ノルトメ商会─ゴードン再び、登録と印税と手数料。異人達の歴史─プラチナランクの秘密。そして魔力=寿命の話、夜のエルザとの魔力循環。始まりの武道会と終わりの舞踏会─3年への架け橋とギルドでの冒険の始まり
2年になりました。
魔道具での進展。
図書館での進展。
そして2年次のイベント。
日常は目まぐるしくも早く過ぎていきます。
さて……そろそろ必要になってきました。
いや、避けてた訳じゃないんだよ?
本当だよ?
いや、まぁ……余り意識をそちらに向けないようにしていただけで……。
「あのー……マコト殿? マコト殿ー?」
「あぁ……はいはい。聞こえてますよ」
「それで、そろそろ私は思うのですよ。登録申請の必要性が」
「で、ですよねぇー……」
モーリスの決死の……とは言えなくもない、情熱に滾った視線が僕を刺してくる。
そう、1年次の際はのらりくらりという訳じゃないがしっかりと構想を練っては形にしていった様なものだった。
仕組みやそれに伴う効果、または付随していく効果の確認など丁寧に、それは丁寧に費用を計算しつつやっていたのだ。
そして、遂に実用性に富んだ。
実用化しても安全な域まで達していた。
そんな所まで来たのだ、モーリスの次の一手は読めるものだ。
この便利な文明を動かす魔道具を世に出したいという欲求というか使命感だ。
伴って突き付けられて来るのは登録の連名と、印税と手数料の為の改めて、口座などの紐付けだ。
まぁ、ゴードンが良く言っていた。
早く商業化しましょうというやつが、モーリスからも太鼓判でやりましょうというのが遂に来たというだけだ。
いうだけなのだけれども……。
(まったく、まだ気乗りしない……)
いや、良いんだ。
出すのは。
ほら、お金もあればあるだけ困らないし。
これから先、必要になる機会が多いから。
ただ、うーん……周りのやっかみが多くなるのは致し方ないと思う。
「出すべきだと私は思うけれども……」
「うーん? やっぱり、そう思う?」
「うん、こんなに凄いのは文明に改革を入れちゃうと思う」
「だよねー……」
「何か心配な事があるの?」
「いや、単純に人の目がね」
「……今更だと思うけれども」
ですよねぇ。
そうだ、今更だ。
まぁ、あれだ。
なんだかんだ言いつつ、僕はちょっと面倒だと思ってるだけなのだろう。
肩を降ろすと目の前のモーリスは僕がOKを出したのだと気付いたのだろう、嬉しそうに登録や申請などの準備や、ゴードンへと連絡を取り始めていた。
そう、取り始めていたのだ。
前世の所の電話みたいなものだ。
それも生み出していた。
いや、なんか作りたくなっちゃったから仕方ない。
多分、主な原因は図書館の異人の方々の日記や著書が原因だろう。
ヒントは散らばっているし、僕には全知全能さんも居る。
やろうと思えば容易な事だった。
生み出した後が大変だとは、作った後に気付いた祭りだったけれども。
流石に物が物なので、モーリスからゴードンへ、ゴードンからイザベラ様へ、そして、イザベラ様からクリストフ王へ。
とりあえず、王族と私用の分は確保している状態だ。
「マコト殿! 次の聖(日)の曜日は空いておりますか?」
「うん、その日は……」
「大丈夫」
「大丈夫ですね」
「良かったです! ゴードン様も空いてるようで、その日を諸々とする日にしましょう!!」
「……分かりました」
モーリスはご満悦の笑みだ。
エルザも……少しだけ嬉しそうな?
「どうしたの?」
「ううん! お出掛け出来るのが楽しみで!」
「あー……僕から離れないようにね?」
「うん、分かっているわ!」
分かって……はいるんだろうな。
けれども、嬉しさが勝ってるのだろう。
そう言えば、エルザの人見知りも少しずつ改善されてるような気がする。
ある意味、学校という伸び伸び出来る環境とエドワード、ジャン、マーク、ナタリーと学友に恵まれたのも大きいのかな。
とりあえず、脳裏には久しぶりに会うゴードンを想像しつつ、その日まで僕たちは平穏を過ごすことにする。
「マコト殿! エルザ様もどうぞどうそ」
うん、見たことある馬車だ。
……馬も同じなのかな?
賢いのか、僕に気付いては軽く挨拶を首を振ってはしてきた気がする。
「どうも」
「本日はよろしくお願い致します」
御者の人も同じだ。
そうなると、この馬も同じか。
優しく撫でてあげると嬉しそうに反応を返してくれる。
うん、良い馬だ。
「では、参りましょう」
「そうですね、よろしくお願い致します」
モーリスの言葉を皮切りにパカパカと馬は進み始める。
車輪の性能は改善されたように思える。
改良案をゴードンに綴ったら早速取り入れては四苦八苦してると話は前に来ていたけれども、ここまで改良してるとは驚きだ。
「あちらがノルトメ商会になります」
「大きいな……」
「これもマコト殿のお陰と聞いておりますよ」
「僕の?」
「えぇ、素晴らしい知識と柔軟な見解がここまで導いてくれたと」
「うーん?」
いや、うっすらと知識をゴードンに教えては実現可能か擦り合わせては挑戦していた頃はあったけれども、あのルソーレに居た頃の話だろうか?
