冒険者登録
やっぱり冒険者は定番ですよね!
世界は冒険に溢れてますから。
「なんだか懐かしいね」
「確かに僕もこの空気は懐かしく感じるね」
スーザンさんとアイクさんが染々と呟いている。
僕の頭上で。
もう一度言う、頭上で。
ちょっとばかり、最初は手が暖かくて──とか感傷的になっていたけれども……今は周囲の多少なりとも好奇の目が痛い。
いや、好機かも知れない。
多少なりとも微笑ましい者を見る目の人も感じられる。
けれども……ちょっと恥ずかしい。
けれども、けれどもよ?
上を見上げると、なんだか今の状況をとても幸せに感じてそうな2人が見えるわけで……とりあえず、僕は大人しくこの空気を切り抜ける事に決めた。
「……って、聞いてるのかいマコト?」
「……えっ?」
「浮かれちゃってたのかな……えっと、これから冒険者登録に行くよと言ったんだよ」
「あ、うん、そうだった!」
うんうん、すっかりと空気になっていて気付かなかったとは言えない。
「それにしても冒険者になりたいなんて……マコトの頭ならもっと色んな事も出来るだろうに」
「まぁまぁ、落ち着きなよスーザン。それに僕たちもどう繕っても嬉しいと思ってるんだから仕方ないじゃないか」
「まぁ、そうだね。でも、とりあえずマコト? 怪我だけは……怪我だけは気を付けるだよ? いいね?」
「え? あ、うん! ……は、はい!」
「よろしい」
スーザンさんは怪我の部分、特に怪我と言う部分はことさら強調して言ってくるのだ。
アイクさんもその部分については思うところがあるのか、深く頷いたり、今は何かを思い出しているのか、少しだけ影のある顔で僕をしっかりと見ては頷いていた。
「よし! じゃあ、登録に行くかね! こっちだよ! マコト着いてきな!」
「あっ! ちょっ……は、はい!」
ズンズンとスーザンさんは進んで行くけれども、僕の手を握っているままだと気付いてるのだろうか?
アイクさんは途中で気付いたのか、ソッと手を離してくれていたけれども、僕はスーザンさんの速さに合わせて、少しだけ急ぎ足で着いていく。
「ほら、ここだよ……えーと、あ! ちょうど良いところに! おーい! ケイト!」
「ケイト……?」
自分の疑問の声をあげるのと同じく窓口の方では1人の女性がスーザンさんの声が聞こえたのかキョロキョロとしてはスーザンさんを発見して嬉しそうな表情を浮かべては、こちらへと向かってきた。
「あら! スーザン! どうしたの? 復帰でもするのかしら?」
「何言ってるんだい! 私はアイクと一緒に今も宿亭をやってるよ!」
「なぁんだ、久しぶりにスーザンの顔を見れて嬉しかったのに!」
「いつでも飲みに来たら良いさ! 忙しいのかい?」
「うーん、ほら……ギルドマスターがあれじゃない?」
「あぁ……今も良い感じにあれなのかい?」
「そうなのよ、だからサブマスターの私にシワ寄せが……」
「まったく、アイツは何してるんだか……」
「本当よねぇ……って、アイクも居るじゃない!」
「やぁ、久しぶりケイト。元気そ……うと言うよりは疲れてそうだね」
「本当よ……。それで今日はどうしたの? 2人揃って?」
そうして、スーザンさんとアイクさんは顔を下に向けると、ケイトさんと窓口の机から身体を出しつつ、僕の方へと視線がかち合う。
「……? 子供? えっ? でも……」
「あー、うん。違うんだ。いや、違くは無いのだけれども」
ケイトさんはどこか疑問の顔と2人へと気遣うような視線を向けつつも疑問が勝っているような表情をしていた。
そんなケイトさんを見かねてアイクさんがケイトさんへ、今までの経緯を話してくれていた。
