表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/27

初めての採取、討伐、売買、そして……家族

初めてのデビュー!

これが異世界ライフってコトォ?!

短剣……よし。

防具……よし。

マジックバック……よし。

知識は……よし。


《名前》天神アマガミ マコト

《種族》人(半神)

《年齢》8

《レベル》1

《extraskill》全知全能 Lv3

《体力》5000

《魔力》5000

《魔力コントロール》Lv3

《身体強化》Lv3

《思考加速》Lv3

《土魔法》Lv1

《水魔法》Lv1

《火魔法》Lv1

《風魔法》Lv1

《光魔法》Lv1

《闇魔法》Lv1

《聖魔法》Lv1

《無属性魔法》Lv3

《剣技》Lv1

《槍技》Lv1

《弓技》Lv1

《斧技》Lv1

《鎚技》Lv1

《盾術》Lv1

《体術》Lv1

《体力回復上昇》Lv2

《魔力回復上昇》Lv2

《攻撃力上昇》──

《防御力上昇》──

《鑑定/解析》Lv10★

《空間転移》──

《隠蔽》Lv10★

《収納》Lv1

《付与術》──

《錬金術》──


うん、あれから魔力量が増えたような感じはしていたけれども普通に増えていた件について。

うーん、これは破格なのでは?

全力で隠していこうと誓いを神に立てた。

いえ、まぁ……半分僕は神らしいですけれどもね。


さて、特筆すべき所はオールマイティーにスキルレベルが上がったというか、解放されてる所だ。

解放条件は知識が増えたのと、元よりの身体の相性だろう。

収納に関してはマジックバックを色々と調べたりとか、手を加えようとしてしまったら、自然と解放されてしまった……。

まぁ、副産物としよう。

うん、そうしよう。


ただ、属性に関してはあれから色々と聞いたり調べたりして分かったことがある。


魔法

※世界の魔素を用いて起こす超常の現象。

基本的にはイメージを定着化させて、現象を起こす。

なので、イメージを固定化させる句を用いるのが定説。

だが、無詠唱にてイメージを固定化させて現象を起こすことも可能。

ただし、イメージの度合いにより、その効果や消費する魔力量は大いに反映される。


属性

※魔核を有するものは多かれ少なかれ属性の傾向を持っている。

代表格は無属性だ。

これは誰しもが備えているもので、筋力の増加……身体の強化が主なベースらしい。

だけれども、余り使いどころが無いように思われているが、それはイメージの問題だろう。

人を構成する筋肉のイメージや、動きを鮮明に分かるようならば要所要所で用いると強力な力になるのを僕は知っていた。

単純に全体を強化しようとしたらガス欠が起きるように魔力切れの現象が起きるイメージが先行しすぎているのだ。

だから、一番のポテンシャルを持っている魅力的な属性なのに不遇枠扱いをされている。

その他に曜日にも応用されているが、土水火風の4大属性に光と闇、後は回復などを基調としている聖属性となっている。

属性に関しては無属性と違って、それ以外の属性については身体? または魂に根付いているのか、少ない者は1種類、複数持ちになっていく程にその数は少なくなっていっている。


まぁ、全属性持っている僕は異常ということだ。

……半神だからだろうとは当たり前に推測出来るが、身体に根付いたものなのか、魂に根付いたものなのかは僕でも良く分からなかった。

全知全能さんも魔力が少ないから手応えが感じられない感じだったから、早々にその謎の究明は諦めた。


そんな訳で魔法と属性はこの世にもたらされていて、その効果は魔力量に密接に関わっている。

全知全能さんが最近、常時使っていても生活出来るようになってきたのは一重に僕の魔力量が増えたからだろう。

それと同じように属性のレベルが高くても、魔力量が伴わないと魔法が使えない。

又はガス欠が起きるという感じである。

僕の属性レベルが低いのは単純に知識と魔力はあったとしても熟練度的な部分もあるのかも知れない。

意外と使い始めたら一気に最大までなってしまうのではと予感はしている。


同じように剣技等の技能も同じだ。

これは本当に熟練度の問題だろう。

知識だけあっても身体が付いて来なかったり、実際に動けるかの問題なのだと思う。

知識は……身に付いたので、後はそれを身体を動かして近付けて行くだけだと思っている。

目標が明確なのは素晴らしい事だと思う。

ただ、剣技に関しても僕が見聞きしたりとか分かる範囲なのだと直ぐに気付いた。

前世と言われているあの場所の剣技──刀とかの技術は思い浮かべなかったからだ。

きっと、全知全能さんのレベルと僕の魔力量の問題だと思われる。

いつか、あの世界の知識を得られるのだろうか?

そんなことを思いながら、短剣、防具をアイテムバックし仕舞っていく。


この短剣や防具はスーザンさんとアイクさんからの贈り物だ。


短剣はラルフの武具屋のラルフさん。

防具はフランクの防具屋のフランクさん。

スーザンさんとアイクさん、それに現在もエリックさんが懇意にしているお店から購入して貰いプレゼントされたものだ。


短剣とかはプレゼントされてから染々と異世界を味わうのにうってつけと言うよりは、初めての武器ということで浮かれてしまってずっと眺めてしまっていた。


うっかりと付与術、錬金術が脳裏に過ったが、魔力が失われる前に意識を外側に向けたのは本当に少し前の事だ。


「さて、そろそろ行こうかな」


第1の鐘が鳴ってから少し経つと思う。

今日は昨日の時点で受けた初めてのクエストを来なそうと思っているのだ。


1つはこの街ルソーレの周囲に生えている薬草の採取と、周囲に居るホーンラビットの討伐だ。


……魔物居たんだね。


今にして思うと魔物と遭遇しなかったのは奇跡と思える。

普通に周辺に生息しているらしい。

代表的なのはウサギに角を生やした魔物のホーンラビットだ。

角は磨り潰せば魔力を多少なりとも伴っているので低級のマジックパウダーになるし、お肉は食用にも適していて、魔石も低級ながら落とすので一石三鳥生物なのだ。


まぁ、小話は置いておき。

神様……奇跡をありがとうございます。

いえ、私が半分神なんですけれどもね……って、誰も突っ込む人が居ないともしや滑っているのでは?