それがまさか、王都ウェレギュアの貴族街の一等地に建物を構える位になってるとは……と思ったけれども、元々構えていたけれども、更に大きくなったらしかった。
ゴードン……本当に知っていく程に謎な人物だ。
まぁ、悪いやつではないのは確かなのだろうけれども。
「さぁ、いきましょう」
「はい、エルザ手を」
「ありがとう」
モーリスが降りて、僕が降りてはエルザを手を差し伸べて降ろす。
うん、既に待機している従業員がこちらに頭を下げて来ていた。
さて、とりあえずゴードンに会いに行くかな。
「マコト様……! お久し振りで御座います……! 私、私……待ち伸びておりましたよ!! ……エルザ様もお久し振りで御座います」
「あはは……」
「お、お久し振りです……」
僕とエルザは苦笑いだ。
余りにもゴードンの喜びが凄い。
そっか……放置し過ぎていた気がしなくもない……いや、放置し過ぎていた。
なんだか、初めてとはいわないが心にズキッと来るものがあったので、これからはゴードンを気遣わないとかな? と自問自答してしまう。
「それではマコト様! 遂に……、遂に! ご決断してくださったのですね……!!」
「あ、あぁ……うん」
いつものイヒヒ……とか、変な笑い声はどうした?!
明らかにテンションが振りきれて、その身から嬉しさがほとばしっているのだが……モーリスも流石に驚いているだろうと思ってみてみたら、こちらも負けず劣らずで頷いては嬉しさを滲み出していたので、唯一の若干引き気味のエルザだけは僕の仲間かも知れない。
「そうですか……そうですか……。これで遂にマコト様の名声も……ノルトメ商会との繋がりも強く、そして世界に発信出来る。ちゃんとマコト様の刻印を彫るようにしないとですね」
「その通りで御座います、ゴードン様」
「後は製造ラインや販売経路は既に確保しては準備は出来ているので、いつでも取り掛かれる」
「流石です、ゴードン様。後はマコト様と本日中に諸々の手続きだけです」
「あぁ……ずっとこの時を夢見ておりました。もうこんな商売魂が揺り動かされる事は無いと、会長として商会の補佐に回っておりましたが、今は人生で一番魂が震えているのです。えぇ……えぇ、これもマコト様と出会えたあの時の直感がここまで導いて、そしてマコト様がここまで共に歩んで下さったからです」
「はい、ゴードン様の慧眼は流石だと思います」
「「…………」」
2人して別世界にトリップしちゃってるみたいだ。
とりあえず、従業員の方が気を遣ってか、飲み物を持ってきてくれていたので、口をつけてみると、これがまた美味しい紅茶だった。
本当に洗練された感じというか、前の世界の時と遜色無いとは言い切るにはもう一歩だけれども、それでも確かにこの世界の水準からすると抜きん出てる美味しさだ。
「美味しいです」とソッと従業員の方にお礼を言うと、とても嬉しそうに反応を返してくれるので、お礼を言うこちら側も嬉しくなってしまう。
「さて、マコト様! つきましては……諸々の対応を本日中にしたく大丈夫で御座いましょうか?」
「うん、大丈夫だよ。その為に来たんだから、案内よろしく頼むよ?」
「えぇ、えぇ! 任されました! では、早速で御座いますがこちらの書類の確認を」
「えっと、これは?」
「こちらがこれから開発または新商品として販売されていく品々のマコト様への利権の書類一式に、こちらがこれから向かいます銀行及び、魔道具協会へと提出する口座登録や職人登録の書類一式になります。魔道具協会の方への書類にはマコト様への今後の利権に関しての書類も取り揃えております」
「これは……何から何まで……少し確認をするから」
「はい、何か分からない事が御座いましたら、如何様にもご質問を」
商談の時のゴードンは本当に様になるな……。
いや、そもそも商人か。
さてと……とりあえず、書類をしっかり1枚1枚確認していくけれども、自分でも精査しつつ、全知全能さんにも見て貰う。
重要な所や、僕が見落としてると思われる所は全知全能さんがピックアップしては伝えて来てくれる。
ふむ、それにしてもこれは僕に利が大きすぎでは?
