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11歳!マイナとニコラ誕生。出会い頭の大立ち回り!そして、第2王女の隠密行脚。

今月からデスマーチに入っておりまして、家にも帰れない日々が……(投稿遅くなりました!スミマセン)

さて、それらは置いておいて……。

早くも11歳……!色々とマコト周辺も環境も随分と変わって来ていて……まだ変わるのでしょうか?

《名前》天神アマガミ マコト

《種族》人(半神)

《年齢》10→11

《レベル》25→30

《extraskill》全知全能 Lv7→8

《体力》∞→∞(error)

《魔力》∞→∞(error)

《魔力コントロール》Lv7→8

《身体強化》Lv7→8

《思考加速》Lv7→8

《土魔法》Lv10★

《水魔法》Lv10★

《火魔法》Lv10★

《風魔法》Lv10★

《光魔法》Lv10★

《闇魔法》Lv10★

《聖魔法》Lv10★

《無属性魔法》Lv7→8

《剣技》Lv10★

《槍技》Lv1

《弓技》Lv1

《斧技》Lv1

《鎚技》Lv1

《盾術》Lv1

《体術》Lv10★

《体力回復上昇》Lv7→8

《魔力回復上昇》Lv7→8

《攻撃力上昇》──→Lv5→7

《防御力上昇》──→Lv5→7

《鑑定/解析》Lv10★

《空間転移》Lv1→2

《隠蔽》Lv10★

《収納》Lv6→7

《付与術》Lv1→2

《錬金術》Lv10★


「うーん……これはなかなか……」

1人、ベッドの上で寝転びながらステータス画面を睨み付ける。

あれから、1年の歳月が経ってステータスもまた変わって来ていた。

まぁ、大きく変わったといえば空間転移と付与術に手を出し始めた事だ。

空間転移は収納術にも関連があるけれども、それ以上に座標やイメージ、またはポイントを設定することで、その場所に転移を施す事が出来る。

これは自分の中では大きな事だ。

移動時間の短縮にもなるし、単純に行動範囲が広がる。

ただ、余りにも見聞きしてる人や術者が居ないために、アランさんに空間転移の術者や、それらしき魔法を行使してる人は居ないかと尋ねてみたが、見たことも聞いたことも無いらしい。

もしかしたら、有ったとしても禁術指定かも知れないから、おいそれと人には見せない方が良いと言われたのは懐かしい。

付与術に関しても似たようなものだった。

こちらは職人は確かに居るのだが、秘密主義にしている側面が大きく、知っている人は一握りであり、それで商売が成り立っているとかで……こちらも似たような指摘をアランさんに貰った。

まぁ、使うのは今のところは自分自身や身の回りの限られた人のみなので、その分は良いかと割りきって、熟練度を上げる過程もあっては最近は使っている。


そう、まだ第1の鐘が鳴っていない朝だが、僕がベッドの上に寝転んでいるのは少し前に転移で帰って来たばかりだからだ。

それまでは最近はダンジョンを渡り歩いては近辺のダンジョンを時には沈静化させたり、安定させたり、または自分の目的に合わせては悠々自適に狩りをしていた。


まぁ、実際の本音はここ最近になってまた絡んでくる輩が増えては返り討ちにするのが面倒になってきたというのが大きかった。

最近になって……と言うよりは僕が活動を大幅にするようになって、ダンジョンが安定して活動するようになって、それに合わせて冒険者の生存率や安定した生活が見られるようになって、ここ最近は冒険者家業をする人が増加傾向なのだ。

そして、やはり腕試しや僕のランクが信じられなく挑んで来る輩も相対的に増えて行く……いや、自己責任というか、周り巡るとその原因を作ったのは僕自身なのだから笑えない冗談だ。

けれども、サムさんが四六時中フル稼働で解体のお仕事する位には狩っては欲しい素材を手に入れたり、いつかはダンジョン都市へと向かう予定だが、その予算をたんまりとは貯めれてるので、うん……まぁ、致し方なかろうと思っている。