そんなことを思ってしまったが思考を現実に戻していく。


「さて、1階に降りるかな」


今日は朝をアイクさんの宿亭で食べて、お昼はお弁当を作って貰ってアイテムバックに入れて向こうで食べる予定だ。

どうやらマジックバックの中は時が止まっているらしく、保温性と保存性に優れているのが分かった。

分かったけれども、収納のスキルを得たことで、実は手を加えたら生きた生物の収納や時の過ぎる設定を加えられそうだと感触があった。

いずれは試してみたいと思ったが、今はクエストだ。

なんだか、色々と分かることでやりたいことが山のように増えている気がするけれども、少しずつ、少しずつやってみようと思う。

せっかくのゼロからの異世界ライフだ。

堪能しようと僕は決めたのだった。


「おはようマコト! うん、元気そうだね!」

「おはよう、スーザンさん。うん、調子は良い感じだよ」

「おはよう、マコトくん。来た当初は倒れてばかりだったけれども、体力が戻ってきたのかな? 少し待っててね、今朝食とお昼のお弁当を持ってくるよ」


そう言ってアイクさんは厨房へと消えていく。

周囲のテーブルには宿泊者や、朝食目当てのお客さんがチラホラといる。

うん、今日も盛況だね。

後は、体力が戻ったというよりは正確には魔力量が増えたというのが正解だろう。

まぁ、その魔力量も今のところ目に見える範囲では常軌を逸しているのが冒険者ギルドへと行くようになって理解してしまったけれども。


ゴールドランクの人でも体力量、魔力量ともに500付近なのだ。

今現在5000を誇る自分はその時点で異常と言えるだろう。

獣人の人なら体力量が、エルフなら魔力量が多いのも見掛けたけれども、それでも1000付近だ。

ベテランと言われていた、スーザンさんやアイクさんでさえ500付近なのだ。

それがこの世界の基準なのだろう。


「お待たせ、マコトくん。しっかり食べて頑張っておいで。お弁当はここに置いておくね」

「ありがとうございます……!」

「うん。じゃあ、僕はこのままお仕事に戻るから、気を付けて行ってくるんだよ!」


うん! と頷くと満足そうにアイクさんは頷いて厨房へと戻っていく。


やっぱり、アイクさんのご飯は美味しいや……。


パンは焼き立てなのだろう。

少しだけ固めだけれども、それでも美味しい。

温かいスープは野菜と肉がしっかりと入っていて味もしっかりとついている。

そこにパンを付けて食べるだけでもご馳走だ。


「ご馳走さまでした!」


ついつい、美味しくてお弁当をアイテムバックに先に仕舞うのを忘れてしまっていた。

慌てて、アイテムバックに仕舞いつつ食器を重ねる。


「もう、マコト! そんなに慌てなくてもクエストは逃げないよ!」

「あはは……」

「まったく、こういうところは年相応なのね」


仕方ないわね、とスーザンさんは近寄って来ては僕の服装とか装備をチェックしてくれる。


「うん! 大丈夫そうだね。気を付けて行ってくるんだよ!」

「はい! 気を付けて行ってきます!」

「あっ! ちゃんと正門から出る時はエリックにお礼を伝えるんだよ!」

「はーい!」


スーザンさんに返事をしつつ、僕は正門へと駆け出していた。

身体強化が上がったからなのか、身体が軽いのだ。

前は直ぐに息を吐いていた気がするけれども、多少の無理は利きそうな感じは僕の身体からは伝わって来ていた。


「おぉー! 坊主なのか? なんだか、見間違えたな?!」

「あ、あなたは……あの時の!」

「おう、覚えてくれてたのか衛兵のボブって言うんだ、よろしくな!」

「ボブさんですね……! 分かりました。よろしくお願い致します!」

「はぇー、やっぱりなんだか、しっかりしてるな? エリックさん呼んでくるか?」

「あっ! お願い出来ますか? お礼を伝えたくて」

「あぁ、大丈夫だよ! 俺も今から詰め所に戻るところだったからな。衛兵長殿も朝礼をして、そろそろこっちに来るだろうからな! ちょっと待っててくれ!」


そう言って、ボブさんは詰め所へと向かって行った。

暫くすると遠くから僕を目掛けて走ってくるエリックさんが見えた。


「はぁはぁ……! おお! 坊主なのか! いや、マコトか! 元気にしていたか! いや、元気そうだな!! 見間違えるような男になってるじゃないか! ははは!」

「は、はい! お陰様で……本当にありがとうございます!」

「良いってことよ! こうやって元気な姿を見れただけども儲けもんだ! って、お礼を伝えに来ただけじゃ無いんだよな?」


そう言って、僕の姿をひとしきり見たエリックさんが聞いてくる。


「あ、はい! 今日は初めてのクエストに行こうと!」

「なんだ、マコトは冒険者になったのか!」

「はい! 色々なものを見聞きしたくて……!」

「あぁ、分かるぞ! 俺もアイクとスーザンとパーティーを組んで、色々と大変だったが、沢山の見聞きを出来たと思う。そっか、冒険者か頑張れよ?」

「は、はい!」

「そうなると城門については説明が必要だな」

「すみません、教えて貰えると助かります」

「ははは! そう、身構え無くてもいいぞ! そうだな、第1の鐘で正門含めての城門が開門される。第3の鐘で閉門だ。それ以降は各詰め所にある小門からの出入りになる。分かったか?」