「ゴードン?」
「はい、何で御座いましょうか?」
「僕への利幅が大きくない?」
「そんなことはありません。主な提供者はマコト様ですから」
「そう……」
「それにマコト様。マコト様はこれから……いえ、いつかは大量に金銭が必要になる日が来るはず。資産を運用しては増やしておくことは必須になると思いますぞ」
「……はぁ、分かったよ」
「えぇ……なので、これで良いのです。我が商会を上手く使ってください」
ゴードン……そんなに過剰な期待された目を向けられても困るじゃないか。
不備は無い。
むしろ、僕への譲歩が大きすぎる位だ。
魔道具協会へもゴードンとモーリスの連名で僕への推薦がなされている。
まったく……隙もあったものじゃない。
「大丈夫そうなの?」
「ん? うん、大丈夫というよりは……むしろ、僕へ譲歩し過ぎというか」
「あはは……でも、これで良くマコトが作ってくれてるご飯とか食べれるようになるということ?」
「うん、そうなるね」
「……! そうなると皆、喜びそうね」
エルザは嬉しそうに微笑んでいる。
そうだなぁ……皆いつ販売されるか躍起になって聞いて来てたからなぁ。
それに流石に他の生徒にも噂としては伝わって、皆やきもきしてるのか販売がいつされるのか気になってたみたいだから。
まぁ、あれだ。
やっぱり良くも悪くも時期だったのだろう。
「では、マコト様。参りましょう……!」
ゴードンの一声で従業員達もバタバタと慌ただしく出発の準備を始める。
一糸乱れぬ事の無い従業員達の動きはゴードンの影響力の凄さと教育の深さが自然と垣間見えてしまう。
「凄いな……」
「えぇ……」
エルザも少しだけ驚いた表情で固まってしまうくらいらしい。
「ゴードン様、準備が整いました」
「ありがとう。さて……マコト様、エルザ様行きましょう」
あっ、ちゃんとエルザの存在も気付けたのね。
やはり、さっきまでは高揚が凄かったのね。
エルザも少しだけホッとした顔をしている。
そして、モーリスもしっかりと着いて来てはノルトメ商会の馬車でまずは銀行まで向かう。
「いらっしゃいませ。いつも、ありがとうございます」
「あぁ……、今日は私ではなく、この方を」
「……? 分かりました、御案内致します」
「よろしくお願い致します」
まぁ、そりゃ疑問に思うよな。
一等地の貴族街の銀行にこんな少年がノルトメ商会の会長と共に来るのだから、逆の立場だったら僕自身も疑問に思うだろう。
けれども、やはりプロなのだろう。
一瞬だけ疑問に満ちた顔を見せたが直ぐに切り替えては僕を案内してくれる。
「お客様は銀行の利用は初めてで大丈夫でしょうか?」
「はい」
「重ねて、確認なのですが冒険者ギルド等の特殊な方面での口座はお持ちでしょうか?」
「冒険者ギルドのでしたら……」
「こちらでお確かめ致しますので、提出頂けましたら助かります」
「こちらになります」
「ありがとうございます。しばらくお待ち下さい、只今照会致しますので……」
そう言って、先ほどの担当の方は席を立っては窓口裏のデスクへと戻っていく。
「そういえば……ちゃんと聞いたことは無かったけれども、マコトの資産ってどのくらいなの? 冒険者でもマコトって、凄いというのはマークからも聞いてるけれども……」
「んー? どのくらいだったかな? 途中から数えるのもしなくなったからなぁ……」
そうだ、最初は増えていく資産にホクホクとしていたのは覚えているけれども、途中からは数えるのも辞めていたし、何よりもダンジョンの攻略とかゴードンとの試作とかに奔走していて、それどころじゃ無くなっていたからなぁ。
「マ、マコト様……申し訳御座いません」
「どうしましたか?」
そんなエルザと話していると先ほど担当していた銀行員が慌てて戻ってくる。
「すみません、私どもの方では確認が不安で……そのお確かめ頂きたく、こちらの額でお間違え無いでしょうか?」
銀行員が差し出してきた数字を確かめる。
同じくやっぱり気になってしまうのかエルザがウズウズしていたのと、ゴードンとモーリスもソワソワしていたので、気にすることも無いので見ても良いとジェスチャーを取ると、そそくさと覗きに来た。
「1……10……100……白金貨何枚分……?!」
「ほぅ……流石マコト様……」
「マコト殿……流石……」
あぁ……そっか、金貨1枚は10万円相当で白金貨は1000万円分……白金貨単位になってから、数えるのを辞めたのだった。
「申し訳御座いません。この金額の方になりますと、私共も慎重になってしまい」
「いえ、大丈夫ですよ。冒険者ギルドの方との差異がなければ問題ありませんので」
「は、はぁ……」
凄く渋そうな表情になってるけれども、いや……渋いんじゃないな。
急に緊張した表情になってるのか。
まぁ、そうだよね。
窓口の後ろ側へ視線を向けてくるとお偉いさんだろう。
こちらを窺うように覗いているのが分かる。
「それで、書類等の不備は大丈夫かね?」
「あっ、はい! 問題ありません。ですので、こちら側が口座のキーになりますので、お失くしになりませんよう留意して下さいませ」
「ありがとうございます」
問題などあろう事無く、滞りなく審査も通り、無事に口座を開設しては自分用の認証キーも手に入れる事が出来た。
これで銀行の方での用事は終わりかな?
