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ギルドッ!あれ?なんか怖がられてませんか?ギルド登録にギルドマスターが直々?!あれは誤解なのよ。そして冒険の始まり、慣れてはダンジョンへ。過ぎては4年へ。

3年……始まりましたね。

今回はダンジョンのお時間ですね。

それでは早速、サクッと冒険者登録して……おや?

なんだか、急に冒険者ギルドの雰囲気が不穏な空気に?

おやおや~?

「ねぇ、マコト……何かしたの?」

「ジャンの言う通りだ。俺の知るギルドってこんな感じではないぞ……」

「マコト……すまん、俺ルソーレの街でギルドクラッシャーっていうのを聞いたのを思い出した」

「ジャン、エドワード……それにマーク、そんなの冗談に決まってるだろ?」

「「「…………」」」

「流石にこの状況は無理があると思うよ、マコト?」

「エルザまで……そんなこと言うの?」

「だって……」


「ああぁぁ!!」「き、来たぁぁぁ!!」「もう終わりだぁぁ」

「サブマスを……! サブマスを呼んでくるんだぁぁ!」

「何よ……皆して私を呼んで……一体何……が……」


あっ、サブマスが腰の力が抜けたのか崩れ落ちた。

ギルド内は絶賛、阿鼻叫喚としている。

あれー? どうしてー?

と、思っていると不意に頭に情報が流れ込んでくる。

全知全能さんのサポート様々だ。


「あー……なるほど」


なるほど。

そっか、前回……というかほぼ2年前になるのか。

ビビりにビビらせてしまったまま、そのまま放置してしまったのか。

放置って怖いな……その期間が長い程、色々と降り積もるみたいだ。

最近だとゴードンがその最たる例だったと思えた。

さて……。

どうしたものだろうか?

後ろではジャン、エドワード、マーク、エルザがアワアワとしている。

ナタリーはお家事情でギルドの参加を見送りだ。

でも、最近はナタリーに変化も見られる。

少しだけ、家の決定に不満の表情を見せていたのだ。

マークの影響も大きいのだろうか? お互いに想いあっている節はあるから、良い方向にいって貰いたいものだ。


「ぎ、ギルドマスターを……」

「は、はい!」


おや、進展があったようだ。

サブマスの……そうだ、ジェニファーだ。


「ジェニファーさん、こんにちは」

「は、はい……!! な、なんで、御座いましょう?!」

「あー……」


これはダメだ。

完全にすくんでいる。

周囲を見渡すと、まるで睨まれた蛙の如く、冒険者も動かない。


「なぁ……マコト? やっぱり何かしただろ?」

「ほら、素直に言ってごらん? 僕にはお見通しだよ」

「マーク、ジャン……本当に何もないから」

「……でも、マコト? ほら、皆震えて……そこの冒険者さんなんてテーブルの下に隠れてるわよ?」

「ヒィィ……!!」

エルザに指摘された冒険者はそれはそれは大層な蛙の声をあげて……いや、あげないで?!


「マークもジャンも、それにエルザもいい加減に……ほら、マコト? 僕は信じてるから……さ」

「やっぱりエドワードは信じてくれるか?」

「大丈夫。罪にはならないから、さ」

「……」

ダメだ。

エドワードも自分を疑っているらしい。

……はぁ、どうしたものかと思っていると上階から慌てて降りてくるような足音が聞こえてくる。


ダダダダダダ──。


「はぁ……はぁ……!! ま、マコトさんが来たって?!」

「ま、マスター……!!」

バッと周りの冒険者の期待の込めた視線がマスターと呼ばれた男に注がれるのが嫌でも分かった。


「じぇ、ジェニファー……とりあえず、落ち着いて」

「は、はい……」

「それで……えっ……と──」

会話を止めないで貰いたかった。

僕と視線が合ったらマスターと呼ばれた男の時間が止まったように動かなくなってしまった。

いや、周囲も息を殺したように静なものだから、ギリギリ外の喧騒が時を刻んでいるのを教えてくれてる位だ。


「嫌だな……ははは。大丈夫……大丈夫だ」


うん、マスター……。

心の声が聞こえていますよ。

うん、とてもハッキリと。


「さぁ、ジェニファー……君は飲み物の用意を頼むよ」

「はははい!」

「ようこそ! 王都ウェレギュアの冒険者ギルドへ! 僕はここのギルドマスターのハンスだ、よろしく」

「は、はい。よろしくお願い致します」


なんとか体裁は保っているようだ。

うん、挨拶とともに差し出された手を繋いでは僕に続き皆もハンスと握手をかわしていく。


「ここだと……ほら、色々とあれだから僕の部屋まで案内しよう。……良いかな?」

「ええ、ではお言葉に甘えて」


ふぅー……。

と、盛大な息を吐く音が耳に聞こえてくるが、聞こえないフリをする。

皆も空気を読んでか反応をしないでくれていた。

そして、僕たちが上階へとカウンターの奥の階段へ案内された時には階下の空気が明らかに弛緩されていくのが肌で伝わってきたのだった。


「ど、どうぞ……」

「ありがとう、ジェニファー……。えっと、ごめんね。君は情報を共有したいのもあるから、このまま僕の部屋に居てくれないかな?」

「……! は、はい。」

ビクッと肩を震わせてから、なんとか動揺を隠すようにジェニファーはハンスへと返事を返すのを横目に見ながら、僕は淹れてくれた紅茶を1口啜ってみる。


あ、美味しい……。

うん、なかなかの良い茶葉なのだろう。

皆の様子を見てみても美味しそうに飲んでいた。

マークに限ってはグビグビと一気に飲み干しておかわりをジェニファーに要求していた。


あー……ジェニファーさんが動揺している。


「えっと、それでマコトさんはどのようなご用件でこちらに」

「……えっと、そうですね。すみません」

「いえいえ」

ジェニファーの動揺を目で追っていたら、すっかりとハンスさんへの対応を忘れてしまっていた。


「実はお嬢様……。エルザ様の通う学校の方にて3年次の冒険者ギルドでの活動が許可されましたので、冒険者登録に来た次第です。重ねて、可能ならば何かクエストを斡旋もしくは見せて貰えたら助かります」

「……なるほど。そうですか……で、では特に以前のマコトさんへの対応の報復に来たとかでは無いのですね?」

「……報復?」

「……あー、エルザ。そ、それは別に聞かなくても良いから。ハンスさん、大丈夫です。以前のあれは仕方の無い事ですから、大丈夫です」

「そ、そうですか……それは本当に良かったです。マコト様への失礼、改めてこの場でお詫び申し上げます」

「はい、その謝罪は受け入れましょう」

自分の許しを得たからか、明らかにハンス……いや、ジェニファーの緊張感がほぐれたのがピンと張った背筋がふにゃりと落ちたので分かってしまった。


「えっと、そうなりますとこちらが皆様の冒険者の証明ギルドカードになります。お名前等、誤りが無いかお確かめをお願い致します」

「うぉ……これがギルドカードか!」

「へぇ……思っていたよりもちゃんと手にしてみると良いものだね」

「ね、マコト! 見て!」

「うんうん、エルザも良かったね」

最初のランク──ブロンズのギルドカードだけれども、造りはそれなりにしっかりしている。

それもこれも魔物に襲われた際に誰だか分かるようにするための措置からだが、難点があるとしたら……。


「失くさないようにね? 再発行はそれなりにするから」

「う、うん」

そう、お金がそれなりにかかるところだろう。


「お話中、すみません。こちらが現在、ウェレギュアのギルドで保有しているクエスト一覧になります」

「ありがとう、ジェニファー。マコトさん、どうかな?」

「すみません、では少し見させて貰います」


ペラペラと渡された一覧表のページをめくっては内容を確認していく。



ホーンラビット……。

ワイルドボア……これはイノシシか。

ベア……熊。

ウルフ……狼。

はぐれスライム……。


後は何ヵ所か初級的な扱いのダンジョンがチラホラとか。


うん、まぁ王都近郊だからな。

安心安全が第一だから、危険地帯は粗方、攻略したり一掃したという事だろう。


「なかなか良さそうなのが粒揃いですね」

「そ、そうですか……?」

「えぇ、実際の実地の戦闘と学んだだけの知識はまた別ですし。私以外は皆ブロンズですよ?」

「そう言われてしまったらそうですが……」

「ん? マコト? 僕たちは一応は闘えるぞ?」

「そうだぞ? 俺だって親父には良くしごかれて来たからな!」

「あはは……。うん、分かった分かったよ。でも、とりあえずは周囲の魔物の狩りからしてみよう。最終目標はどこかの初級扱いのダンジョンの踏破を目指してみようか」

「おう! なら、鍛え始めないとな!」

「マーク……マークはまずは勉強だろ? 前回の追試だって危なかったんだから……」

「なっ! そ、それは……」

「僕も付き合って教えたの忘れたのか?」

「ジャン……エドワード……わ、分かってるって!」

「ふふ……マコト? 私のほうも色々と教えてね?」

「ん? うん、いいよ」

とりあえず、まずは皆の実際を見てみないと……か。


「これと……これかな」

「はい、畏まりました。チームとしてで大丈夫でしょうか?」

「うん、即席のチームとしてお願い」

「畏まりました。では、こちら受理の処理をしておきますね」

そう言ってジェニファーはギルドマスターの部屋から階下へと降りていった。


「ほら、僕たちも今日は帰ろう? ハンスさん、ありがとうございました」

「い、いえ。僕のほうこそ、ありがとうございます」

最後に再度、握手をしてギルドから立ち去る事にしたけれども……うん、どうやら和解したと思われたのか最初来た時とは違ってだいぶマシに……弛緩した空気がギルド内部では出来上がっていた。


「では、また来ますからよろしくお願い致します」

「は、はい! こちらこそ!」

ジェニファーにも軽く挨拶をしてその日は僕たちは寮へと帰るのだった。


「うーん……」

「どうしたの?」

「ううん、だいぶ魔法……の理解はマコトに教えて貰っているから深まったとは思うのだけれども……その、イメージが余り出来てないような気がして」

寮に帰宅してご飯を食べての夜。

ペラペラと図書館とか本を借りてきては読んでいるエルザに気になって声をかけてみたら、そんな返事が返ってきた。


「イメージか……」

「うん、一応ほら……文献とか目を通して読んでるのだけれども、ピンと来なくて──」

自然環境について──と本には書かれている。

少しだけ顔を近付けて今読んでいるページの解説を見てみると……。


灼熱の荒野、木も生えない、茶色の不毛の土地──それが砂漠。

灼熱の業火、ゴウゴウと煮えたぎる地獄のような釜の山──それが火山。


……なんだこれ?