「ふむふむ、なるほど、なるほど……それで、へぇー……うんうん、はいはい」
ケイトさんは仕切りに頷いては合間合間に僕を見てきていた。
「うん、分かったわ。仮の冒険者登録を認めます」
「よかったね、マコトくん」
「はい! ありがとうございます」
ひとしきり嬉しそうな感情に支配された僕だったけれども、これからの事を考えて身構える。
「えっと、そうなるとギルドカードを発行するから。まずはこちらに情報の記載と──これに触れて貰って良いかしら?」
ゴトッと置かれたのは水晶球だ。
これに手を添える事で、個人のステータスを紐付ける効果があるらしい。
らしいというのは、これから体感するからだ。
いや、全知全能さんのお陰で隠蔽レベルMaxなら、難なく隠蔽出来ると解答は出ているけれども、これとそれというか──緊張はするもなのだ。
とりあえず、名前とか年齢の記入を済ませる。
「へぇー、綺麗な字ね」
自分の名前とか少ない記載事項だったけれども、筆跡を見てはケイトさんがそう言葉をこぼしていた。
「さて、マコトくん? ここに手を添えて貰って良いかしら? 後はそこからギルドカードの発行に移るから大丈夫よ」
「わ、分かりました」
ドキドキと心臓の音が聴こえる気がする。
気がするだけなのは分かるけれども、心臓の早鐘は鳴り止むことは無さそうだ。
けれども、良く考えても、この選択が今のところ良いと少し前に考えて決心したじゃないか。
そう、言い聞かせて水晶球に手を添える。
ゾゾゾ──と、添えた手のひらから魔力を探るような感触が水晶球から伝わってくる。
その魔力の糸を……意思を僕の方で誘導する。
自分の求めるように、指向性を持たせて──こっちだよと。
「はい! 手を離して大丈夫よ!」
「分かりました……」
「うーんと……」
「どんな感じかしら?」
「そうね。魔力、体力共にその歳の平均的ね。後は魔法は無属性かしら?」
「一般的だね」
「そうね、アイク一般的ね」
「おめでとうマコト。これでマコトも冒険者デビューね!」
「う、うん!」
嬉しそうにスーザンが微笑みかけてくれる。
(う、上手くいって良かったぁぁぁぁぁぁ!!)
まだ、ドキドキと言ってるような気がする。
これで水晶球に限っては隠蔽の仕方はバッチリだろう。
ちょっと狙い済ましたかのような感じになったが、自分と同じくらいな感じの子達を見様見真似で真似た甲斐があったというものだ。
「はい、お待たせ! これがギルドカードよ? 失くしたら発行手数料が掛かるから気をつけてね?」
「分かりました!」
「後は、そうね……色々と聞きたいことあるかしら? 私の方からもギルドに関してとか話しをしていくわね」
「は、はい! よろしくお願い致します」
「……本当に言葉遣いが丁寧ね? 誰かに教わったのかしら?」
「それは……えっと──」
「あっ、いいの、いいの。ごめんなさい。記憶が……だったのよね、つい気になって聞いちゃうのは私の悪い癖ね。とりあえず、ギルドに関して教えるわね」
そう言ってケイトさんは気持ちを切り替えるようにギルドに関して教えてくれた。
まずは先程渡されたギルドカードだ。
僕の色はブロンズだ。
これはランク毎にブロンズ→シルバー→ゴールド→ブラック→プラチナとなっていくらしい。
そして、ブラックのランクに関しては帝国ウェレギュア内だと一代貴族としての機能も果たすらしい。
らしいというのも、そのランク帯の人は極稀に居るくらいで滅多に会うわけでは無いから、その説明は守秘義務も絡むために詳細は伏せられた感じだ。
後は年会費と言えるのだろうか?
