【王立学校1年目】魔道具サークル、図書館。そして、基礎的な講義に実技。エルザのランチサロン─新たな出会いと予感。そして2年目への御披露目、武道会と舞踏会へ向けて。
王立学校の物語が始まります。
どうか、良い学校生活が送れますように。
「朝だ……朝が来た……うん、朝だ……」
「うぅーん……なぁにぃ……」
……いや、僕の方こそ何? って言いたいのよ?
いや、そりゃぁ……幸福と言われたら幸福なのだけれども。
お父様? お母様? ここでいうところの王様? 王妃様?
いや……うん、想像したら背中がサァーと冷や汗が流れたような気がしたけれども。
うん、とりあえずうら若き僕たちだからね。
清廉潔白が大切だと思うのですよ。
はい、大切で大事だと思うのですよ。
そう、冷静になろうとしてるのだけれども。
隣で……いや、抱き締められたままの僕は天井を見つつ、心を平静に保とうと思考を巡らすのだけれども、悲しきかな……隣の温もりを感じる度に思考が散らされていくのが分かる。
「うん、そう素敵な朝が……」
「──スゥ……」
エルザさんは思いの外、朝は弱いらしい。
さて、どうしたものか。
本日から始業なのだ。
そう、学校が本格的に始まるのだ。
クラスは幾つかに分かれているが、良く見なくともちゃんと成績や素質でクラスはしっかりと分かれていた。
そこに貴族や平民、王族の格差は無い。
無いけれども、実態はどうなのかはこれから分かるだろう。
「……分かるよね?」
「……スゥ」
うーん、これ遅刻になるのは不味いよな。
不味いよねぇ……。
仕方ないか。
モゾモゾ──。
もにゅ……──。
「エルザー? 朝だよー? ほら、起きないとだよー?」
「うぅーん? うーん……うん……」
なんか、柔らかいどこかに触れた気がしたが、気にしたらダメだ。
うん、今はそうじゃない。
何がそうじゃないかも、考えたらダメだ。
「ほら、起きないと……ほら」
「う、うーん……後、もう少し……もう少し……」
コロンと寝転がってくれたので、やっとこさ開放される。
うん、起きよう。
とりあえず、朝食を用意して……自分の身支度も軽く終えたら起こそうかな?
布団が目くれすぎて、寒い空気が入らないようにソッと抜けては台所へと向かう。
簡単な朝食だ。
パンを柔らかいものをそっと、外側をカリッと焼いては、ベーコンとタマゴをフライパンで熱していく。
軽く新鮮な野菜をマジックバッグから取り出してはもみ洗いしては千切っては盛り付けていく。
ドレッシングは自分のオリジナルで作っていく。
うん、柔らかいパンに関してはゴードンから色々と融通して貰って入手出来た……と言うよりも、一緒に検討しては試行錯誤の末に完成させたとも言えた。
柔らかいパンを売りにしていたお店も既に有ったけれども、ゴードンと生み出したパンは、あの世界の知識を取り入れてるので段違いだった。
とりあえずは直ぐに商品として流通させるのは、業界の崩壊に繋がるからと、今は身内で使っている感じだ。
いずれかは少しずつ浸透させようと話していたけれども……うん、どうもゴードンは僕に手数料を落としたい所らしく、まぁ……どのみち今後は魔道具とかでも、そこら辺の話は出るだろうから、その機会辺りが色々と御披露目になりそうな予感はしている。
……と、話が脱線してしまった。
少しだけ考え事をしていたら、焦げる手前の美味しいところでベーコンとタマゴをお皿に盛り付けてはパンも温かさを保ちつつ、その場を離れてエルザの下へ向かう。
「エルザー?」
「ふぁーい……」
「開けるよー?」
「うん……」
ガチャ──と開けて中に入ると、髪は少しだけ跳ねては目がしょぼしょぼさせているエルザが居た。
……服が見事に乱れている。
見えたら色々と危ないものがチラチラと……いや、冷静に冷静に。
「ほら、着替えて用意しないと遅れるよ? ご飯も温かいから、ほら頑張って……!」
「うん……」
そう言って両手を上げるエルザが居た。
ふぅ……とりあえず、気合いを1つ入れて、バッと上着を取ってはパタパタと着替えさせていく。
多分、寝惚けてもあって恥ずかしさは抜けてるんだろうなぁ……。
そう、思いつつも時間を確認しつつ支度を済ませていく。
そう、時間だ。
備え付けの時計やお気に入りというか、気に入った懐中時計を僕は使っている。
「髪、セットしますよー」
「はぁーい……」
うんうん、櫛を用いて綺麗にすいては整えていく。
後は髪型は……綺麗にまとめ上げようかな?
くるくるっと結いてはまとめていく。
「よしっ、これでいいかな?」
「…………」
化粧は……大丈夫。
まだ、必要性も感じない美しさだ。
けれども、施しても更に魅力が際立っては引き立たせるのは目に見えている……おや?
「エルザー?」
「…………あわわ……」
あー……覚醒しちゃった……かな?
ポフッ──と頭をベッドに埋めたエルザが居た。
うん、やっと起きたって感じかな。
「おはよう、エルザ?」
「……忘れて」
「あはは……」
「違うのー、あれは違うのー……」
「はいはい」
「ぅぅ……」
恥ずかしさでダメそうだな……。
まったく可愛いものだ。
「ご飯出来てるからね? 落ち着いたら、おいで?」
「…………うん」
よし、これなら大丈夫そうかな?
ソッと僕は部屋から出てはダイニングへと向かってはご飯を並べていく。
「うん、まずまずの出来だ」
ひとしきり頷いているとエルザが来る足音が響いて来た。
「お、おはよう……」
「うん、おはようエルザ」
ちょっと、カチカチに固まってる感じなのは……まぁ、恥ずかしさからかも知れない。
とりあえず、なんとなしに穏やかに接しながら仲良く朝食を済ませていく。
洗い物はくるくるとお皿を浮かせては魔法でサッと洗っては乾かして整頓していく。
「うん、よしっ」
「エルザー? そっちは終わったー?」
「う、うん……! ど、どうかな?」
「ほら、こっち少しおいで」
「うん……」
「うん、これで大丈夫かな?」
「あ、ありがとう……!」
エルザの身支度の確認をしつつ、少しだけ服の後ろのセットの甘さを直してあげると、綺麗なお姫様の登場だ。
うんうん、綺麗綺麗。
「じゃあ、私……待ってるから!」
「うん、手早くセットしてくるから待ってて」
立ち替わり、僕も手早く整えていく。
後は必要な物を忘れていないか確認しつつ……うん、大丈夫だ。
「よし、いこっか?」
「えっと、鍵は……」
カチャ──。
と、音とともに鍵が閉まるのが分かる。
「始業まで……うん、大丈夫かな」
「緊張してきた……」
「あはは……大丈夫だよ、ほら」
「う、うん」
エルザの手を取ってあげて登校を始める。
多少、教室が近くなる度に周囲の目を集めてるのは分かるけれども、僕は気にならないし、エルザはそれどころでは無いから気付いていない。
「えっと、僕たちの教室は……」
「…………」
うん、エルザは完璧に緊張している。
とりあえず、脳内のマッピングを確認しつつ、いつも助けてくれてる全知全能さんのお力を借りつつ、足早に教室へと向かう。
広いな……。
教室に入った最初の感想だ。
隣ではエルザも落ち着いた風を取り繕っているが視線は教室の広さや中の人を確認しているみたいだ。
そして、僕たちが入って来た瞬間に周囲の目がこちらを一斉に向いてきたので、エルザの手がギュッと僕の手を握ってくる。
少しだけ、優しい魔力を……暖かいヒーリングの魔法を送ってあげると握る力も柔らかくなってきた。
「さてと、僕たちの席はどこかな?」
「えっと……ここ」
「うん、ありがとう」
エルザの視線を落とすために資料を広げて席を探して貰うとエルザは直ぐに見つけてくれる。
その席に着席すると丁度、始業の開始の鐘が鳴る。
鐘はどうやら学校内に響くように設定されては、決められた設定された時間で鳴る魔道具らしい。
「皆、揃ってるかー?」
それに合わせて教室の扉が開かれると、試験の際に見た男性の教師が教室に入ってくる。
「揃ってるな。では、改めて挨拶だ。俺の名前はライアンだ。元ブラックランクの冒険者でもある。この教室を任された。これから4年、よろしく頼む」
パチパチ──と控えめだけれども、拍手が贈られる。
冒険者か……。
ブラックランクと聞くと、冒険者の街ルソーレのギルドマスターのアランさんを思い出す。
確かにアランさんも引き抜きというか、勧誘が色んな各所から有ったと言っていたけれども、ライアンさんもそうなのだろうか?
うーん……? っと、少しだけ思考が飛んでいる中でもライアンさんは自己紹介を続けていた。
「まぁ、ブラックランクは確かに珍しいかも知れないが、この教室には俺含めて2人居るからな」
急にライアンさんのその発言で教室内がざわつきだす。
そして、ライアンさんの視線を辿っては皆の視線が僕に注がれる。
「まぁ……そんな感じだ。とりあえず、自己紹介していこうか。終わったら、軽く授業を始めていくぞー」
パンパンっと皆の視線を手を叩くことで一気に戻しつつ、ライアンさんは自己紹介を周囲にさせていく。
とりあえず……気になる人は──。
「エドワード・レーガンだ。こう言った自己紹介は少々苦手だが、どうか皆、仲良くして頂けると助かる」
うん、堅い感じがするけれども、事前情報でも結構な生真面目とは聞いている。
4大公爵の内、王国側への守護を任されてるレーガン公爵のご子息だ。
「ジャン・フランシス。うんうん、みんな宜しくね~。あっ! 本当に肩書きとか気にしなくて良いからね~」
この軽い調子の雰囲気を出しているのはフランシス公爵、主に神国側の守護と窓口を兼任している公爵家のご子息だ。
神国とは海上を面してもいるから、観光とかも有名だったはずだ。
「俺はマーク・エバンスだ! よろしくな!!」
ニカッと眩しい笑顔と筋肉質な感じな感じが印象のこの男の子は……うん、冒険者の街ルソーレも領内に保有しているエバンス公爵家のご子息だ。
……?