「さ、マコト様急ぎますよ。本日しかお時間が無いのですから」
「あー……うん、急ごうか」
いや、ゴードンの認識は少しだけ違う。
本日しかお時間が無いといったがそんなことは無い。
時間は作ろうとしたらあるのだ。
ただ、絶賛講義にサークルに図書館での本の閲覧に外せない事が多いだけだ。
どれか削れば……可能性はあるけれども、まぁ……うん、削る気が僕に無いだけだ。
本の閲覧に関してはなかなか興味深い事が多いのだ。
それにこれからは舞踏会の方は良いとして武道会の方だ、エルザを鍛えないといけない。
……やっぱり、時間は無いのかも知れない。
そんな風に考えていると直ぐに目的の場所……魔道具協会へと辿り着いた。
「マコト殿、ここが魔道具協会です」
「ここが……」
「ここからは私、モーリスが案内致します」
「よろしくお願い致します」
頭を少しだけ下げるとモーリスは嬉しそうに案内を始める。
魔道具協会の中は……壮観なのだろう、見る人によってだろうが。
中は魔道具の展示や説明、後はそれぞれの窓口の案内表など、人も物も溢れていた。
「意外と人が多いですね」
「はい、研究施設としても兼ね合いが有りますから、常日頃からここは人や物で溢れかえっておりますよ」
「ここは違うだろ!」「いや、こうだ!」「待て、それなら先日話した回路の話が……」……おうおう、通り道ですら魔道具の話で持ちきりだ。
まぁ、ここはそういう尖ったプロフェッショナルな人達が多いのだろう。
かくいうモーリス自身も興奮を抑えきれないようで周囲の会話を拾ってはソワソワしつつ案内してくれている。
「こちらです……! 少々、お待ちを……窓口の者は居るかねー」
「あー……はいはい、私が請け負いま……モーリスさんじゃないですか! お久し振りですね、新しい魔道具でも出来ましたか?」
「いや、今日は私ではなく彼の魔道具の製作者としての登録とその印税や手数料に関してを話したくて来たんだ」
「へぇ……彼の……ですか?」
「むっ……何を疑う目をしておる?」
「いや、だって……彼はまだ少年……本当なのですか?」
「……うむ」
「……分かりました。少しだけお時間を上の者へ話して今すぐ対応に入ります」
最初は冗談だと受け取っていた受付の人が、モーリスの様相で冗談ではないと気付いてからの行動は早かった。
直ぐに魔道具協会の上層部の1人が来ては対応に当たってくれた。
「これは……モーリスさんの魔道具では無いのですか?」
「彼の発案だ」
「……信じられない、いや……確かにそうか既存の枠組みに囚われ過ぎていたか……?」
僕が提案したのは簡単な日常に使える魔道具をコンセプトにした魔道具だ。
水と風魔法を応用しての洗濯機や乾燥機、湯沸かし器に近いもの。
あの世界ではあって、ここには無い物。
それを魔法を用いては生み出したものだ。
この世界の魔道具は単一的な物が溢れているのだ。
いや、複数を重ねたりとかしようという試みはあったのかも知れないけれども諦めてしまったのだろう。
魔道具として機能するために魔法を魔石に刻んで、魔力を注ぐだけで発生させるのも刻み方が複数魔法になるだけで難解になるのだ。
まぁ、そこは僕は全知全能さんが居る訳で。
それに先達者……もとい異人さんが書き留めた大量の書本も閲覧していた。
なるべく、彼らの希望したものを生み出したいと製作意欲が増して頑張りすぎたのも否めないが結果しては今に繋がった感じだ。
「他には……あるのですか?」
「今は……とりあえず、これでお願い致します」
「……あるのですね。分かりました、とりあえず今回はこれを受けては承認が出るように致します」
自分の返事にまだまだあるのを確信したのだろう。
新たに来た偉い担当さんは真剣に頷いては書類に諸々と必要な事を書き込んでいく。
「それで、マコト様の印税や手数料の件ですが……こちらでお間違え無いでしょうか? 後は口座の方も重ねて、ご確認ください」
「……大丈夫ですね」
製作の方はモーリスと連名にしようと言ったところ、見事に丸め込まれては僕自身のみの製作者として魔道具登録することになってしまった。
なので、諸々に関わる印税や手数料は凄い事になっている。
どんどんと使われたり、売り出されるだけで入ってくる。
多分、僕の口座はこれから異常な数値を叩き出すだろう事だけは約束された瞬間だろう。
「本日はお越し頂きありがとうございました。……それで、ですが……」
「……?」
「いや、ダメだぞ。マコト殿はこれから忙しいのじゃ。それに忘れておらんだろう? マコト殿はエルザ様の守護者なのだから、それを押し留める意味が……」
「ぐぬぬ……」
「なんなの……?」
「マコト様、エルザ様……今のうちにモーリスを置いていきますよ。ここは魔道具職人や研究者の巣窟……マコト様みたいな天才は甘い甘い密なのですよ。一度囚われたら出れないかも知れませんぞ……イヒヒ」
イヒヒ……って、久しぶりに聞いたな。
いや、単純に笑い声なのか?
とりあえず、背中がゾクッとしたのでエルザの手を引きつつもモーリスを置いてはゴードンと一緒に魔道具協会から出ることに成功する。
「モーリスさんは……」
「大丈夫でしょう。それにこうなることを分かって彼は先に出たのですから……イヒヒ」
「ゴードン……調子戻ってきたんだな」
「さぁ、なんの事でしょう」
「まったく……やっと、普通に戻ったと安心したところだったのに」
「イヒヒ……さて、本日は本当にありがとう御座いました。そして、これも頂き……」
「失くすなよ?」
「えぇ、絶対に失くしませぬ」
ゴードンに渡したのは長距離でも話せる……まぁ、通話の魔道具だ。
携帯と遜色は……あるな。
イヤリングだったり、ゴードンみたいに指輪みたいな物だったり。
大切なのは刻印された魔石であって、それに合わせて側を作れば良い。
先日、打診していたゴードンへの通話魔道具の許可が国王のクリストフさんから出たので晴れて渡すことが可能になった。
まぁ、これを待っていたのもある。
なので、これによってお互いに確認し合いながら、世界へと商品を流せるようになるという寸法だ。
ゴードンの目は燃えている。
うん、商売人の目だ。