「えっと、なにこれ?」

「えっと、異人の方の著書らしいのだけれども……」


……まさか地球の環境の話を書いてるのか……。

いや、でも、だいぶザックリというか……。


「……マコトは普段どんな想像をしているの?」

「イメージか……うーん」


それを聞かれると困る。

イメージとは言葉で伝えるとしても限界はあるだろう。


記憶を伝える……?

いや、僕の記憶はちぐはぐだ。

未だに分からない部分もあれば異人だと知られてしまう。

なら、映像に?


「映像か」

「えいぞう……?」


少し、いや、昔の自分の容量だったらゴッソリに近いだろう魔力の消費を感じたけれども、全知全能さんが働いてくれたのは直ぐに必要な知識が溢れて来たので分かった。


光……振幅、波長、位相。

後は水蒸気……いや、ここは──。


「えっ……えっ?」

「ちょっと試してみるかな」


スッと水のカーテン……ならぬスクリーンを薄く出現させてはそこに光を……全知全能さんの補助も感じつつイメージを投影させてみる。


「わぁ……こ、これは何?」

「これは僕のイメージしてる時のやつかな」

「す、すごい……」


ストンッと本がエルザの手元から離れて落ちそうになったのをフワッと浮かせては静かに床に落としておく。

隣を見たらエルザは食い入るように見ていたので、そのまま色々と風景……うん、僕が知っている風景を──ウッ。


ポチャンと水が床に跳ねた音がした。

いや、僕の魔法が切れたからだろう。


少しだけ自分の過去を気付かないうちに知ろうとしたからだろう。

でも、最近はだいぶ、過去を覗けそうになっている気がする。

魔力量の問題だろうか……?


「マコト……?! マコト……!!」


……あぁ、エルザの声が聞こえる。

そのまま僕の意識は途絶えるまでにそう時間は掛からなかった。


「う……ん──」


柔らかい。

良い匂いがする。


「マコト──?」


「ん……」


「大丈夫……?」


「ここは……」


「だ、ダメ。マコト……疲れてるのだから、もう少し休まなきゃダメ」


あぁ、膝枕か。

意識がハッキリしてきて目を開けると僕を覗き込んで来ているエルザと目があった。


「ごめん、少しだけ体調が悪くなっただけだよ」

「本当?」

「うん、本当。だから、大丈夫だよ」

「でも、今日はもう休みましょう?」

「……そうだね。明日からまた講義もあるものね」

「そうだよ? それに休日は冒険者活動するんでしょ?」

「はは……そうだね。休もっか」

「マコトはそのまま横になってて、ちょっとだけ片付けてくるから」


タタタタッ──。

と、小気味の良い音でエルザは……多分、自分が溢した水とかを拭きに行ったのだろう。


「ミスっちゃったな」


窓からは月が優しく照らしてくれている。

地球とはまた違って大きな月だ。

そして、白銀とは違うけれども、綺麗な色だ。

もしかしたら、一瞬気を失う前に思った魔力量の問題で過去が分からないかも知れないというのは良い線を言っているのかも知れない。

全知全能さん自身がそれを否定しては来なかったからだ。


「でも、今は休もう」

「ごめんね……まだ起きてる?」

「起きてるよ」

「良かった、まだお休みを言えてなかったから……」

「お休み、エルザ」

「お休みなさい、マコト」


エルザの寝息が聞こえてくる前に僕の意識は早くに落ちたようだった。



「っしゃぁぁ!! やっと、休日だ!」

「マーク、はしゃぎすぎ」

「そんなこと言うなよ、ジャン」

「あっ、マーク……」

「あ、ありがとう、ナタリー」

「いえいえ」


あの後、合間をぬってはナタリーも冒険者登録をしてブロンズのギルドカードを手にしていた。

自分の方も、ナタリーのチーム加入の件をジェニファーに伝えたら快く対応をしてくれた。


「マーク……ナタリーの時はこう……あれだよな?」

「ジャン……マークも良い歳って事だ」

「それもそっか」

今もナタリーは少しだけ服装を乱れたマークの服を直している。

マークはマークでそれを照れくさそうに断る事などはしないで受け入れている感じだ。


「ふふ、良いですね」

「そうだね。よし、皆揃ったかな? なら、行こっか!」

「「「おー!!」」」


そう、今日は休日。

冒険者活動をしようと決めていた日だ。

まぁ、皆の実力を見る日でもある。

滑り出しは順調かな?

ちゃんと装備もお昼ごはんも用意はしてるし、うん。


「マーク! そっちにいったぞ!」

「あぁ! 任せろ!」

「ギィィィィー!!」


ホーンラビットの突進の一撃を剣で角を弾きつつ、マークは身をひるがえしてはホーンラビットのがら空きの背中へと剣を突き立てていた。


やるなぁ……。


エルザの方は突撃しようとしてきてるホーンラビットの足元を凍てつかせては動きを鈍らせて、一瞬の隙をエドワードが刈り取っていた。


ナタリーの方はそれぞれ必要に応じて、速度上昇などの支援を行っていた形だ。


「すごいな、ちゃんと動けてる」

「当たり前でしょ! これでも公爵家の人間。生まれてから英才教育だよ」

「はは、それは確かにジャンの言う通りだ」

「俺も気付いた時には親父に稽古付けて貰ってたからな」

男3人衆はそれはそれは嬉しそうな反応を返して来てたけれども、エルザとナタリーの方は控えめながらも手元を見たら嬉しそうに握りしめていたので、嬉しかったのだろう。


「今日はこの調子で周囲の魔物を狩っていこうか」

「「「おー!!」」」

っと、元気な声を聞きつつも脳内のマップ範囲では周囲の魔物は居なさそうだ。

近くてもそれなりに歩かないと出会えない距離だろう。


まぁ、そもそも王都近郊。

そう、危険は著しく低い。


そうやって今日1日は適度に色んな魔物と遭遇するように誘導しては闘ってみては皆の戦力を確認する日になった。


「えっ……そんなに魔物が居たのですか?」

「あー……その何となく居そうな方へと行っただけなので」

「……そ、そうですか」


ジェニファーが驚いた反応をしていたけれども、それもそうだろう。

そんなに魔物が居ないのにしっかりと狩ってきたのだ。

そういう反応にもなる。

それに……少しだけ冒険者からの反応が宜しくない。

彼らにとってはその日の獲物なのだ。

多く狩られると言うのは暮らしに直結もする。

狩りすぎても良くは無いらしい。

これは王都のギルドの暗黙の了解なのかも知れない。

冒険者の街ルソーレの場合は魔の森が直ぐにあるので魔物の出現量が多いので、その逆に近かったのを懐かしく思ってしまう。


「次からはダンジョンに挑もっか」

「もう大丈夫なのか?」

「うん、充分戦力は見れたからね。それに魔石の方が色々と利便性も多いから」

「そっか、マコトがそういうのなら従うよ」

エドワードは察しが良いのか、周囲の視線を感じて、そう答えてくれたが、マークは今も頭上に少しだけハテナマークが見える。


──。

うん、僕たちの会話を気にしていたのだろう。

ダンジョンに潜ると聞こえてからは視線は霧散した気がする。

ま、本当は魔石よりは素材にもなる野良の魔物の方が報酬は美味しいのは当たり前だ。

それに野良でも殺した際に魔石が生まれる。

素材もプラスで得られる方が良いには決まっている。

ま、ダンジョンの魔石も利用価値があるから一定数の需要もあることはあるのだが、今は周囲の状況に合わせる方が得策だろう。


「お待たせ致しました。こちらが今回の報酬になります」

「おー……──」

「う、うん」

「ありがとうございます」


ちょっと皆の反応は──肩透かしな反応だけれども、それは彼らが貴族、王族故だ。

平民からすると充分な報酬だ。

僕も未だに感覚は狂っているとは思わない。

なので、自然と笑顔で対応してジェニファーから報酬を受け取る事が出来た。

意外と注意をしないといけない。

平民と貴族、そして王族というのは得てして馬が合わないものである。

それは特に価値観に関しては顕著に見られる傾向だ。

僕が自然と受け取っているから良いとして、僕自身も露骨な表情や対応を取っていたら、周囲の冒険者とは軋轢が生むのは容易に想像できる。


「なぁ、マコト……」

「ほら、マーク行くよ!」

「ん? あ、あぁ──」

「皆も今日は一旦帰るよ!」

「は、はい!」


何か口を開きかけたマークを静止して僕は皆と一緒に冒険者ギルドを出る。


「そ、そろそろ話しても良いか?」

「うーん、エルザ? 今日は寮に皆を案内してもいい?」

「えっ? うーん……うん、大丈夫」


一瞬の逡巡があったのはきっと洗濯物とか干しっぱなしじゃないかとか考えたのだろう。

うん、それは大丈夫だ。

特に案内しても変なところはないはずだ。


「あー、そうなるとちょっと待って支度してくるわ」

「あっ! 俺も!」

「わ、私も……」

「そうなると寮で待ってるよ、行こっかエルザ」

「はい!」


冒険者ギルドを出てから、学校の入り口付近になって、そんな会話をしては打ち切って一旦、僕たちは別れては僕の寮に身支度を済ませてから集まる為にそれぞれ行動を開始するのだった。


