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カルミヤ養成所の開講! まずは自己紹介、そして学びへと→→→アビスへの挑戦へ!

カルミヤ養成所──始まります。

それは冒険者ギルドの大きな希望への始まり。

最初の大事な生徒さんへの学びが始まります。

「ナタリアー! ちゃんと準備は大丈夫?」

「うん! 当たり前だよ!」

「グセフもよく言ってたわよ! 冒険者はまずは準備から怠ってはいけないって、本当に大丈夫かしら?」

「うん! 本当の本当に大丈夫! 今行くよ!」

バタバタと扉の向こうからはナタリアが慌ただしく支度をしている気配が感じられる。

玄関の前の扉に立ちながらもタチアナは様子を伺うように中を見てはソワソワしている。

僕とエルザに至っては支度を終えてはナタリアを待っている状況だ。

これから合流しては、本日から開講する養成所へと一緒に向かう予定だ。


「お、お待たせ……ど、どう似合う?」

「わぁ……えぇ、似合ってるわよ──ナタリア!」

「確かに、セルゲイは衣装センスの方面でもセンスがあるのか……」

「え? 一緒に私とナタリアで選んだのよ?」

「う、うん! エルザと一緒に選んだんだよ?」

エルザから男性が女性の衣装選びで一緒に着替えたり出来るはずないでしょ……と言いたげな視線を投げ掛けられるが、僕はソッと目を反らしてはやり過ごす。


まぁ、うん。

とても似合っている。

ナタリアの衣装は冒険者としても動きやすい服装だけれども、所々にフリルなどを入れては女性らしさと可愛さがアピールされている。

今回の養成所へと通えるご褒美では無いけれども、僕とエルザからの贈り物だった。


「お母さん! 行ってきます!」

「えぇ……本当に気をつけて行ってくるのよ!」

「うん! 行ってきます!!」

ナタリアは元気に手を振ってはタチアナと別れては僕たちと一緒に養成所へと向かうのだった。


「やぁ、おはよう! って、おはようございます、マコトさん」

「おはようございます、アルメンさん。あれ? リディアさんは?」

「リディアは中で生徒達を迎えているよ。後は……あ、来た。あの子が最後だね」

「えっ……ナタリア?」

「ん? ……えぇ?! イリナ!?」

ナタリアが驚いた表情で声をあげているが、向こうの子もナタリアを見て驚いていた。

そして、向こうの子……イリナの後ろに着いてきていたご両親だろうか? 2人組はペコッと頭を下げてくるけれども──どこかで見覚えが……あ、そっか……向かい側の武器屋の方だと僕は思い至った。


「どうしてナタリアがここに居るの?! 冒険者は諦めたっって言ってなかった?! 冒険者になれるようになったの?!」

「う、うん! 色々あったけれども、私、通えるようになったの!」

「うそっ……なら、私と一緒に通えるの? 本当に?」

「本当だよ!」

キャッキャッと2人で嬉しそうに跳び跳ねてるけれども、チラッと後ろを見やればイリナの両親だろう2人は微笑ましそうに見ながらも、僕たちへと目線を変えては深く頭を下げてくる。