これから、世界は加速度的に文化が発展していくだろう。
いや、それは緩やかにだけれど確実に世に浸透し始めたら直ぐだ。
「では、マコト様はこちらの馬車にエルザ様も学校へお送り致しましょう」
「ありがとうございます」
「ゴードンは?」
「イヒヒ……私はモーリスと共に帰ります故に」
あぁ……これはこれからの商売方法の話だろうな。
気を利かせてくれたのだろう。
エルザもお疲れの様子だ。
「ありがとう、ゴードン。また連絡を待ってるよ」
「えぇ、マコト様。本当にありがとうございます。エルザ様もわざわざ、本当にありがとう御座いました」
「いえ、私が居ないとマコトも動けないから」
「エルザ、ありがとう」
「ううん」
「さて、魔道具協会の者が来る前にどうぞ」
「ありがとう、ゴードン! また!」
エルザと一緒に馬車に乗り込んでは王立学校へと戻る。
ゴードンの嬉しそうな顔を残してその日は終え……る事は無かった。
早速、寮に帰っての夜に通話が来ては受けて話して見るとこれからの商売プランの話だった。
モーリスもまだ近くに居たようなので、一緒にこれからの販売計画を出してはその日はやっと終えるのだった。
「それにしても……」
それにしてもだ。
つい、言葉を溢してしまったが問題は無いだろう。
ここは禁書エリアで周囲には誰も居ない。
封じられた書物もあったりでなかなか刺激的なエリアだけれども、れっきとした図書館内のエリアだ。
まぁ、誰も居ないのだけれどもね。
「だいぶ、ここも読み終わったな……」
全知全能さんがピックアップしてくれた書物は後少しな感じだ。
それは異人関連の話はここで終わりというラインでもある。
「幾つか分かったことがあるな……」
それは異人達の世界へと与えた歴史だ。
歴史は人が作り出すものだけれども、その影響力の中で異人は時に大きな偉業を成している。
この帝国に関してもそうだ。
王国の王政、神国の宗教、それに組を成さない者達を先導しては国を起こした人を一番支えた存在が異人だったりする。
主役ではなく、脇役として一番大きな影響を与えている機会が多い。
食事関連もそうだ。
その影には異人が存在している。
そうなると、今の僕のポジションも似た感じがする。
そして、異人は時代によって何名も居るといった感じはなさそうだ。
基本的には1人? 居るのみみたいな感じの記載が目立つ。
いや、時には2人の時もあるがそれは片方が老衰している時とかみたいだ。
何百年に異人は存在を確認……と話してはいたが、紐解いていくと、そんなことは無い。
まるで代替わりの如く、現れている。
目的は……、いや今はいいか。
「ただ、気になる話だな……」
1つはギルドに所属しているとその存在が居るか真しやかに気になっていた存在……プラチナランクに関する話が書いてあった。
ただ、そこにはプラチナランクとはブラックランクなどで貴族などの介入から解放するために王族との密約で存在する。
王族専用の王族からのみの依頼で動く存在……異人専用のランクと記載が成されている。
それは初代の王族とそれを支えた異人の存在の成り立ちと、彼らがその枠組みを作った事が発端から始まっているらしい。
「なるほどな、だからプラチナランクが居ない訳だ」
意外なところで、正解を見つけてしまったらしい。
後は気になるのは……異人の存在はその誰しもステータスが高いのと特殊な能力が備わっていたらしい。
そして、ステータスの高さで同じ異人の方の記述で気になったのもある。
「魔力循環か……そして、魔力に応じての寿命……」
魔力循環に関しては今も尚、常にしている事だ。
もうステータスとしての魔力の表示はerrorになってしまってるけれども、魔力の高まりは常に感じるのだ。
自分の中で魔力を燃やしては固めては強く濃く、そして、また燃焼させては繰り返している。
そして、魔力に応じての寿命……魔力量が多い人は相対的に長寿の傾向があるという事だ。
これは……分かる。
一般的なブラックランクは500~1000付近、そしてプラチナは歴史上で1000付近でと記載と情報があるけれども。
まぁ、プラチナランクはもう異人枠として置いておこう。
現実的なブラックランクで500付近の人は長寿でそして、年齢に合わず若いという感じだ。
長寿というのも普通の人よりは長く生きているという感じだ。
種族的な寿命からの解放はされてる訳ではない。
まぁ、僕の場合は……寿命という概念がまずどうなっているかが問題なのだろうけれども、それも今は置いておこう。
でも、魔力循環か……。
そう思うと、改めてちゃんと魔力循環の知識があるのは僕から教わったエルザ位なのか?
いや、魔力を教える時点で魔核が現れるであろう位置の認識や魔力を練るのにお互いに触れて魔力を通したりするから……。
あぁ……これはあれだ。
知ってる人は知っていて多いけれども、余り面と向かって話す内容ではない事情ってやつかも知れない。
むしろ、痴情に近いかも知れない。
「でも、魔力循環か……。武道会もあるし、エルザには必要かな?」
そう思い至ったら吉日? 早速と夜ご飯を終えて、お互いにお風呂も終え……ソファで寛いでいる中で自然と魔力循環に触れてみた。
「えっ……」
「えっ?」
あれ? 急にエルザが顔を真っ赤にして俯いてしまったぞ。
あれ? 何かミスったか?
……あれー?
「えっと、あー……嫌だったかな?」
「あっ、嫌じゃ……ない」
「そ、そう」
「……」
なんだ、この空気は急になんだか寛いでいた感じから変わっちゃったけれども。
あれ、なんか……自分、間違えたか?
「えっと……今日からやる……の?」
「とりあえず、夜は魔力循環をしつつ。夕方はサークルは魔道具の製作はモーリスさんが落ち着くまではお休みで、武道会までは鍛練に当てようかな? って、思っているよ」
「武道会まで……」
「う、うん」
「わ、私……! 準備してくるから……!!」
バタッと立ち上がってはエルザは目の前の紅茶をゴクゴクと一気に飲み干しては寝室へと向かっていった。
「あ、あれ……」
あれぇー?!
どういうこと?! ここで寛ぎながらやろうと思ったんだけれどもぉー?!