……


「はぁ──で、マコト? どうしてあの場は静かに立ち去ったんだ?」

「うーん、僕も良くは分からないな」

「いやいや、マークにエドワード、本気で言ってる? 空気悪くなってじゃん」

「そうですわね」

「うーん、確かに空気は淀んでたような?」


うん、まぁ、若干気付いてる人は居たらしい。

エルザは少々抜けてる所があるからピンと来るまで後1歩だろう。

ジャンとナタリーは気付いてて、マークとエドワードは見事な貴族気質なのかも知れない。

決してそれが悪いわけでは無いのだけれども。


「いや、あの場はあれで離れないと冒険者との溝が出来ていたよ」

「どういうこだよ? 俺の領だと狩るだけ喜ばれるし名誉だぞ?」

「マークのエバンス領の方はそうなのか、僕のレーガン領の方は狩りすぎず王国側に警戒してはダンジョンのスタンピードを起こさないようにこちらも定期的な討伐をして貰う形だね」

「へー。ま、マークのエバンス領は魔の森があるから、そうなるか。僕のフランシス領は神国側とは緩やかな交流をしてるけれども海に面してるからね。そこでのいざこざの注意と、狩った魔物の後処理は特に水質に変化をもたらすから、しっかりと注意喚起してる感じかな。狩るだけ良いという訳ではないね」

「そ、そっか……な、ナタリーはどうなんだ?」

「えっ、私……私の領……マンチーニ領は……ごめんなさい──私、そんなに詳しくなくて……」

「あ、いや……そっか、そうだな。すまん、聞いて」

「あぁ、マーク……だ、大丈夫……だから」


んー、なんだろう。

少しずつマークとナタリーの2人だけの空間が形成されていくのをリアルタイムで見てる感じだ。


「……で、マコト? どういうことなの?」

「ん? あぁ……そっか、エルザ。ごめんごめん……」

ちょっと面白くてナタリーとマークの幸せ空間の形成模様を観ていたら、見事にエルザに現実に引き戻されてしまった。

それに合わせてナタリーとマークも気まずそうに背筋を整えてから僕へと視線を向けてくる。


「その前に、ちょっとお茶とか用意しようか。お茶請けも美味しいのあるから」

「おお! マコトのお茶請けか!!」

「うん、エルザにも初めてのやつだよ」

「えっ!」

「ふふふ、待っててね」


少しだけ、寮のリビング……皆が気持ち良さそうに……いや、ソワソワし始めてるのを横目に見ながらリビングへ向かう。


「ふふふ、これも早速お披露目かな? ゴードンが喜びそうだ」


脳裏にあのイヒヒ……いや、最近はなんだか真っ当に話し掛けて来るようになってしまったゴードンが出てくる。

それでも、自分以外のお客様が居る時はあのウヒヒ……と少し気味が悪い演出をしているようだけれども──果たして、あれは効果的なのだろうか。


「あぁ、いけないいけない……思考が逸れてしまった」

とりあえずだ。

空間から特製の茶葉を取り出す。

この世界は発酵させた茶葉──紅茶しか見受けられなかった。

もしかしたら、もう少し目を向けると製法の幅が広がるのかもと思ったが、全知全能さん曰く微妙な反応だったのでお察しだろう。


「色々と出してみるかな……」

そう、蒸し時間の方はどうにもあれだけれども。

火入れ工程で強火で炒ったほうじ茶、ふるい分けした粉茶、石臼は……風魔法で効率化した抹茶。効率化を目指して、石臼代わりの魔道具を考案したので、今は絶賛モーリスとルイーゼ、アンナの3人が実用化に向けて動いているので、完成もすぐだろう。

後は発酵の方でも度合いと、この世界でもやはり微生物の概念……風邪があるのだから、やはり菌も存在していのが分かったのだがそこから生まれるウーロン茶と黒茶の方も用意した。


「これは革命が起きるだろうな……」

今までは紅茶! で、飲み物が完結していたのだ。

ゴードンもこの茶がもたらす経済効果を想像しては手を震わせていたのが懐かしい。


「後はお茶請けは……」

もち米……これだ。

この発見も大きかった。

全知全能さんの情報でゴードンから色々と見せて貰っては調べるなかで見つけた1つだ。

これも今は生産ラインを整えているが、うん。

これもお茶の発表と合わせて公開する。

作るのはそのままお餅と──白玉団子だ。

そっと、前回作ったお餅と白玉団子を取り出してはお餅には小豆を、白玉団子にはフルーツを。

そして、フルーツ白玉にはシロップを……。


「うん──いや、ここはもう少し……」

フルーツ白玉の方にホイップクリームを乗せてみる。

おお! いけそうだ!

うんうん、とりあえず持っていくかな。

ちょっと凝りすぎてしまったのだろう、最初のソワソワしていた空気が今は静かに待ち望むような空気がこちらにも漏れてきていた。


「「「────!!」」」

「や、やぁ……お待たせ? えっと?」

「な、な、な……なんですか、これは!!」


わーぉ……エルザの久しぶりの大声。

いや、その後皆も種類豊富なお茶に……そして、エルザとナタリーはフルーツ白玉に目がもう焦点が合ってからは、そこから動いていない。


「え、えーと? 皆、席につこうか?」

「「「────」」」


わーぉ……沈黙なのにソワソワ、ソワソワと……。

とりあえず、お茶を飲みやすいように真ん中に置きつつ、空のカップを皆に渡しつつ、それぞれ皆にお餅とフルーツ白玉を……。


「えっと……お話は……少し食べてからかな? 召し上がれ」

「「「───う、うまい!!」」」


そうだろう、そうだろう。

渾身作なのだから……って、再現しただけなのだけれども。

お茶の方も質問されては応えつつ、皆一様に飲み始めては、好みのお茶を飲むようになってきた。


「ま、マコト……! これはアナベルおばさまが……大変な事になるわよ……」

「あー──」

脳裏にあのスイーツに目がないアナベルが脳裏によぎる。


「いつ頃ノルトメ商会から販売されるんだ?!」

「もう少し経ったらかなぁ……」


エドワードも珍しく食い気味に聞いてくる。

どうやら、とても気に入ったようだ。

ナタリーの方はマークと美味しく食べているのと、ジャンは神妙な顔で頬張っては蕩けるような顔になっていた。


「それじゃ……話しに戻ろうか」

「あ、あぁ……!」


マークの反応はいつも面白い。

真剣になろうとするのだが、ほっぺにはクリームが付いていた。

最後に気になるのを慌てて食べたのだろうか?

甲斐甲斐しくナタリーがハンカチを取り出してはソソッとマークのほっぺを拭いていた。

マークもマークで嫌がる素振りもなく、ありがとうとナタリーに言っては2人の空間が──。


「マコト?」

「あ、ああ。ごめんごめん」


また、マークとナタリーの2人の空間に引き込まれそうになっていた。

マークとナタリーも仲良く背筋を伸ばしていた。


「ごめんごめん。改めて話すよ。あの場は少し空気が……いや、だいぶ悪かったんだよ。僕も悪かった、ここのギルドの気質をしっかりと把握できてなかった」

「気質?」

「そうだよ、ジャン。気質かな。ほら、マークのエバンス領の冒険者の街ルソーレの冒険者ギルドを想像してみて」

「あ、あぁ……」

「その後、ここの王都の冒険者ギルドを思い返して見て欲しい、違いが分かるかな?」

「活気か……?」

「うーん、まぁ、正解と言われれば正解だろうけれども。活気が生まれる理由が今回の話の本筋かな」

「理由か……?」

「マークの方は魔の森があるじゃないか」

こっそりとヒントを言うようにジャンがマークに伝えるが、当の本人は未だにはてなマークが頭上に見える。


「ほら、あれだ。マークの所は魔の森がある分魔物の発生も自然発生の動物もダンジョンも豊富だろ? って、ジャンは言いたいんだよ」

「あ、あぁ……それは確かにな。それと王都の違いって……あぁ!」

あっ──やっと察したらしいマークがそこには居た。


「そっか、確かに王都はそうなると乏しいもんな」

「マーク……言い方ですわ」

「あっ──すまない、ナタリー」

「い、いえ……そんなに落ち込まないでマーク……」

うーん、随分と僕の知らないところで2人の関係性は僕の想像以上に進展いるみた──おっと、エルザからの冷ややかな目を感じて僕は思考を現実に戻していく。


「そう、まぁ確かに言い方はあれだけれどもマークの言う通り王都は乏しいんだよ。だから、今回は狩りすぎてしまった……だけではなく、あれは彼らの稼ぎでもあるから良い風に見られなかったって事だね」

