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ここがダンジョン都市ロマレン……! 全ての富の行き着く所、そして巨大ダンジョンのある所。まずは生活拠点の確保から……えっ? あなたは……!

舞台はロマレンへ──。

すべての富が集まるところ。

そして、中心地の巨大ダンジョンを中心にクレーター状の地形を利用して発展した都市。

まずは生活の拠点から……。

急ぎ旅では無い。

うん、だからゆっくりとした旅路で僕とエルザは王都を出てはダンジョン都市ロマレンへと向かっていた。

時には近くの湖畔で休んだり、時には時間を掛けては一緒に採取や狩りをしては料理をしたりしていた。

後は時々は村や町によってはゆっくりと休んだりもした。


「うーん──これが自由!」

「あはは、エルザも随分と伸び伸びしてきたね」

「当たり前よ! とっても楽しいわ!」

「それなら良かった。多分、この道は今この辺りだから……ほら、そろそろダンジョン都市ロマレンが見えてくるはずだよ」

「本当……? うーん──どこだろうー?」

「ほら、ずっと先……大きなクレーターみたいな窪みが見えてこない?」

「あっ! 本当!」

「うん、あれがダンジョン都市ロマレンのはずだよ。グルッとクレーターみたいな窪みを中心に都市が広がっては中心部はダンジョンの入り口になっているはずだよ」

「あれが……大きい」

隣に座っているエルザが少しだけ立ち上がっては片手を僕の肩を支えにしてロマレンを見ようと頑張って眺めていた。

そう、ダンジョン都市ロマレンはその地形的な意味合いもあってはダンジョンを基軸に円状に広がるように都市が形成されている。

特徴的なのは冒険者の街とも名高く、都市への検問は大変緩く、自主性が重んじられてる点だ。

基本的には自己責任で完結しており、騙し騙されも個人の裁量次第という形だ。

主な運営の母体は冒険者ギルドが主体で執り行っているが、最近はそれらの自由性を危惧しては王都からの要請で4大公爵として並ぶ要因になったのだが、マンチーニ公爵家が領地として治めるようになっている。

だが、実質はどうなのかといえば、今見えて来ている通りに城壁や門などは無くて、人の往来は自由だし、逆に守りは大丈夫なのかと言われると、ここには冒険者ギルド本部もある影響と巨大ダンジョンもあっては冒険者も溢れている。