「なるほど……分かりました」

「あぁ、理解が早くて助かる! まぁ、何かあればさっき名前の挨拶もしたんだな? ボンか、俺でも呼んでくれたらいいぞ!」

「何から何までありがとうございます……!」

「はは! 良いってことよ! 後はそうだな、宿亭に戻ったらまた暇があれば酒でも飲みに行くとアイクとスーザンに伝えてくれないか?」

「はい!」

「よし! それじゃあ、気を付けて行ってくるんだぞ!」

「行ってきます……!」


そんな僕の言葉にエリックさんはビシッと敬礼をしてニッコリと微笑んで見送ってくれた。

エリックさんの敬礼はかっこよかった。


「えっと、薬草……薬草……あぁ、これか。それにあれもか」


結構、見渡すだけでも沢山あるな。

全知全能さんが教えてくれて来ているから、視界に収まる箇所に沢山の薬草が見つかる。


「けれども、これだと見えすぎるな……。うーん? こう周辺の情報……ゲームみたいに分かれば良いけれども」


そんな独り言を呟くと……脳裏にMAPみたいに周囲の状況が浮かんできた。


「うぉ?! 全知全能さん?!」


自分の驚きが嬉しかったのか、MAP画面を強調してくる。


み、見やすい……。


視界に収まるのは控えめな情報に。

それにMAPの方だと薬草の目的の位置や、何かしら意味がありそうなものにはそれぞれ色が付いて表示されている。


「この赤いのは……魔物か。濃さや大きさで強さを示してるのかな? あぁ、これはホーンラビットなのか」


転々とホーンラビットを示すドットがMAPに散見されていた。

とりあえず、手早く周囲の薬草を採取しては僕はホーンラビットの方へとこっそりと近付いて行く。


ガサガサ──。

ガサガサ──。


い、居た……!

か、可愛い?


ウサギに角を生やした魔物……ホーンラビットがそこに居た。

ご丁寧に全知全能さんがお仕事をしてくれたのかホーンラビットのレベルが表記される。

もう少し、気になればホーンラビットの詳細な情報も分かるのだろうけれども、とりあえず今はレベル位で大丈夫だろう。

それに必要ならば全知全能さんがそこも含めて教えてくれるだろうという、謎の信頼感があった。


ガサガサ──。


まだ、ホーンラビットは僕の事を気付いて無いようだ。


ガサガサ──。


ソッと手に短剣を取り出す。

防具は外に出てからは既に来ている。


そぅ~と近付いて、近付いて──ここだ!


ザシュッ……! ピュッ!


「ひやぁ?!」


返り血に驚いて、声をあげてしまった。


まぁ、目の前にはホーンラビットが絶命しているのは分かった。

全知全能さんの表記でも絶命と出ている。


死でも良いような?


そう思うと表記が死に変わる。

おお……流石、全知全能さん……そこに痺れる憧れるッ。


とりあえず、ホーンラビットの死体はアイテムボックスに仕舞う。


その時にブワッとした感覚が身体を包み込んだので、咄嗟にビクッとしてしまう。


「な、なに?! なに、なにパニック?!」


いや、ワニワニパニックや!!

っと、思ったら一周回っては冷静に……いや、一周したらパニックのままや!

っと、思ったら冷静になれた。


「なんだったんだ……いや、ん?」


自分に変わったことが無いかを探ろうとしたが違和感があった。


《名前》天神アマガミ マコト

《種族》人(半神)

《年齢》8

《レベル》1→2

《extraskill》全知全能 Lv3

《体力》5000→10000

《魔力》5000→10000

《魔力コントロール》Lv3

《身体強化》Lv3

《思考加速》Lv3

《土魔法》Lv1

《水魔法》Lv1

《火魔法》Lv1

《風魔法》Lv1

《光魔法》Lv1

《闇魔法》Lv1

《聖魔法》Lv1

《無属性魔法》Lv3

《剣技》Lv1→2

《槍技》Lv1

《弓技》Lv1

《斧技》Lv1

《鎚技》Lv1

《盾術》Lv1

《体術》Lv1

《体力回復上昇》Lv2→3

《魔力回復上昇》Lv2→3

《攻撃力上昇》──→Lv1

《防御力上昇》──→Lv1

《鑑定/解析》Lv10★

《空間転移》──

《隠蔽》Lv10★

《収納》Lv1

《付与術》──

《錬金術》──


わぉ! マーベラス~! なんという事でしょう!

これが劇的beforeアフ……おっと、これ以上はいけない。


レベルが上がったのか!

う、嬉し~!! と、なりたかったが下を見ていく程にちょっと口が閉じるのを忘れてしまった。


「あれ、可笑しいな。10000? これ何て言うスカウター回?」


脳内では某スカウター回、戦闘力でマウントを取るあれが脳内再生されていた。


貴様ごときが10000の私に勝てるとでも? フハハハ!

って、どこかからか声が聞こえて来るよ?