それぞれのランクに応じて、ギルドに会費を年に1回払うようだ。
ある程度のランクに行くと会費だけで良いが、低ランク……ブロンズ、シルバー帯に限っては定期的なクエストやギルド活動が推奨されているらしい。
推奨されているというのは活動していなければ、管理上になるがギルド登録を抹消されるらしい。
まぁ、確かにあれよこれよと受け入れていたらキャパがオーバーするのは目に見えていた。
ここにはパソコンみたいなデータ処理というか、そんな処理能力を飛躍させる道具は無いのだから……いや、魔道具はその可能性の一端なのか? まぁ、今は関係の無い話しか。
後は特典があるとしたら、ランクが高くなる毎にギルド施設の利用がお買い得になるらしい。
食堂の割引や、素材の買い取りの手数料の緩和、後は解体費用の緩和などだ。
関連店ではないが、ギルドと繋がりのある武具防具屋での購入の一定の割引とかもあるらしい。
ちょっとだけ、その仕様にはワクワクした自分が居た。
まぁ、お買い得とかそういうワードには弱いのだ。
その他は大前提の話しとしては高位のランクほど、ギルドからの緊急要請は受けて貰いたいらしい。
まぁ、マコトくんにはまだ縁の無い話しかも知れないけれど──と、言われたけれども……もしかしたら縁があるようになる可能性も高いと思ったので良く聞いてしまった。
「そんなところかしら? 質問とかも大丈夫そう?」
「はい、ケイトさん丁寧にありがとうございます」
「いえいえ、このくらいは誰でも応えられるわよ」
「ねぇ、ケイト? 私からのお願いになるんだれども、暫くはマコトの窓口になってくれないかしら?」
そして、折り入ってというようにスーザンさんがケイトさんにお願いの口をしていた。
「えっ?」
「えっ? って、マコト? あなたはルーキーなのよ? それに仮登録出来るからって8歳という年齢は凄いことなのよ? ちゃんと面倒を見て貰いなさい」
「そ、そうなの?」
「そうだよ、マコトくん。ケイト? お願い出来ないかな?」
「はぁー、もう私たちは友人でしょ? お仕事にプライベートを持ち込まない! っとか、言う時は私もあるけれども。マコトくんはまだ小さいし、ルーキーだし、ちゃんと私が見てあげるわ」
「ありがとう! ケイト!」
「もう、スーザンは大袈裟ね」
「僕からもありがとう、ケイト!」
「アイクもそこまで感情を出すなんて……まったく、マコトは大事にされてるのね」
「は、はい。本当に……感謝しきれないくらい」
「それが分かってるなら、それだけでも立派ね。そうね……とりあえずは受発注、素材の買い取りは私が受け持ってあげる。解体の方は……一応、同じギルド内なのだけれども部門が違うと言えばいいのかしら。ちょっと、担当が変わるから──サムに頼んで貰えれば良いわね。スーザン? アイク? サムへのお願いも出来る? 許可は私、サブマスターのケイトが許可を出したと言えば大丈夫だから」
「あら! サムだったら安心ね! ありがとうケイト! 分かったわ!」
「サムか……うん、安心だね」
「えっと……サムさん? って?」
「あぁ! マコトは分からないよね。サムは私達がベテランパーティーの時に専属に近い形で解体をお願いしていた職員なの。仕事は的確だし、無愛想に見えるのが欠点というかチャームポイントと言えるよね! とりあえず、良い人よ!」
「あはは……、無愛想に関してはご愛敬という人が多いけれども、ちゃんと見れば表情は豊かだよ」
「あら? そうなの?」
「アイクそうなの? 私もスーザンと一緒で良く分からないのだけれども……」
「あはは……。まぁ、とりあえず僕とスーザンの冒険者時代からの良くして貰っている人だから大丈夫だよ」
「う、うん」
「ケイト? まだ、この時間帯はお昼休憩には入ってないよね?」