「あなたがマコトさんね。本当にタチアナの事、改めてありがとうございます」

「い、いえ……僕は僕の出来る事をしたまでですから」

「それでもだよ、オルロワと俺では何も出来なかった。昔からの付き合いなのにな」

「イワン……あなたも頑張ったのよ」

「あぁ……」

「ん? どうしたのお父さん、お母さん?」

「あぁ、いや、なんでもねぇ。ナタリアちゃん、何か入り用な武器や防具があれば、いつでも言ってくれ。俺ので良ければ最高の武器、防具を作ってやるからよ」

「ありがとう! おじさん、おばさん!」

ナタリアの元気な返事にイリナと呼ばれた少女の両親が照れくさそうに頭を掻いていた。

この人たちはあれだ、きっとタチアナの父親世代の頃の話であった向かい側の武器屋の方達なのだろう。

今現在もタチアナと同じく経営を引き継いでいるということか。


「それでは皆、揃ったようだね。教室に行こう」

「イリナ! 頑張るのよ!」

「うん! お母さん! お父さん! 行ってきます!!」

元気にイリナが手を振っては先に進んでいく。

僕とエルザ、そしてナタリアも軽く会釈をイリナの両親にしては教室へと向かうのだった。


「皆、集まったわね。時間も……うん、余裕があるわね、合格だわ。冒険者足るもの、時間がルーズで気ままな印象が付きまとってはいるけれども、実際は実力がある人ほど、真逆を行くわ。……まぁ、時には例外がありますけれども」

「先生! そうなると有名なクランの人達は皆、しっかりとしているということですか?」

「……私も噂にはなるけれども、エニアグラムは別かしらね」

「へぇー……」

「とりあえず、まずは自己紹介から始めます。私はリディア、一応ゴールドランクです」

ォォ……! っと、いう反応が生徒から声があがる。


「僕はアルメン。同じくゴールドランクだ」

「……えっと、そうだね。僕はマコト、ランクは──プラチナだ」

ハッ……と息を飲む音が生徒からあがる。


「あはは……私はマコトの助手のエルザです。私の方もよろしくね?」

王女様だ……。

って、声も聞こえる。

まぁ、そう言った生徒は4人居る内の1人の男子生徒なのだが。

最初は少なく、ここから一気に増えていくと言っていた。

だから、本当に記念すべき4人の生徒になるのだ。


「では、次は生徒の紹介を……まずはカールから」

そう、アルメンが言うと1人の男子生徒が立ち上がって自己紹介を始める。


「えっと、初めまして。僕はカール。父が……冒険者──えっと、紅の煉獄に居ます。僕も夢は父のように有名クランを立ち上げる事です!! あ、あの! よろしくお願い致します!!」

クラン……クランだ。

冒険者になるとパーティーを組む機会があるけれども、そんな臨時とかではなく、人が集まってくると組織を立ち上げる事になる。

それがクランだ。

紅の煉獄も有名なクランらしい。

確か……このロマレン由来のメンバー4人で構成されたクランだ。

後は現在もこのダンジョン都市ロマレンに居る有名クランだと──水・氷が得意なメンバーで構成された【神秘の氷】、先ほどの【エニアグラム】は9人のメンバーで構成されたクラン。

【運命の詩編】は教会信奉者が寄せ集まった巨大クラン。

そのくらいだろうか?

そっか、この子はその中の紅の煉獄のクラン……そこを立ち上げたとなるとリーダーの息子になるということか。

実力や家柄、素質、それぞれを鑑みて選考したのだろう。


「俺は──ボリス。家は……いや、何でもない。死ぬ気で学ぶ。だから、全てを教えろ。その為だけにここに来たんだ」

……鬼気迫る感じだな。

ピリッとした空気を纏っている。

……何とも言えない空気感になったのを感じる。


「えっと、私はイリナ! 武器屋──バンガローの一人娘! えっと、武器や、防具で困ったら是非うちに!」

ペコッと可愛く頭を下げるイリナが居た。

うんうん、空気が中和された気がする。


「……ナタリアです! 父は宿屋と冒険者を兼業していました……! 父は……その、冒険をしていた中で不慮の事故で亡くなってしまいましたが……わ、私は! ずっと冒険者を夢見ていました! 母は宿屋を経営を引き継いで頑張っています! いつかは父のように宿屋と冒険者をやれたらと思っています! だから、頑張って学びたいと思っています! よろしくお願い致します!!」