「はぁ……でも、なんだか面倒なんだよなぁ……」


だが、本音と建前じゃないけれども。

うん、これが本音だ。

それに今日は日中には街中へ繰り出す予定なのだ。


「そろそろ、マイナとニコラが産まれるからなぁ……」

ソナーで2人を診断した時に身体の構造的にマイナは女の子で、ニコラは男の子だと分かっている。

その2人の誕生に合わせて祝いの物を買おうと街中へ行こうと今日は思っているのだ。


一瞬だけれども、奴隷商のゴードンに商品の選定をお願いしてみようと思ったけれども……「イヒヒ、マコト殿。そういう手合いはご自分で選ぶものだからこそ、価値が生まれるのです」と、逆に諭されてしまった。

なんでも揃えられる自信はあるけれども、その価値はお客様自身でしか磨けないと言っていた。

まぁ、分かるような気がしたので素直に頷いた次第だった。


「とりあえず、第1の鐘が鳴ったら行こうかな」


しばらくするとカーン……カーンと鐘が鳴っては僕は階下へと降りてはアイクさんの手料理を食べては出掛ける。

アイクさんも最初の頃は僕が転移で帰って来ていた時は面食らったような顔をしていた時があったけれども、もう慣れたようで、今は普通にお帰りなさいと出迎えてくれる。

スーザンさんはケイトさんと共に今は教会の部屋を2人で1部屋借りきって出産まで泊まっている形だ。

多分、本当にそろそろ生まれると思う。


「では、行ってきます!」

「うん、マコトくん気をつけて」

「はーい!」


そして、軽快に扉を開けてはいつもと変わらない喧騒的になっていく冒険者の街ルソーレの市場へ向けて僕は足を進める。



「ふんふふーん」

と、口笛を吹きながら歩いていたら、ソレは突然やって来た。


「……!! あ、危ない!!」

「……えっ?」


キキーと突然馬車を止めた為に歯車から響く音と、ヒヒィィーンと突然止められた事で苦しそうに呻く馬の声。

とりあえず、僕の背後からソレは突然やって来ては僕を睨み付けては止まっていた。


「き、君は何をしているのだね!!」

「はぁ……?」

「はぁ……とは、なんだね!」

「いや、普通の反応では? ここは特に歩行者が優先されるはずでは?」

「は? い、いや……こちらの家紋が分からぬのか!」

「家紋ですか……知りませんね」

「知らない……?! お前! 知らないとは何事だ!」


ガヤガヤと御者の方は騒ぎ出すが五月蝿いことこの上ない。


「とりあえず、そういう絡みかは分かりませんが、郷に入れば郷に従え、ここのルールは歩行者優先ですよ」

「郷に……? 何を訳を分からない事を……!」

「あー……分からないか」


そりゃ、そうだ。

あの青い星の日本と言う場所の言葉だものな。

分かろうはずがない。

分かれば両手を上げて万歳したら、仲良しのハグものだ。


「どうした……何を慌てている……」

「……ハッ! 騎士様! 目の前の人物がこちらに暴言を!」

「暴言? あー、そう捉えるのか? 教育がなっていないんだな」

「こ、こいつ……!」

「ふむ? 君は少し静かに」

「いや、しかし……!」

「静かに」

「……畏まりました」

「へぇ……上には媚びへつらうのか」

「……!!」


御者の方が怒りで目が血走ったようにこちらを睨み付けて来るが、どこ吹く風だ。

まぁ、自分も最近は絡まれ過ぎて心が荒んでいたのは認めざるを得ないが。


「事情は少しは馬車の中から聞こえてはいたけれども、君は少しは痛い目を見た方が良いと思うがね」

「あー、貴方もそういう口ですか」

「それにこちらの家紋を覚えた方が良い」

「生憎、気にならないもので」

「気にならないからこそ、痛い目を見ると教えてあげよう」

「へぇー。言葉では着飾ってますが、降りてきた所から殺気が漏れ出てましたよ? 半人前ですね」

「ッ……!!」


図星だったみたいだ。

まぁ、顔を見たら直ぐに分かったけれども。

家紋と言うよりはどこぞの貴族なのだろう。

それにプライドは一流的な。

彼の背後には何名か馬車から降りてきていたのと、その背後からも何名か同行者然とした者が一般に紛れているが、全知全能からはしっかりと捉えられていた。


「ま、僕としてもこういった手合いの方が分かりやすいから助かります。最近は絡まれてばかりでコリゴリだったので、ここら辺でしっかりと実力差というのも思い知らせて露払いの糧にでもさして貰いましょう」

