衛兵長エリック
衛兵は市民軍である。
街の市民組織でもあり、街の城門の管理を主にしている。
実入りも良く、結構な人気職だったり。
※街の警邏は国の管轄の騎士がしている。
「おい……大丈夫か? おーい? ……ん? 死んで──」
「いえ、エリックさん息はしていますよ?」
「んー……?」
──パチッ!
「うぉぉぉぉ?! 急に目を開けるなぁぁ?!」
「うわぁぁぁ……?!」
──目を開いたら目の前に良い歳したオヤジの顔がありました。
はい、私です。
マコトです。
マコトです──。
って、ネタを一瞬よぎって冷静になる。
「エリックさん落ち着いてください……!」
「お、おう?! 俺は落ち着いてるぞ?!」
「は、はぁ……」
「やめろ、俺をそんな残念な目で見るな。 えっと、坊主? 大丈夫か? 痛いところとか、変なところとかあるか? 名前は言えるか? ん? どうした? やっぱ具合が悪いのか? ん?」
「エリックさん、質問し過ぎですよ……」
「あ、あぁ……わりぃ。 そうだったな。 おい、坊主名前言えるか?」
そう言って衛兵長と呼ばれていたエリックという男は自分に尋ねてきていた。
「えっと、僕は──アマガミ マコト……です」
「アマガミ? マコト? ん? ミドルネームがあるのか? 貴族様……なのか?」
「いえ……?」
「おい、アマガミ? マコト? 貴族名を聞いたことはあるか?」
「いえ、エリックさん私は聞いたことは無いですね?」
「坊主? 記憶はあるか? 名前はどっちなんだ?」
「えっと──マコトです」
「マコトか。 マコト……よし。 家族は居るのか? 何で1人だったんだ? 従者とか居たのか? それにマコトが居た方面は魔の森に近い方だぞ? ん? どうした?」
「エリックさん……子供相手に質問攻めし過ぎですよ……」
「ん? あ? あぁ……わりぃ」
いや、根っこは良い人なのだろう。
けれども、どうも熱い性格なのかお節介焼きなのか、沢山質問を心配が先行してしてしまっているような感じに見える。
「それでだ、えっと……家族は分かるか?」
そう、言いながらエリックは手に書類を持ちながら自分の発言をサラサラと書き留めていく。
「家族の記憶は……欠落しているのか。でも、日常生活に支障をきたすような部分は皆無と。後は魔の森付近に居た記憶は無いと」
「えっと……魔の森って──」
「ん? あぁ、魔の森って言葉を知ってるのに内情が分からないのか?」
「エリックさん、一応まだこの年齢だと魔の森は危ない位の認識ですよ」
「そっか、そこら辺は冒険者ギルドに入るやつとか大人になってから付き合いで覚えるやつが多いか」
「ええ、そういうもんですよ」
「マコト? 魔の森は危ない場所なんだ。まぁ、詳しくはいつか冒険者ギルドやら、働く環境に応じて学べばいい」
「は、はい……」
魔の森ってなんだ──?
そう思うと同時に知識が溢れてくる。
魔の森
※魔大陸を挟む峡谷付近に生い茂る森林地帯。
尚、魔力の吹き溜まりが発生しやすく野生の動物以外にも魔物が存在している。
場所によっては吹き溜まりからダンジョンが産まれ落ちる場合もある。
へぇー……色々とあるんだな。
魔大陸? そうなるとここはどこになるんだろう?
あっ──。
グラッと頭が揺れて来たところで気付く。
全知全能の力を使ったから来る魔力不足だと。
「お、おい……! 大丈夫か?!」
「気を失ってますね……」
「参ったな……。いや、必要な事は聞けたから聴取はもう良いだろう」
「では、エリックさん。この子はどうするんですか?」
「いや、このまま外に放り出すとかはしないぞ?」
「そうですよね、そこがエリックさんの良いところだと思いますよ。で、どうするんです?」
「知り合いの冒険者を引退して旅亭をやってる所があるんだ。ちょうど今は空きもあるだろうし、坊主の記憶が戻って、何とかなるまでは面倒をお願いしてみるさ」
「エリックさんは本当にお節介焼きですねぇ」
「こんくらい朝飯前さ! まぁ今は夕食前だがな!」
「……」
「笑えよ!」
「はいはい──ハハハ」
「ったく、そろそろ城門を閉める時間だな。第3の鐘が鳴る前に閉めるぞ」
「りょーかい」
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旅亭ですって。
もしかしたら、マコトの冒険者の街ルソーレの拠点になるかも知れませんね。