「それに剣技もレベルが上がったのか……熟練度の問題だったか……」


これは使う毎にポンポンとレベルが上がって行きそうだな。

それに体力回復上昇と、魔力回復上昇……既にレベルアップで体力量、魔力量が増えた事による空きが埋まってきているような感覚がする。


攻撃力上昇はオーバーキルだろうし、防御力上昇は相手への絶望だろう。


「強くなっちゃったてコトォ?!」


ちょっと、おどけても良いだろう。

なるほど、レベルアップか。

ずっと1だから気になっていたけれども、確かにレベルアップしたらステータスが伸びるのは定番だったか……。

それにしても、うん……僕は既に人から踏み越えちゃったんだなぁ──いや、今さらか。

既に越えちゃいけないラインは越えてたわ。


そう思うと、すんなりと気持ちが落ち着いてくる。

まぁ、そんな自分も返り血を浴びてびっくりしていたけれども。


「えっと、確か……浄化ピュリフィケーション


少しだけの神秘の発光の後には先ほどの返り血が綺麗に無くなっていた。


「うん、成功だ。後は……そうだな、ソナー!」


自身へ向けて、魔力の探知を身体に流す。

隅々まで細かく診断するが……異常は無さそうだな。


「よし、とりあえず。もう少し狩ってみるかな。後は道中に薬草を摘めばよいか」


屈んだ姿勢から身体を起こして周囲を警戒する。

MAPで見ても周囲に人は居なさそうだ。

逆に薬草とホーンラビットの気配は転々としている。

もう少し……と思ってMAPの範囲を広げようとしたら、ゴッソリと魔力を吸われる気配を感じたので押し止めた。


「あ、危ない……。そっか、魔力量が増えたといっても、元から全知全能さんはマゾイ仕様だったのをうっかり忘れていた」


ヒャッ──と、一瞬だけ背中を冷たい感覚が襲ったが全知全能さんが不機嫌になったということは無いだろう。

そう、決して無いだろう。

うん、大丈夫だ。


とりあえず、気を持ち直して僕は行動を開始する。

辺りを見るにホーンラビットはレベルは高くても3で1~3を推移しているみたいだ。


初心者向けって事かな?


でも、何体も集まっては固まって迫られたら並みの初心者……ルーキーには堪らないだろう。

後はソロの場合はホーンラビットの角は凶悪だ。

それだけでも危険だろう。


「迅速に……丁寧に……」


そう、声を出しては精神を静めては冷静に狩りに……討伐に勤しんで行く。


ザシュッ。

ザシュッ──。


うん、何匹か対応してみると手慣れて来たのを感じて来た。

薬草もだいぶ集まって来た。


「そろそろ、切り上げるかな……太陽の位置的に沈みかけ始めてるのを見るに後少し立てば第3の鐘が鳴るのは近そうだ。……ん?」


そう、独り言を呟いているとMAPに少し大きな赤いドットが表示される。

位置的にはここから少しだけ森方面の方角だ。


デスラビット?


デスラビット※レベル5

ホーンラビットの上位種。

時にはホーンラビットを従えている。


へぇー……。

確かに何体か……いや、3体だ。

ホーンラビットを従えているみたいだ。

全知全能さんがわざわざ表示させたということは──。


「やってみるか」


決断は早かった。

このちょっとしたドキドキも冒険だろう。

まぁ、そのリスクは命なのだろうけれども、僕にとってはベッドする命は大きくて安全なものなのだけれどもね。


「大きいな……」


草原を少しだけ進むと、遠目にもデスラビットが見えてきていた。


ホーンラビットより瘴気を溜め込んでるって事かな?

どこか禍々しいな。

それが僕の感想だった。


「でも、やることは変わらないかな」


スチャ……と短剣を取り出してはスッと構える。

そのまま、気付かれないように近付いて──ザシュッ。


デスラビットは一瞬だけ、こちらを振り返り反応をしようとしたがその前に僕が短剣を突き立てて絶命させる。

手早く短剣を抜くと臨戦体制に入る。


後ろからか──!


全知全能さんの副次効果といえるのか周囲の状況が手に取るように分かる。

まるでゲームキャラが自分として立体的に操作している立場みたいに周囲の状況が見えている。


身体を捻らせて、後ろからのホーンラビットの角の突撃の攻撃を躱しつつ、喉元にザシュッと短剣を即座に突き立てては抜き放つ。


それだけで1体のホーンラビットは屍に生まれ変わる。


そのまま作業のように残りの2体のホーンラビットも手早く処理をする。


「ふぅ……綺麗に狩れました! って、か?」


どこかの焼けました! よろしくじゃないけれども、しっかりとトドメを刺しては自画自賛じゃないけれども綺麗に倒せたと思う。


人によってはズタズタに討伐してるけれども、あれだと素材が傷付いたりで勿体ないのだ。

いや、まぁ……イノチのやり取りをしてるからこそ、そんな感想はいただけないのは分かるのだけれども、僕としては出来るだけ綺麗にトドメを刺しては最大限に素材を利用したいと思っていた。

革としてなめれば使える魔物も多いし、ホーンラビットのように角がマジックパウダーとして錬金術や付与術に使える素材もある。

何よりも魔核と呼ばれている、魔石部分は絶命した瞬間に体内の魔素が結晶化して産み出されるとか言われているけれども、決まって心臓に近い位置か、お腹の少し上辺りに出来るのが多いらしい。

誤って傷付ける事は無いように討伐の際に気を付ける事もテクニックの内だとケイトさんが言っていたような気がする。


「よし、これで良いかな」


とりあえずはデスラビットとホーンラビット3体もマジックバックに収納する。


実は少しだけ容量が限界に近かったから、物は試しで出来そうな予感が収納スキルの恩恵からか予感はあったのでマジックバックの拡張を試みてみたのだけれども、魔力を流してマジックバックの異空間の拡大を働きかけたら成功したようだった。

流せば流すだけ、頭打ちになるまでは広がるような気配がしたけれども、魔力もゴッソリと持っていかれてる気配がしたので必要な量だけ増やしたら魔力を流すのを止めたのだった。