一瞬だけれども、こちらに視線が寄越された気がしたけれども気のせいだろうか?
「私は……ナタリー・マンチーニ! それ以上の言葉は必要かしら?」
スクッと立ち上がっては自己紹介をしては流れるように周りを見回しては椅子に座っていく。
うん、気難しい人だとは噂にはなっている。
マンチーニ公爵……例の新興の公爵でもあり、ダンジョン都市ロマレンを領地として治めている。
「私はエルザ・リシャール。皆、よろしくお願い致します」
うん、エルザも軽くお辞儀をしては着席する。
そして、周囲の目が僕を注目してくる。
「はぁ……よしっと。改めて、マコトです。よろしくお願い致します」
僕も少しだけ素っ気なくなってしまったが軽く頭を下げて挨拶しては着席する。
「あはは……。まぁ、なんだ。これから大きな事が無ければ共に過ごす仲間だ。仲良くやってくれ」
僕たち以降もまだ挨拶を控えていた生徒が挨拶をし終えるとライアンはそう言っては場を収める。
「さて、今日は軽く講義をしていくぞ。まずは皆の常識を改めて確認していく、いいな? まず、この世界に関してだが全貌はまだ分かっていない。広さもだ、理由は分かるか?」
「はいっ! この世界には人類が到達出来ない場所が多いからです」
「少しは当たりだが……、本当に少しだな。正確には魔族の蔓延る魔王国、そして魔の森の広大さ、海を渡る術が私たちにはまだ文明が開かれていないのと、何よりも私たち帝国の外の国の外側も解明されていないからだ。昔の文献に寄ると世界の端は崖になっていて、全てが奈落に落ちていくともされているが、人類がその最終到達点に辿り着いたといえる話も無い。私たちには何故、世界が明るくなったり、暗くなったり、頭上に星と言われる存在が散りばめられてるかも知らないのだ。……ここまではよいか?」
ライアンの座学……いや、もとい僕たちの知識の深さの確認は続いていく。
「後はそうだな。魔法に関してだ。これは人によっては全く見方が違うな。実践的な魔法を使っているのと、魔法をただ生活に用いてる者でも見方は全く変わってくる。理由は分かるか?」
「は、はい!」
「ふむ……よし、マーク、言ってみろ」
「はい、実践的な魔法とは主に冒険者など戦闘向きな者達が提唱している魔法体系です。そして、通常の生活魔法は一般魔法と使い分けて言っている者が一定層居ます」
「それで以上か?」
「はい!」
「マーク……それは見方が違う理由ではなく、ただ世間一般で言われている話だけだ」
「「くくっ……」」
マークが少しだけ恥ずかしそうにしてる中で、隣ではエドワードと、ジャンが笑いを堪えている。
確かあの3人は年齢も同い年で、幼馴染みらしい。
なるほど、本当に仲が良いみたいだ。
マークは恨めしそうに2人を見ているから、何か唆されたのかも知れないな。
ふと、「ふふっ」と小さな笑い声が聞こえたので、隣を見てみると小さくエルザも笑っていた。
まぁ、これはこれで良いのかな?
「でだ、そうだな……これは……俺も気になっているのだが、マコト? 教えて貰えるか? 教師陣の間ではマコトの魔法に関しての答案も話題になっていたぞ?」
「うっ……」
痛いところを突くな……。
そう言えば、無難な解答を……と思いつつも、少々トリッキーな答えを混ぜ合わせていたのを思い出した。
トリッキーというよりは自説の魔法体系というか、エルザに教えてる魔法の知識の一端を軽く取り上げた位なのだけれども、充分教師陣を湧かせるのには足りていたらしい。
「でだ、説明頼めるか?」
「はぁ……無難な解答になりますよ?」
「構わない」
仕方ないな……。
とりあえず、ゆっくりと立ち上がりつつ、僕は答えることにする。
「まずはそうですね。魔法自体に関しての必要性の違いによって全く見方や考え方は変わります。実践的な魔法とは言っていますが、それはどのような時かと紐解くのが大切になります。良く例えられているのは通常の魔法を唱えてるだけではモンスターに接近された際に唱える隙もなく、その身体を危険に晒すことでしょう。それならば剣を振るって倒した方が確実性が増します」
「それはそうだな」
「ですが、逆に魔法でも目眩まし程度に光を放つだけでも、剣を振るって倒せる確実性が増します。その際は魔法に必要なのはとにかく正確に発動させることと、早さが大切になります。そして、それは攻撃面の話であり、サポートの面の例えば回復なら、その真逆とは言いませんが、正確性と確実性、そして何よりも強力な回復性を望まれます。ここら辺が実践的な魔法と言われています。そして生活の魔法は安全性と長期継続性と利便性を求められます。同じ魔法でも必要な方針が違っている背景から、自然とその魔法への呼び方も変わって来ているのが実情だと思います」
「あぁ、その通りだ。ありがとう、マコト。座ってくれ」
ライアンに軽く拍手されつつ、僕は席に着く。
「へぇー……」っと、いう感じで値踏みしてくる輩と、純粋に凄いという目を向けてくる者の視線が僕に降り注いで来ていた。
「ほら、お前ら前を向け。さて、とりあえず基礎的な部分な……まぁ、この辺でいいか。本日は午前いっぱいはこのまま座学とする。午後は実技になるからな! 準備は大丈夫だろうな? 忘れている者はお昼の休みの際に準備をしていくように。では、講義を始めるぞー」
トントン──と黒板を軽く叩きながら、それを合図にライアンの講義は始まるのだった。
「以上で午前の座学は終わりだ。お疲れ様、さて、俺も飯にするか……。午後は練習場に集合だ。場所は分かるな? 分からない者は確認しておくように、では、終わりだ」
カーン──カーン──。
丁度、そのタイミングで鐘の音が鳴る。
「飯ー……飯ー……」
「おい、マーク、流石にだらしなさ過ぎるぞ」
「あー……そうだな」
「別に良いんじゃない? 休憩時間だし、伸びも必要だって」
「また、ジャンはそう言う」
「エドワードが堅すぎるだけだって」
「いや、俺たちは一応公爵家の人間だからな──」
「はいはい」
「お、俺は分かってるぞ?」
「「いや、マークが一番分かってないって」」
うん、あの3人はあんな感じなのだろう。
スクッと立ち上がってはもう一人の公爵の立場の人……ナタリーは即座に教室から出ていっていた。
流石に目を引いたのか、教室内の数人の目を奪っていた。
「ん……?」
くいくいッと袖を引っ張られたので隣を見るとエルザがこっちを見ていた。
「私たちもご飯に行こう……?」
「あー……そうだね。確か……僕たちの所は」
「うん、ここ……」
資料を広げて、構内のマップの1点をエルザが指を指してくれる。
王族と上流貴族にはそれぞれ、ご飯を食べる場所が個別に作られている。
まぁ、曰く……サロンだ。
1通り、調理器具も取り揃っているので、むしろ、ここでご飯を食べる貴族が多いらしい。
後は、交流を個室に招いてはするのも嗜みだったりするらしい。
まぁ、今日はまだ初日だ。
とりあえずは誰も来ないだろうし、招いてもいない。
それにサロンで食べないで、好きな人は自由で学食を食堂で食べることも可能だ。
「よし、じゃあ行こうか?」
「うん」
そっと手を差し出しては、自然とエルザはその手を取る。
周りからみたら、綺麗な1枚だったのだろう。
視線が来るのも分かるけれども、僕はそのまま教室からエルザをエスコートしながら出てはサロンに向かう。
「はぁ……やっと二人っきりになれた……」
「ははは……お疲れ様」
「もう……本当に疲れたー……」
これはダダ甘えモードだな。
うん、昨日の夜から傾向は出ていたけれども、ここに来て確定的になったな。
まぁ、元からその毛はあったけれども……。
「ほら、後は午後だけだから頑張ろうね」
「うぅ……もっと撫でて……」
「はいはい……でも、これで最後だよ。ご飯作るからね」
「お腹もすいたぁー……」
ヨシヨシと頭を撫でつつ、なだめつつ……最後に優しく撫でたら台所に立つ。
さて、何を作ろうかな?