「入ってないと思うわよ? それにサムは仕事一筋だから、基本的には解体し始めたら手早くやらないと質が落ちるのと、生命に悪いからという理由で仕事を優先させるから……とりあえずは観に行ってみてくれないかしら?」
「分かったわ! ありがとうケイト! また、機会があったら来るわ! それか宿亭にはいつでも来て良いからね! 最後にマコトをよろしくね!」
「はいはい、分かったわよ!」
「僕からもお願いね」
「アイクも凄い心配性になっちゃって……まったく、大丈夫よ。ちゃんと見てあげるわ」
「ありがとう」
「マコトー? アイクー! ほら! 早く行くよー!」
アイクさんとケイトさんがお互いに少しだけ苦笑いになる。
僕も視線を声の主──スーザンさんに向けると大きく手を振りながら僕とアイクさんを呼ぶスーザンさんが居るのだった。
「マコトくん、行こうか?」
「は、はい!」
アイクさんも流石に少しだけ照れたような表情を浮かべたけれども、一瞬の表情だった。
今は引き締めたキマった表情に切り替えて、僕に手を差し伸べてくれていた。
その手を取っては僕とアイクさんは入り口で僕たちを待っているスーザンさんへと向かうのだった。
「まったく、遅いわよ2人とも? 善は急げと言うでしょう?」
「急がば回れともあるから、急ぎすぎたら危ない時もあるんだよ、スーザン?」
「んもぅ! 今はそんなのはいいの! ほら! 行くよ!」
「はいはい……。はい、マコトくん行こうか?」
「一旦、外に出るの?」
「そうよー? 解体場所の方は建物の裏側にあるのよー! まぁ、敢えて離してるって感じかも!」
「一時期は一緒に……! って、こともあったんだけれども。臭いとかが一番だけれども……その他には直接解体と言うけれども、食べれたりもするから、捌いた新鮮な食材を直ぐに精肉店に届けられたり、嘗められる革を専門業者へ卸したり出来るように、実際は冒険者と言うよりは商家の人達の窓口として機能している側面もあるからなんだ」
「な、なるほど……。って、魔物とか食べれる?!」
「ん? そうだよ?」
「何言ってるんだいマコト? スープとかにも今までお肉入ってただろう?」
「う、うん……」
ちょっと衝撃だった。
確かにスープとかに入ってて、ホロホロとほぐれては美味しかった印象が先行していたけれども……、あれ……魔物の肉だったのか。
「まぁ、でも魔物と言っても様々だからねぇアイク?」
「そうだね、スーザン。マコトくん、最近は大体は魔物と言っちゃうんだよ」
「どういうこと?」
「魔物とは正確にいうと魔核を保持している生物を指すんだよ。まぁ、その概念というか括りで言っちゃうと僕たちも魔物になっちゃうのかな?」
「そうよね、ほら……魔石は分かるでしょ? あれが魔核なのよ。あれがあることで魔素を取り込んで……魔法が発動出来る……で合ってるのよね、アイク?」
「うん、大筋は合ってるかな?」
「な、なるほど……」
もう少しだけ、建物の裏手側……解体小屋の方へと向かう間に魔物、魔核について説明をして貰う。
魔物
※魔核が体内に存在している生物の総称
その出現はダンジョンから産み出されたもの、また自然の魔力溜まりから産み出されたもの、それぞれの系統からツガイから産まれては生命を続けては生きているもの。
魔核
※生物の体内に存在しているもの。
魔石としての側面もある。
この器官を通して、空気中の魔素を取り込んでは魔法の発動に貢献している。
動物
※魔核を持たない生物の総称。
しかし、魔核を持たないかは生物を解体してみないと分からないのと、昨今は魔物との混合種が多く、専ら貴重な生物に位置する。
または魔素を自然と溜め込むことで魔核を作ってしまう可能性もあるので、基本的には存在しているかは懐疑的。
そんな位置付けらしい。
あれ? そうなると、ほぼ魔物と言っても過言では無いのでは?