「ギリギリ……第3の鐘には間に合うかな?」


傾いた陽を見ては僕は遠くに見える街ルソーレに向かって駆け始めるのだった。


「よ、よし……間に合いそうだ」


そのお陰か、第3の鐘が鳴り響く前には城門に辿り着いた。

ボブさんやエリックさんの姿は見えなかったけれども、衛兵の方に身分証にもなるギルドカードを見せては街へ入っては冒険者ギルドへと向かう。


「すみませんー!」

「はいはーい! あら、可愛い子ね」

「ケイトさん居ますか? マコトと言うのですが……」

「あら! あなたがマコトくんね! お話は聞いてるわ! ちょっと、待っててね」


そう言って受付のお姉さんはパタパタと事務所の方へと消えて行くと、それに続けて少し時間が経ったら窓口にケイトさんが来てくれた。


「マコトくん、こんばんは」

「あっ、こんばんは! お疲れ様です、あのクエストの報告に来たのですが……」

「あら! 昨日受けてもう終わったの? 早いわね……えっと、薬草に関してはこっちで受け取るわね。ホーンラビットも討伐して来たのかしら?」

「は、はい! 何体か多めに倒して来たのですが……」

「え? 何体か……? えっと、どのくらいかしら?」

「んー? 何体でしょう? 途中から楽しくなって狩ってしまっていたので、後は少しだけ禍々しいのも……」

「禍々しい? えっと、それって……。と、とりあえず、少しだけ待ってて、私も一緒に解体小屋まで行くわね。色々と確認しないと行けなさそうだから」

「え? あー、はい。分かりました?」

「直ぐ戻るから!」


そう言って、ケイトさんは足早にまた事務所の方へと消えていく。


「ホーンラビット何体も?」

「少し禍々しいって、デスラビットか?」

「いやいや、あんな小さな子供でルーキーがそれは難しいって」

「おもしれぇーオトコ」


ゾクッと、オトコの部分でゾワゾワと鳥肌が立ったが気のせいだろう。

そっち側には顔を向けないことに決めた。

それにしても、そっか……今思えばやり過ぎたかも知れない。

普通に報告してしまった。

まぁ、なるようになれだ。

そう、考えたら一周回って冷静に……いや、それだと同じ所に戻っちゃうのか。


「お、お待たせ! 待たせたわね!」

「あっ! い、いえ。大丈夫です!」


そんな、どうでも良いと言える言い回しを考えていたせいか、ケイトさんの登場に少しだけ反応が遅れてしまった。

ケイトさん……急いだのだろう。

いつもはバッチリ決めている髪型が少しだけ崩れているけれども……うん、これはセクシーというやつだろう。

ほら、周りの男性冒険者の目がケイトさんに向かっている。

ケイトさん、美人さんだからな……何名かの男性冒険者は恋人の女性冒険者に頬っぺたをつねられている。

御愁傷様です。


「ん? どうしたのかしら? 私に何かついてる?」

「い、いえ。美人さんだなって……」

「またまた、マコトくんは。もう、そう言うのはもう少し大人になったら言いなさい。……いや、大人になっても無闇に言ったらダメよ?」

「は、はい!」


けんもほろろとはこの事を言うのだろうか?

僕のキザったい台詞はケイトには効果は無かった模様だ……いや、少し照れたのは頬が染まったのが見えたからご愛敬だ。


「ほら、行くわよ!」

「はーい!」

「ん? 何か?」

「い、いえ!」

「ほら、早くしないと解体のお仕事も終わっちゃうからサムの所まで行くわよ!」


そう言って、スタスタと照れ隠しなのか早歩きでケイトさんは歩き始めたのを僕は追い掛けて行く。


「サムー! サムー!」

「聞こえてるー! ちょっと、待ってろぉー!」

「分かったけれども、マコトくんが待ってるわよー!」

「なんだって?! おお! 今行く! すぐ行くぞ!」

「おぉ……普段は手を止めないサムさんが手を止め……凄いぞ、あの坊主」


解体の職員さんの声がやけに耳に届いた。

どうやら僕はサムさんに気に入られたらしい。

それも大層に。

何かトリガーがあったのだろうか?


「おお! マコトじゃねぇか! どうした? 何かあったか?」

「ちょっとサム! 私への挨拶は?」

「へいへい、サブマスター様もお疲れ様です」

「んー、まぁ、良いでしょう。それよりもサム、耳を貸しなさい」

「ん? なんだ?」

「いいから……!」


そして、サムさんの耳を借りてケイトさんが、多分先ほどの討伐の話をしたのだろう。


見る見るうちにサムさんの目が見開かれていく。


(はい、開店しましたー!)


っと、のんきに思ってしまったが、突然サムさんに肩を捕まれてはびっくりしてしまった。


「お、おい! 本当かマコト?! そんなに初日で狩ったのか?」

「え、えっと。はい」

「……おい! お前、すまないが作業台をそこを貸して貰えないか?」

「あっ、はい! 良いですよ!」


近くの場所で解体していた職員にサムさんか問い掛けてると快く職員さんは作業場を貸してくれる。


「とりあえず、この上に全部出してみてくれ」

「全部ですね?」

「あぁ!」

「分かりました……!」


そして、マジックバックに手を突っ込んでは中身を確認してはバタバタと作業台の上にホーンラビットを重ねていく。


「お、おお……」

「え、こんなに……?」


サムさんの動揺とケイトさんの驚きの声を後ろに聞きながら、取り出して行く。

最後にデスラビットを申し訳程度に一番上に出したら、マジックバックは空になった。


「こんな感じですね」

「おいおい……マジかよ……。それにマコト? どうやって倒した?」

「え? 首にひと突きですが……それが良いとも聞いていたので」

「ぜ、全部か?」

「いえ、何体かは少しズレてしまったのが居るかもですが……」

「──ケイト、ちょっと俺は良く分からないが……いや、分かるのだがブロンズはこんな感じでは無いよな?」

「え、えぇ……こんなに綺麗に倒すのは余裕のあるゴールドでしょうし、ゴールドでも狩り場は優先的にダンジョンになるから、でも体力的にもこんなに沢山は……」

「と、とりあえず。お前ら! 今見てるのは箝口令を敷かせて貰うからな!」

「「は、はい!!」」

「マコトくん? ちょっと、達成報酬は後払いでも良いかしら?」

「えっと、構いませんが……」

「後は私はこれからギルドマスターへと報告と相談に行きます。明日……可能だったらスーザンとアイクを連れて冒険者ギルドへ来て。マコトくんの処遇に関して相談があるからと言えば大丈夫だから」

