば異世界ではないのかもしれないが……


俺にとってはここは〝異世界〟そのものであり、

アークネイヴァーでの出来事は紛れもない〝現実〟だ。


異世界転移に巻き込まれただけでなく、

気がつけばこの世界の激動に巻き込まれている。


テオロッドの王宮、王の間に併設されている、

王宮会議室。

本来であれば、国政を担うものしか出入りが許されない場所。

この会議室も、何回目だろうか。


レオニスの話の後、

〝シャイン=カムイ奪還作戦〟

に向けた会議が始まった。


「改めて、現在の世界情勢についてだ。

ノクス=ルキウスは、王政の廃止を宣言し、

科学国家を樹立した。

それが先ほど伝えた新国家——オルディアだ。

ノクスはさらに、経済的に結びつきの強い国家を巻き込み

オルディア連邦を表明した」

レオニスが説明する。


「オルディア連邦?」

俺は聞いた。


レオニスは頷くと続けた。

「オルディアを中心に、

商業国家マルカドール、

工業国家フォージリア、

貿易国家トランジアの三国を加えた、中央の四国同盟だ。

この世界は、中央にあるオルディア連邦を真ん中に、

西と東に分断された状況だ」


机の上には、このロッドの世界地図が拡げられている。

初めて地図を見る。

その形はところどころ変わっている気がするが、

全体の形は、俺のよく知る日本地図そのものだった。

レオニスの説明によると、マルカドールは石川県から富山県あたり。

フォージリアは東海地方あたり、トランジアは関西地方あたりだ。

見事に地図の中心部が連邦の領地になっている。


「マルカドールは、商業国家なんですね」

俺は聞いた。


「昔、この国はゴールドロッドと呼ばれていた。

その後、商業が盛んになり、

王政が崩壊。現在の商業国家としての形になった。

現在の支配者は、ガレオン=ルクレール。

商人であり、世界でも有数の資産家だ」

レオニスは続ける。


「なぜ、シャイン=カムイはオルディアではなく、

マルカドールにいるんですか?」

俺は聞いた。


「他国からの見え方の部分だな。次期国王を自国で捕虜として抱えているのは——見え方が悪い。

あくまで、シャイン=カムイの身柄は、

〝オルディアは関与していない〟と言い切るつもりだろう。

マルカドールは他国からの見え方など気にしない。

判断軸は、金になるか、ならないかだ」


「金になる?」

どういうことだろうか。


「カムイの王子シャインは、奴隷としてマルカドールに売られ、闘技場で闘士として働いているそうだ。

それも、花形の闘士として。

あくまで、オルディアとしては〝マルカドールに売った捕虜〟どう使おうがマルカドールの自由だ」


俺は、グラディオの言葉を思い出す。

カムイから、科学発展の抑止の提言があったことが

侵攻の理由と言っていたが、

——それは恐らく口実だろう。


「画を描いたのは……グラディオですか?」


「その見方が濃厚だが……現状を見ると、それさえも分からない」

レオニスは、首をすくめた。


確かに、カイゼル王が討たれ、グラディオ亡き今、最も得をしているのは誰か。


──ノクス=ルキウス。


ノクスがすべての画を描き、実行したとも考えられる。


「まずは、オルディア連邦以東の国々と同盟を結びたい。

東の二大国家、オウシュウとカムイだ。

各々……頼んだぞ」


俺たち次第で、世界の運命が変わる。

それを改めて実感する。


どこの世界でも、争いはなくならない。

それぞれの正義がぶつかり合うと、

どちらかが勝ち、どちらかが負ける。


そして、歴史はいつだって勝者に塗り替えられていく。




それから二日後。まだ夜が明けないうちに荷を積み終えると、

日の出と共に、俺たちは出発をした。

少し、肌寒さを感じる。


今は何月くらいだろうか。

この世界へやってきた時、元の世界は五月の終りごろだった。

とすると、今は九月か、十月くらいか。


テオロッドへやってきて、

三か月間の式術学校。


そして、忘れることはできないであろう、

アークネイヴァーでの戦い。


タツオに巻き込まれてたどり着いたこの世界で、

気がつけば俺は世界の命運に巻き込まれている。


「それでは、行きましょう」

イエナが言った。


馬車の運転は、俺とタツオが交代で行うことにした。

ミサキは、魔獣やオルディア勢力からの襲来に備えて、

警戒を行う。

イエナは、道案内人だ。

マルカドールへ行くのははじめてだと言うが、

特使として各国を旅している分、旅慣れている。


イエナは、改めてマルカドールへの道程を確認した。

「今回はかなりの長旅になります。

順調に行っても十日以上はかかると思います。

それに、道中、山越えがあります。

野宿続きは、体力的にも厳しいので、いくつか宿場を経由していこうと思います」


「大旅行だね」

タツオが言った。


「今日は、ミドルリッジに向かいましょう。本日中の到着を目指します。

ユイトさん。北へ真っすぐ進んでください」

イエナが、進路を俺に指示しながら言った。



イエナの言葉通り、ミドルリッジにはその日のうちに着くことができた。

以前、テオロッドに来るときは二日かかったが、道中魔獣に襲われなかったことも大きいだろう。

森を抜けるときも、ミサキの幻惑術の効果で敵は近寄ってこなかった。


街の門に近づくにつれ、ここにやってきた時のことを思い出した。


学校帰りの、制服のままでやってきた異世界。

つい最近の出来事なのに、はるか昔のようにも感じる。


ミドルリッジに着いたのは夜だった。


俺たちは宿を取り、簡単な夕食を済ませた。

王族、特使のイエナがいるだけで、すべての物事がスムーズに進む。


明日も朝出発する予定だ。

それぞれ、部屋に戻ろうとすると、ミサキに呼び止められた。


「ユイト、作戦会議がしたい。ちょっといいべか」


なんだ?