「マコト? 聞いてるかい?」
「あっ! う、うん」
「はは! これは聞いてなかったね、スーザン」
「んもぅ! マコト? 良く聞きなさい。人にも魔核があるということは裏では人身売買なんて恐ろしい事もあるの! 忌避される事として、帝国は取り締まっているけれども、闇は深いのよ? だから、ちゃんと気をつけるようにね? 約束よ?」
「う、うん」
「今度はちゃんと聞いたようだね」
そ、そっか……魔石は売れるからね……。
その可能性は自然と見ないようにしていたようだった。
真剣に心配して声を掛けてくれているスーザンさんを見ていると、そんな事実も目を背けることなく受け入れられていた。
「ほら、着いたよ2人とも。スーザンも着いたよ、マコトくん、ほら? ここが解体小屋だよ! 小屋と言っても良いのかあれだけれだも……立派な施設だからねぇ……」
「こっちも大きい……」
「最初は小さかったんだよ。持ち込みが多くなっては、買い取り業者とか増えて、増築を重ねてはこんなに大きくなっていったと聞いてるよ! ね、アイク?」
「うん、スーザンの言葉通りだね」
2人の視線をそのまま建物に向けるように、僕も建物に目を改めて向ける。
表のギルド部分と同じくらいに裏手側も窓口? 入り口が広がっていては世話しなく商家の人達が行き来をしていた。
ただ、表側は人の専用の入り口と言っては過言では無いけれども人用のサイズの入り口が基本だったのに比べて、解体場所は魔物のサイズに応じて広げているようで、そこからだいぶ施設としての機能は変わっていた。
「うわ……?!」
「あぁ、驚くよね。分かるよ」
「あぁ……! 魔法の鞄から魔物を取り出したのね」
僕が驚いたのは建物横の広場にて急に大きな魔物が現れたからだった。
確かによく見るとスーザンさんが言うようにマジックバックが手元に見えた。
「マジックバック……」
「色々と収納出来るのよ。高いんだけれどもね」
「僕たちも重宝していたよね。自然と討伐出来る魔物のサイズや魔石の量は増えていくから必須のアイテムになるんだよ」
「そうなんだ……」
「ただ、ピンきりだから収納力や不可能力は様々よ」
「そうだね、高いとどんな感じなんだろうねぇ」
「そんなになの?」
「そんなになんだよ、マコト!」
スーザンさんはどこか面白そうに反応しては笑っている。
「とりあえず、サムに会いに行こうか? こっちだよ」
そして、アイクさんが先行して僕とスーザンさんを導いてくれる。
「……おーい! 誰か居るかーい?」
「んだぁ! 今まだ忙しいんだ! 査定は外の広場でやってますよ!」
「いや、サムを探してるんだ!」
「サムさん……? あ、あぁ! アイクさんじゃないですか!」
中に入ると解体人だろうか、作業台に魔物が横たわってはそれを忙しなく解体している人達が居たけれども、アイクさんを目に納めると何名かは手を止めてはアイクさんに嬉しそうに反応を返していた。
「何、手を止めてるんだおめぇら! 肉がダメになっちゃうだろ!」
「あっ! サムさん! サムさんにお客様ですよ!」
「ん? なんだぁ? 俺に客って……お、おぉ! アイクじゃねぇか!」
「やぁ、サム!」
「なんだ? どうした? 俺に解体して貰いたい魔物でも居るのか? ん? スーザンも居るじゃねぇか……って、坊主? ん? いや、だがおめぇらは……ん?」
「あぁ、そっか、そうだよね。スーザン? 少しマコトと待ってて貰える? マコトくんも大丈夫かな?」
「う、うん」
「はいよ!」
僕たちの返事を聞くとアイクさんはサムさんと少しだけ奥に向かっていく。
ただ、サムさんは流石に仕事人なのか、離れる際に手を休めないで動かすようには的確に指示を出していた。
「なるほどな、坊主……いや、マコトか? 俺はサムだ。よろしくな」
「僕も……よろしくお願い致します」
「ん? しっかりと挨拶も出来て偉いじゃないか。商家の同じくらいの年齢の子達より聡明に見えるな」
「ははは……」
誤魔化し笑いだ。
けれども、そんな反応を見てはサムはぶっきらぼうな表情の奥で少しだけ驚いた様相を見せていた。
「まったく、子供は無邪気に笑う程度でいいんだよ」
「は、はい!」
「それで、魔物の解体の窓口か? 俺で良ければ受けてやろう」
「良いんですか?」
「いいんだよ! アイクとスーザンの知り合い……いや、子供みたいなもんだ。俺が付くのは誰にも文句は言わせねぇよ」
「ありがとうね、サム」
「ありがとう、サム」
「アイクもスーザンもやめてくれ、お前達のお陰で俺も今はこうして解体の上の役職に就けているんだからな」
「あはは、そんなことは無いさ。サム自身の技量だよ」
「そうね、後は真面目さよ」
「やめてくれ、年甲斐もなく恥ずかしいじゃねぇか」
ちょっとだけ、照れてるのだろうか?