うんうん……。

なんだか、グッと来るものがある。

ペコッと頭を下げた頭を上げたナタリアの瞳には強い意志が宿っていた。

それに応えられるように教えていかないと。


「では、そうですね。色々と私たちも考えたのですけれども教え方を分けて行きたいと思っています」

「リディア先生! どのように分けるのですか?」

「えぇ、私は基本的に魔法を。アルメンは戦闘方面を。そして、実戦は……マコトさんとエルザさんにお願いしようと思っています」

「えっ? 先生……実戦って……?」

カールの質問に続いて、イリナの質問にはリディアが僕の方を見てくる。


「マコトさん、説明をお願いしても?」

「……はい。えっと、皆はこれから骨身に染みていく話になると思いますが、基本を学ぶことは大切です。それは魔法の概念だったり、戦闘技術だったり知識も全てです。ですが、それは準備段階みたいなものです。実際はそれらを昇華しては応用して、冒険というものは成り立っていきます。ですので、実戦というのは実際にダンジョンに挑戦する中で培われていきます。なので、実際にダンジョンに挑もうと思います」

「……」

1人、ボリスだったかな……彼から真剣な目が向けられる。

他の生徒の3人もそれぞれ、驚きはあれど覚悟はある瞳だ。


「えっと、補足だけれども一応私たちも……私とアルメンも付き添います。エルザさんも居るので、生徒1人に先生1人はカバー出来る形を取ります」

リディアのその話で少しだけ空気は弛緩する。


「気を緩めたらダメだよ? あくまでも、本当に危ない時だけ助ける形を取ります」

「先生? 本当に危ない時だけというのは?」

「命が危ない時だけです。腕や足などの欠損……回復で再生出来るものは助けません。出血の多量の時は命に瀕する時は助けます」

ビクッと生徒の肩が全員仲良く震えた。


「実際に死線を潜る中で、戦闘のセンスは嫌でも磨かれます。これだけは基本を押さえたり、座学だけでは学べません。命のやり取りの中で自分のタイミングや空気を作ってください。その為のバックアップは全力で行います。何か質問がある子は居ますか?」

「「────」」

うーん?

特段、脅した訳では無いけれども。

生徒の表情は様々だった。

まぁ、一様に緊張した風なのは確かだったけれども。

ちなみに横を……エルザを見たら、学生時代の地獄のダンジョン巡りを思い出したのか、少しだけ遠い目をしていた。

うーん?

ま、いいか。

リディアとアルメンに限っては最初から現在に至るまでは少しだけ否定的だったけれども。

彼らも冒険者だ。

実戦でしか学べないことや空気感を理解はしていたので最終的には折れてくれた感じだ。

冒険者ギルド自体も最終的には会長のアレクサンドルの鶴の一声で僕の意見が通った感じだ。

と、いうよりは実際は僕を悪魔でも見るように姿を現したら、姿を隠す者や明らかに逃げる者、震えて話にならない冒険者ギルド職員が多発した為にわざわざサブマスターのエレーナが来る次第になった。

全く……ここが冒険者ギルド本部なのかと疑わしくもなるがこれが実情らしい。

何故か、その事実がセルゲイの耳にも情報が入ったみたいで、更に尊敬と邪な気持ちが含まれた視線で見られるはめになったのはご愛嬌だろう。


「僕からは以上です。では、リディア先生後はよろしくお願い致しますね」

「は、はい! 午前は私の魔法とアルメンの戦闘方面を教えて行きます。第2の鐘以降は昼食は前後しますが済ませ次第、ダンジョン──アビスに挑みます! それでは休憩挟みましたら、魔法の講義に入りますが……先に皆様に入学のお祝いになります──こちらをお渡ししますね! 絶対に失くさないように!」

