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惑星降下猟兵3192~獣亜人と恋に落ちた少年の物語  作者: きぬごしさむえ
第二章 "Liberal Of The Mars" fighters
25/26

2-EP 抑圧 前編

宇宙西暦3192年6月 太陽系第四惑星 火星 

タルシス台地北東部 タルシスシティ第二港区


〈それでは、現地のリポーターから中継を繋いで貰いましょう。レニー?〉

《はい! こちらは今太陽系で唯一、特定の獣亜人に対し限定的市民権の与えられた街として話題のタルシス第三港区は〝獣亜人特別共生保護区〟です! ご覧下さい、この街並みを! 歩道がとても広いですね! クツのサイズが見つからない大型類人猿亜人や、地形に敏感な有蹄型獣亜人の歩行にも優しい永久消毒ゲルマットが採用されています! 爬虫類型獣亜人特有の伝染病の滅菌効果もあるんだとか!》

《あっ!? ちょうど良いところに通行動物──ああいや、通行人が来ましたね。爬虫類型の──トカゲか何かかな? 遠巻きに話を聞いてみましょう。ねぇ、ちょっといいかい?》

《………………?》

《あー、ハロー? コンニチハ? グーテンダク? あとは~ええと、アニョンハセヨ、ニーハオ……ズドラストイ??》

《[パトカーのサイレン音] 報道局、今すぐ離れろ!! そいつは不法滞在獣亜人だ!!》

《な、なんだって!? うわぁ────》

《[恐竜のようなおぞましい咆哮]》

《[M618A4連合軍正式アサルトライフルの射撃音]》


《──[無線機の電子音] D2-4……セクター封鎖完了。生物的除染活動実行中(デコンタミネーションインプログレス)。除染活動──[※強制的に途切れる映像]》


〈…………あー、どうもすみません。アクシデントで映像に乱れがあり、大変失礼いたしました。ええと──じゃあ~!? 気を取り直して! 一部マニアにバカ受けの獣亜人コンセプトカフェの様子をご紹介をいたしましょう! ジョージィ~!?〉


《んふ~。お客さん、お茶の味はいかがですかニャ……?》

《いやぁ、これは結構なお手前で。まさか、獣亜人の入れたお茶がこんなに美味しいだなんて、思ってもみなかったよ。 ……ちょっと毛が浮いてたりするけども》

《あーん、うれしいニャぁ……♪ あとはぁ~? 追加で、こういうのとか……。あとは……こういうサービスなんかもあるんにゃすけどぉ~……》

《──ええっ!? こ、これは……いや、合法なのかな……。ていうかヤバい病気とか──》

《んふふっ。だいじょーぶなぉ? うちのお店のコたちはねぇ? みんニャぜ~んぶ、検・査・済っ♡》

《ああ、そんな!? 今日は下の子の誕生日で、愛する妻がパーティの支度を──アアッ[※肉球の付いた手がレンズに映り込み強制的に途切れる映像]》


〈……えー、まぁ。こんな感じってことで。物好きで変態のあなた──ああ、じゃなくて! 流行に敏感で、獣人とも仲良くやれるんじゃ無いかって思ってるグロ耐性と免疫力の高いタルシス市民は、ぜひ一度見物に行ってみてもよろしいんじゃないでしょうかね! 以上、第三港区の獣亜人街特集でした~!〉


〈続いてのニュースです。火星自由主義統一戦線マリネリス地区指導者と思われるミランダ・ゲラルド容疑者は昨夜未明、宇宙連合政府に対し、火星自由主義統一戦線によるタルシスワット以南の実権掌握と独立を一方的に宣言しました〉

《親愛なる火星の同胞たちよ。自由主義統一戦士マリネリス地区司令官のミランダ・ゲラルドだ。私たちは本日ここに、タルシス・マリネリス境界を暫定的軍事境界線とし、母なる火星の全てを人民が全て等しく領有し享受する独立国家〝自由ニュートピア火星独立共和国〟の建立を宣言する────》


〈このようなゲリラの一方的な宣言に対し、宇宙連合政府報道官は〝断じて容認できない違法な独立宣言であり、極めて野蛮だ〟などと公式声明を発表し、48時間以内に連合軍太陽系艦隊による火星全域への大規模武力介入を宣言しました。この宣言には、第二種宙域封鎖及びフォボス並びにダイモス基地からの民間人退避命令が含まれています。これを受けた火星政府議会は、連合軍と連携のうえ防衛軍全体によるゲリラ掃討作戦を可及的速やかに実行するため、タルシス全域での予告付き戒厳令を全会一致で可決しました。戒厳令は明日、正式に発令される見込みです────〉