うーん……サッパリしたものを食べたいけれども……。
「とりあえず、午後は身体を動かすから軽めの物がいいよね」
「何作るの……?」
「サッパリしたものにしようかなって」
「……楽しみ」
「少し待っててね」
とりあえず、小さく収納している魔法鞄からガサゴソとお目当ての物を探す。
なんと驚き、魔法鞄同士の空間も繋ぐ事に成功していた。
まぁ、収納スキルと空間転移スキルの恩恵が大きいだろう。
とりあえず、ゴードンと共同で生み出した……あったあった「うん、やっぱり素麺だよね」よしっ。
「素麺……?」
「うん、これだよ」
「えっと、このまま食べるの……?」
「ふふふ、違うよ」
鍋に水張ってはお湯にしていく。
そして、素麺の先端を付けては取り出して、先端をギュッと固めては先端を下にしては茹でていく。
「うんうん……後は冷や水を……」
茹で上がった素麺を冷や水にさらしては水をきっていく。
後は綺麗にお皿に盛り付けて……胡瓜、お野菜を軽く盛り付けて、サッパリとしたオリジナルの汁をクルッとかけたら……よしっ。
「うん、今日のお昼はサッパリ素麺だよ。お口に合えば良いけれども……」
「凄い……初めて見た」
「あはは、まだ市場には出回って無いからねぇ」
「まだ……?」
「ふふふ……」
うん、まだ。
ゴードンが譲らないからねぇ。
手数料だけでも僕に入れたいらしい。
本当に全く……。
って、「むぅー……」と僕がはぐらかしたからか不満そうな目をエルザは投げ掛けてくるけれども、同じくらい素麺が気になるようでチラチラと目をそちらに向けている。
「ふふっ、食べようか」
「もう……いつか教えてね?」
「うん、ちゃんと分かったらね」
「じゃあ……」
「「いただきます」」
「うん、上手く合ってるな」
「美味しい……!」
エルザが驚いたように目を見開いてはスルスルと食べていってる。
気に入ったようで良かった。
そして、楽しく食べ終えては魔法でパパッと洗い物を済ませては練習場へとエルザと向かう。
一瞬、サロンを出た時に他の貴族の方の利用率を見たけれども、意外と食堂利用者も多いようだった。
まぁ、親の方針で毒とかの可能性を考慮してはサロンを設けて、食事の時だけは専属に作って貰うっていう形の利用の人も居るみたいだ。
難儀なものだ。
けれども、基本は平等という方針の中の苦肉の策だったのだろう。
そう思うことにする。
「さ、エルザ?」
「うん」
ちょっとだけ、未だに周囲の環境を把握するのに目を動かしては危なそうなエルザに手を差し伸べると、エルザは自然に手を掴んでくる。
怪我だけは気を付けないとね。
まぁ、周囲は気になるのは分かるけれども。
僕の場合は既に全知全能さんのお陰で把握出来ているというのが大きいかも知れない。
逆に全知全能さんが無ければ、同じようにキョロキョロしていたかも知れない。
「さて、着いた。って、早く着きすぎちゃったかな?」
「大丈夫みたい?」
「あっ、確かに」
エルザに言われては視線を走らすと、確かにこちらに向かってくる生徒がチラホラと見えた。
っと、同時に鐘の音も鳴ってくる。
その生徒の後ろからはライアンさんが向かってくるのが見える。
ギリギリまで休んでいたのかな?
いや、ルーズなだけなのかも知れない。
生徒の表情はどこか焦ったものが垣間見えた。
まぁ、基本的に彼ら彼女らは周りのサポートで動いているからな……そうはなり得るのか。
でも、ライアンさんは何故?
「はぁはぁ……お前ら……遅刻は……ダメだからな」
「えー……先生も遅刻じゃないですか?」
「ほぅ、ジャン? その良く回る口をどうして貰いたい?」
「い、いえ。すみません。僕のではなく、マークのをお願いします」
「は? なんで俺?!」
「おい、ジャン、マーク、講義中だぞ」
「いや、なんで俺も言われてる?!」
「はぁ……まぁ、いい。静かにしろ。俺は遅刻してきた訳じゃない。少しだけ用意してただけだ」
チャキッとそう言っては魔法鞄から武器を取り出してはライアンが告げた。
「これを探してただけだ」
「そちらはなんなのですか?」
「あぁ、ナタリー。良い質問だ。俺の冒険者時代の愛刀だな」
「えっと、そういう事ではなく……」
「ははは! いや、俺の個人的に気になる事があってな。史上最速のホルダーのブラックランク冒険者の実力がな」
「……えっ?」
ザッと皆の視線が僕に集中する。
エルザも少しだけ緊張してしまったのか、強ばってるみたいだ。
「僕ですか……?」
「マコト以外に誰が居る? 俺は実際にやり合ってみて、そいつの実力を計りたい質なんだ。……なんだ? 実技練習を始める前には丁度良いだろ?」
「はぁ……。本当ですか?」
「本当も何も無いだろ? マコトもやる気じゃないか」
あらら、バレてますか。
いつでも、取り出せるようにと忍ばせていた魔法鞄に手を触れさせていた。
「少しだけ踊っても良いかな?」
「う、うん。でも、負けないで。ま、マコトは私の……守護者だから」
「ふふ……、御意」
「大丈夫か?」
「ええ、大丈夫です」
流石に僕の一存でやり合うのも変だろう。
ちゃんとエルザにお伺いを立ててから、剣を取り出す。
やっと、ゴードンから贈られた装飾剣をお披露目出来る。
「綺麗な剣だな、良いのか?」
「武器は使ってこそ、なんぼですよ」
「ははっ、違いねぇ」
一歩一歩前へ踏み出しては、周りから少し離れた位置でライアンと向かい合う。
「魔法はどうしますか?」
「今回は魔法無しの立ち合いでいきたい」
「なるほど、純粋な力と技量でということですね」
「あぁ、じゃないと意味が無いからな」
「そうなると力は……どうですかねぇ」
「おい、そんな見え透いた嘘をいうのか?」
「バレてます?」
「当たり前だ」
体格さで前の世界では力というのは随分とアドバンテージがあったけれども、ここでは純粋にレベルと……後はステータスで判定されるようだ。
僕みたいにまだ成長途上だからと大人に比べて弱いということは無い。
これは生存していく過程で誰しもが気付く事だ。
まぁ、僕がカマをかけたところでこの教師のライアンには意味が無いだろうけれども、生徒によっては疑問を抱いてる節の者もいるので、勉学という一点では良い一石を投じたと僕ながら思う。
「……っと、考えが飛んでた。では、いつでも良いですよ」
「いんや、マコトからかかってこい」
「そうですか、では……お言葉に甘えて……」
最初は様子見で軽く……ジャブ程度で斬り込んでみるかな……。
スッ──と流れるように身構えてる相手の陣に入っては切り裂くように剣を振るう。
「マジかよっ?!」
「反応しますか……では、もう少し踏み込んでいきますね!」
「おいおい……おいおい!」
カキンカキンと右に左に、時には袈裟斬りに逆袈裟斬りも交えてライアンを試すように速度を上げつつ、その正確性を上げつつ、そして……更にもっと先……小手先を今度はフェイントを交え──。
「ぎ、キブッ! ギブだ! マコト!」
「えっ?」
ピタッ──とライアンさんの首筋にヒヤリと剣を押し当てる感じで寸止めする。
周りは静かにその光景を見てるだけだ。
「す……スゲェ……」
「まぁ、確かに……マークがいうだけの事はあるな」
「マークの事だから、嘘だと思ったよ」
「おいおい、ジャン。 マークが嘘をつくはず無いだろう?」
「いや、マークだから。あながち検討違いの事を言ってるかもって」
「あぁ……」
「おい、お前ら。そんな残念そうな目で俺を見るな!」
うん、あの三人のお陰で場の空気が弛緩していく。
エルザは目を輝かせて僕を見てくるのみだ。
「いや、全く……本当に同じブラックランクか? 幻のプラチナランクと言われても俺は驚かないぞ?」
「いえ、そんな……本当にブラックですよ」
「はは……これはマコトには俺が教えられる事は無さそうだな」
「そんなことも無いですよ。僕だって人ですから」
「そっか、見落としの欠点はあるかもな」
「そうですよ。だから、よろしくお願いしますね」
「あぁ!」
手を差し伸べてライアンを立ち上がらせると、ライアンは嬉しそうに僕を見てくる。
存外、武に生きる人に近いのかも知れない。
それと、僕は人とは言えないのだけれども、それは今言う事でも無いだろう。
人というワードは少なからず入っているのだから。
「よし、お前ら参考に……なったかは分からないが、実際の立ち合いとはこんな感じだ。とりあえず、武器を振れるようにはなって貰う。まずは体力作りで基礎を育てつつ、重心を取れるようになったら、武器を振れるように基本動作を教えていく。後は型に習いつつ、模擬戦闘をこなして、身体に馴染ませては落とし込んでいくぞ。とりあえず、まずはランニングからだ」
「「えぇー」」と反対の声を上げる生徒も出たが、問答無用に準備体操をしてはランニングに移っていく。
「よしっ」とエルザの場合は意外といの一番に行動を起こしていた。
何か喚起されるものがあったのか、率先して行動を起こしていた。