「は、はい」

「サム! そういうことだから、私はあの人がすぐに定時で抜け出す前に掴まえて相談するから、後はよろしくね!」

「おう!」


そして、ケイトさんは足早に小屋から出ては駆けていった。


(あちゃー、もしかして、俺……やっちゃいました?)


って、やつぅ?!

いや、まさにそれだ。

やっちゃったヤツだ。


「大丈夫だ、マコト。悪いようにはせん」

「さ、サムさん」

「ただ、ちーとばかし……お説教はあるかも知れないがな」

「えっ?」

「それはそうだろ……マコト? 普通はこんなに狩れん。それに俺もマコトのステータスを聞いてるぞ? そのステータスではホーンラビットを倒すのもギリギリのはずだ。分かるだろ?」

「……はい」

「まぁ、明日は素直に打ち明けるんだな。だが、良かったな」

「え?」

「ここのギルドマスターも適当なヤツに見えるがいいヤツだ。それに俺もだ。後はケイトにスーザン、アイク……エリック。マコトは運がいい。まぁ、アドバイスになるかは分からんが明日は正直に話した方がいい。きっと上手くやってくれるはずだ。それにそう言うのはギルドマスターのアランの得意分野だからな」

「……う、うん」


そうして、ワシワシと大きなサムの手で頭を撫でられる。


明日……どうしよっか?


それが素直な自分の胸中だった。

けれども、誤魔化しが利くとは思えないし……ここは1つ正直に行ってみるか。

流石に種族と全知全能は隠した方が良いだろうけれども、これから先、この能力を隠して行けるとは思えないし、何よりも枷になるのは自分自身が嫌だった。


「とりあえず、こいつらの解体は……あー、俺が責任を持ってやってやる。だから、待ってろ。俺もマジックバックはあるからよ。ちゃんと素材を劣化させねぇように解体してやるから、安心しな」


ニッとぶっきらぼうだけれどもサムさんは笑いかけてくれた。

そんな心意気が嬉しくて、僕は自然と「ありがとう、サムさん」と言っていた。

それを聞いたサムさんはもう一度大きな手でワシワシと僕の頭を撫でてくれたら、僕は冒険者ギルドから開放されたのだった。


「とりあえず、スーザンさんとアイクさんに話さないとか……」


帰宅して……いや、もうここが家なのだと最近は認識している。

スーザンさんとアイクさんの顔を見たら、安心してしまった。

けれども、2人は僕の表情の変化に気付いてか心配そうな顔になり、これからお客さんが来るにも関わらずにテーブルへ案内してくれる。


「どうしたんだい、マコト?」

そんな凄く心配そうな声でスーザンさんに声を掛けられたら、自然と今日会った話を2人に打ち明けていた。


「スーザン? 僕はとりあえず、今日は閉業の看板をかけて来るよ。宿泊客には都度、ご飯を出すよ」

「そうね、アイクお願いね。マコト? 奥の方で話しましょ?」

「う、うん」


怒られるのではないか。

嫌われるのではないか。

恐れられるのではないか。


そんな感情が沸き立っていたが、突然スーザンさんに僕は抱き締められていた。


「そんな顔しなくても大丈夫。大丈夫よ。何も怖くは無いから、とりあえず安心しなさい」

「あ……、う……」


言葉は出なくて、安心して涙が出ていた。

自分でもびっくりしてしまったけれども、その涙を塞ぐ手だては僕には存在していなかった。


「とりあえず、話を聞いて、ビックリしたけれども。そもそも、ここに運ばれて来た時からマコトは変わっていたから、何となく何かを隠していたり、何かあるのではないかとアイクと話していたけれども、まぁ……こんなに大事になるとは予想はしていなかったけれども、安心しなさい。ここはマコトの家で、マコトは私たちのアイクとの家族よ」

「あ、ありがとう……ございま……す」


涙で言葉が上手く出せない。

それに息苦しい。


「おや、先を越されちゃったかい?」

「あら、アイク。ふふふ、私が1番を貰ったわよ」

「まぁ、いいよ。ほら、マコトくん来なさい。よしよし、大丈夫だよ」

「うぅ……」


そして、アイクさんに抱き締められたら、僕の涙は崩壊した。


「なるほど……隠蔽のスキルか」

「アイク知ってるのかい?」

「んー、聞き齧る程度には。でも、それはブラックのランクの人とか、高位の人が持ってそうな……発現してそうなスキルだね」

「それにマコトは全属性を持っていて、体力量と魔力量も今聞いた数値なのかい?」

「どうなんだろう……レベルが上がったらどんどん上がっているから」

「そうかい……でも、なんだか分かって私は逆に安心したよ」

「え?」

「だって、マコトったら何も分からないんだもの。こうやってちゃんと話せて私は嬉しいよ。ね、アイク?」

「そうだね。それにちゃんと分かればマコトくんの守り方も考えられる」

「守って……くれるん……ですか?」

「当たり前じゃない! 何を言ってるだい!」

「そうだぞ、マコトくん! 流石にそれは僕も怒るよ。僕たちはマコトくんを家族のように、いや、家族として見てるからね」

「でも、どうしてそこまで僕を大切に……?」

「アイク……?」

「そうだね、実はここの宿亭の名前は知ってるよね?」

「マイナの宿亭ですよね?」

「そうよ、ここはマイナの宿亭。アイクと私の宿亭でいつか子供が出来たら、その名前をつけて一緒に過ごそうと夢を見ていたの」


見ていた?