「何を言ってる……? それに露払いの糧? 私をこれ以上愚弄するのは辞めて貰おうか……!!」


おや、意外とプライドの塊のような騎士様だったようだ。

抜刀しては即座に斬りかかって来るが、動きは大変遅く見える。


「あぁ……抜いちゃいましたね。そうなりますと、そことそこ。後は隠れていますが分かりますよ、あなた方も叩き伏せます。後はそこに乗っている方も含めて、ね」

「……ッ!!」


乗っている方と言った瞬間に一般に紛れていた者達からも殺気が膨れ上がるのが分かった。

脳内のマップに全知全能さんが捉えた敵と把握した者達が赤くドットが浮かんでいく。


おや……。

予想に反して、乗っている中の人は敵認定はされなかったようだ。


「ま、やることは変わらないけれども。あー、君は遅すぎだよ。うん、お疲れ様」

「何を……ガハッ」


やっと目の前まで辿り着いていた騎士の男性の攻撃を軽く躱しては魔力を這わせては打撃を付与した一撃を思いっきり騎士に繰り出すと、「ガンッ!!」と、叩きつけた場所から打撃と言うインパクトの衝撃波を全身に浴びせては騎士の男性の意識を一瞬で刈り取る。


「ふん、こんなものか……次は誰かな? あー、君は誰かに報せに行くのかな? 行かせないよ?」


ブォン──!!


風の塊と同じく、魔法に打撃を付与しては速度を最大限に早めて、現場から離れようとしていた一般人に紛れていた騎士の意識を同じく一瞬で刈り取る。


「……!!」

「くっ! なんだ、コイツは……!!」

「なんだ、とはなんだ? 君たちから襲って来たんだろう? 意味が分からないよ」

「く、くそ……! お嬢様をお守りしろ!!」

「守るって……あぁ、そっか。中の人も同罪なのか、なら……仕方ないよ、ね?」

「あああぁぁ──!!」


そして、馬車の近くの騎士が一気に抜刀してはこちらへと迫ってくるが、同じく軽やかに躱しては意識を刈り取る。


プシュ──!

シュッ──!


「吹き矢と、暗器か……へぇ、あぁ……殺す気なのかな? それ相応の返しになっちゃうけれども? こんな子供に良く、こんなの使えるよ、ね?」

「ヒッ……」


御者の人は先ほどの威勢はどこへやら、見事にズボンに地図を描いていた。


「あー、君はちょっとみっともないね。お休み」

「ちょ、やめ……ぐへ」


風の塊を放っては同じく意識を刈り取る。


「──ッ!」

「接近がバレバレだよ」

「なっ! 私の隠密は完璧……!」

「完璧ならバレないよ? お疲れ様」

「ガハッ」

「……ッ!」

「挟み撃ち狙いは良いけれども、同じく先ほどの吹き矢と暗器で場所と人数はバレてるんだから、作戦としては破綻しているよ?

分からないのかな?」

「お前はいったい……」

「はぁ……こういうのが増えて嫌だね。お休み」

「グハッ」


一般人に紛れていた騎士の意識を刈り取る。

いや、暗器を使っていたから騎士というよりは諜報部隊みたいな者なのだろうか?