まぁ、元からストイックな面もあるから……こういうひた向きな事はエルザには合っているというのもあるかもしれない。
カンカン──。
木剣を振るいつつ、エルザと対峙する。
武の心得がある者は先のステージへ。
まだ親しみが薄い人はライアン先生がサポートしつつ、押し上げていく。
そんな方針らしい。
「ん……今のは鋭くていいね」
「本当?」
「でも、狙い過ぎているから……分かる人だと前に出て間合いに入られると……」
「キャッ──」
「こうなるかな」
エルザの鋭い突きを見切っては一歩踏み出して間合いに入って、素手で木剣をいなすと、そのままエルザの姿勢が重心がズレたせいでよろける。
そこに僕の木剣を突きつけると……うん、チェックだ。
「やっぱり、マコトは凄い」
「そんなこと……無くはないけれども、エルザも呑み込み早くて良い感じだよ」
「ありがとう」
「ふんっ」っと、そんな僕たちがやり取りしてると遠くでこちらを見ては不満そうに鼻息を鳴らすナタリーが居た。
「うん?」とエルザも気付いて、そちらを見やるとナタリーは少しだけ目を細めてはこちらを見やっては視線を外しては背を向ける。
「えっと……何かしたかしら?」
「そうだね……。どうだろう? でも、今は気にしなくて良いと思うよ」
「う、うん」
気にしても仕方ないだろう。
僕だって分からないのだから。
あの目は何を伝えたいんだろうな。
そんなことを思っているとライアンが戻ってくる。
「よーし、お前ら。本日の午後の講義もここまでだ。また明日は午前は座学になる。最初は座学と実技の往復になるが、少しずつ……魔法学、魔道具、歴史、実技でも武器毎や、立ち位置等、細分化されていくからな。頭にいれておけよ? では、本日は終わりだ! お疲れ様」
ライアンはそう言うと講義の終わりを伝えては周囲の片付けを始めていく。
それを皮切りに皆、引き上げては各々、自由時間に入っていく。
「ねぇ、マコト?」
「んー?」
「この後、どうしたい?」
おや、エルザの気遣いを感じる。
目が優しく僕を見ている。
こういうところがあるから可愛らしいと本当に思う。
「そうだね。我が儘を言っても良いなら、魔道具サークルと図書館が気になるから、どちらかを今日は行ってみたいかな」
「うん、分かった。そうなると……今近いのは魔道具サークルかな? 誰も居なさそうだったら図書館に行くのってどうかしら?」
「うん、それで良さそうだね」
「良かった、なら行きましょう?」
「はいはい」
エルザ本人が気付いているのか分からないけれども、講義が終わって自由になれたのが嬉しいのかも知れないな。
先ほどまではエスコートしていたのは僕なのに、今はエルザに手を伸ばされている。
まったく……面白いものだ。
そうして、エルザに引かれつつ研究やサークルがひしめく棟に近付いていく。
「凄い……」
「確かに改めて見ると圧巻だね……」
ずらっと棟は建ち並んでるのはそうだが、しっかりとその中にサークルも入り込んでいるし、それに必要な施設もある。
魔道具サークルは最たる例だろう。
まぁ……資金もそれに伴って溶けてるはずだが……学校の資金力は衰えを知らなそうだ。
まぁ、通ってる層が層なのと、これからを引っ張っていく人財を育て上げていくのだ。
多少なりにも……いや、糸目をつけていないのかも知れない。
「さて、魔道具サークルは……こっちか」
「マップ……? うーん? これ……」
迷路みたいとは言わない。
入り乱れ過ぎてて、マップを置いてはあるけれども、複雑化し過ぎている。
権力や派閥もあるのか、使える広さも疎らだ。
どこの戦国時代だ……。
それに僕たちが来てからザワザワしているし、ソワソワもしている。
それもそうだ、僕たちは格好の獲物だ。
資金源、権力……全てが1級品だからな……。
この手あの手で誘いたいけれども、別格過ぎて声を掛けづらいから遠巻きで見るのに留まってるのかも知れない。
まぁ……そんな中でも残念な者は居るのは確かで。
「あ、あの……ヒィィ!!」
「うん……? 何かあった?」
「ううん? 何もないよ?」
そうそう、それでも近付いてくるチャレンジャーは居るわけで、その際は全力の殺気だと……人として生きていけなくなっちゃうから手心を入れて殺気を飛ばすと、蜘蛛の子のように散っていく。
うんうん。
これで良し。
「あっ! あそこみたい!」
「おー……普通?」
いや、地味?
魔道具サークルはちょこんとそこに存在していた。
あれー? 自分が想像していたのはデカデカとした感じだったけれども……?
コンコン──。
っと、エルザがノックをするとドタドタと慌てるような物音が奥から聞こえてくる。
「えっ! ノック?!」
「えっ! でも、先生はノックしないわよ?!」
「じゃあ、新入生?!」
「こんなところに?!」
「でもでも! ノックあったじゃない!」
「た、確かに……!!」
「と、とりあえず……確認しないとだよね?」
「う、うん」
いやいや、そんな……変な緊張がこっちまで伝播してきちゃうって。
ほら、エルザなんて……ちょっと緊張してきてるよ?
いや、少しだけ顔が綻んでるようにも見えるけれども……。
ははーん……これは緊張と微笑ましさが混同してるのか。
なるほど……なんて思っていると「ガチャリ」とドアが開く音がするというか、開いた。
「「「「あっ」」」」
「「「「……」」」」
いやいや、ハモっちゃったよ?!
どうするの?!
先輩方も固まっちゃってるよ?
仕方ない、ここは男の僕が肌を脱ごうじゃないか。
いや、実際に脱いだら大変だけれども、あれだ。
話の例えだ。
「「えっと……」」
「「……」」
馬が合うのか、タイミングが悪いのか。
向こうも同じように考えたのか、被っちゃったよ?
被っちゃヤーヨよ?
「えっと、すみません。こちらは魔道具サークル……で正しいんですよね?」
「は、はい! 正しいです! 私たちしか居なくて廃部寸前でふけれども!!」
噛んでる、噛んでるよ!
なんか、物凄い必死なんですけれども?!
「そ、そうですか……。それで今日は先生は……顧問の先生は来られますか?」
「は、はいっ! あの、私……呼んできますので!!」
「えっ、あっ……いえ、忙しいのなら……」
「大丈夫ですのでぇぇぇぇー!!」
走り去って言ってしまった……。
エルザも隣でポカンとした顔を隠すこと無く、さらけ出している。
とりあえず、ムニムニとして、顔の表情を戻してあげる。
戻したのは良いけれども……エルザは顔を真っ赤にしてうつ向いてしまった……。
あれ……?
「あのー……ここでは、なんなので……良ければ中に入りませんか? お茶……気休めですが、ありますので……」
「あ、はい。ありがとう……ございます」
ススス──とエルザはサークルの室内に入っていく。
後ろを振り替えると、事の顛末を見届けようと野次馬が沢山居た。
「はぁ……」とりあえず、僕も中に入らせて貰う。
先輩はサササと動いては扉を閉めては中の適当なイスに案内してくれる。
「うーん……これは……」
ゴチャゴチャしてると言えば、その一言に尽きる。
ただ、寄せただけの山になった魔道具に隅にはチョコンと実験場所的な所、後は奥は……教師の自室だろうか? に続くドアが何とか生き残っている感じだ。
埃も……うん、これは良くない。
非常に良くない。
「えっと、どうしてこんな惨状に?」
「……あはは」
「……?」
「私たち整理整頓が苦手で……モーリス先生もそこまで気にしてないかというか……先生も散らかしちゃうから……」
「なるほど……」
「……てへっ」
「片付けますよ!」
「は、はいっ!」
ピーン! とエルザの背もビシッと伸びていた。
まぁ、先輩も何も言わずとも伸びていたが。
これは……時間かかるか? いや……。
「先輩? 魔道具を片付ける魔法鞄や袋は?」
「そ、そんな上等なものありませんよ?!」
「なるほど……では、僕のを使いましょう」
「え?」
「とりあえず……エルザも手伝ってくれるの?」
「う、うん。見てるだけは嫌だから」
「そっか、ありがとう。エルザはこれで……先輩はこれ。とりあえず、片っ端から収納していって」
「「は、はい!」」
そんな感じで、なんとやら……やっと全て収納出来た。
いや、本当に全てを収納した。
空っぽだ。
そして、ここのサークルの顧問の先生……モーリスさんの室内も申し訳ないけれども、悲惨な状況だったので問答無用に片付けさせて貰った。
大丈夫、何か言われても物はちゃんとある。
「ごめーーん! お待たせ! 先生……連れて……来た……よ……?」
「あっ……ルイーゼ……」
「アンナ……これ、どうしたの?」
「え、えっとね……」
「おお! 新入生とは……彼か! 彼が来てくれてるの……か……? なんじゃ、これは……」
うん、あの老人がモーリスさんか。
そして、先輩も同じ学年と言ってたから、今来た人はルイーゼ、そして一緒に片付けていたのはアンナか。
「すみません、余りにも……ちょっとあれなので、片付けさせて頂いています」
「お、ぉぉ……」
「お……?」