寝室……?! 寝ながら……やるのか、まぁ……リラックスしながらは大切だけれど……う、うーむ。
とりあえず、エルザの飲み干したカップや、自分のカップやティーポットを片付けては僕も寝室へと向かう。
……エルザの部屋のベッドは……本当に使う機会がこの先あるのか、ずっと本来の主の眠りを待つ存在になってしまっている。
ガチャッと扉を開けたら、案の定、僕の部屋でエルザは横になっていた。
「エルザ……? 始めるよ?」
「は、はい……!! くふぁ……ぅぅ……」
エルザの色っぽい声が流れる。
無心だ……無心。
マコト……無心。
こうならないためにソファーにしようと思ったのに。
今もエルザの色っぽい声が響いてる。
無心だ。
無心。
とりあえず、エルザの魔力が良い感じに解しては纏めて強くして、全身に行き渡らせてを繰り返す。
行き渡らせる度に歓喜の声をあげてるけれども、意識を外す。
「はぁ……はぁ……はぁっ」
「…………」
このくらいかな。
うん、エルザの魔力も良い感じに暖まったのを感じたので止めると、直ぐにエルザの息づかいが聞こえては寝息に変わっていくのが分かる。
まぁ、結構疲れるからなぁ……。
ずっと運動をして血管の血を巡らせているようなものだ。
起きて水を飲もうと思ったけれども、見事に抱き枕扱いにされてしまって動けなくなる。
「はぁ……」僕は諦めては眠りに就くことにする。
果たして、僕の心が耐えきれるのだろうかと不安になるのだった。
「はぁ……!! はっ! はっ!!」
「動きは最小限に……大きい程隙が生まれる……!」
「は、はい!」
「そこはしなやかに伸ばして……! 柔らかさを生かして突くように強く……!」
「はぁぁぁ……!!」
寮の庭を使っての剣術の鍛練だ。
後は無属性魔法を用いての身体の捌き方も同時進行に行っていく。
この後の夜は魔力循環だ。
元々、魔法を使うことはイメージ部分もあるけれども。
一緒に生活している中でエルザは要点を掴んでいる。
後は自己の中で創造していく段階だと思っている。
そして、エルザの剣術はやはり良い。
基礎がしっかりと教わったのだろう。
基本を忠実に押さえている。
けれども、それだけだ。
そこからもう一歩の為に今は色んなイレギュラーパターンを組み入れては突発的な行動を鍛えている。
「このくらいで終わろうか」
「あ、ありがとう……ございました」
「少し待ってて、タオルと……飲み物持ってくるから」
「う、うん……」
パタッと庭に設置されてる椅子に倒れ込むとエルザはピクリと動かなくなる。
まぁ、限界まで鍛えてたからなぁ……。
とりあえず、ゴードンと作成した、なんちゃってスポーツドリンクとタオルを取り出しては用意して持っていくと、美味しそうに飲んでは汗をエルザは拭っていく。
「ねぇ、私……勝てるかな?」
「んー? どうだろう。皆、強いからねぇ」
「……そうだよね」
「まぁ、魔法有りだったら勝ててたと思うよ」
「本当?」
「うんうん」
それは本当だ。
魔法有りだったらエルザは本領発揮というべきだろうか、無双してる未来しか見えない。
けれども、武道会は武のみを見ていてそれは魔法を抜きにした戦闘を推し測る場所になっている。
まぁ、その分使える武具は多岐に渡るのだけれども、エルザには単純に扱いやすい剣を教えている。
エルザ自身もそれが扱いやすいようだから。
「さて、ご飯にして後は……」
「…………」
「あはは……」
後は魔力循環なのだけれども、毎回顔を染めて見てくるから何とも言えない空気になる。
まぁ、止めるつもりは無いのだけれども。
そんな日々を過ごしていたらあっという間に2年の終わりの時期になっては武道会と……舞踏会がやってきた。
「……やるなぁ」
「マークは強いからな……腕っぷしだけは」
「確かにマークは強いからな……頭はアレだけれども」
「…………」
いや、エドワードはまだしも、ジャンの毒味のある言葉は……。
まぁ、確かにジャンの言葉も一理あるのは試合を見ていて分かる。
ナタリーはどっちを応援してるのか分からないけれども、ハラハラとした様子で観戦している。
そう、見事に戦っているのは勝ち抜いたエルザとマークだ。
マークの方が腕っぷしはあるけれども、まぁ、それだけとも言える。
エルザの方はフェイントを入れたり、足裁きでマークを翻弄させては乱れたところを突いては的確に追い詰めている。
お互いに剣を使っているが、力押しのマークと、技術で攻めるエルザって所だろうか。
けれども、そろそろ決着は着きそうだ。
「ガハッ」
「そこッ……!」
最後に空いた隙間を縫うように鳩尾に剣の一撃を刺し込んだのはエルザだった。
マークは驚いた表情を見せつつ倒れていく。
「ッ…………!」
「「「おおおおーーーー!!」」」
パチパチと拍手も贈られる。
僕も拍手をエルザへと贈る。
普段は顔見知りで控えめなエルザだが、余程嬉しかったのか剣を掲げては笑顔を見せている。
それが何故か僕は堪らなく嬉しい。
「あー……負けた!」
「マーク、ドンマイだな!」
「なんで、嬉しそうなんだよジャン」
「いーや、でも、大健闘だと思うよ」
「あ、あぁ……ありがとう」
「いや、でもエルザの方も凄かったな」
「ありがとう……エドワード」
「マコトに指南して貰ったのだろう?」
「うん」
「やっぱりマコトは凄いな」
「いや、僕は基礎から発展を軽く教えただけで後はエルザの能力と努力の結晶だよ」
「マーク……良かったですよ」
「……! あ、あぁ!! ありがとう、ナタリー!」
「で、では、私はここで……!」
ナタリーはマークを褒めるや否や恥ずかしそうに去っていった。
エドワードとジャンも今回の大会には出ていたけれども3戦目で敗退だった。