その冒険者の資質も大きい反面、外にも内にも強いというのが現状だ。

至って表面上を見ている分はとても賑やかな都市だと言える。


「ねぇ……このまま、入っちゃってもいいの?」

「ん? エルザ? 違うよ、もう僕たちはロマレンに入ってるんだよ」

「え?! いつの間に?」

「ここには検問も無いからね。基本的にはそうだね……確か、ロマレンが見えたら、もうそこはロマレンだと言われているよ」

「へぇー……なんだか、凄いね」

「色々と凄いはずだよ。ここは基本的に冒険者ギルドが主体で都市を構成してるはずだから、目に見えるもの全てが驚くかもね」

「うん、楽しみ!」

「とりあえずは、ノルトメ商会の支部に向かおうか。地図だと向こうの方のはず」

指を指してはノルトメ商会の支部の方へと馬車を進ませる。

道という道もロマレンへ近づく程に入り組んでくる。

元々、整備されて区画ごとに住居とかが有るわけでは無いのだ。

人が勝手にどんどん、どんどんと家を建てたり、増築や改築、果ては道を作っているから、全てがバラバラで正当性なんて皆無なのだ。

ま、僕の場合はどんどんと、目につくものから都市そのものの構造まで全知全能さんが働きかけてはmapも構成されているのだけれども。

脇道も把握できるくらいだ。

ま、その脇道は下手したら追い剥ぎや盗っ人の溜まり場でもあるみたいだから、ご利用は計画的にだ。


カタカタ──カタカタ──……。

ゆらり、ゆられて……。


「ここかな?」

「つ、着いた……?」

「うん、大丈夫?」

「うん、人酔いって久しぶりだよ」

「まぁ、人も匂いもここは凄いからね。ほら、これでも舐めてみて」

「あっ、美味しい……」

ハーブを混ぜた飴をエルザに渡せば、コロコロと舐めては匂いも相まっては落ち着いてきていた。

ま、実際にロマレンに入るとムワッとした熱気と匂いが蒸せ返るくらいに襲い掛かって来ていた。

エルザには慣れないものだろう。

人はひしめきあっては居るし、普通に歩いていても肌と肌が当たるのも当たり前だ。

むしろ、冒険者同士で武器が当たってはいざこざを起こしているのも風物詩みたいになっているのか、そのまま賭博まで始まっているのも来てる最中で何回も目撃している。

盗みも犯罪も、怪しいお店も満載で……ま、慣れてないとロマレンという魔境に骨の髄までしゃぶられてしまうだろう。

かといって悪い側面ばかりじゃない、だからこその義理人情も暖かい反面もある。

ま、メリットとデメリットはどちらもあるのが普通ってことだ。


「だいぶ、顔色が良くなってきたね。ほら、僕から離れないで」

「あっ……うん。ありがとう」

「ふふっ」

馬車から降り立ってはまだ人の往来にビクついているエルザを抱き寄せては馬車をノルトメ商会の馬小屋に引き渡すために管理の人へと受け渡す。


「えっと、お名前はアマガミ・マコト様でお間違え無いでしょうか?」

「うん、その通りだよ」

「分かりました。中でお待ちくださいませ。旦那様に急ぎ連絡を入れてきますので──」

管理の人に中に案内されては、そのまま急ぎ足で奥へと従業員は向かっていってしまった。


「や、やっと腰が落ち着く……」

「あはは……ここに来てからずっと緊張していたものね。慣れそう?」

「うーん……うん。こういうのも私は求めていたから、でも実際は凄いね、圧倒されちゃった」

「僕もだよ。まずはここでゴードンさんの言っていた人に会ったら、どうするか決めようか」

「うん。でも、何も分からなくて、ごめんね?」

「そんなこと無いよ、僕はエルザが隣に居てくれるだけで幸せだよ」

「マコト……」

「エルザ……」

「……おほんっ」

「!」

エルザがビクッとなっていたが、僕は全知全能さんで人が近付いていたのは分かっていた。

今の咳払いは失礼って意味だろう。

ま、挨拶みたいなものだろう。


「これは失礼致しました。まだ、来られるものでは無いかと思っていました」

「えっと、あなた様が……」

「お眼鏡にかなうかは分かりませんが、僕がマコトです」

「これはこれは……ご謙遜を……良く、お爺様からはお話を伺っております」

「? マコト? 今、私お爺様って聞こえたけれども、もしかして……」

「エルザ様も初めまして、左様で御座います。私、ノルトメ氏族の1人、セルゲイ・ノルトメと申します。是非、宜しければセルゲイと仰って頂けましたら、嬉しく存じます」

「セルゲイさんですね」

「はい、マコト様──」

ん? なんだか、ウットリとした目で自分をセルゲイは見てきている気がする。

少しだけゾッと背中が冷えた気がしたが……いや、気のせいでは──。

うん、あの目はゴードンと同じ気がするぞ?!


「はぁ……実際にお見受けになると分かります。私、ある程度気配を忍ばせて来たにも関わらず、マコト様はお気付きだったようで。やはり、武勲も方もお話通りなのですね……」

「えっと……お話というのは?」

「いえ、ゴードン様より良くお話を聞き及んでおりますので、私……その、お会いできるのを何よりも楽しみに楽しみ……はい、心より本当に楽しみにしておりました」

「は、はい……」

ソソッと気付いたら、エルザの隣へと移動してしまっていた。

危ない、自分の隣の座るスペースに隙あらば、セルゲイは座ろうとしていたように見えた。

ほんの少しだけ、僕じゃなきゃ見逃しちゃう位の素早さで残念そうな表情を浮かべてはセルゲイは僕とエルザの対面のソファに腰掛けた。


「君、マコト様への資料を僕のデスクの上から。後はとっておきの茶を、お茶受けも分かるね?」

「は、はい! すぐに用意致します!!」

「マコト様、エルザ様……申し訳ないです。私とした事が嬉しさと興奮の余り、色々とお・も・て・な・しを疎かにしてしまっていました……」

うん、ウットリとした……そんな恍惚そうな顔で謝罪されても困る。

流石にエルザも気付いたのか、僕を掴む腕にちょっと力が入っては腰が引けていた。


「旦那様、こちらを……。マコト様、エルザ様……どうぞ、こちら王国産と神国産での茶葉をブレンドした逸品で御座います。お茶受けはエルフの里での実から料理しましたお菓子になります」

