城門
いやぁ、城門って……ロマンだよね?
はぁはぁ──。
はぁはぁ──。
「いや、キツすぎだって!!」
周りに誰も居ない中での叫び声。
はい、どーも! こんにちは!
そう、叫び声の主は私です。
……いや、そんなことはどうでもいい。
さっきから駆け出したのは良いけれども、見るもの見えるもの全部が全部気になってしまったら、その都度テキスチャがご丁寧に出ては読んでしまっては更に気になって見てしまうと、それまたご丁寧に案内されて……は──!!
「あ、あかん──…………ハッ!」
そう、魔力切れに陥ってはドサリと倒れ込んでるようなのだ。
誰が?
僕がだよ!!
「ま、マゾ過ぎる。 全知全能……マゾイ性能だ」
いや、便利なんだよ?
うん、本当に。
何も知らない草原に居た僕でさえ、今になると周りがお庭──フレンズと言っても過言では無いくらいに知識が増えていってるよ。
あはは──!
あはは──楽しい……ハッ!
「あ、アカン!」
でも、何とか……何とかだ。
何かに襲われるようなことは無く、遠くに遠くに見えていたちっぽけな街並みが今は大きく城門が見えてきていた。
「わぉ……ファンタジー……」
まぁ、そうだろう。
中世ヨーロッパよろしく? な街並みが見えている。
街道も踏み鳴らされた道が馬車さんよろしく? な感じで続いている。
そして、やっとお初にお見えにかかるのは人だ!
「いや……おや? 待て待て……?」
んー?
目を凝らそうとすると遠視機能があるのかだいぶ遠くが見えてくる。
「ケモ──耳?! いや、あっちは耳が長い……ま、まさか……エロ……いや、エルフ?!」
ほぇー、異世界確定ですわ。
何か脳内でファンファーレが鳴り響いた気がしたけれども、うん、これは確定ですわ。
※獣人属
猫、犬、兎……その他多数。
※エルフ
決してエロ……フではありません。ありません。
ほぇ……全知全能さん、もしかしなくとも、そっち方面の知識も?
いや、そうなると全痴全──。
「おっと……野暮なことは言わないぜ」
なんだか、急にびっくりユートピア! じゃないけれども、冷や汗が噴き出したのは気のせいではないだろう。
地雷と分かって踏み抜きに行く程、私は愚かでは無いのだよ。
ははは……──ハッ!
「いけない、また意識が飛んでたのか?!」
全知全能……便利だけれども、やはり恐ろしい子ッ!
そんな事を思いながら、改めて自分のステータスを見てみると色々と変化……いや、もっと詳細にと念じたら詳細なものが出てきて驚いた。
《名前》天神 真
《種族》半神
《年齢》8
《レベル》1
《extraskill》全知全能 Lv1
《体力》100
《魔力》100
《魔力コントロール》Lv1
《身体強化》Lv1
《思考加速》Lv1
《土魔法》──
《水魔法》──
《火魔法》──
《風魔法》──
《光魔法》──
《闇魔法》──
《聖魔法》──
《無属性魔法》Lv1
《剣技》──
《槍技》──
《弓技》──
《斧技》──
《鎚技》──
《盾術》──
《体術》Lv1
《体力回復上昇》Lv1
《魔力回復上昇》Lv1
《攻撃力上昇》──
《防御力上昇》──
《鑑定/解析》Lv10★
《空間転移》──
《隠蔽》──
《収納》──
《付与術》──
《錬金術》──
「おお……!!」
体力と魔力が伸びている……!!
いやっ! 待て待て……10から100だと?!
なんと言う倍々戦法? いやいや……これが普通なのか?
基準が分からん。
……いや、ちょっと待てよ。
──20……5……50……おっ! あれは150か。
「あれ? そうなるとこの短時間で100って……あっ、やべ──」
……ハッ!
またブラックアウトしていた。
ついつい全知全能を使ってしまう。
いや、これはもしかすると鑑定解析のスキルレベルの10の隣に★が出てるけれども、これはここまでが打ち止め? MAXというやつなのだろうか?
そうなると全知全能を合わせて、自分は鑑定解析はスキルレベルMAX? ということなのだろうか。
「ステータス……か、これって誰にでも見られるのかな?」
うーん?