「ぉぉ……き、来てくれたのか! マコト殿!!」
「えっ? えっ?!」
物凄い勢いで詰め寄られてしまっては困惑していると、先輩の2人も隣のエルザも困惑したままの表情なので、事情を知る人は居なさそうだ。
「あの、落ち着いてください。えっと、初対面ですよね?」
「そ、そうか……そうじゃよな……。申し訳ない」
「はい、本当に驚きましたよ」
「じゃが、私も本当に驚いたのだ。ゴードン様からの話で来るとは伺っていたのじゃが……!」
「ん? ゴードン……? ノルトメ商会の?」
「そうじゃ、私は元々ノルトメ商会の雇われ魔道具職人だったんじゃ」
「あー……」
読めてきたぞ。
僕の話した内容をゴードンは誰かに打ち明けたのだ。
信頼の置けそうな者か、造詣に深い者に。
そう、例えば目の前のモーリスみたいな人に……いや、その人に。
「えっと、僕の事は他の人には?」
「話すわけ無かろう! それに話しても分からん。マコト殿の発想は柔軟で素晴らしい。どこで思い付くのじゃ?」
「え、えっと……」
「そう、後は試験の答案もそうだ。あれも良く見ると素晴らしい視点だ。分からない者は首を傾げたり、意味がないと笑っていたが私には分かる。あれは素晴らしい視点だ」
うんうんと、エルザは頷いている。
ポカンとルイーゼ先輩とアンナ先輩は表情がまだ驚いてるままだ。
「と、とりあえず。落ち着いてください。事情は少なからず分かった気がします」
「そ、そうか……! それで、今日はもう何かやるのか?!」
「……やりますよ? 掃除を」
「掃除……?」
「先生……整理整頓は大切ですよ? それにほら、こんな埃が……埃は危ないんですよ?」
「そうなのか?」
「咳き込んだりはしてませんか?」
「それは最近しておるな」
「先輩方もです。埃は目に見えないダニ・フケ・ノミ・土・花粉・カビやダニなどが絡まり、「ほこり」を形成してるんです」
「ダニ……? ふけ……?」
「えっと、ノミって何?」
あー……そうか、ここはそんなに小さいものを観る術が……いや、魔法があるか。
けれども、発想は無いのか。
「とりあえず、埃は良くないですよ。アレルギーが出てるかも知れません」
「あれるぎー?」
「……いえ、気にしないでください。さ! 綺麗にしますよ」
とりあえずは清掃だ。
その後は家具や雑貨などの必要な物を設置しては、魔道具は種類毎に魔法鞄に整理する。
「魔法鞄……それにこんなに……」
「それは差し上げます」
「いやいや、こんな高いもの」
「大丈夫です。ダンジョンの報酬で沢山有りますし、作れもしますから」
「作れ……る?」
「他言無用でお願いします」
「う、うむ」
「先輩方もお願いします」
「「は、はいっ!!」」
うっかりしていた、魔法鞄や袋は専門の職人しか作れないのだった。
そりゃぁ、怪訝な顔にもなるだろう。
けれども、場の空気が変わったことで有耶無耶になった。
この魔法鞄はここの整理に役立って貰おう。
「さて、こんなものですかね」
「「おお~!」」
「綺麗じゃな。それに空気が綺麗な気がするわい」
「綺麗なんですよ。定期的な清掃はサボらずに根気よくしてください。っと、言ってもこれから定期的に僕も片付けますが」
「ぉぉ……!? 一緒に魔道具作るということでいいのかね?!」
「はい、一応……それをお願いしに来ました」
「「や、やったー!!」」
「えっと、そちらのエルザ様も……」
「はい、私もお願い致します」
「ルイーゼ……!」
「アンナ……!」
「「か、可愛い……!」」
ちょっと照れながら言ったエルザの可愛さの破壊力は先輩方の心を鷲掴みにしたようだ。
エルザもちょっと固まりつつも撫でられている。
でも、顔は満更でも無さそうだ。
「そ、そうか……そうなると、こちらにサインを頼む。申請をしておこう。そして、マコトよ」
「はい?」
「ゴードン様から話は聞いておるか?」
「あー……連名やら、登録の件ですね……」
「そうだ、これでマコト殿も晴れて魔道具サークルを通して申請も出来る。そして、ゴードン様の計らいで、商会の手数料の件も解消出来るはずじゃ」
「……分かりました。そちらもゴードンに合わせて貰って大丈夫です。事前には話してるので、僕の方も折を見て話してみます」
「そうか……そうか、これは凄い事になるぞ。魔道具の革命だ」
「「「……??」」」
エルザ、ルイーゼ、アンナ共に首を傾げているが。
まぁ、うん今は分からないだろう。
僕の提唱して開発した魔道具は簡単に言うと、冷風、温風、洗濯機、冷蔵庫……家電製品を魔法を起用して創れないかと試して、それらに近付けてはオリジナルとして生み出した魔道具だ。
先日のお風呂もそうだ。
そして、魔道具の開発の申請の連名には僕の名前も入る。
他の人が作る度に僕の懐が潤うのと、同じく魔道具以外でも、この期を逃さずに、商品開発の方でも申請を通せるようにするらしい。
これは前回の素麺とかもそうだけれども、まだこの世界に普及していない、衣食住を網羅することに違いはない。
多分、文明が一気に進歩するかも知れない……とは言いきれない。
魔道具に必要な絶対量の魔石が足りないかも知れないからだ。
まぁ、それでも生活は変わっていくだろう。
ただ、順序をつけて、生活スタイルの変化を見定めて小出しにしていくのをゴードンとは擦り合わせている。
話している度にゴードンは身を震わせては恍惚の表情をしていたが……まぁ、うん。
そこは割愛しておこう。
少しずつだけれども、生活は変わると思う。
僕の過ごしやすい生活に。
後はまだまだ足りないものをここで作れたら……。
ここは魔道具登録出来る唯一の王都だから、ね。
「後は図書館か……」
図書館……。
僕と同じ異人の話がまとまっていれば良いけれども。
後は、どうにもチグハグな歴史を把握しないといけない。
「図書館に行くのかの?」
「えっ? あー、はい」
「なら、私の許可を出しておこう」
「許可?」
「遅くまで閲覧出来る許可じゃな、後はある程度の蔵書を読めるように……って、なんじゃ既に許可を得て……いや、最高機密や禁忌図書まで閲覧出来る許可? 王族の認可か……流石、マコト殿だな」
「え?」
チラッと自分の学生証を確認する。
確かに、色々と便宜を図れるようにすると言って、様々な認可を付与していたけれども……。
そうか、この学生証を見せれば大丈夫と言われていたけれども。
そんなに凄いのを付与してくれてたのか。
「なら、大丈夫そうじゃな。明日はまた来るのかの?」
「えぇ、色々と検討したい事もあるので……ただ──」
「うん、マコト大丈夫。私も一緒に来るから」
「そっか、ありがとうエルザ」
「う……ん……ど……いた……まし……て」
「「可愛いぃ~」」
ルイーゼ先輩とアンナ先輩のハートをかなり掴んだみたいだ。
隙有らば撫でられてるみたいだ。
まぁ、確かにちょっと小柄だし、性格や行動が猫に見えなくも……。
「むー、なんですか、その目はマコト」
「あっ……いや、なんでもないよ?」
「本当ですか……?」
「うんうん」
どうやら、そのように思われるのは心外らしい。
良いと思うんだけれどもなぁ……。
まぁ、今は図書館だ。
「と、とりあえず。今日はここまでで」
「あっ……エルザちゃ……エルザ様」
「また、明日ね?」
「は、はい……」
「では、モーリス先生もまた明日」
「あぁ、これたら来る……いや、来るぞ!」
「……無理しないでくださいね?」
モーリスさん……来るんだろうなぁ……。
先輩は遂に様呼びを忘れかけていたぞ……。
まぁ、平等を謳う学校なら大丈夫だろう。
とりあえず、エルザの手を取っては引いていき僕はエルザと一緒に図書館を目指す。
うん、その道中に僕たちが魔道具サークルに入ったことを知った人たちの好奇の視線にさらされながらだが。
「図書館……」
「大きい……」
「そうだね、大きい。頭で分かっているのと、実際で見るのは違うということか」
「それ、私がルソーレに行った時と同じ感想」
「確かに」
少しだけ、2人で笑ってしまう。
そして、そのまま2人で図書館に入る。
「図書館……とはいうけれども、これは……」
「私も初めて来たけれども……こんなに……」
これは結構な蔵書の量なのでは?
中心は係の者が居て、そこを中心に棚が四方に伸びており、その全てに書物が収まっている。
2階部分も同じ形だ。
中心から下に行けるようだが……下は……禁忌指定の書物か。
「えっと、マコト? どうする……?」
「そうだね……とりあえず、ここの図書館のルールだけでも確認したいかな」
うん、そうだ。
本当に凄い量だな……。
だけれども、しっかりと分けられているみたいだ。
お目当ての物は……いや、全知全能さんも空気を読んで見守っているみたいだ。
でも、急を要する時は頼らせて貰おうかな。
「あの、すみません」
「はい。どうしましたか?」
「えっと、マコトと申します」
「はい……? 私はシルビアと言います」
ん……いや、自分も上手く聞けなかったのもあるけれども……こう、なんというか無愛想過ぎないか?!