まぁ、僕にとっては今は意味もない事だ。

全知全能さんも空気を読んでか、詳細は伝えてこない。


「さて、後は君だけだね」

「ヒッ……」


抜剣はしているが、馬車を守るようにその騎士は武器を構えていた。


「うーん? なんだか、僕が悪者みたいな感じになってるけれども、君……分かる? 僕が最初に吹っ掛けられたんだよ?」

「……これ以上は進ませませ……、お嬢様は私がお守り……!」

「はぁ……。やるなら徹底的に。隙を見せたら次も襲ってくる輩が居るかなぁ……どうするかな」


ダメだ、目の前の年若い騎士はガチガチに震えてはまだ子供の僕に剣を構えては反応が薄い。


「何事だ……!」


その時だった。

女性の凛とした声が、どうやら僕の大立ち回りに合わせて集まっていた野次馬達を掻き分けては馬に跨がっては現れた。


「これはどうなっている……? それにあの家紋は……」

「あー? やっと、解決出来そうな気配?」

「クリス隊長! お待たせ致しました!」

「遅れてすみません! って、これは……」


「うーん? なんだか、更に面倒な事になりそうな気配?」


あの女性の方が隊長か。

っと、いうよりは騎士様か。

そうなると、このルソーレの街の騎士団の方か?

僕の存在を知っているなら話が早いけれども。


「貴様か! この紋章を分からぬとは! 反逆罪だ!」

「は?」

「……!」


おや、話を聞くこともしない?


「た、助けてくださっ……い!」


あー、終わったわ。

後ろの馬車を守っていた若い騎士の声を聞いて、抜刀しましたわ。

隊長と言われていた女性の騎士も抜刀はしていないけれども、厳しい目でこちらを見てますわ。


「はぁ、喰らうならば毒まで……。やるなら、徹底的に。……やりますか」


うん、諦めた。

無理だ無理。

マイナとニコラの誕生日のお祝いに滅多に絡まれるから出ない日中の街中に出たらこれだ。


「あー、面倒だ。面倒、面倒……お前ら、全員かかってきな。死ぬ気で来ないと死ぬよ?」


ブワッ……と少しだけ、殺気を周囲に行き渡らせる。


「──ッ!」


おお……おお……隊長さんが慌てて抜刀した。

それに更に応援に駆けつけて来た騎士様も臨戦態勢だわ。

後ろの馬車を守っていた若い騎士様も数の有利に震えが止まったのか、安心した顔で自分へ剣を向けてきている。


「全く、愚かだな。守るべき剣も定まらない、実力も思慮も伴わない。嘆かわしいとはこの事だな」

「き、貴様ぁぁ──!」


うん、頭も緩い。

……春か?

いや、春ではないか。

何故かちゃんと春夏秋冬がこの世界には存在しているけれども、位置が日本に近いのかね?