「うん、ブラボーだ。下がりたまえ」

「はい、旦那様」

「マコト様、エルザ様──どうぞ。お口に合えば良いですが……」

うん、美味しい。

なるほど、これはなかなか……茶葉のブレンドは色々と試行錯誤したのだろう。

お茶受けはパウンドケーキだ。

こちらもヒントは自分が出したものだけれども、良い感じに形になったようだ。

エルザの方を見ると、先ほどまでの疲れが吹き飛んだように目を輝かせてはパクパクと食べている。

ふと、視線を感じて追ってみると、満足そうにこちらを見ては頷いているセルゲイが居た。

いや、恍惚の表情を浮かべては涙を溢しそうになっている。

うん、こんなところで全力を出さなくても……。

ま、善意は善意だ。

有り難く頂こう。


「それで、そちらの資料は……」

「はい、こちらはマコト様へのノルトメ商会として私が提供出来る情報になります」

キリッと仕事とプライベートはちゃんと使い分けるタイプのようだ。

顔を真剣な表情に切り替えてはセルゲイは資料を広げ始める。


「っとは、言ってもマコト様はプラチナランクをお持ちでしょうから、私共では無くて、冒険者ギルドへ掛け合うと更に良い待遇が見込めますが……」

「いえ、僕はノルトメ商会で結構ですよ。最初の頃から大変お世話になっておりますから」

「……!! あぁ、私、感激致しました! 流石、マコト様。あぁ……感激の極みで御座います……。早速ですが、早急に必要だと思われる住居のご提供になります」

「沢山有りますね……」

「エルザ様、一応こちらはノルトメ商会が現在保有しております住居になります」

「結構多いですね……」

「はい! 一応、これでも精査してピックアップしたものですが、量が多くなり申し訳御座いません」

「いえ、そのお気持ちだけでも嬉しく思います。それで、この中でセルゲイさんのお薦めは有りますか?」

「お薦めと言われてしまいますと、少しだけニュアンスは変わってしまいますが……」

「何かあるの?」

「はい、エルザ様。マコト様のお薦めというのには沿いませんが……もし、良ければと相談したい住居は有ります。こちらの物件になります」

スッと、数有る資料の中から1つの物件が紹介される。

どうやら、2階建ての住居でホームシェア形式らしい。

下の階が経営している家族夫婦が住んでるらしいけれども──。


「方舟亭ですか……。ホームシェア形式らしいですが、注意点として経営困難危機と書いてありますが」

「はい、こちら我々商会と提携して良い関係だったのですが旦那様のグセフ様が経営と冒険者を兼業しておりまして、先日非業の死を遂げてしまい経営が危機に陥ってしまったのです」

「元から住んでいた人は居なかったのですか?」

「そちらを借りていた冒険者の方々とダンジョンに潜ったのですが、話によるとトラップ部屋でそのまま……との事です」

「えっと、今はどのような状況なんですか?」

「エルザ様……そのような悲しい顔は、いえ……そうですね。現在は奥様方と娘さんが1人いらっしゃるので2人で経営を……と相談は来ていますが、私共も商売ですので、私個人としては大変心苦しいですが、このままですと彼らの住み処を買い占めて手切れ金を渡すまでしか最悪は援助が出来ない所で御座います」