何で過去形なのだろう、そう思うの同じくアイクさんが口を話してくれた。


「実はスーザンは冒険者を引退するのに判断した事件があったんだよ。僕の立ち回りのミスなんだけれどもね」

「何言ってるんだい、それはもう……終わったことだよ」

「スーザン……」

「アイク……」


しばらく2人は見つめあっていたけれども、僕の視線に気付いて頬を染めては照れ隠しのように顔を背けた。


でも、話を聞くにアイクさんが立ち回りをミスしたところでダンジョンボスの毒をスーザンさんが庇って受けてしまったようなのだ。

表面上のキズは回復魔法で治ったのだが、毒に関しては治しきる事が出来ずに身体に残ってしまったようだった。

その結果、子供が出来ない体質になってしまったとの事で、それが気付いたのも2人がいつになっても子供が授かる事が出来ずに疑問に思い、教会に行ってはそこで知ったようだった。

解毒をお願いしようとしたらしいが、慢性的になった毒を治す術は見つからなく、あったとしてもそんな大金を用意することも出来ない。

なので、2人は子供を諦めてこのマイナの宿亭を続けていたらしかった。


けれども、そんな生活も長くは続けられない。

2人とも少なからずストレスを抱えてしまっては思い悩んで居た時に、そんな折りにエリックさんが僕を抱えて来たとの事だった。


2人にとってはそれは青天の霹靂とも言える事だった。

今までの灰色の世界が色を取り戻すように、毎日がカラフルになったとの事だった。

止まりかけていた時が動きだしたかのようだと言っていた。


「そんなことがあったのですね……」

「あぁ、そうなんだ。だから、マコトくんは本当に僕たちにとって天使……神様からの贈り物に思えるだ」

「そうだね、アイク。たから、私たちがマコトを嫌うなんて事は無いんだよ」


そっか……2人は本当に良い人たちだ。

それにここまでして貰った恩がある。

なら、救われたって良いじゃないか。


自分のステータスを改めて確認する。

熟練度が問題だと言っていたのは正しかったとステータスが証明していた。


《名前》天神アマガミ マコト

《種族》人(半神)