なるほど……と皆、各々反応はしているけれども──手は止まること無く食べてはお茶の味で舌鼓を打っているのを僕は見逃してはいなかった。

いや、僕じゃないと見逃しちゃうね……なんて、ね。


その後は雑談へと話の花を咲かせては夜の帳が下りて来ては解散したのだった。


そして、また聖(日)の日──祝日とも言う日がやって来て、今回はダンジョンに挑むことになった。


「この時を待ってたぜ!」

「はぁ……マーク……追試を免れる為に頑張った僕らへの感謝を忘れないでくれよ?」

「あ……あぁ!」

力強く頷くマークを見てはジャンが頭を抱えていた。

エドワードも若干疲れてそうな雰囲気を感じるが理由は明白だ。

マークの追試阻止の為に夜な夜な、彼らは寮でマークの勉強をみていたからだ。


「マコト! どうかしら?」

「ん? ……綺麗だよ」

「本当……?」

「……う、うん」

ちょっと照れてしまっただけれども、自分の反応を見てはエルザはより一層嬉しそうな表情になる。

僕含め、男グループが外で待機している間にエルザとナタリーはダンジョンへと向かうために動きやすい服装に着替えて来たのだ。

僕たちの寮から出てきたエルザとナタリー服装的に言えば、パンツルックの動きやすい感じだ。

普段は2人ともスカートなので、とても……その──魅力的だ。


ポー──とナタリーに見惚れているマークを見ては僕は正気を取り戻す。

い、いかん。

自分もあんな感じだったのだろうかと、内心を焦ったのを知らずかエルザは近寄って来てはフワリと微笑んでくる。


「マコト──行きましょう!」

その一言に押されて本日のダンジョン攻略は始まりを向かえるのだった。


「って、今日はどこのダンジョンに行くんだ?」

「確かに……どこに行くんだ、マコト?」

エドワードとジャンから道すがら尋ねられては僕はスッと道の先を指し示す。


「うーん、あの穴? 洞窟? がダンジョンですか?」

「そうだよ、エルザ」

「どんな所なの?」

「規模的には初心者ダンジョンかな? 出てくる魔物も固定されては無くて、多様だけれども──だからこそ訓練にもなる感じかな?」

「へぇ……」

「まぁ、でも今回は少しばかり試したい事があるから……」

「試したいこと?」

「ま、見てて──」

そんな感じでエルザの頭上のはてなマークと長閑のどかな風景を眺めつつ、今回は王都から馬車に揺られては僕たちは目当てのダンジョンに辿りつくのだった。


「うぉ……遠くから見たら小さく見えたけれども、近くから見るとデケェな……」

「何言ってるんだよ、マークの所だと度々訓練としてダンジョン攻略とかしてるんだろ?」

「いや、まぁ、そうだけれども……毎回、そう思っちまうんだよ」

「まぁ、マークの言うことは分かるな。俺もダンジョンの雰囲気には未だに慣れない」

「まったく、マークとエドワードはこれだから──」

やれやれと手を首もとに持っていっては仕方ないやつだ……ジェスチャーをしている横目で僕はソッとダンジョンに近寄って行っては入り口から少しだけ中に入る。


ズズズ……と引っ込まれるような感覚──ダンジョンが僕を把握しては僕もダンジョンを認識した感覚だ。

そう、ここからはダンジョン攻略の始まりでダンジョンのルールが適用されるという感覚でもある。


「マコト……! 置いてかないで」

「えっと……何してるのですわ?」

僕のことを見ていたのだろうエルザ……それとエルザに付いてきた僕の様子を見てはそう声を掛けてくる。


そんな僕はダンジョンに入ってはスッと地面に手を置いている姿勢だ。


「マコト、どうした?」

「あー、ごめん。少しだけ待ってて……」


ズズズ──ズズズ……。

これはダンジョンが僕らを認識してる感覚の感じではない。


「ギギギ……ギギ──」

「ね、ねぇ? マコト? なんだか、ダンジョンが悲鳴をあげてるような……」

「マコトさん……?」

エルザとナタリーの声が背後から聴こえてるけれども、僕の意識はダンジョンへと向いている。


ギィィイヤィァァァァァァァ──!!

うん、悲鳴だ。

懐かしい悲鳴にも聴こえる。

あれは冒険者の街ルソーレのかの懐かしいスライムダンジョンの悲鳴だ。


ズズズ──。

ギィィイヤィァァァァァァァ──!!


うーん……ヨシッ!

いや、この表現はあれだ現場猫さんという……あれだあれが連想されてしまう。


…………。

…………。


「ねぇ? マコト? なんだかダンジョンの息が……」

息? そんなのダンジョンにあるはずが無かろう。

……いや、例えなのは分かるけれども。

う、うん。

なんだか静まり返ってしまったような……息吹を感じないような。


「と、とりあえず。ほら、これは皆の分だから」

「……マコト? この武器はえっと……」

「あー──非売品だ。製造元は……秘密だ」

「「「「「────」」」」」

すっごい、ジト目で皆から見られてくる。

製造元? そんなのいわれなくても分かる。

このダンジョンの生命の息吹の風前の灯がそれを物語っている。


「や、やだな……あはは。ほ、ほら大丈夫、大丈夫」

そして、僕はまた手をダンジョンに触れて──。


アァァァァァァァァア、ィィィィイイイイイ──!!


「────!!」

「お、おい……マコト!」

「なんか変だぞ?!」

おや、ジャンが慌てたような姿を見せるのは珍しい。

鈍感なマークも何かしらには気付いたようだ。


アッ……アッ……アッ!!

それにしても、なんだこれ?

逆に今度は適切な今回の皆のレベルにあったダンジョンに出来ないだろうかと僕の魔力を今度は注いでみたらダンジョンから活き活き……いや、イキ? とした声……いや、なんだ……うん、そう雰囲気がビンビンに伝わってくる。


「もう……ダメ……」

いや、ダンジョンが話せるはずはない。

この声は幻聴だ。

けれども、ハァ──と脳内でクソデカ溜め息を全知全能さんが久しぶりにしたような感じがしたのと、久しぶりに全知全能さんから待ったコールがあったので、ここでダンジョンへの魔力供給を終える。


ガガガガガガガ──!!

と、ダンジョンへと魔力が行き渡ったと同時に風前の灯が一気に燃え上がってはメラメラと焔に変わっていくのを感じる。


とりあえず、ダンジョンへと魔力を注いで見て分かったのはダンジョンの規模に応じて保有出来る魔力の上限があること。

そして、何よりもダンジョンの魔力保有量によってダンジョンのレベルが決まる感じだった。

そう、でもここは初心者ダンジョン……いくら上げても初心者ダンジョンなのだ。


けれども──。


「な、なぁ……? あれってただのゴブリンだよな?」

「あ、あぁ……でも──」

「な、なんか目がキマってませんこと?!」

ナタリーの一言に集約されるだろう。

ポンッと登場! では、無いけれども、ダンジョンから現れたゴブリン─いや、もうキマリンとも言える。


最高にハイだぜ──!!

と、言うようにブンブンと腕を振り回しては目がガンギマリのゴブリンが出てきた。


「うーん、こうなるのか」

「マコト……?」

「はーい! 皆、本日のダンジョン攻略始めるよー!」

「「「───や、やってやりゃー!(やりますわー!)」」」

うん、元気があるのは良いことだ。

どこか皆、諦めからの割りきっては攻撃へと突撃していくのだった。


ゴブリンことキマリンと目をギラギラさせては最高にハイだぜ──!! しつつ、皆とゴブリンの争いが今ここに火蓋が切られたのだった!


と、言いつつ。

所詮といえば儚いがゴブリンはゴブリンだ。

ガンギマリだとしたも多少強くなった程度で、皆に掃討されていく。


その間に久しぶりに見た自分のステータスに新項目を発見してはちょっとだけ胸をときめかせてしまった自分がここに居た。


《名前》天神アマガミ マコト

《種族》人(半神)

《年齢》15

《レベル》31→33

《extraskill》全知全能 Lv8

《extraskill》魔法創造 Lv1※new

《extraskill》身体超越 Lv1※new

《extraskill》絶対攻守 Lv1※new

《extraskill》迷宮創造 Lv1※new

《体力》∞→∞(error)

《魔力》∞→∞(error)

《魔力コントロール》Lv10★

《身体強化》Lv10★

《思考加速》Lv10★

《土魔法》Lv10★

《水魔法》Lv10★

《火魔法》Lv10★

《風魔法》Lv10★

《光魔法》Lv10★

《闇魔法》Lv10★

《聖魔法》Lv10★

《無属性魔法》Lv10★

《剣技》Lv10★

《槍技》Lv1→7

《弓技》Lv1→7

《斧技》Lv1→7

《鎚技》Lv1→7

《盾術》Lv1→7

《体術》Lv10★

《体力回復上昇》Lv8→10★

《魔力回復上昇》Lv8→10★

《攻撃力上昇》Lv7→10★

《防御力上昇》Lv7→10★

《鑑定/解析》Lv10★

《空間転移》Lv4→7

《隠蔽》Lv10★

《収納》Lv8→9

《付与術》Lv4→7

《錬金術》Lv10★


……すごいな。

いや、解放された条件は多分いくつかのスキルが限界を迎えた影響だろう。

ただ、全知全能さん曰くextraskillいえども、自分は別格だという──ん? 拗ねてるのか?