そう念を押してから、リディアは生徒1人1人にカルミヤ養成所に入るための解除キーを渡していく。


「何かあった際は解除コードを変えるので、その際は都度提出をお願いするよ」

アルメンがそう付け足す中で生徒皆に渡し終える。


「では、休憩を終え次第。講義に入ります!」

そう、宣言してそれぞれ皆が休憩に入る。


講義に至っては本当に平均的だ。

けれども、教え方には工夫が見られる。

それは実際に冒険者からの目線の体験も織り混ぜられてるのだ。

魔法に関しては単純に覚えるのは簡単だ。

魔法句によって想像……イメージを固めて魔力を込める事で魔法が顕現けんげんする。


実際はイメージさえ、しっかりしていれば発現はするし、更にイメージ力によって魔法の強度や、込められる魔力量も変わってくる。

ただの火をイメージするか、炎をイメージするかで容量や強度が変わるイメージだ。

でも、まずは下地が必要だろう。

エルザやマーク達……僕の友達に限っては下地がある程度あった上に、僕がその常識を塗り替えた背景があったけれども。

それらは実戦の中で教えても良いだろう。

それに実際は連携を行う上で魔法句を唱えるのはチームプレーでのミスを防ぐという側面もある。

自分でオリジナルの魔法を生み出しては魔法名を決めては発現する際に知らせる意味合いで唱えるというのも有りなのだ。

まぁ、これこそ応用なのだけれども。


アルメンの講義も戦闘に関してのものだ。

間合いや立ち回りを教えている。

必要な冒険の知識も教えている。

うん、丁寧だ。

僕の場合は全知全能さんが罠や素材、敵に関してまでも把握しているから全てが見えている状態だけれども、普通はそうじゃない。

視点を動かしては知識と知恵で進んでいくのが普通だ。

アルメンの教えは聞いていても面白い。

ただ、座学や戦闘での立ち回りも実際は対面での話だ。


実戦だと集団戦闘や、逆に孤立した戦いになる場合もある。

その際の間合いは自分で思っている通りに敵や味方が動くわけではない。

午後はそこら辺を実際に動いてみては学ぶという消化の部分に当てたらよいだろう。


「うん、これで僕の講義は終わりだ。お昼にしよう! ご飯は冒険者ギルドからの支給だ。自慢のご飯だから美味しく食べて貰いたい」

ォォ──!!

と、生徒達の嬉しい声が聞こえる。

中でも、先ほどまでギラついては学んでいたボリスの目がご飯の話の際には心より嬉しそうな年相応な表情になったのが印象的だった。

ご飯はギルド職員と同じく、ギルドで賄っているご飯だ。

ただのギルドじゃない、ギルド本部のだ。

それなりに投資されてるのだろう。

なかなかの美味しさだった。


さて、お昼を終えて第2の鐘が鳴ったらアビス……。

そう、このロマレンの巨大ダンジョンの正式名称──それがアビスだ。

生徒を連れて実施訓練だ。

現状は有名クラン。

先ほどの神秘の氷、エニアグラム、運命の詩編、紅の煉獄が30階層までクリアしているらしい。

まだまだ、何階層まであるかは分からない。

……と、言うことはそれほどまでに成長しているダンジョンということでもある。

とりあえずは1階層から始めようと思う。

後は生徒の実力を見極めては潜る階層を進めるのも有りだろう。

そう考えながら食後の休憩をエルザと教員室でとっていると──。


カーン──カーン──。

第2の鐘が聞こえてくる。

さて、午後は僕の講義の開始だ。

エルザをチラッと見れば彼女も腕を持ち上げてはガッツポーズを然り気無くしてはやる気を見せていた。

けれども、小さなガッツポーズを僕がタイミング悪く見てしまったからなのか、僕の視線に気付いては顔を真っ赤にしている。

サッ──と視線はらしたけれども、無理はあっただろうか?


「……ごほん。では、行きましょうか」

そう、軽く誤魔化すように宣言してはエルザ含めて、リディア、アルメンも支度を始める。

僕も手早く支度を終わらせては早速、僕の初めての講義へと繰り出すのだった。

次回からはダンジョン都市と言われる由縁の巨大ダンジョン──アビスへと物語が進んでいきす。

何階層まであるかは分かっていません。

ただ、下層に進むほど敵や攻略は難易度になっており有名クランでも現在は30階層の攻略が出来たところで、31階層の攻略に阻まれている状況になっています。

では、次の物語で会いましょう。

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