《年齢》8

《レベル》2→6

《extraskill》全知全能 Lv4

《体力》10000→160000

《魔力》10000→160000

《魔力コントロール》Lv3→4

《身体強化》Lv3→4

《思考加速》Lv3→4

《土魔法》Lv10★

《水魔法》Lv10★

《火魔法》Lv10★

《風魔法》Lv10★

《光魔法》Lv10★

《闇魔法》Lv10★

《聖魔法》Lv10★

《無属性魔法》Lv3→4

《剣技》Lv2→3

《槍技》Lv1

《弓技》Lv1

《斧技》Lv1

《鎚技》Lv1

《盾術》Lv1

《体術》Lv1→3

《体力回復上昇》Lv3→4

《魔力回復上昇》Lv3→4

《攻撃力上昇》──→Lv1→2

《防御力上昇》──→Lv1→2

《鑑定/解析》Lv10★

《空間転移》──

《隠蔽》Lv10★

《収納》Lv1→2

《付与術》──

《錬金術》──


レベルも上がった事で体力量、魔力量は初期の頃とは雲泥の差になっている。

今は普通に全知全能を用いたり応用して生活していても支障をきたすような事は無い。

それと属性に関しては色々と試していたら即座に最大になっていた。

これはこの身体と魂のポテンシャル故だろう。

だけれども、また成長途上だからか体術などの方は実際に知識と身体の動きとかが一致して熟練を重ねることでスキルは上がっているようだった。


スキルと言っても補正に近いという認識だ。

無いよりは合った方が支援を受けやすい印象でイメージだ。

あくまでも人の理の中での常識に納めようとした結果なのだろう。


魔法の真髄と云われるものは更にもっと先の本当に語りかけるような、常に傍に居て寄り添いあっているみたいなものなのだろう。


さて、始めようか。

僕はゼロからこの異世界ライフを始めたと思っている。

そして、そんな僕に良くしてくれて、居心地の良い場所をくれた人を助けたい。

僕は半神とはいえ、神の名を冠している。

それは大きな事だろう。

奇跡だって起こしてみせるさ。


「あの……」

「ん? どうしたんだい?」

「どうしたのマコト?」

「僕に治療をさせて貰えないでしょうか?」


そう、声を掛けると2人は初めての表情を見せてくれた。

先ほどまで泣いて笑っての2人が目をパチクリとさせている。

まぁ、僕も泣いて笑ってをしていたから……そんな僕がこんなすっとんきょうな提案をしたら、そうなるだろう。


「えっと、ごめんね。ビックリしちゃったんだ。えっと、ごめん。確認させて貰っても良いかな? マコトくんはスーザンの事を治せるのかい?」

「多分ですが……頑張ります」

「えっと、えっ? 私、え? 夢を見てるのかしら?」

「いーや、スーザン。夢じゃないよ」

「そ、そうよね。でも、大丈夫? マコトはそんなことをしたら大丈夫なのかい?」


あぁ……この人たちはこういう暖かい人たちなんだ。

自分達の幸福が目の前にあるのに、僕を心配してくれるなんて、嬉しいじゃないか。


「うん、大丈夫」

「……本当に?」

「本当だよ」

「えっと、マコトくん。スーザンはどうすれば良いのかな?」

「そうですね……」


ソナーは確実に使うだろう。

それならば、見易いように横になって貰った方が確実だろう。


「ベッドとかで横にはなれますか?」

「横になればいいのね?」

「そうなると、隣の部屋が寝室だから。少し片付けて来るよ」


そして、アイクさんは立ち上がって隣室へと消えていく。


「マコト……ありがとう。本当に……」

「スーザンさん、それは成功したらで……」

「ううん、マコトなら大丈夫な気がするのよ。何でだろうね。私にも分からないから直感なのだけれども」


そう言って、少しだけ照れ隠すようにスーザンはニッコリと微笑んでは僕の目を見てくれる。


「2人とも寝室を片付けたよ」


アイクさんが僕たちを呼んではスーザンさんと隣の寝室へ向かう。


「じゃあ、横になるわね」

「では、始めますね。少しだけゾワゾワするかもですが……身を委ねてください」

「分かったわ」


スーザンさんの声を耳に聞きながら、ソナーを発動させる。


「綺麗だ……」


隣からアイクさんの声が聞こえる。

今、僕の聖魔法をスーザンさんに纏わせた感じだ。

全知全能さんによると、この魔法は多分、僕のオリジナル魔法になるだろう。

前世の記憶が成せる技だと思う。

聞き齧る程度には調べたが、この世界の医療については教会で行ってはいるが、魔力のゴリ押しが近いみたいだ。

こうやって精査して調べて、人体の構造に合わせての医療に近い事はしていないらしい。

そうなると僕のしている事は医療と魔法のハイブリッドという事になる。


「ピュリフィケーション」


浄化の魔法を唱えては、スーザンさんの表面の汚れを落としていく。


継続してソナーを発動させてはスーザンさんの身体を内外から診ていく。


「確かに、血を媒介して身体全体に蔓延していますね。スーザンさんは朝と夜……身体が鈍くなったりしませんか?」

「確かにそうだね、スーザンは朝と夜は弱いかも」

「弱いというよりは毒は今もスーザンさんを蝕んでいます」

「え?」

「今、気付けて良かったです」


本当に良かった。

毒は慢性的になっていて、大丈夫だと教会は判断したとアイクさんとスーザンさんは言っていたけれども、そんなことは無かったようだ。

毒は毒だ。

安全とは1番程遠い場所にあるものだ。

僕は知らないうちに教会に関しての不信感を募らせてしまった気がしたけれども、それでも治癒を続ける事にする。

スーザンさんは静かになっていると思ったけれども、僕の魔力の心地好さで眠りに就いているようだった。


「うん、大体は分かりました」

「本当かい?」

「はい、では行きます……かの者の毒を全て正しい状態へと浄化せよ──キュア!」


句だけではなく、魔術として詠唱を唱える。

より鮮明に、より深く、より効果を高めるために。

使えるものは全て用いて、僕はキュア……解毒と浄化の魔法を唱えた。


……まずは血管内の黒い部分を取り除く。

……次は血中の全ての黒い部分を取り除く、そして新鮮な血液を生成していく。

生成するのは該当する魔法が分からなかったのでイメージをして、魔力でゴリ押ししてしまった。

……そして、問題は女性ゆえの子宮だ。

ここが1番黒くなっていた。

僕の潤沢な魔力でもどんどん磨り減っているのが自身で分かる。


ヒーリング。


持続の回復魔法をスーザンさんに掛ける。

少しでも抵抗力を上げる為だ。


ソナーは継続して発動して、くまなくスーザンさんの身体を調べ上げる。

自分の中では数時間にも思えた治癒を続けていく、そして……子宮部分も含めて僕は治療を……治癒をし終えた。


「はぁ……! はぁ……!」

「ま、マコトくん?!」


少しよろめいてしまって、慌ててアイクさんが受け止めてくれた。


「ごめんなさい、魔力が少し切れそうになったもので……」

「それほどだったんだね……」

「はい、でも……大丈夫です。スーザンさんは、完全に完治しました」

「あ、ありが……とう……」

そして、僕を受け止めてくれたアイクさんは背後から涙声が聞こえる。


僕は静かにアイクさんが落ち着くまで抱き締められているのだった。


そして、寝室はスーザンさんの静かな寝息とアイクさんの涙声が暫くは続くのだった。


「ありがとう、マコトくん。ごめんね、大の大人がこんな風に泣いてしまって」

「いえ、そんなことは……」


そう言いつつ、立とうとしたらフラついてしまった。


「ほら、おいで」

「で、でも……」

「良いんだよ、部屋までおぶってあげるよ」

「ありがとう……ございます」


そして、アイクさんの背中に抱きつく感じで身体を預けると「よっこら、しょっ!」とアイクさんが僕を背負ってくれる。


そのまま、アイクさんに部屋まで運ばれると僕は真っ直ぐにベッドに寝かされる。


「マコトくん。本当にありがとう。今日は僕の……いや、スーザンでさえも人生の中で特別な日になったよ。だから、僕とスーザンで出来ることは全てしてでもマコトくんを守るよ」


目が……目蓋が落ちる中で、アイクさんの声が聞こえていた。

でも、魔力が磨りきれそうな僕はもう意識が途絶えそうで……「おやすみ」という、アイクさんの声を最後に僕の意識は消失していくのだった。

※応援頂けましたら励みになります。

スーザンさん良かったです。

これは子供の誕生は近いかもです?

そして、遂に種族と全知全能以外に関しては打ち明けました。

これで、マコトの活動範囲は広がるのでしょうか?

とりあえず、明日の冒険者ギルドで何か進展はあるでしょう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