あぁ……嘘です。嘘です。はい、感謝してるよー。


危ない。

なんだか急に拗ねた気がしたが……うん、全知全能さんに感情なんて、ねぇ?


とりあえず、確認は皆が難なく戦っては無事なのを確認しつつ、該当のskillを自分も確認する。


魔法創造……これは全ての魔法を極めたからだろうか?

魔法に関する──いや、創造を魔法として顕現させるという方がしっくり来そうだ。

イメージをそのまま……これに近いことはしていたような気がしたけれども、そっかskillとしても存在していたのか。


身体超越……これは体内、体外の魔力含めて全てのコントロールと身体の限界を超えた成長を促していくらしい──って、既に半神なのに……これってもしかして人の卒業を迎えるのではないか? ん?


絶対攻守……全ての攻撃が絶対になり、全ての守りを絶対にする。

──いや、言葉だけだとへぇ……だが、内容が凶悪だ。

絶対に守りきれない攻撃を可能にするし、絶対に守りきれない攻撃を守れるようにするということ……なのか?

全知全能さん……ちょっと、これはどんな解釈すれば?

え? やってみたら分かる?


少しだけ、落ちてた小石を拾ってはヒョイっとゴブリン目掛けて投げてみると──あらぬ方向へといった小石が瞬間ブレたと思ったら、狙っていたゴブリンへのこめかみへと綺麗に……それは綺麗にクリーンヒットしていたのじゃった。

──いやいやいや、凶悪すぎますって?!

全てを確定へと改編する因果の力じゃないですか……。


後は迷宮創造……これはダンジョン……?

いや、自分が設定した? 認識した世界を創造する……ち、か、ら……?

全知全能さんや。

この認識した世界ってどこまで? え? どこまでも?

……。

人間卒業しちゃってますやん。

確定ですやん。

……わぉ。


──とりあえず、ソッと僕はステータスを閉じては背伸びをして息を大きく吸っては吐き出す。

うん、まったく──落ち着かないや。


これはもう──うん。

諦めよう。

なるようになるさ! と、今は感情を置いてはゴブリンを全滅させて皆のもとへと僕は歩きだす。


「お疲れ様!」

「つ、疲れた……」

「なぁ……ゴブリンって、こんなに強かったか?」

「それになんだか、その……目が──」

自分の挨拶にジャン、マーク、エドワードから非難するような目を向けられるが……うん、これは、その……訓練だ。


「ま、まぁ……ちょっと──強かったかな?」

「マコト……?」

「──」

そんな自分の背後からエルザの声が聞こえてくるがいつもの暖かい雰囲気の声ではなく、底冷えするような冷たい声を感じて、自分はすぐさま謝るのだった。


「えっと、それでこの後はどうするのですか?」

「えっと、マコト……?」

「あー、うん。ちゃんと最下層まで行ってクリアを目指して貰うよ」

「「「嘘だろ?」」」

ナタリーとエルザの疑問の声に答えたら男3人衆からまた非難の声を浴びるけれども、これは確定事項だ。


「自分の身は自分で最低限は護れるようにならないと、ね」

「ぅ……」

うん、そのまま思っている事を伝えたら、ぐうの音も出ない様子で項垂れたのだった。


「けれども、ここは少し強化されようと初心者ダンジョンには変わらないから。それに本当に危なそうだったらサポートとする。だから、頑張ってみて」

「マコトがそういうなら……」

うんうん、エルザのそのスイッチの切り替えの早さは好きだ。

それに引きずられるように皆の覚悟のスイッチも切り替わったようだった。


「足を凍らせます!」

「支援魔法……行きます!」

「マーク……! 出過ぎだ!!」

「大丈夫だ! ナタリーの支援魔法が俺を護ってくれる……!」

「でも、マークは前を見すぎ。横がお粗末──!」

ジャンがそう言いつつ、横から挟撃されそうな所のマークを守る。

それに応えるように反対側をエドワードが、パッシブを受けたマークは正面の足を凍らされたゴブリンを一閃する。


「ウォォォォ──!!」

「マーク! 次は上だ!」

「チッ──!」

「かの光を明るく……いえ眩しく照らし出して──ライト!!」


ギィーギィー!

コウモリ型の魔物だ。

一閃して隙が生まれたマークを襲おうと天井の陰から躍り出ては風を切って強襲してこようとしてくるが、ナタリーが光魔法で目眩ましをする。

それがしっかりと効いたのだろう、怯んではまた上空に逃げようと飛翔を始める。


「逃がさない──!!」

それを見逃すエルザではなかった。

狙いを澄ませるように集中を一息で済ませては氷属性の魔法をコウモリ達に目掛けて放つと、コウモリ達にヒットしては墜落してくる。


「ジャン──!」

「分かってる!」

そこを息を整えたジャンとエドワードが刈り取ってはその場を凌ぐことに成功する。


「うん、連携も良さそうだ」

ちょっと声に出てしまったが、見ていてそれなりに良い連携に素直に嬉しかったりするのだ。

自分の場合は既に脳内でマッピングと敵などの位置も把握出来てしまっているので、文字通りの意味で皆との見えている世界が違うのだけれども。

うん、危うげなく突破していく姿──いや、攻略していくなかで柔軟な対応が出来ていく姿は見ていて嬉しいのだ。


「さて、後もうすぐ……」

「マコト! これは……ボスの扉なのか?」

「見つけた? あぁ、マークそれはボスの扉で間違いないよ」

デデン! と、音が聴こえて来ても困惑はしないだろう。

ようこそボス部屋へ! 的な、あたかも出来すぎたような大きな門が進行方向を曲がった先に見えていた。


「いかにも……だよな。毎回見て思うけれどもよ」

「そうなのか?」

「ふーん……」

「ん? エドワードもジャンも分からないのか?」

「いや、だって僕らの領はそんなにダンジョンが溢れてる訳でも無いから」

「あー、確かにそうか」

「マークの所が異常だと言えば異常なんだよ。魔の森の影響はでかいって事だと思うぞ」

「それもそうだな」

うんうんとマークが頷いているのを見つつ、ジャンとエドワードはやれやれとジェスチャーをしている。

それを横目に見つつ、ボス部屋の前の空間で小休憩を取っているのだけれど、女性陣……うん、エルザとナタリーも水分を口に含ませては小休憩を取っていた。

確かに、さっきの話ではないけれども、魔の森の影響は大きいだろう。

ダンジョン……一重に魔を吸収する存在にも近いのは先ほど魔力を流してみて確信に近いものは得られた。

それに純粋なエネルギー原なのだろう。

そうなると、人はまるで高濃度なエネルギー原だ。

誘う罠というダンジョンを生み出すはずだ。

そして、どんどん栄養を蓄えては成長していくと高難易度な巨大ダンジョンの出来上がりって事だ。

その分、更にエネルギーが必要になるからのスパイラルだろう。

栄養が断たれたらダンジョンも栄養不足に陥ると崩壊していくって事だろう。

そんなダンジョンの核は魔力を流してみて位置的には分かったのも大きかったかも知れない。


「そろそろ、休憩は終わりかな」

「行くのか?」

「うん、皆準備は大丈夫かな?」

「あぁ!」

「はい!」

これ以上取っても逆に魔物が近寄って来てしまうだろう。

いや、今回の場合は自分が脳内で敵の場所や多少強めの魔力を外側で流して魔物を遠ざけてはいるのだけれども、このくらいのサポートはあっても良いだろう。

大切なのは緊張感を持って、慢心しないで挑むことだ。


「じゃあ、頑張ってみよう。ここでクリアしたらしっかりと日が落ちる前には帰れるはずだよ」

そう、呼び掛けつつ、扉に手を触れてはボス部屋の扉を開けていく。

扉から伝ってくる魔力は初心者ダンジョンという括りの中でも潤沢で濃密な魔力を感じた。

まぁ、そう仕向けたのは僕自身なのだけれども。

うん、頑張れ──。

そう心に念じては扉を開けては、皆が突入していくのだった。

自分も最後に背後を念のために確認しては皆を追従するようにボス部屋へと進入するのだった。


「ガァァァ──!!!!」

オークキング1体にオーク1体……そして、ゴブリン4体──頭数をこちらに揃えたのか?