「いや、ごめんなさい。図書館の利用が初めてで、利用方法を知りたくて」
「利用方法ですか……?」
「は、はい」
「そうですか……一通りの説明でよろしいですか?」
「お願いします」
「分かりました。では、説明していきます。ここはウェレギュア王立学校の図書館になります。蔵書の量は王都一であり、全てがあると言われています。基本的な閲覧可能なものはこの1階層になります。2階層はもう少し難しいものや、専門的な分野になります。区分けは各所にあるマップを参照してください。そして、閲覧に規制が掛かっているものは下層になります。地下1階は閲覧規制の蔵書が、地下2階以降は禁忌書物、または保管を目的とした物が有ります。利用時間に際しては許可が下りてるのでしたら、時間関係無く1日中の利用が可能となっております。分からない事が有りましたら、私……シルビア含めて職員にお聞きください」
「あ、ありがとう……」
「いえ」
無愛想だと思って、ごめんなさい。
めっちゃイイ人だ。
いや、不器用な人なのかも知れない。
今も質問が無いか足を止めて、こちらをジッと眼鏡の奥から瞳が見てきている。
「そうなると……僕は……後エルザも規制は大丈夫そうかな?」
「……拝見させて頂きます」
僕とエルザは自分たちの学生証をシルビアに渡す。
「……なるほど。本当そうですね。時間帯の利用も、また閲覧規制、禁忌書物の方まで全てが閲覧の許可が下りていますね」
「良かった」
「……そうなりますと、どんな書物をお探しに?」
おや、こちらに興味を持ったのか身体をズイッと前にのめり出してシルビアは聞いてきてくれる。
「えっと、僕は異人に関しての書物を一通り知りたいんだ」
「あっ、私はマコトに付き添っているだけですので……」
「……分かりました。異人に関してですね。そうなりますと……困りましたね」
「……どういう事ですか?」
「基本的には異人というのは噂話の一人歩き……に近いですから、それに伴った本と言われると多岐に渡ります。禁忌や規制書物の方にはもしかしたら、まとまってあるかも知れませんが、それはマコト様自身で探して貰うしか手だてが無いかも知れません」
「そうですか……」
「申し訳ございません」
「いえ、利用出来ると分かっただけでも良かったです」
そう、断りを入れている間に脳内には館内全域のマッピングと全知全能さんが弾き出してピックアップしている書物がズラッと網羅されていく。
全知全能さん……久し振りだから、また張り切ってしまったような感じが否めないのが何とも。
なかなかの量だな。
とりあえず、在籍期間内に読み終えるのを目標にしていくのが良いかも知れない。
「マコト、大丈夫……?」
「ん? うん、大丈夫だよ。それに結構僕はこういった探し物は得意だからね」
うん、僕がじゃない。
全知全能さんが、だ。
とりあえず、心の中で全知全能さんにお礼を言うと、嬉しそうに蔵書のピックアップした位置がお勧めだろう……光っていっている。
やっぱり……こう、感情があるんじゃない? かと疑ってしまうが、そう思うとスンっと反応が遠ざかっていく印象がある。
とりあえず、気になる所だけれども、どうしようか? と考えていると隣のエルザから「グゥ……」と音が聞こえてくる。
好奇心でシルビアを見てみると申し訳程度に私じゃないよと首をフルフルと降って否定をしている。
うん、分かってる。
隣を見てみるとちょっぴり頬を染めているエルザが居た。
「あはは、今日はこのくらいが良いよね。まだまだ初日だもの」
「……ごめんなさい」
「いや、良いよ。僕も止めどき分からないとずっと読み漁っちゃうと思うから」
「ふふ、それはありそう。想像しやすいかも」
おどけて言うとエルザは嬉しそうに笑いながら言う。
とりあえず、僕たちは寮へと帰ることにする。
「食べたいもののリクエストはある?」
「えっ……うーん……どうしよう。変わったの……食べたいかも」
「変わったの?」
「うん、朝みたいにまだ出てないのあるって言ってたよね?」
「あぁ、素麺みたいなやつね」
「うん」
「何か有ったかなぁ……」
ごそごそと魔法袋を取り出しては中身を漁ると良いのを見つけた。
香辛料だ。
スパイス……うん、これはなかなか。
出ては無くはないけれども、余り使用されていないというのが実情のが沢山ある。
まぁ、見つけられたのはゴードンのお陰なのだけれども……。
こう思うとゴードンと出会えたのは僕の大きな幸運なのかも知れない。
とりあえず、香辛料で作るのは鶏肉の香草焼きだ。
夜だからね。
ボリューミーに……だけれども、ヘルシーにしたいと思う。
同じ麺で、トマト野菜ラーメンもと思ったけれども、これは隠し球にしておこう。
「さてと……」
魔法で軽く火を起こす。
起こしたら、魔法袋から新鮮な鶏肉を取り出しては適当に程よい大きさに切っていく。
後は厚みが均等になるように開いて、皮目にフォークで数か所穴を開けていく。
「穴を開けるの?」
「ん? エルザもやる?」
「うん」
エルザにフォークを渡しては穴を開けて貰っていく。
「でも、どうして穴を開けるの?」
「火の通りを良くしたり、縮み防止の為だよ」
「へぇー……」
「終わった鶏肉を頂戴」
「はい」
エルザから貰った鶏肉の両面にしっかりと塩こしょうをしていく。
塩加減は気持ち多めにしていく。
「よしよし……後は、ここからが特別に」
「これが香草?」
「ふふ、色々あるでしょ?」
「うん、これが美味しくなるの?」
「まぁまぁ……」
皮目にハーブをまぶし、指で軽く押さえ付ける。
後はローズマリーは指で揉んで砕きながら振り掛けて、オレガノ、タイム、セージ等も付け足していく。
「……?」
「そうそう、そんな感じ」
エルザにも手伝って貰いながらだけれども、エルザは半信半疑なのか複雑そうな表情だ。
ふふ……少し微笑ましくなっちゃったけれども、火にフライパンを置いて、ゴードンと生み出した特製オリーブオイルを引いていく。
「ただの油じゃない?」
「良く気付いたね。オリーブオイルだよ」
「オリーブ……オイル?」
「うん、もう少ししたら市場にも出回ると思うよ」
そう説明するとエルザの目がみるみる輝いていくのが面白い。
皮目を下にして火の強さを体感だけれども、中火にして肉を動かさないようにそのまま焼いていく。
「もう出来た?」
「まだだよ」
「凄い良い匂い……」
「ふふふ……」
こんがりと焼き目が付いたら裏返して蓋を……今回は風魔法で蓋代わりをして、火の強さを少し落として、今度は蒸し焼きにしていく。
「出来た? 出来た?」
「はいはい……うーん、この辺かな?」
良い感じになったら……完成だ。
後は残った液を絡めて、新鮮なナスやパプリカも焼いては添えていく。
「ご飯は前に大量保管したのが……うん」
「凄い……ホカホカ……」
「特別な魔法袋だからね」
「凄い……マコトしか持っていないんじゃない?」
「そう……かも?」
いや、僕しか持っていないだろう。
何せ、オリジナルだからな……。
最初にアイクさんのお下がりの魔法鞄から……成長したものだ……。
アイクさんのお下がりの魔法鞄も未だに現役だ。
改良をし過ぎて原形は……だけれども。
「マコト、食べよ!」
「はいはい……では……」
「「頂きます!」」
「お、美味しい!!」とエルザは一言発してからはパクパクと、でも上品に直ぐに召し上がってしまった。
「もう少し食べる?」
「えっ、でも太っちゃ……」
「少しくらいなら大丈夫だと思うけれど」
「そ、それなら……」
「はい、これね。後は明日のお昼用にしようか」
「うん。……あっ」
「ん?」
パクパクと追加の香草焼きをペロリとエルザは食べたら何かを思い出したような反応をしてくる。
「どうしたの?」
「お昼……サロン……明日から誘わないとかも」
「あぁ……例の付き合いだね」
「う、うん」
「そっか……そう言えば、申請されてたね」
お昼に食べ終えた所で、各貴族の執事やメイドからお手紙を頂いていたのを思い出す。
とりあえず、食べ終えた食器類とかをまた魔法でパパッと片付けては手紙を取り出して、封を開けては中身をエルザと一緒に見ていく。
「うーん、お誘い……は流石に無いけれども、誘っては本当に多いな」
「レイラ姉さんは頑張ってと言っていたけれども……」
「他には何か聞いてるの?」
「とりあえず、私の場合は4大貴族を相手にしたら、後はお断りしても大丈夫だと思うって言ってたかな。なんだか、お姉ちゃんの時と違って私の場合は明確に分かりやすいから大丈夫って」
「なるほど……そうなると……明日は」
「うん、この招待を受けようかな」
「だね。そっちの方が楽そうだ」
3人まとめて……になるけれども。
幼馴染み3人衆はこっちの事情を汲み取っているのかは分からないけれども3人での希望だと3人からそれぞれ来ていた。
何かの示し合わせでもあるのだろうか?
でも、まぁ……エルザには渡りに船かも知れない。
それにあわよくば仲良くなれたなら、これからのエルザの生活はより良いものになると思う。
「そうなると明日はこのまま香草焼きを振る舞おうかな。後はデザートでも考えておくかな……」
「デザート……!」
「はいはい、デザートはまた明日ね?」
「えー……」
「ふふ、ほらお風呂入って来なよ。明日も大変だよ?」
「はーい……」
さて、そうなるとエルザはお風呂に……うん、向かったな。
明日のデザート考えようか?
どうしたものかな……。
魔法袋の中を改めて見つつ考える。
やっぱり、あれかな?