ナタリーは家からの都合もあり辞退していた。
まぁ、そういう辞退する貴族も多かったのも印象的だった。
「マコト……見て……!」
「おー……綺麗だね」
「うん……!」
今も高揚は続いているのかエルザがニコニコと優勝のメダルを見せて来てくれた。
本当に嬉しそうだ。
今日は何か特別なご飯にでもしようかな? ニコニコと周りを気にせずに嬉しそうにしているエルザは本当に貴重だ。
それに年相応な喜び方で見ている自分も嬉しくなる。
「今日は特別にエルザの好きなの作るかな」
「本当?!」
「あぁ、なんでもいいよ」
「それなら……その、前に食べたケーキを食べたい……かな」
「あれか……うん、分かったよ」
「…………!!」
ケーキ……そう、遂に禁断のスイーツまでノルトメ商会改め、ゴードンと僕は手に染めてしまった。
まだ世間には公表はしていないが、生クリームがもう少し浸透したら出そうと計画している。
生クリームだけでも衝撃を与えているのだ。
ゆっくり、ゆっくりとだ。
とはいっても、僕がこっそりと食べる分は別だ。
一緒に過ごしているエルザも例外では無い。
そして、今日はご褒美にケーキだと決定するのだった。
そして、翌日の夕方────。
皆ドレスアップしては学校内の会場に揃っていた。
「「ぉぉ……」」
と、声が出たのは最後に僕たちが会場に姿を現してはエルザの美しさに目を惹き付けられたからだろう。
まぁ、うん。
何名かは僕への黄色い声も聞こえたけれども、エルザがビクッと反応しては僕の手を強く握って来たので、特に反応を返すことはなく自然と通り過ごす事にする。
「それでは皆、揃いましたね? 改めて、昨日の武道会では皆の成長を垣間見えて大変嬉しく思いました。そして、ここまで無事に来れた事も嬉しく思います。次学年からはギルドへの活動が皆に許可されていきます。冒険は楽しさと危険を孕ませていますが、その分大きな成長を、身体的にと精神的にももたらしていくと思います。パーティーを組む者も居るでしょう。これからも皆の成長を楽しみにしていますね。さて、話が長くなるといけませんね。では、本日はお楽しみください。乾杯」
「「「乾杯ッ!」」」
2学年の生徒が集まっての舞踏会が始まった。
舞踏会というが、これは祝いの場に近いようだ。
「やぁ、マコトくん」
「学長……」
「パスカルで構わないよ。そして、エルザ様も優勝おめでとうございます」
「いえ……」
「えっと、パスカルさん……何か用事が?」
「用事が無いと声をかけたらいけないのかな?」
「あー……いえ、そういう訳では……」
「ふふふ、ごめんね。ついつい、からかいたくなるのさ、可愛いからね」
「はぁ……」
まぁ、パスカルは耳から見て分かるがエルフだ。
寿命から見ても、僕たちは年端もいかない幼子みたいなものなのかも知れない。
「いや、ごめんね。ちゃんとお礼を伝えたくてね。あの子を助けてくれたこと本当にありがとう。学校は楽しいかい?」
「あれは成り行きだったので……それに知っているものなのですね。学校は……はい、色々と学ばせて貰っています」
「そうだね、エルフにはエルフのネットワークがあるからね。あの子も本当は学校に来たいと言っていたようだけれども、里の決まりで出れなくてね。まぁ、学校というよりは君を探そうとしていたようだけれども、ね」
「……マコト? あの子って、誰?」
「え? え……っと、前に成り行きで助けた子だよ」
「ふぅーん……」
あれ? なんだろう……。
エルザの目が細くなって少し怖くなったような? パスカルを見るとサッと目を背けるし……あれ? あなたが始めた物語……いや、話題だよ?
「さ、さて。私はもう少し……他を見なければ……マコトくん、それでは、また」
「あ……」
あれは逃げたな……。
「おーい、マコト!」
「エルザも、どうも」
「おい……俺と……それにナタリーを置いていくなっ……て、よっ!」
「……こんばんは」
うーん、今日のナタリーは余所行き度がちょっと高いかな?
言葉の感じが堅い感じだ。
本当に余所行きパターンの時は慣れないような横暴な感じになるから分かりやすい。
まぁ、本人にそれを突っ込んで聞くような野暮なことはしていないけれども、家の方針なのだろうと目処は簡単に付いている。
「皆、こんばんは」
「……こんばんは」
「それで、どうしたの?」
「いや、どうしたのじゃないだろ。ギルドだよ、ギルド!」
「いや、ジャンそれじゃ分からないだろ」
「珍しいなマークが突っ込み側なんて……」
「……なっ! エドワード? 俺をなんだと思って……」
「「脳筋」」
「お、お前ら……」
「あっ……私はその……ギルドはダメと言われてて……マークに着いてきただけで……」
「ギルドですか……」
「ん? エルザ……はギルドで冒険したいの?」
「マコトが良ければですが……」
「まぁ、僕は構わないけれども」
「本当ですか!!」
「そっか、ナタリーは難しいのか」
「ごめんなさい、マーク……」
「いや! いいんだ! 大丈夫だ!」
「それで、マコト? エルザも一緒になら、俺たちも組みたくて……」
「ああ、俺もジャンと同じく、マークもそうで、一緒に組めたらと」
「……まぁ、人数多い方が色んな動き方やカバーも効くから問題無いと思うよ。それに友人の頼みなら極力、僕は聞きたいからね」
「「おお!」」
「でも、エルザ次第かな?」
「私も構いません。ご一緒だと嬉しいです」
「なら」「決定……」「「だな!」」
エドワードとジャンが声を合わせて嬉しそうに言う。
エルザもチラッと横目で見てみたら嬉しそうだ。
「マークは……あっ」
「どうした? ジャン……あっ」
……?