そう、思わざるをえない構成でボスが出現していた。

まぁ、実際自分はお目付け役みたいなポジションだから戦うのはマーク、ジャン、エドワード、エルザ、ナタリーの5名なのだけれども。

でも、よくよく見てみると。


「うん、最高にキマッてるな」

明らかに目がラリってる感じでオークキング共々強化された状態でエルザ達へと突撃していた。


「気をつけろよー! 普通のオークとか思ってたら大変だぞー!」

「分かってる!! チッ!」

ジャンが自分の声を聞きつつもゴブリンからの鋭い一撃を弾きながら舌打ちを打つ。


「ぐっ……」

「マーク──!」

「う……らぁ!!」

「ガァ?!」

オークキングと真っ向勝負で正面から武器を打ち合っているのはマークだ。

ゴブリンを指揮している様子のオークにはエドワードが当たって、すばしっこいゴブリン4体はエルザとジャンがそれぞれお互いに助け合いながら。

ナタリーは全体の支援と回復、そしてタイミングがある時は光で撹乱しつつ──うん、今は良い感じだ。


「今は……ね」

そう、今は大丈夫だ。

けれども、拮抗している。

拮抗しているということは長期戦になるということだ。

そうなると今回の勝利の女神はこのまま自力が相手の方が上のボス側に傾いていくだろう。


「チッ! エドワード、ごめん! 1体そっちに──!!」

「──!」

うん、こうなる。

本来はパーティーとして、有利な陣地をエルザの氷属性から形成しては挑んでも良い。

もっと、創意工夫をしては挑むべきだ。

氷と光の相性も良い。

もっと全体を俯瞰して攻撃へ移るべきだったろう。

でも、それは急には求めすぎというやつだ。

だから、そこら辺は後程レクチャーするとして、まずは実戦を積み重ねて行くのが良いだろう。


さて──。

「させないよ……!」

スッと小石を拾ってはヒョイっと投げる。

けれども、この行為だけでもextraskill《絶対攻守》を交えたら凶悪になるのは入り口で試して確信している。


そして、投げた小石はその期待をなぞるように軌道を急速にエドワードに今でも斬りかかろうとしていたゴブリンのこめかみを貫くように背後からシュパンっと、小気味良い音を鳴らしては貫いたようだ。


「なっ……」

「ガァ──?!」

それを目の前で見せられたエドワードとオークは流石に戦闘中にも関わらず、剣を交えつつも驚愕した表情をしていた。


「エドワード……! まだ戦闘中だぞ!」

「──! あ、あぁ!!」

自分の掛け声に頷いてはエドワードは力の弛んだオークの攻撃を弾き返しては袈裟斬りに一太刀決める。


「ナタリー! ナタリーはマークの援護を! ジャンはエドワードに合流! エルザは僕と残りのゴブリンを!」

「「はい!」」

「分かった!」

勉強の時間は終わりだ。

ボス側も先に押された影響で今まで以上に強く攻勢に出てくるだろう。

うん、頃合いだと判断して自分も戦闘に参戦することにした。


「頼むっ!」

「あぁ、任された。エルザ! こっちに!」

「う、うん!」

ジャンと入れ替わってはゴブリンの攻撃を受け持って大きく弾き返してゴブリンを吹っ飛ばしては距離を作る。

その隙にエルザと合流しては残りの3体のゴブリンと向かい合う。


「さて、エルザ。少しだけレクチャーの時間だよ」

「え?」

「相手も決死の覚悟になっていて、余り時間は無いから手早くいくから学べるだけ学ぶように」

「う、うん──」

エルザの言葉を全て出来ることは出来なかった。

相手だって待っていてくれる訳じゃない。

ゴブリン達の練度はなかなかだ。

1体は先行して牽制、後続の2体目がきっとメインのアタッカーで3体目は万が一のカバーに切り替えたのだろう。

うん、即興ではあるけれども、それなりの動きだ。


「まずは相手の土俵を崩す!」

「キキッ──?!」

目の前に目に見えるトラップで氷で使った簡易なトゲの罠を作っては1体目の突撃を防ぐ。

そして、氷へ光を当てては反射させる事で2体目を目眩めくらましさせる。

後は前2人の状況を見ていて一番咄嗟の判断で動きが止まった3体目へと氷属性のツララを形成しては飛ばしては一気にトドメを刺す。


「まずは相手の動きに合わせてか、意表を突くのもいい、自分のフィールドを狭くても良いから作るんだ。その後は──」

話しすぎると2体目の目眩ましの効果も切れてしまうだろう。

サッと動いては1体目のゴブリンの首へと剣を滑り込ませてははね上げる。


「後は1vs1が有利なら、どう持ち込むか考えるのも良い。後はチャンスは最大限ものにすること──」

「ギャ!?」

そして、目眩ましから回復に入ろうとしていたゴブリンの心臓……2体目へと剣を刺突しては息の根を止める。


「分かったかな?」

「う、うん──」

少しだけ尊敬と驚きと戸惑いと……色んな感情がない交ぜになっているのだろう表情を浮かべながらエルザは頷いていた。


「ジャン!」

「エドワード!」

「「うおおお──!!」」

「あっちは……うーん──」

「どうしたの?」

「いや、少しだけ気を抜きかけてるかな」

オークとエドワードの戦いに参戦したジャン──これで人数的にもオークは不利になっては押されるのは分かるのだけれども、その分少しだけエドワードとジャンが攻撃に精彩を欠いているように見えた。

あのままだと、きっと良くはないだろう。

そう思った矢先にオークの強い一撃が2人の攻撃を押し退けて2人を同様に吹っ飛ばしていた。


「ガハッ」

「グハッ」

「エドワード、ジャン──!」

「やっぱりこうなったか。エルザ、2人の回復を──」

「うん!」

「そして、お前の相手は僕だ」

「──!!」

吹っ飛ばされた2人へ駆け寄るエルザを見据えつつ、追撃しようとしていたオークへと躍り出ては一太刀浴びせる。

オークも近づく僕の存在には気付いていたのだろう。

いとも簡単に攻撃を防いでくる。

ま、僕が速度を落として相手のレベルに合わせているのもあるけれども。


「ジャン、エドワード! 余裕があるからと攻撃に切れが無くなりすぎだ! そうなると今みたいにいとも簡単に崩されるぞ! 最後までしっかりと敵と向かい合うんだ!」

「「────」」

うん、痛みで声が出ないのだろう。

ま、エルザの聖魔法に賭けるしかないだろう。

酷いようなら自分が見れば大丈夫だ。

ただ、2人からの視線は強く感じるので僕の戦い方を見て学ぼうとする気概は感じられる。

それだけで今は充分だ。


「敵が自分より大きく──そして、パワーがある際はただ受けるだけじゃない。その攻撃を活かすのも大切だ!」

オークより攻撃力を落として、速度もジャン達と同じくらいをイメージして……オークの攻撃を正面から受けつつ攻撃を流してはオークの攻撃への動きを活かしては受け流した切っ先をオークへと斬りつけていく。


「グァ──!?」

「動揺は見逃さない。自分の利点を活かすんだ!」

そのまま、動揺したオークの背後へと斬りつけながら回り込んでは背後からスピードを活かして連撃を放つ。


「そして、常に相手の不利な立ち位置を1vs1なら意識して立ち回るのも手だ。そしたらこうやって──」

「──!!」

スパンっと音をはね上げた。

オークの首が飛んだ音だ。

背後へと無理に振り向こうとしたオークへと同じく更に背後に回り込んでは無理な体勢になったオークへと頭の位置が低くなったのを尻目に一閃したのだ。


「2人の場合なら、もっと欠き乱しては似たような状況を生み出すのも良い。無理に正面で受け持つんじゃなくて、出来る幅を広げてみること。後はただ闇雲に剣は振るうだけだと雲を掴むようなものだから、何か目標を定めて振るうのが良いかな──大丈夫そう?」

「「────」」

「あっ、動かないで! まだ回復してる最中だから!」

無理に動こうとしたのだろう。

けれども、2人は回復していたエルザに注意されては罰の悪い表情を浮かべていた。

ただ、目では分かったと言いたげに伏せられたので、自分も頷いてはマークとナタリーの方へと向かう。


「マーク! 筋力増加します!」

「あぁ!」

「凄いな……」

いや、こっちは逆に大丈夫そうだ。

むしろ、オークキングとマークの力と力のぶつかり合いの迫力が凄い。

これは小手先の技ではねじ伏せられるやつだな。

とりあえず、限界までは見ようと決めたら僕は見守ることする。


「ぐぉぉぉ!!」

「ガァァァ!!」

元々、ナタリーが来る前から拮抗していたんだ。

そこにナタリーが来たことでマークの方が有利に傾いた。

今、それでも拮抗しているのはオークキングがその身を代償にして力を拮抗させているからだ。

僕の目からはオークキングの魔力のほとばしりが視える。

その魔力とは命と直結している。

だからこのまま行けば──。


「うらぁ……!!」

「ガァ?!」

「これで──しまいだ!!」

ズドン! とマークの強烈な一撃を見舞われてオークキングは袈裟斬りに大きな斬撃を食らっては地に伏していた。


「おし! やったぞ! ナタリー!!」

「はい! はい──!!」

そのまま2人抱きしめ……という所で恥ずかしさが勝ったのだろう。

2人とも両の手を空中に漂わせていたが、最後には手を結びあっては喜ぶというところに落ち着いたみたいだった。


うん、ご馳走さま──。

これは2人の進展を応援したい気持ちが生まれてしまうな。


「さて──ジャン、エドワード動けそう?」

「あ、あぁ……」

「……いたたた。大丈夫」

「エルザ、回復は大丈夫だった?」

「うん。思ったよりも軽かったから」

「それは良かった。おーい! マーク! ナタリー!」

「お、おう!」

「は、はい!」

2人の愛の花畑から呼び戻しては皆でボス部屋の中心に集まる。


「さて、報酬はどうなるかな?」

「ワクワクします……」

そっと、報酬が生まれる前に入り口と同様に跪いては手を床に当てる。


「お、おい……マコト?」

「────!!」

頭上から困惑したジャンの声と、そして息なんて無いだろうけれども、ダンジョンが息を飲んだような気配を感じては報酬が生まれる前に僕は魔力を注いでみていく。


アアァァァァ──!!

イヤァァァァア──!!


気のせいだ。

気のせい。

うん、これはダンジョンの声じゃない。

なんだか感じているようにダンジョンが震えてるように見えるのも気のせいだろう。


「ダンジョン……震えてるよな?」

エドワードの声も幻聴だろう。


ムリムリムリムリィィィ──!!