 第二港区の宇宙港へ宇宙連合軍の大型輸送艦が次々と入港する。民間船発着エリアは封鎖されており、ターミナルへの入り口では重武装の海兵隊員がロボティクス警備犬を引き連れて警戒している。本来であれば各便の運行状況や搭乗口を知らせる大型モニターには『営業中止(アウトオブサービス)。警告。軍事作戦進行中』等と、物々しい赤色のテキストが表示されていた。先ほどから、隣の大型TVモニターがさらに詳しく説明してくれている。


「今朝、うちにも予備役召集令状が来たよ。明日の昼までに出頭だ」


 壮年の男性が肉増しの米粉麺を啜る。宇宙港のすぐそばにある屋台街では、多くの人々が朝食を済ませている時間だった。普段ならここは宇宙港の労働者や旅行者が多いのだが、今日はMDFの軍服や野戦服姿で弾倉の抜かれた自動小銃や大きな背嚢を背負う男女でひしめき合っていた。ただ、その大半は見るからに軍人という雰囲気ではなかった。年代もかなり幅広い。


「俺もだ。おめぇ、どこの部隊だったっけか」

「アームストロングの機甲二中隊だよ。そっちはタルシスの第四軽歩重迫だっけ?」

「そ。書くもん書いたし、食い終わったらさっさと駐屯地入りするよ。家に居ても、子供がピーピー泣いてたまったもんじゃない」

「ねぇ、そこのアンタ。今からでも遅くないから今日は家に帰りなさいよ。奥さんと子供は絶対にそうして欲しいはずよ。分かっているんでしょう?」

「……うちにはうちの事情ってのがあるんだ。他人が首を突っ込まないでくれ」

「そういや、うちのせがれに何も言ってねぇや。去年、(ルーナ)の市役所だか区役所に就職して以来、音沙汰ないけども。電話くらいかけておくか……向こうは今何時だ?」


 普段は宇宙港のモニターに太陽系内要所の標準時刻が表示されている。ただ、残念なことに今日はそもそも就航便が無いためか、殆どのモニターがブラックアウトしていた。例の大型のモニター二台だけ、電源が点いていた。


〈また、この件について。当報道局は独自のコンタクトにより、とある火星自由主義統一戦線幹部から次のようなコメントを得ることに成功しました。ご紹介いたします〉

《まぁ、なんだろうな。好きに言わせておいてやってくれ。ミランダ姉御(ねぇ)さんは戦いに関しちゃ、滅法頼れる最強のご婦人なんだが……。ハッキリ言って政府(ガバメント)を回すような(タマ)じゃない。どちらかといえば気に入ったオトコを片っ端からマワすガバ○○○[ピー音]だ。[ため息]……みんなもきっと〝昔のオトコ〟が恋しくなったよな? 実は俺もあのヒゲのファンなんだ……。なぁ、見てるか? いい加減どこかでスネてないで帰って来いよ、親愛友人(マイフレンド)?》


 レンは聞き覚えのある口調のふざけた近況報告に皮肉な笑みを浮かべた。大盛り天然焼きサーモン丼を米粒ひとつ残さず平らげ、屋台の店主にクレジット紙幣を差し出した。


「お勘定。釣りはいらない」

「ほう……ずいぶんデカくなったじゃないか。コソドロのボウズ」

「…………一匹いくら? あんときは金が無かった」

「いらねぇよ、グズが。釣り銭だ。家に誰かいるなら、これも持ってけ」


 店主がクレジット紙幣をサーモンの燻製の半身と一緒に紙袋に突っ込んでレンに突きつける。それを受け取ったレンは暫く俯き気味に黙ったまま立ち尽くした。


「家には誰もいない」

「じゃあお前が食え。余所にやったっていい。それでもいらねぇなら捨ててくれ。どのみち今日で消費期限だ」

「…………好きだった奴のとこに持って行く。ありがとう」

「おう。また来いよ」


 レンは屋台を離れ、一度だけ通ったことのある近道を探した。しかし、近道は無くなっていた。屋台通りの近くの点検用区画は再整備が完了し、小洒落たショッピングセンターになっていた。まだ開店時間を迎えていなかったが、レンは荷物の搬入口から堂々と中に入った。途中、セキュリティーチェックがあったが、夜通し勤務であろう老齢のガードマンは深く椅子に腰掛けて居眠りをしており、従業員は通行証を片手に素通りしていた。通行証は無いが、レンもそうした。


 近道はまだ塞がれていなかった。湿っぽいダンボールだらけの倉庫の隅っこで、通行証を持っている人間が訪れるのを埃まみれになってひっそりと待っていた。

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