そう言えばまだ世間でも見掛けてないし、目を引くから良いかも。
「さて、やりますか」
大きめのボウルを取り出しては牛乳を入れて、風魔法と火魔法を用いて、牛乳を適度に熱していく。
もう1つボウルを用意して卵を入れて……風魔法で良く解きほぐしていって……そこへゴードンと作り出した上白糖を加えながら更に風魔法で混ぜ合わせていく。
「ペロッ──と、良い甘さかな。こしはどうしようかな……いや、魔法で代用出来るか」
きめ細かい風魔法の網を意識して作ってはこしのを意識して容器に入れていく。
「容器も少しだけ……お洒落にしようかな」
容器に軽く触れて装飾を錬成していく、デザインもついでに少しは見栄えの良いものに……うん、良い感じ。
「後は……フライパン……いや、どこまで魔法でいけるかな?」
容器に入れては風魔法で蓋を軽くしていく。
フライパンを取り出しては布巾を敷いて、容器を載せていく。
「ウォーター……」
後は水を入れてはフライパンにも風魔法で蓋をして、「火よ」火魔法で火を起こして、微調整しながら加熱していく。
「うーん? 良い感じ?」
良さそうかな? 火魔法を消して、そのまま置いておく。
「後は……そう、プリンにはカラメルだ」
うん、明日のデザートはプリンだ。
きっと皆のハートを掴むはずだ。
ゴードンの心は掴んでしまったけれども、例の如くうち震えてはゾクゾクさせていたから、少しだけ引いたのを思い出した。
「って、作らないとな。エルザもあがって来ちゃうか」
急ぎ、小鍋を用意しては上白糖を入れて風魔法で混ぜ合わせつつ、新たに火魔法で加熱していく。
「うん、綺麗な色だ」
薄く色づいて来たら火を消して、水を入れて引き続き風魔法で混ぜ合わせると……カラメルの完成だ。
「プリンの状態も……よし」
これは冷蔵効いた方の空間に収納しておこう。
出来たプリンをしまって、改めて片付けては背伸びをする。
それにしても、本当に王族は大変だと思う。
そして、エルザもだ。
僕だったら初日を終える前にダウンしてるだろう。
「ま、助けられる範囲で全力で助けないとだよね」
「え? なに?」
「あっ、エルザあがった?」
「うん」
「よし、替わりに入ってくるかな」
ちょっとだけ、誤魔化すような感じになっちゃったけれども照れ隠しだ。
颯爽とお風呂に……。
「どうしたの?」
「髪……お願い」
「……はいはい」
袖を掴まれて誤魔化しは出来ないのが確定したみたいだ。
振り返ったらエルザはこちらをジッと見てきては髪を乾かすのをお願いしてきた。
「それで、何を言ってたの?」
「ん? エルザは大変そうだなーって、出来る限り全力で守らないとなぁーって、言ってたんだよ」
「…………」
おや、会話が終わってしまった。
髪を乾かすのに、チラチラと耳が見えるけれども真っ赤だ。
まぁ、突っ込むのも野暮だろう。
乾くまで優しく風魔法と火魔法を用いて、乾かしていく。
普通は自然乾燥が常らしいけれども、前に乾かした時にカチッとハマったらしい。
これは今日から良くお願いされそうだな。
「はい、終わり」
「……ありがとう」
「じゃあ、また明日。ちゃんと寝るんだよ?」
「……うん。お休みなさい」
さて、これで……と。
早速お風呂して、軽く魔力鍛練は常日頃身体中でしているけれども、深いものをサクッとして、自分も身体を乾かして服を来て……寝室に。
「…………うーん」
うん、自分の部屋だな。
布団がこんもりと膨れてる以外は変な箇所は無い。
一緒に寝ないと寝ないとで拗ねそうなのは理解出来ている。
「……はぁ」
うん、まぁ受け入れよう。
なに、悪いことじゃないさ。
役得、役得……と。
ベッドに潜り込んだら、早速エルザが抱きついてくる。
空いた手で頭を撫でるとスヤスヤと寝息が聞こえてくる。
……僕も寝るかな。
そっと目を閉じたら、眠気がしっかりと押し寄せてくる。
とりあえず、明日はサロンが重要なイベントかな……。
そう、思いながらも自分は直ぐに眠りに落ちていた。
「「「「……………………」」」」
「えっと……これは、どういう状況?」
「あっ……マコト……」
そして、サロンの時間だ。
準備の為に先に台所で調理……もとい、食事の用意をしていてはやけに来るのが時間が掛かるかと思ったら、外にはエルザは居るのは当たり前で、後は招待をした3人衆エドワード、ジャン、マーク以外に何故かナタリー・マンチーニも来ていた。
「ナタリーさんは今日は……」
「お話失礼致します。私、ナタリー様の従者をしております者です。こちらを……」
「はぁ……? はい、受け取りましたが」
「中を確かめて頂けましたら」
エルザを見やると頷いていたので、中身を確かめる。
「私の娘を差し置いて、サロンへの招待を3大貴族にするとは不敬! マンチーニ家もその席に招待するべき。これは我がマンチーニ家への不敬に当たるぞ。理解したなら、対応策は分かるな?」Wao! ……いや、わお! だ。
凄いな……あれ? お誘いしたのは確かに早朝の午前の講義前だったけれども、こんな即座に対応されるものなの?
それに、こことマンチーニ家の納めるダンジョン都市ロマレンはそれなりに距離がある。
「長距離での伝達方法があるのか?」
「それで返答は……?」
「…………」
あー……意識が別の方面に飛んでいた。
問われて視点を戻せば従者の者が物凄い視線をこっちに投げ掛けて来ていた。
何? その人を殺すような視線は……。
隣を見れば、同じようにこっちを見てきているナタリーが居たけれども、彼女の場合は高圧的な視線の奥には何か不安そうな色が見える。
少しだけ振り返ってエルザと3人組、エドワード、ジャン、マークを見やると、諦めたように肩を落としていたのと、エルザは少しだけ頷いたので判断を決定させる。
「ええ、すみませんでした。どうぞ、ご参加を」
「良い判断です」
「……当たり前よ」
従者の返事はさも当たり前って、感じだけれども。
うーん? ナタリーの高圧的な感じは……なんか、ぎこちない。
とりあえず、そういう変な勘繰りは今は置いておこう。
「では、どうぞ。ナタリーさんは……今、用意するので」
「…………」
これは待ってるという意味かな?
そう、捉えては急ぎ準備してはナタリーも案内する。
「では、ここからは」
「分かっている、後はいい」
「はい、では」
「ふんっ」
ここから先は王族の……エルザの領域だ。
ナタリーの従者は入れない。
従者が居なくなると、どこかナタリーの雰囲気が軽くなったような気がした。
「とりあえず、皆さん席に着いて大丈夫ですよ」
「は、はい」
「エルザも緊張しないで大丈夫だよ」
「う、うん」
「ナタリーさんはこちらに」
「…………ありがとう」
「えっと……」
「エドワードだ」
「うん、こっちに」
「ジャンだ」
「隣に」
「…………」
「?」
「マークだ」
「はぁ……それは知ってますが……とりあえず、こちらに」
「あぁ」
とりあえず、席に着いたのを確認して香草焼きを出していく。
「な、なんだ、この暴力的な香りは!!」
「ま、待って、普通の鶏肉焼いただけだよね?」
「うおおおお! 旨そうだ!!」
「…………」
三者三様では無いけれども、ナタリーはジッと目を離す事なく、釘付けになっている。
エルザは昨日食べているのと、一緒に作ったのもあって、どこか誇らしげだ。
まぁ、サロンで出される料理=その貴族の大きさというか豊かさとも言われてるらしいから、これはもう合格だろう。
「どうぞ、冷めないうちに」
「あ、あぁ!」
「うめぇ! うめぇよ!」
「おい、マーク。口調が悪いぞ! って、旨いな!」
「って、エドワードもそんなに堅くなら……うっ?! なんだよ、これ!」
「…………美味しい」
あはは……気に入ったみたいだ。
食事は場の空気を柔らかくするというけれども、少し落ち着いて来たらマークがこっちを見ては口を開いてきた。
「マコト……だよな?」
「えぇ、マコトですが……どこかでお会いを?」
「いや、ルソーレは俺の領地だから……領地の噂は自然と領主……いや、親父や俺にも届いて来るんだ……」
「あぁー……」
「マコトの噂は……その、本人の前で言ったらアレなんだが」
「殺人鬼とか、ギルド潰しとか、裏の取締役とか、名前を言ったらいけない人とか、目を合わせるなとか、初心者は絶対に近寄ったらいけない人とか……色々?」
「あ、あぁ……」
そう言って、マークの顔は暗くなる。
これは……噂が一人歩きしては大きくなったやつだなぁ……。
いや、まぁ嘗められたら終わりだと突っ掛かって来るものは大小問わずに壊滅させていたから、あながち間違えていないのも問題なのだけれども。
「まぁ……噂は噂だから」
「いやっ! だがっ! 親父はマコトには絶対に無礼を働くな! 睨まれたら家は終わりだと!」
「あぁー……」
噂……は凄いらしいな。
その話を聞いてはエドワードは少しだけ怯えを、ジャンは好奇心が、ナタリーは……ちょっと遠い目をして自分を見ている。
エルザは……なんだが、何がおかしいのか嬉しそうに小さく笑っている。
「噂は怖いものだから」
「だがっ! 実際に被害も……」
「ストップ、ストップ、マーク。お座り!」
「俺は犬じゃねぇ!」
「ジャン……マークは確かにあれだがまだ犬の方が……いや、マークの方がしっかりしてる」
「お前らなぁ……!」
「まぁ、マーク。お前の心情は実際に見て触れたものを信じるんだろう?」
「あ、あぁ、そうだが」
「なら、実際に見て触れて、聞いたらいいじゃん。実際に目の前に居るんだし」
「マーク。ジャンの言う通りだと思うぞ?」
「ジャン……エドワード……。確かにそうだな。マコト、これから仲良くしてくれ!」
「はぁ……まぁ、はい。でも、エルザとも仲良くしてくださいよ?」
「当たり前だ! エルザさんはこちらからお願いしたい位だ!」
おお……マーク、その……潔いのは良いけれども、周りを見てみ?
エルザなんて、顔をちょっと赤くしてうつ向いちゃってるじゃない。
「おい、マーク……。まぁ、いいか。俺とも宜しく頼む」
「こちらこそ、エドワード」
「あっ! エドワード! ちゃっかりズルいぞ! 僕とも!」
「あぁ、こちらこそジャン」
「…………」
仲良しの握手をしていると視線を感じて、そちらを向くとナタリーが何とも言えない顔でこちらを見ている。
まるで、高圧的に振る舞うべきか悩んでるような?
どう、行動を移せば良いのか分からないような……。
「あんたも、ナタリーか! よろしくな! ちょうど同じ飯の釜を食べた縁だ!」
「えっ……あ……は、はい」
凄いぞ?! 凄いぞマーク……!