うんうん、幻聴幻聴。

大丈夫、先ほどでここの初心者ダンジョンの魔力の限界量は把握している。

まだまだイケるはず。


ほら、飲ーんで飲んで飲んで☆

飲ーんで飲んで飲んで……飲んで☆

って、あれ? これは酒飲みの音頭だったっけ?

そんな風に意識があらぬ方へ行こうとしてたが全知全能さんから呼ばれた気がして意識をダンジョンに向ける。


────。

ァ──。

…………。


大丈夫。

虫の息というやつだろうか。

うん、生きているというか……なんだかダンジョン自体の壁とかが妙にギンギンに艶々してるような。

まぁ、ここから搾り取るのだけれだも。


悪魔的所業ですね……。


ん? なんか、言われたような気が。

まぁ、うん。

全知全能さんは話すことも無いから幻聴だろう。

うん。


「さて──搾り取りますか」

「え? 搾るって?」

おっと、声に出てしまった。

ジャンの疑うような視線を曖昧に笑って誤魔化しては、報酬が生まれるこの瞬間の報酬内容の製造箇所へと、今この瞬間満ち溢れている魔力を凝縮していく──。


──ビクンビクン!!

ァ──ゥ──!!


うん、気のせいだ。

ダンジョン……お前は良いヤツだったよ。


────。

大丈夫、生きている。

むしろ、最初の来た時の細々としたダンジョンと同じくらいだ。

けれども、なんだろう。

すっごくダンジョンから何かを感じる。

いや、気のせいだ。

気にしたら負けだ。


「さ、さぁーて、報酬はなんだろうねー。タノシミダナー」

「……」

エルザからの非難するような目が痛い気がしたけれども、現れた宝箱に皆の意識が一気にそちらに集中する。

それはキラキラに輝いたプラチナの宝箱だったからだ。


プラチナの宝箱──。

それはとってーも凄いスパイシィーな宝箱なのだ。

一言でいうとそんな感じだ。

うん、ちょっとおちゃらけて見た。

でも、ダンジョンといえば宝箱。

宝箱といえばダンジョンという風に定番という訳だ。

そして宝箱にも種類というか、厳密には明らかなランク分けがなされている。

最もポピュラーなのは木製の宝箱だ。

中身はランダム制なのは変わらないけれども出てくる品質は下等級というのが一般的だ。

次にちょっと豪華な銅製、次に銀製、そのまた次に金製の宝箱と来る。

うん、基本的には──そう、基本的にはそんな感じだ。

そして、本当にごく稀に希少価値の高いプラチナの宝箱がある。

潤沢な魔力があるダンジョンで、ダンジョンが認めた功績を残して、且つ幸運が無ければ巡り合えないやつ。

それが……目の前に【6つ】もあるプラチナの宝箱だ。

基本は宝箱は1つがポピュラーだ。

そして、山分けするか相談して誰かに与えるか。

それが基本的な冒険者のやり方だ。

たまにいざこざが起きて、死傷者が出るのも冒険者だ。

まぁ、その際はギルドカードにレッドがついてお尋ね者になり、厳しい処罰が下されるのが当たり前なのだが。


「っと、話しは置いておいて目の前にそんなプラチナの宝箱が6個もあります」

「──マコト? 誰に話してるの?」

ふっ、それは秘密だよ。

ま、分かる人には分かるさ。

さて、エルザ以外の皆は宝箱に目が釘付けだ。


「ど、どうする?」

「え? いや……え?」

「1人1個だろ?」

うんうん、男3人衆が既に議論を展開している。


「えっと、でも功労者は……」

そう言ってナタリーは自分を見てくる。


「1人1個文句無しで選ぼう」

「おっし! そうこなくちゃな!」

「まったくマークは……」

「ありがとう、マコト」

自分が肩をすくめながら言うと、皆言葉では感謝を述べつつも態度的には目の前の宝箱を明らかに開けたくてウズウズしてくるのが伝わってくる。


ま、言っても初心者ダンジョン。

ダンジョンの宝箱の中身の限度もそのダンジョンの規模による。

最高品質のプラチナの宝箱でも、ここは初心者ダンジョン。

そう初心者ダンジョンに限った最高品質の中身が出てくるはずだ。


────。

うん、ダンジョンの息がもう怪しいけれども大丈夫だろう。

ゆっくり休めよ……。

そう言って、自分の宝箱を皆が開けていく中で開いてみる。


【守護の指輪S】

任意の対象に絶対的な守護のバリアを張る。

クールタイム──24:00/回


これは儲けものだ。

それに装備の後の表記は最近、全知全能さんが分かりやすくしてくれた装備のレア度の目安だ。

Sは最高品質だ。

それに魔法でもバリアは張れるけれども、この指輪の場合はレスポンス無しに即座に発動出来るのがメリットだ。


「皆は────ん?」

「「「「────」」」」

周りの皆を見回すと物凄く羨ましい表情でこちらを見てきていた。

まぁ、僕の選んだ宝箱は皆が先に選んだ後の残り物だ。


「無いんだ」

「えぇ──」

「……」

ん? 皆それぞれの宝箱に近づいて見てみると中身は空っぽだった。


────。

ダンジョンの沈黙は今はなんだか別の意味に感じる。


全知全能さんが教えくれるように思考が回る。


「宝箱まで生成したけれども、中身が作れたのは1つだけで力尽きてしまったのか……」


そっか、ふーん──。

そうなのか。


おもむろに屈んで手のひらをまた、ダンジョンの床に触れる。


ビクッ───!

おや、今まで沈黙を貫いていた初心者ダンジョンが反応したように感じた。

これはこれは……おやおや?

では、魔力を注ぎ──。


「ま、マコト? 私たちのは大丈夫だから、ね?」

「あ、あぁ。そうだぞ?」

「ほ、ほら、なんかダンジョン……さんが苦しそうじゃない?」

「ん? 良いのか?」

「あぁ、ほらナタリーも功労者って言ってたじゃないか」

「功労者……? なら、俺はオークキングを……」

「マ、マーク! ほら、後でその……私が……してあげるから」

「……?! お、おぅ……」

「「───」」

小さく私がマークの頑張りを褒めてあげるから、と聴こえた気がした。

気がした。

うん……なんだ? 何をしてくれるんだろう。

気になる……!

っと、思ったら表情に出てたのかエルザから冷たい視線を感じてビクッとした表紙に手のひらが地面から離れていく。


た、タスカッタ……。

そんな感情、いや声、まさかね。

聴こえた気がしたけれども、気のせいだろう。

もう一度、手のひらを──。


ビクッ!


冗談冗談さ。

エルザからの冷たい視線が圧が増した気もしたので自分も咄嗟に再度、手のひらを引く。

果たして、ビクッと震えたのはダンジョンなのか、はたまた安堵の気持ちを吐露したように思えたのは自分なのかは謎のままにしておいた。


「さて、帰ろうか?」

「はーい!」

さて、基本的には宝箱も開けたら。

宝箱は消えていき、帰還の入り口までの魔方陣が……。

魔方陣──が?

シュシュシュシュシュ……と、点滅しつつ魔方陣が消失していく。


「「「…………」」」

「お、オカシイナー?」

いや、皆の目が物語っている。

可笑しくはないのだ。

ダンジョンの生命をここまでやったのは僕だ。

帰還の魔方陣すらも出来ないほどに弱ってるということだ。


「帰るまでが冒険だ。ほ、ほら戦闘は僕が先頭に立つから、もうひと頑張りだよ!」

「「「……」」」

皆のなんとも言えない目を見つつ、僕たちはダンジョンから出ることにするのだった。

けれども、途中途中に出てくるゴブリンはヨボヨボで歩いては攻撃も大丈夫か? のレベル。

飛んでくるコウモリの魔物もフラフラ飛んでおり、挙げ句の果てには壁にぶつかっては落下死していた。


「「「…………」」」

原因は魔物の生成さえもままならない事になってるの1点だろう。

大丈夫、大丈夫だ。

時間をかけて外の魔力を取り込む事も出来るから。

けれども、皆の最初のガンギマリのゴブリンや、バッタバッタと飛び回る俊敏なコウモリの魔物を見ていた影響か、魔物が現れる度に攻撃は可哀想だからとスルーしつつ、僕への非難の目線が強まっているように感じたのだった。

そう、感じたのだ。

決して……そんな目で見てきては……うん。

いや、多少は申し訳ないかな? と、流石に入り口付近で何とか棒切れを支えに起き上がっては襲ってこようと懸命なゴブリンを見たら、心の中でザワッとしたけれども、外に出たら──ほら、皆リフレッシュして……。


「ねぇ? マコト?」

「うん?」

「次回からは【普通】の攻略で大丈夫だと思うの」

「──う、うん」

「そ、そうだな」

「ほら、なんだ。マークとか腕試ししたい時とか俺達から頼んだ時は別という感じで、さ」

「あー……うん」

うん。しか、言えない。

それしか言えん。

なんだか、最初来た時のダンジョンを皆が見る目と。

今、攻略終えての哀愁漂う皆のダンジョンを見る目は明らかに違う。


「で、でも、ほら……マコト? ありがとう」

「いやいや、どう致しまして」

「みんな、急いだ方が良いかと……時間が」

「うわっ! 確かに少し……ギリギリか?」

ナタリーがパカッと時計……を開いては時間を確認しては話して来ていた。

各々、時間を見ては少し慌てた感じになる。


「とりあえず、急ごう!」

「馬車と御者の方は──良かった、待ってくれてる!」

御者の方は律儀にすぐに出られるように準備をしてくれていたみたいだ。

基本的には道中で乗り合いにするか、徒歩か。

それぞれ移動手段を持つまでも冒険者の一環だけれども。

まぁ、そこは貴族なのだろう。

しっかりと馬車と御者を確保して来ている。

これもある意味移動手段を持つという意味では正解ではあるのか。

さておき、僕たちの最初のダンジョン攻略はこんな感じで終わったのだった。


ただ、後々ギルドマスター……ハンスに呼び出されては質問をされた。

明らかに初心者ダンジョンといえど、初心者過ぎるダンジョンになったしまった、あるダンジョンについての質問、いや……相談だった。

後程、誤魔化しつつ説明をしては……そう、狩り尽くしてしまったのが原因かもと伝えつつ、その日こっそりと王立学校を抜け出しては駆けてはダンジョンの入り口から元通りになる位の魔力を流してあげたのだった。