考えてみると気になる。
気になるというか、スキル項目を見てみると隠蔽なんて物騒なものもある。
「流石に半神はまずいよなぁー」
鈍感系じゃないと思うけれども、そんな自分でも分かる。
この種族はバレたらアカン! っと。
隠蔽──。
隠蔽──か、どうやるんだ?
そう思ったと同時に知識がどこかからか流れ込んで来るように、その構造が理解できていく。
「ん? なんか、閃きに似てるが……これが全知全能の力ってこと?」
今になると、先程まで分からなかったのが信じられないような感覚で隠蔽の仕方と仕組みを理解している自分が居た。
とりあえず、種族は隠蔽しないと。
《種族》人(半神)
ん、これで大丈夫なはずだ。
気付いたら、隠蔽のスキルもカンストしてるみたいだ。
ただ、理解はしたけれども、それを使うための魔力が足りないのも理解できる。
「っぱ、あれだな。 魔力だな。 魔力が足りん」
そう、呟くとストンとその事実が理解していく。
そして同じく隠蔽するために魔力を酷使したのを気付いた時には目の前がブラックアウトしていくのだった。
──。
「おーい? 生きてるかー? おーい?」
「死んでるんじゃないか?」
「いやいや、通りすがりの商人が行き倒れの小僧を連れてきた時も、それに何よりも今この時も呼吸してるだろ?」
「あー、そうだな」
「身分証も持ってなさそうだし、とりあえず衛兵長を呼んで来ねぇとな」
「あー、ちょっと俺は野暮用を思い出し……」
「おい待て、サボろうとするな。呼んできてくれ、そろそろ詰所に戻って来てるだろ?」
「そろそろ勤務終わりなんだけれどもなぁ……。めんどいなぁ……まぁ、わぁーたよ。行ってくるわ」
「頼んだぞー」
プラプラと手を振りながら、ここ冒険者の街ルソーレの城門の横の小屋に寝かされている小僧──ならぬ、少年。
それは──そう、自分だ。
(どうして、こうなった?)
いや、起きて驚いてるのは言語理解が出来ることだ。
何を話してるかさえ全て分かる。
分かるが……最初は理解出来ていなかった。
なら、なぜ分かるか?
そう、全知全能を使ってしまったからだろう。
だから、先程から新しく分かる単語や発音、意味を理解していく度にブラックアウトするという責め苦を味わっているのだ。
正直、記憶も飛び飛びだ。
飛びーるぱわぁーだ。
いや、何もぱわぁーは無いか。
ただ、何とか意識を保てるようになって聞いている分だと、どうやら自分はあの場でブラックアウトしたのと同じく、近くを行商人が通り過ぎたのだろう。
心優しき行商人はここ、城門まで運んでくれて彼ら衛兵に自分を預けてくれたようだ。
そう、心優しき行商人は僕を衛兵に突き出したとも言える。
──マジか。
いやいや、種族の隠蔽は完璧のはず。
どう見ても……いや、客観的に自分を見れないから何とも言えないが周りの衛兵さんの言葉曰く、僕はちゃんと小僧……いや、プリティーな少年だ。
(問題は……身分証が無いことか)
この世界にはどうやら身分証があるらしい。
意識を消失しつつ、聞き齧った情報を整理すると、ひとえにギルドの所属、商人、後は街単位で税を納めての身分を発行など出来るらしい。
(問題は僕が8歳の子供なのもあるのか?)
どうやら、というよりは当たり前に8歳はまだ幼いらしい。
でも、聞いていると失くした可能性が大きいのでは? と会話も聞こえていた。
(よし、僕は身分証を失くした子供……そしてショックな事があったのか記憶が少しだけ曖昧に……、後はギルドか……ギルドってあれか? 冒険者の街とか言ってるから、冒険者ギルドかな?! あぁ、冒険者……いいね! 最高に良い! それだ、冒険者になろう──冒険者はいくつからなれるんだ?)
──8歳から仮発行……か。
へぇー……あっ……また全知全能を……ま、魔力が──。
そして、僕はまた意識を消失させていった。
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これから冒険者の街ルソーレが活動拠点になるのでしょうか?