2人の視線を辿ると、何がどうなってそうなったのか、マークがナタリーとダンスの誘いからOKを貰っては会場の真ん中側へ移動して踊る所だった。
「マーク……やる時やるんだよなぁ」
「そうだな、ジャン。俺たちも春が来ないかな」
「いや、エドワード……家に行けば見合い話多いだろ?」
「……言わないでくれ、それは考えたく無いんだ」
「「はぁ……」」
まぁ、うん。
この2人はあれだ。
前に話を軽く聞いたけれども、自分で惚れた相手が良いと言っていたのを思い出す。
惚れた相手……ね。
チラッと横目でエルザを見てみると見惚れたようにマークとナタリーの躍りを見ている。
「……あっ」
「……一緒に踊りませんか? エルザ?」
「……! お、お願い致します……」
「「あっ……俺たちだけが残り者か……」」
エルザと目があって、求めるような視線に自然と言葉を紡いでいた。
残った2人から未練がましい視線を向けられるが、大丈夫……2人の後ろに控える淑女達が僕からは見えていた。
でも、あれを捌ききるのかな……グッドラック……2人とも。
「エルザ……そう言えば」
「……?」
「僕は躍りが苦手というか、余り経験が無くて」
「大丈夫……私が合わせますから」
「助かるよ、よろしくね」
「はい……!」
躍りは講義の中で多少かじった程度だ。
けれども、実際に踊り始めたらエルザが合わせてくれたり、時にリードしてくれては面白いようにステップが踏めている。
「ふふふ……」
「……?」
「ごめんなさい、つい嬉しくて」
「嬉しい?」
「うん、こんな未来を想像出来てなかったから。私……今とても幸せです」
「そっか、ならこれからはもっと幸せにしないとだね」
「…………!!」
エルザの顔が一気に赤くなる。
けれども、分かるのは僕くらいかも知れない。
踊るホールの部分は少し暗めで光魔法で光を演出しては幻想的に仕立てている。
きっと、周囲には気付かれにくいはずだ。
僕もそんなエルザを見ながら、幸せだと感じる事に気付く。
そうだ。
最初は異人に関して調べるのが目的だったけれども、それも今は図書館での必要なものは調べは終わりの目処を迎えた所だ。
その時以上に昨日のエルザの成長が嬉しく感じたのを今、思い出した。
多分、共に生活するなかでエルザが大切な存在へと、気付かないうちに大きくなっていたのだろう。
それにエドワード、ジャン、マーク、ナタリー。
彼らも共に生活を送るなかで大切になっているのを改めて感じる。
魔道具サークルの面々、それにゴードン。
冒険者の街ルソーレを離れて、1人になったと思っていた時もあったとは思う。
でも、気付かないうちに僕は本当にご縁に恵まれては今の環境があるらしい。
「ふふ……あはは」
「どうしたの?!」
「ううん、僕も幸せだよ、エルザ。君のお陰だよ、本当にありがとう。僕を守護者に、そして、こうやって一緒に居てくれて、これからもよろしくお願いするよ」
「…………は、はい! ……キャッ」
あぁ、本当に幸せだ。
多少は良いだろう。
光魔法を使って、僕たちの周囲をもう少しだけ照らしてはエルザの顔をしっかり見つつ、大きく躍りをエルザを引き寄せてはエスコートする。
あぁ、今日は良い日だ。
僕とエルザはクルクルと踊る。
途中からエルザも吹っ切れたのか嬉しそうに微笑んでは躍りに興じてくれる。
そうして僕……僕たちの2年は終わりを迎えていく。
そして、3年が始まる気配が訪れるのだった。
3年からは冒険者ギルドへ!
やっぱり体験は大切ですよね!
……あれ?
そう言えば、ウェレギュアのギルドってマコトは……。
まぁ、それは次の話で、ですよね?
魔道具は加速度的に文明開化というくらいに開かれて行ってます。
まずは貴族に、そして品質を安定化させては平民に。
食べ物も色んな種類が大幅に増えていっています。
ノルトメ商会の影響力と、商品の価値が噛み合ってはそれも加速度的に。
ゴードンの楽しみはマコトと話すこと。
そして、楽しみを解消する度に確かにしっかりと文明の進化が刻まれて行くという。
異人に関しての書本はほぼ終えたようです。
過去を詮索するとボンヤリと霞がかかっては霧散してしまう為に、あえて考えないようにしている為か、マコトは転生時の事を考えるのを忌避してる節があるような……無いような。
さて、本当にバタバタとしており、カメの如くな遅さの更新で……あはは。
ブックマーク、高評価、本当に嬉しいです。
そして、偶然でも、リピートでも読んでくださる皆様もありがとうございます。
とても嬉しいです。
それではまた次の話で。