作戦なら、テオロッドの会議室で立ててきたはずだ。

仕方ないので、俺はタツオに部屋に帰るように言った。


ミサキからは、宿にある小さな部屋へ案内された。


「まずは、確認したい」

部屋に入ると、ミサキは唐突に切り出した。


「なんだ?」


「ユイト、気づいてるべな」


「だから、なにを」


「……私の気持ちだべ」


ほう。なるほど。


作戦会議とは、そっちのことか。


「まあ……なんとなくな。見ていればわかるだろ」


「……そうだよな。本人はまったく気づいている様子はないけどな」

ミサキはため息をつく。


「……そういうお前も、気づいているだろ?」


「当たり前だべ。気づかない方がおかしいべ」


「……そうだよな。お互い、苦労するな」

俺は、ため息をついた。


一切の固有名は出ていないが、文脈判断で分かる。


これは、恋愛相談だ。


「つまり……これは、そういう作戦会議か?」

俺はミサキに聞いた。


「そういうことだべ。このままじゃ、何も進まないべ」

ミサキは大きく頷いた。

「まず、敵の弱点を知りたいべ。何か知らないか?」


「うーん……そういう類の話は一切しないからな……。

そもそも、興味あるのかな、あいつ」


「情報、なしか……」


「そっちはどうだ?」


「うーん。いい子なのは間違いないけど、少し天然なところがあるべな。本心がイマイチ掴めないべ」


「なかなか難しいな」

俺たちは二人とも腕を抱えた。


「なにか、攻略法はないべか」


「俺が思うに、あいつはその辺にきわめて疎い。つまり、耐性がないはずだ」


「……すると?」


「待っていても、まったく進展はない。こちらから仕掛けていくことをお勧めする」


「……つまり?」


「作戦は、ガンガンいこうぜだ」


俺は言い切った。


「とはいっても、なにをすればいいべ」


「まずは、単純接触だ。話しかけろ。

そして、口実があれば、さりげなく体に触れろ。

それで、たいていの人間は相手に興味を持つ」


「……そんな単純なもんか?」


「俺も気が付けばあいつとずっと一緒にいるが、

気が付いたらあの変人に慣れてきた。

そして、よく分からないが、愛着さえ湧いてきている。

だから、そんなもんだ、きっと」


ミサキは、まだ怪訝そうな顔をしているが、

「分かった。やってみるべ」と言った。


「そっちはどうだ?何か情報はないか?」


「……そういえば、もう少しで誕生日って聞いた気がする」

少し考えると、ミサキは思い出したように言った。


「ほう」

俺は耳を傾ける。


「テオロッドの風習は知らないけど、

オウシュウでは誕生日はお祝いをやってたべ。

ユイト、なにかお祝いしてあげればいいんでないか?」


なるほど。こちらの世界にも誕生日を祝う風習はあるようだ。


「なにがいいんだろうか」


「ユイト、なんか特技ないべか?」


特技。うーん。陶器づくり……?

それはこっちの世界に来てからか。

それに、見栄えのするような美しい陶器は造れる気がしない。


俺は、元の世界の自分を思い出す。


「——あ。いちおう、ギター弾けるわ」

恋愛経験のない、悲しき生徒会長は、不純な動機で高校に入ってからギターを練習していた。

動画を見ながら、二年間。

それなりに弾けるようになったつもりではいた。

人前で披露したことはないが。


「ギター?なんだべそれは」


……こっちの世界に、ギターはないのか。

そういえば見たことがない。

それに、そもそも音楽がほとんどない。


「楽器。弦楽器だよ」


「楽器!?ユイト、そんなのできるべか。もしかして、貴族とか……?」


楽器は貴族のたしなみなのか?

なかなか娯楽の少ない世界だ。


「いや違うけど。でも、弾けるにしても、楽器がないからな」

俺が言うと、ミサキは何言っているんだ、という顔をした。


「ないなら、作ればいいべ」


「作る……?どうやって?」

俺がそう聞くと、ミサキは俺の手を指さした。



こうして、一切、個人名の出ない作戦会議は終わった。

俺とミサキは、それぞれの想いを分かち合い、共闘する仲間となった。


重苦しい旅のはじまりを、ミサキに救われた気がする。


俺たちは、イエナの誕生日祝いを、翌日の夜に決めた。

旅の予定では、明日明後日は山越えで、野営になる。

ギターの材料となる木は、いくらでもあるだろう。


だが……式術を使ってギターなんて本当に作れるのか?

半信半疑ではあるが、やってみるしかない。


その日、俺たちは固い握手をしてそれぞれの部屋に戻った。


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