確かによく見てみるとぶっきらぼうな表情の奥に感情が多彩に揺り動いてるように見える。
「おい、お前ら! 一旦すまねぇな! 今ここに居るマコトは俺が受け持つようになった! 何かあれば俺に知らせてくれ!」
「はい!」
「分かりました!」
それぞれの人達が手を動かしながらもチラッと僕を見ては受け答えを返していた。
「よし、これで後はマコトがここに来れば俺を呼んでくれれば良いだろう」
「ありがとうございます」
「少しずつ自分の出来る討伐とかをするんだぞ? まぁ、アイクにスーザンが居るから無茶はしねぇとは思うが、新人は気持ちが大きく出て、時には無謀とも言える行動を起こすからな」
「は、はい!」
「まずは手で持って魔物とかを持ってくるのか?」
「え、えっと……」
「いや、そこは僕たちのお古をマコトにあげようと思っているよ」
「え?」
「ふふふ、驚いてるね! 本当は帰宅してからと思ったけれども、良い所だからもう渡しても良いかな、アイク?」
「そうだね、今渡そうか」
「ほら、私たちのお古だけれどもマジックバックよ。それなりに入るのと、ダンジョン産で所有者指定が出来るから便利なのよ」
「あ、ありがとうございます……!」
うんうんと、嬉しそうにスーザンさんは笑顔になる。
そのまま、今の所有者はスーザンさんだったみたいで、所有者の切り替えを念じるように魔力を這わせるとマジックバックの所有者はキャンセルされたようで、僕にマジックバックを手渡される。
「少しだけ僕を認証するようにって魔力を通す感じかな?」
「魔力を……」
スーザンさんに言われた通りに魔力をマジックバックに通してみると、僕を所有者と認識したような手応えがあった。
試しに袋を開けようとするとすんなりと空いては手を入れてみると脳内に空間に所有されている物のイメージが広さが流れ込んで来ていた。
「無事にうまく言ったようだね。ダンジョン産とかのマジックバックは所有者指定とかあって便利なんだよ。それがあると所有者以外はマジックバックを開けないようになってるんだ」
「な、なるほど」
「後は手を入れてみたから分かると思うけれども、イメージ出来ている広さが入る量かな? 後は色々と試してみると良いと思うよ」
「あ、ありがとうございます……! スーザンさん、アイクさん!」
改めて、お礼を告げると2人は嬉しそうに顔を綻ばせる。
「良かったな、マコト! マジックバックは高価だからな、大切にするんだぞ? 普通に魔道具としてもあるが、あれはあれで本当に高いからな。冒険者なら、ダンジョンを制覇したりの報酬で得られたりとかあるから、価値は薄めの印象はあるが商家とかから見るとヨダレものだからな!」
「わ、分かりました……!」
サムさんが横で追加情報として教えくれる。
そっか、確かに冒険者には馴染みがあるっぽいけれども。
普通に考えたら異世界物としては破格の性能なのか。
それに、話を聞いていてダンジョンの報酬というのも気になる。
ダンジョン
※魔力や瘴気の吹き溜まりから発生すると通説がある。
迷宮の様相は様々で自然の場所から産み出されたり、突如として産み出される場合もある。
洞窟だったり、塔だったり様々だ。
一説には異空間に繋がっているとも言われており、内部は広大に広がっている場合もある。
小規模なもの、大規模なもの含めてフロアボスを倒して行く毎に報酬があるのと、ダンジョンマスターと言われる最下層のボスを倒す事で休眠期間が訪れる。
中の魔物に関しては倒した傍から魔石を残して消えていく。
それは人も例外ではない。
それはダンジョンという異質な存在が魔力を変換してるからではと言われている。
ダンジョンの仕組みは依然として不明だが、報酬に関しても餌──外の存在を呼び込むために産み出してるではと一説があり。
外に魔物が出ることで受肉を果たす。
酷くなるとスタンピードと言われる魔物の大量発生が起こる。
……へぇー。
って、全知全能さん……久しぶりだからってお仕事し過ぎじゃ無いですか?!