お陰でそんなに話題になることは無かったが、プチ七不思議になりそうだった。


ただ、ダンジョン攻略に関しては安心感は売れたのか。

その後はサブマスターのジェニファーからダンジョンの情報を仕入れては皆と休日には攻略をしに行っては、皆の練度を上げていく事に務めた。

お陰様なのか、皆当初とは見間違えるようには動き方は変わってきていた。

分かりやすくいうならば基本はしっかり押さえられて、少しだけ柔軟性が出てきた位というところか。


そんなこんなで合間ではモーリスとノルトの魔道具製作の方は順調にノルトメ商会、いや……ゴードンを通して安定して基盤が整っては生産含めて体制が整ったのは大きかった。


そして、甘味やお茶に関しては帝国だけでなく、ノルトメ商会の販路から王国や神国までも浸透して大変な流通量になっているらしい。

そして手数料が入ってくる、僕の懐事情は……うん、ちょっと並みの貴族を超えて、王族……いや、国単位の資金にこのままだと行きそうだと、途中から資産管理もゴードンに任せるようにしていたから、嬉しそうな、はたまた尊敬した目で話してきてくれていた。

ただ、困った部分はやはり甘味……お茶も含めてエルザの

おば様……宰相パトリックの妻……甘味に目がないアナベルの目に止まってはエルザを通して僕に会いたいとラブコールが絶えなくなっていた。

事あるごとにやんわりとお断りしている自体だ。


その他、流通の販路が広がっては安定してきた影響で更に色んな製品や食材、または素材を見られる機会が増えて、全知全能さんを通して、この世界に広げられるものを検討してはゴードンと相談している所だ。

魔道具に関しては構想を伝えては、時たまヒントという名の全知全能さんのアイディアを伝えつつ、切磋琢磨と製作に携わって貰っている。

魔道具サークルの先輩だった、ルイーゼとアンナもそのままノルトメ商会に就職という形で、モーリスとノルトのサポートに入る形になった。


そう、先輩たちの進路が決まるということはそういうことだ。

僕たちの学年が最終学年の4年へと進級することを意味していた。

4年では、行動の規制がだいぶ弛くなる。

進路の為とも言える。

貴族として、当主としての座学に入るもの。

または、エルザの姉のレイラのように魔法大学に行くために勉学に励むもの。

それか帝国騎士へと志願して武を極めるもの。


ジャン、マーク、エドワード、ナタリーは4大公爵としての立ち位置があるので、進路はほぼ決まりだろう。

エルザは──彼女は色んな外の世界を見たいと言っていた。

そして姉の王女として縛られてはいないであろう身の振る舞いで魔法大学に進学していた。

彼女からもエルザにアドバイスはあったようだ。

けれども、彼女の望む自由な未来は果たして……。

いや、僕は今は立ち位置的には守護者でもあるのか。

この学校に通っている間は彼女の傍で支えようと思う。

では、卒業したら?

その答えは今はまだ僕自身も──。


けれども、時間は過ぎていくものでまた卒業式が行われては始業式が始まろうとしていた。

最期の王立学校の生活が始まろうとしていた。

心の中では当初の目的の図書館での異人についての知識も解決していた。

なので、のんびりと穏やかに後は魔法具、ノルトメ商会でのこれからの販売計画、増え過ぎた資産の運用計画等々──地盤固めを考えていたけれども。

うん、なかなか……そんな簡単には話が進むこと無かった。


「ねぇ、マコト……」

「うん?」

「始業式での挨拶って何を話せば良いのかしら?」

うん、エルザは優秀だ。

優秀なエルザは始業式で生徒代表で僕たちの始業式の時のレイラのように話すようになるのは容易に想像できていた。


「どうしよう……」

その当人は想像出来てなかったようだけれども。

人前で話すのも、対人関係もすこーしだけ、うん、少しだけ苦手なエルザだから、こうなるのは目に見えていた。


「なるようにしかならないよ。けれども、話す内容は一緒に考えるし助けるから、頑張ってみよう?」

「そ、そうだよね……う、うん。分かってはいるの。けれども……あー、緊張してきちゃった……」

「ははは……お茶入れるよ。何がいい?」

「紅茶!」

「はいはい……なら、いつも通り少し甘めでミルク入れるね」

「うん……」

紅茶を淹れて、テーブルに置いて座ると、自然と対面では無くて、横のスペースにエルザは座ってはもたれ掛かってくる。


「また、随分と甘えん坊になっちゃったね」

「意地悪言わないで」

「ごめんごめん」

「ねぇ、笑わないで聞いてくれる?」

「ん?」

「私、色んな世界を見てみたいの」

「そうだね。それもあって僕と出会ったものね」

「うん。でも、私は【ずっと】色んな世界を見てみたいの」

「ずっとか……」

ずっと……それは王族に縛られては難しいだろう。

そして、定職でもなかなか手に入らないだろう。

うん、1点を除いては。


「私、冒険者になりたい」


そう、外は暗くなって、灯る光は寒くなってきたので暖炉の火と、テーブルの上にプカプカと浮いてる光の魔法だ。

そんな中で、震える声で、でもしっかりとエルザは意思を述べた。


「ねぇ、マコト?」

「なんだい」


「私と一緒に……冒険者になってくれる?」


そして、そうエルザは再度言った。

今度はしっかりとは話せてなかった。

すがるように祈るようにボソボソとした声になってしまったけれども、腕を伸ばしてもたれ掛かった身体は抱きつくようにして、そう言葉にしていた。


「────時間が欲しいかな。でも、エルザの気持ちは分かったよ」

「…………うん」


なるべく不安にさせないようにエルザの頭を撫でては安心させては、そう答えるに留めた。

エルザも早急に返事が欲しいわけでは無いだろう。

けれども、残り1年だ。

王立学校の4年。

気持ちを教えたかったのだろう。

僕がどう判断するかは置いておいてだ。

いや、判断とかは問題じゃないのか。

一緒に居たいんだ。

……いつもとは、いや、いつも小柄に思えていたエルザは今は更に小さく見えた。

とりあえず、まだ暖炉の火でも肌寒くもあるだろう。


フワッと、収納空間からブランケットを取り出してはエルザに掛けてあげる。


スゥー、スゥーとそのままエルザは寝入ってしまったみたいだった。


「考えないとかな」


うん、言葉にしたら感情や思考を整理出来てきた。

エルザの願いは果てしなく遠い。

王族の王女を連れ去るようなものだ。

僕は所詮は身分としては王立学校時に限っては彼女の守護者であり、外聞ではただのギルドランクがブラックの人間だ。

なんの変哲もない存在と言っても良いだろう。

いや、世間的にはブラックランクは一代貴族みたいな扱いだから、凄いのだろうけれども……エルザの王女としての立場から見たら話は別だ。


離れたくないのは自分の方なのかな──。


まったく、どうしようも無いな。

エルザの頭を撫でながら、スヤスヤと眠る彼女を見ながら思う。

そっか、一緒に居たいのか。

なら、動かないとかな。

きっと、目に見える功績とか必要だろう。

色々と障害はあるとは思うけれども、決して今の自分だったら届かない事は無さそうに思えるし、全知全能さんの反応からも大丈夫そうな気がする。

無理なときは無理と経験上、全知全能さんの想いみたいなものが伝わってくるときがあるのだ。

今は……なんだか、応援されているような?

嫉妬しているような感じが……あっ、なんだかそっぽ向かれた気がする。

いや、これ以上の追従は辞めよう。

機嫌を損ねられても困る。

うん、全知全能さんは意志があり……いや、止めよう。


「さてと……」

そっと、起こさないようにエルザを抱き抱えては寝室で寝かしつけつつ、暖炉の火を消したり、食器を片付けては僕も寝に入る。


うん、まずは始業式の挨拶かな……。


こちらに寝返りを打っては寒いのかピトッと抱きついてくるエルザに布団をしっかりと肩まで掛けてあげつつ、僕も眠りに入るのだった。

次回は4年ですね。

王立学校も終わりになります。

エルザの意志は自由……でも、本当はマコトと一緒に居たいだけだったりもするのかな?

マコトだけの思いじゃないような気も……って、野暮ですね。

でも、自由にするためにはそれなりの身分……いえ、功績も必要でしょう。

……いえ、次回はどうなることやら。

願いが叶えば良いけれども。


そして、ここまでお読み下さりありがとうございます。

高評価、ブックマークももし良ければ応援して頂けましたら励みになります。

じっくりとした執筆なので、現実環境次第で更新が遅れてしまいすみません。

亀みたいな速度ですが、これからもよろしくお願い致します。


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