「なるほど、それで僕たちが暮らすとなれば?」

「はい、経営も回りますし、最悪の危機は脱するかとその間に基盤を整えられましたら、再度経営を安定的にするのも希望はあると思います」

「マコト、私……」

「いや、これは元々ここをお薦めする予定だったのだろう?」

「……私の口からはなんとも」

そう言いつつ、セルゲイの口元は緩んでいるのを見過ごす自分ではなかった。

どうやら、生粋の商売人気質みたいだ。

義理と人情をきちんと弁えては使い分けられるらしい。


「うん、ここの物件にしよう。何か必要な手続きは?」

「はい、今すぐ用意致します。各種、サインをお願いしたく……」

「支払いはどうしたら?」

「支払いも毎月、それかまとめてか……口座から引き落とす事も出来ますが……」

「そっか、娘さんの年齢は?」

「え? 少しお待ちを……マコト様の1つ下15になりますね……」

「……そうなると10……いや、20か」

「はい?」

「20年分をまとめて口座から落としてくれ。後は、方舟亭にはそれを隠しては毎月払っている体裁にして貰えたら、その代わり母子の生活のサポートと支援を何かあれば代わりにノルトメ商会がするようにして貰えたら、それでいい」

「えっと、ですが……」

「先出しだと思って貰っていい、僕たちが離れる機会があれば、その分の費用は母子へのサポートに当ててくれ」

「……感謝を」

「いいの、マコト?」

「大丈夫だよ。お金は困ってないし、必要な時にしっかりと使った方が良いんだ」

「……感激致しました。直ぐ、用意致します」

パッとセルゲイも立ち上がっては従業員を追うように事務スペースだろう、奥の部屋へと消えて行った。

けれども、彼の嬉しそうな安心したような表情の崩れを見れたから、それだけでも儲けものだろう。

きっと、これからも長く良い付き合いが出来そうな気がする。


「マコト様、色々とお待たせ致しました。こちらで契約の方は結ばれました」

「私は何も出さなくて本当に大丈夫?」

「エルザはちゃんと貰ったものは自分のためにちゃんと使うんだよ?」

「う、うん。けれども、ちょっと申し訳なくて」

「何言ってるんだよ。夫婦なんだから」

「ふ……えへへ」

急に嬉しそうにだらしない表情にエルザはなっていた。

ま、言った自分も遅れて恥ずかしくなっていたけれども。


「あの、それでこれは私からのマコト様への感謝の気持ちなのですが……」

「これは?」

「はい、先ほどの件で。更に私、個人としてもマコト様に尽くしたいと確信しましては、つきましてはこちらの通りに、マコト様へはノルトメ商会ロマレン支部でのご利用する売買を通して、ある程度の免除を致します。そして、私からの情報提供ですが、私どもの出来る範囲になりますが、恒久的に約束致します」

書類に目を通すと、そこには売買の手数料の緩和等、諸々が記されていた。

そして、ダンジョン産の魔石等の買い取りも冒険者ギルドよりも大きく保証してくれる内容だった。

情報提供に関しては表だって話題にならない噂等も含めて無償で提供する旨も記載されていた。


「良いのですか?」

「はい、私がそうしたいのです。そして、マコト様。ここロマレンは自由を謳っておりますが、その自由の下の闇は大変深いものです。私どもでさえ、見通す事は未だに困難で、時には闇に引きずり込まれそうになっては戻って来ることは無かった者も居ます。どうか、お気をつけて」

「分かりました」

「ですが、マコト様なら。私、何かを成し遂げそうな気がするのです。お爺様程では無いですが、私も目先の良さには自負してるものが有ります。どうか、今後とも宜しくお願い申し上げます」

「こちらこそ」

「エルザ様もどうぞ、何か有りましたらご相談を」

「はい。お世話になりました」

「では、方舟亭の方ですが従業員を道案内で付けさせますので宜しくお願い申し上げます。契約を結ばれたのは先に人を送っては既に伝えておりますので、挨拶するだけになると思います」

「分かりました」

「では、お気をつけて、またのお越しを心よりお待ち申しております」

セルゲイと支店の従業員に見送られながら、案内する従業員に付いていっては僕とエルザはここダンジョン都市ロマレンでの新しい活動拠点になる方舟亭へと向かうのだった。

次回は方舟亭へ。

新たな地、ロマレンの生活拠点になります。

冒険者ギルドを中心とした都市の構成を見受けられるロマレン。

次回は方舟亭と冒険者ギルドへと話題は移るのでしょうか。

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