まさかの斬り込み隊長だ。
他の皆も呆気に取られているし、何よりも握手に応じたナタリーも驚いた顔で固まっている。
「あっ、なら僕も便乗ッ!」
「なっ、ジャン……俺も、いや、私も……」
「エルザは大丈夫?」
「わ、私も……!」
「…………」
何とも言えない顔は変わらずだけれども、少しだけ照れなのだろう、頬を染めながらナタリーは握手に応じていた。
もしかしたら、素の彼女は……色々と違うのかも知れない。
「さて、そうなると仲良くなれた祝いに僕からデザートをサプライズです」
「デザート……!」
おお、エルザの食い付きが凄い。
それにやっぱり女の子なのか、ナタリーも目を見張るように僕を見てくる。
他の3人は……うん、こちらも変わらずだった。
この世界は甘味は少ないというか……余り美味しくは……だからなぁ……。
「プリンと言います」
「「「「「プ、プリン?」」」」」
おお、5人がハモったな。
ふふっ……では、とくと見よ。
これがプリンだッ!
って、感じで魔法袋から冷たいプリンを出す。
そこにカラメルソースを流して……本当はホイップクリームもと思ったけれども、あれは危険だ。
もう少し……甘味の文化レベルが上がったら出そうとゴードンとも決めている。
「ど、どうやって食べるの?」
「き、綺麗……」
エルザとナタリーは興味津々みたいだ。
スッとスプーンを渡していく。
「どうぞ」
「い、頂きます!」
エルザが一番最初にパクッと食べると、時間が止まったように動かなくなる。
「……お、美味しい……」
一言、声を溢すとパクパクと食べていく。
他の4人も見様見真似で食べては時が止まったかのように動きが止まった後はパクパクと食べていく。
「おい、これ……どこで売ってるんだ?!」
「いや、僕も見たことないよ?!」
「お、落ち着け……2人とも……」
「マコト……本当に美味しい」
「…………」
マークのリアクションが一番大きいけれども、まぁ……皆、衝撃は凄いらしい。
「どこにも売っていませんよ」
「なっ、なんだと!」
「僕の手作りですから」
「手作り……だと……レ、レシピは……!」
「秘密です。それにもう少ししたら、ノルトメ商会で売られると思いますよ」
「ノルトメ商会?! マコトはノルトメ商会と繋がりがあるのか!」
「いや、マーク……噂になってたじゃん。マコトが試験に来た時にノルトメ商会の馬車で来たって」
「そうか、あの話は真実だったか……」
3人組はああでもない、こうでもないと会話を始める。
「マコト……おかわりは無いの?」
「今日は無いですよ」
「…………明日は……?」
エルザの質問に応えると、ポツリとナタリーが小さな声で質問をしてくる。
「明日は……そうですね。作っておきましょう。ほら、後少しで午後の講義が始まりますよ」
「うぉ?! マジか!」
「マーク、口調がお前……また……」
「まぁまぁ、エドワード落ち着いて……よし、僕は先にお先! マコト、美味しかったよ!」
「あっ! ジャン! マコト! 俺も美味しかった! ご馳走さま!」
「おいっ! ジャン! マークッ! ……マコト、うるさくして悪かった。また、明日も良ければ……エルザさん、どうか誘ってください」
「は、はい!」
「では……俺はこれで……ま、待てー!」
騒がしい奴らだ。
まぁ、悪くは無いけれども。
エルザも嬉しそうだし。
問題は……。
「あ、あのッ!」
「は、はい!!」
「……明日も……お誘い……さ、誘いなさい……」
「は、はい」
「……ご馳走さまでした……」
スタッと立ち上がってはナタリーはそう言っては去っていった。
……うーん。
情緒不安定? というよりは……いや、もう少し様子を見よう。
「ちゃんと接待出来たかな?」
「うーん……僕には接待というのが分からないから、何とも言えないけれども。明日もあるから、良かったんじゃないかな?」
「うん。そうだよね?」
「とりあえず、明日のプリンとお昼どうするか考えとくかなー」
「ごめんね……マコト」
「いや、大丈夫。それに皆美味しそうに食べてるの見てて楽しかったから」
とりあえず、そう話しつつまだ食べ終えていない僕は手早くお腹にご飯を入れていく。
「よしっ、じゃあ午後も頑張ろうか」
「うん」
手早く食器類を片付けては午後の授業へと向かう。
そして、夕方以降は魔道具サークル、その後はエルザのお腹の虫が鳴るのを目安に、そこまでは図書館で異人に関しての本を読んだりする生活をするようになっていった。
そして、ある日のホームルームでライアンがそれを口にした。
「そろそろ2年になるな。皆も分かってると思うが2年では武道会と舞踏会がある。まぁ、なんだ昔からの慣例だ。あ、それとこれは既に通達だが、武道会の方はマコト……お前は出場禁止だ。後は……年末のテスト頑張れよ。まぁ、ちゃんとやってれば大丈夫なはずだ。以上だ」
解散っ! とライアンが言って、ホームルームが終わるが、その後のザワザワは中々だった。
「マコト! 流石に出場禁止だな!」
「マークの言う通りだとしたら、そうなるとエルザの指導でもするのか?」
「えっ、ジャンの言う通りなの、マコト?」
「うーん、そうなるのかな?」
あれから約……後少しで1年。
最初はさんや、君付けだったけれども。
エルザからも名前で読んでもよいとなって、随分と打ち解けて来たと思う。
「どうしたの、エドワード?」
「いや、ナタリー……顔が暗いなって」
「確かに……」
「マーク、声を掛けてきたらどうだ?」
「なっ、ジャン。緊張するんだよ」
「なんでなんでー?」
「あぁ、くそッ。行ってくる」
どうやらマークは少しナタリーに興味が出てるらしかった。
それを突っ込むと本人が面白く反応するものだから、ジャンのマークいじりの1つになりつつあるのだけれども、遠目に見てるとマークがナタリーに話し掛けたようだ。
まぁ、ぶっきらぼうなのは本人の性格の所なので、なんとも言えないが、でもそれがナタリーには丁度良いらしい。
最初は高圧的な態度に出そうな雰囲気だったけれども、毒気が抜かれたようにいつも通りにしおらしくなる。
でも、付き合って分かってきていたけれども、どうやらあのしおらしい方が素の性格みたいだ。
どういう理由があるのか、高圧的な態度は必要に迫られて、どうにか取っているらしくみえる。
「ふーん、やっぱりお似合いだね」
「ジャン……」
「なんだよ、エドワードだってマークを見てヤキモキしてるじゃん」
「まぁ、な」
「マコト……そのマークはナタリーのこと、す……好きなのかな」
「どうなんだろうねー」
青春だねぇ。
そう思いながらも、脳裏には武道会の方は欠席としても舞踏会の方へ意識を向けていた。
うーん? 躍りかぁ……。
ま、なるようになるかー。
魔道具サークルに関してはあの怒涛の清掃から、今は清潔に保っては実験を繰り返している。
先輩のルイーゼとアンナは……どちらかというと、だらしが無いのも分かり始めていた。
モーリス先生に限っては未だにお互いに意見交換をしては実験を繰り返してる中だ。
まぁ、良い感じに練られて来たので、本格的に来年……いや、2年からは登録やら動こうと話している。
まぁ、登録やら動く=ゴードンとも久しぶりに会わないとだ。
タイミング見て、会いに行くと行ってから……こんなに月日が経ってしまってるけれども……大丈夫だろうか。
考えると少しだけ頭が痛くなる。
図書館に関してはガンガンと読み進めている。
いや、正確にはパラパラと読み進めつつ、全知全能さんにまとめて貰いつつ、知識を得てる感じだ。
気になった所があれば、そこを重点的に読んだり、全知全能さんから補足を貰っては理解して読み進めている。
最近は規制書物に手を出している。
エルザの方はシルビアといつの間にか仲良くなったのか、お互いにお勧めの本を確認しては読み進めてるみたいだ。
うん、平和な日常だ。
サロンに関しても常に4大貴族が占領してるから、他へのお断りもやんわりと済むし。
問題は……リクエストが多くなった事といつ、ノルトメ商会で販売されるかの確認が凄い事だ。
多分、3人組のせいだろうが、サロンでの食事の話が噂に噂に呼んでは凄いものが出されてるらしいというのと、作り手が僕だというのが分かっているからか、当初の恐れの目とは違って、食欲に囚われた者たちの欲望の目も増えたことが少しだけ……ほんの少しだけ僕への負担になっていたり、なっていなかったりだ。
そう、1年が終えようとしている。
そして、次は2年だ。
学びたいことや、やりたいことも多い。
さて、頑張りますか。
あっという間に1年が……。
マコト、エルザ……それにエドワード、ジャン、マークの3人組、どこか影のあるナタリー。
今後の物語にも出てきそうなメンバーが増えてきました。
2年で遂に魔道具サークルでのモーリス先生との研究&実験した魔道具がお披露目になるのでしょうか?
図書館の方は最初はエルザも読んでいたらしいけれども、自然と魔法関連の方が気になってはシルビアに聞いたりしている間に2人の関係はマコトの知らない所で進んでいったようですね。
ちなみにやんわりとサロンの招待申請を断っているあたり、未だに申請はしている貴族は多いみたいですね。
武道会……俺つえーは出来なさそうですね。
いえ、出来ちゃったら……他の子が悲しい事に。
さて、物語は次は2年に続きますね。
また、よろしくお願い致します。
高評価、ブックマーク、お読み頂いてる方々、誠にありがとうございます。
どうか、これからもよろしくお願い致します。
ではでは。