って、突っ込む余力が有る程に魔力が高まって来てるということか?
とりあえず、全知全能さんの有難い知識によって、ダンジョンに関してはふんわりと分かった気がする。
なるほど……ダンジョンか奥深い。
「ダンジョンが気になるのか?」
「は、はい……!」
自分が暫し考えてたような感じだったからだろうか、サムさんはどこか嬉しそうに僕の反応を見ていた。
「えっと……」
「良い面構えじゃねぇか。冒険者向きだな。いつか、そうなると帝国でも屈指のダンジョン都市に行ってみるのも良いかも知れねぇな」
「ダンジョン都市ですか?」
「あぁ、ここより少し先だが巨大なダンジョン──まだ攻略も出来てなく、深層何階まであるか分からない未攻略のダンジョンを中心として発展した都市があるんだ。その名もダンジョン都市ロマレン、いつか行ってみるのも良いかも知れないな。あそこは周辺国も含めての全てが今は集まって来ているほど栄えているからな」
「ロマレン──」
「もう! サムったらまだマコトは8歳よ?」
「わ、わーてるって……ただ、なんだ、マコトを見ていたらな。なんかワクワクしちゃってよ」
「あぁ、それは分かるかも」
「だよなぁ、アイク?」
「でも、マコトはまだまだこれからだよ。それにそんなに早く出ちゃったら寂しいじゃないか」
「そうよね、アイク!」
「なんだぁ、マコト。2人にバッチリ愛されてるじゃねぇか」
「本当に……嬉しいですけれど、感謝しきれなくて……」
「ばっかだなぁ! おめぇは。そんなの元気な姿を見せてるだけでもいいんだよ! ったく、真面目か!」
「それをあなたがいうのサム?」
「サムも冗談を言うようになったんだねぇ」
「おいおい、スーザンもアイクも変に突っ込むんじゃねぇ」
「はいはい」
「そんくらいで大丈夫か? 後は実際に来てみて何かあれば都度対応するか」
カーン……カーン……。
第2の鐘がなる。
お昼の12時の知らせだ。
「おーい! お前ら! 休憩をしっかり取れ! 作業が途中なやつは俺が変わるから知らせろ! わりぃな! アイク、スーザン、マコト。俺は仕事に戻るな」
「ありがとう、サム」
「ありがとね!」
「ありがとうございました」
ニッ! とサムは少しだけぶっきらぼうの中に笑顔を見せては作業場に戻っていった。
そして、僕たちも解体小屋から出ていく職員に挨拶を返しながらもギルドを後にするのだった。
「さて、私もお腹が空いたわ!」
「どこか寄ってから帰ろうか?」
「そうね! 久しぶりに奮発しようかな? ほら、マコトのギルドデビューのお祝いよ!」
「確かに、そうだねスーザン」
「マコトは何か食べたいのあるのかい?」
「うーん……」
いや、余り食事に関しては分からないのだ。
分かっているのはアイクさんの宿亭のメニューだけとも言えた。
「何か、おすすめの所なら……」
「おすすめか……そうなると大通りの最近噂の定食屋さんにしようか」
「それは良いわね! 流石、アイク。ほら、マコト行くわよ!」
そして、スーザンさんに手を引かれては定食屋さんに入り、アイクさんと共に2人に僕のギルドデビューを祝って貰うのだった。
(食文化はまだまだ発展途上なのかな?)
食べながら、そう思ったのは秘密だ。
凄く美味しいけれども、ひと手間加えたら更に美味しそうになるポテンシャルが見えた。
いつか、そっち側の方も手を出してみたいな……。
そう思いつつも、僕の日常は流れていくのだった。
※応援頂けましたら励みになります。
脅威としてはダンジョン都市ロマレンもあったり無かったり。
定期的に攻略しないと魔物が溢れるスタンピードが始まりますから……。
ですが、それ以上にダンジョンが産み出す恩恵が凄いのが実情だったり。
その他、冒険者の定番街! といえば冒険者の街ルソーレ!
やっぱり、魔の森に接している街として破格の条件がそこに眠っています。
眠っているというか帝国の守りの要だったり。