なんて、一瞬違った考え方をしながらも両手に風の魔法と打撃の付与をしては迎え撃つ。


全知全能さんも敵だと認識した者は全て表示してくれる。


「うおおおおおおおお!!!!」

「くそっ! なんだ、コイツは!」

「ば、化け物──!」

「くそ! くそ! くそ!!」

「な、何が起きてい……グハッ」


うんうん、遅い遅い遅い。

カタツムリみたいだ。

それに騎士様の助太刀希望だろう。

年若い冒険者も襲い掛かって来たので、全知全能さんが反応する存在は片っ端から片付けていく。

どんどん、どんどん、どんどん……屍が積み上がっていく。

先に抜刀した女性の騎士団の隊長様も一緒に仲良く転がっている。


いつの間にか、僕の存在を知る冒険者は現場を見ては「アチャー」とした顔しては手を合わせる者。

腕試しと称して、更に迎え撃って来る者。

僕は同じように誰彼構わずに葬り去っていく。


「おいおい……おいおい……なんだよ、これは……おーい!! マコト! ストップだ!!」

「貴様ら! 何を倒れておる! 起き上がれ! 後は、この場は騎士団とギルドが受け持つ! 静まれ!!」


「……グハッ」

「……あれ? アランさんじゃないですか?」

「……はぁ、マコト? また、大立ち回りをしたもんだな」

「まぁ、やるなら徹底的にですよ」

「……やりすぎだ」

「ま、やりすぎだと分かるくらいに襲い掛かってくる人が居るのも活気が良すぎるんですよ」

「うっ……まぁ、それを言われると何も言えないが」

「えっと……それと貴方は……?」

「……色々と話したいが、そうだな……私はここルソーレの街の騎士団の団長のアンドレだ。ギルドと騎士団に応援要請が有って、火急との事で今駆け付けた次第だが……」


どこか遠い目をしつつ、騎士団の仲間だろう存在を見つつ、最後は馬車へと目を向けていた。


「はぁ……」

「……すまん。ちゃんと家紋について教えてなかった俺の落ち度だ」

「……?」

「あー、俺は慣れてるが、マコト? あれは……いや、お前が行け。俺や騎士団長が行ったらビビらせて……怖がってしまうかも知れないから、な」

「うーむ、いや……あー、でもそれが良いのか? 自分の目で見て、確認するのが一番か」

「はぁ……?」

「とりあえず、行ってこいマコト。安心させてこい」

「マコトくんは確か、報告によると11歳だろう? 同い年らしいからな」

「……? 同い年? 中の人が?」

「ほら……!」


シッシッと手を振っては、自分に行くようにアランさんは僕を馬車へと行かせようとしてくる。


まぁ……良いか。

最初から馬車からの反応は敵認定は全知全能さんからはされてなかった。

まぁ、そういうことなのだろう。

無害なのだから、大丈夫だろうし。

最初から、やるなら徹底的にだが、この騒動の刃の納め処に悩んでいたのも事実なのだ。

渡りに船だ。


「行くか」


僕は歩きだしては馬車へと近付いては、コンコンと馬車の扉を叩く。


「……」


うーん?

反応はある。

けれども……うーん?


コンコン──。


「……! は、はぃ……」

「あー、良かった。中に誰も居ませんよ? 的な、例のアニメの展開みたいだと思いましたよ」

「は、はぃ……?」


最初は怖がったような声だったけれども、今のは戸惑う声だろう。

まぁ、急にオタクネタを……更にこちらの世界のネタじゃないのを吹っ掛けられても分からないだろう。

うん、こういうのは有耶無耶にしてからスッと行くのが良いだろう。


「いえ、なんでもありません。それで、こちら開けても良いでしょうか?」

「は、はい……」


「では、失礼……」


キィィ──と、立て付けの悪い音を響かせながら扉を開ける。

いや、立て付けを悪くしたのは僕だろう。


「……華奢?」

「……! きゃ、華奢って何でしょう?!」

「あー、申し訳ない。いや、ありません?」

「……良いです、許します」

「はぁ?」


うーん? なんだ、この子は?

ブロンドのフワフワとした、華奢な……いや、まぁ可愛らしいのだけれども。

あー、可愛らしいのか。


「いえ、少し語弊が可愛らしいと言いたかったのです」

「かわっ……!?」


あー、顔を真っ赤にして時間が止まったらしい。

うーん?

反応が面白い子だ。


「とりあえず、すみませんでした。色々と……いや、僕が悪いのか?」

「えっと……あなたがアレを?」

「アレ? ……あー、アレですね。そうですね、私が1人でやりましたが?」

「えっと……あれ? 私の護衛は国でも精鋭なのですが……」

「精鋭? えっと……あれが?」

「は、はい……」

「それに国でも? 国って……この国? 帝国ウェレギュアの事ですか?」

「は、はい? えっと、それ以外にあるのですか?」

「え? ほら、王国に神国……それに魔王国とか?」

「えーと……流石に魔王国は無いんじゃないかしら?」

「その可能性は無いの?」

「無いとは言いきれませんが……その、私が魔王国の姫に見えますか?」

「えっ? 姫?」

「は、はい?」

「姫って誰の事?」

「えっと……その……」


そして、目の前の女の子は自分を指差す。


「……え?」

「え?」

「お姫様……なんですか?」

「は、はい?」

「帝国ウェレギュアの?」

「そ、そうですが……」

「あちゃー……」


あー、これはやっちゃった奴だ。

うん、やっちゃった奴だ。

あー、そういうこと?

これは痛い目を見た方が……というか、言ってくれよ。

いや、自分が学ぼうとしてなかっただけか?

いや、全知全能さ……んのせいにしたら行けないな……。

それは触らぬ神に祟りなしだ。


「あの、大丈夫ですから……私、見てましたから……えっと、あなたは悪くないというか……」

「はっ! ほ、本当ですか……!」

「は、はぃ……、はぃ……。え、えっと手を……」

「あぁ……! 掴んでしまって申し訳ないで……すみません!」

「い、いえ……」


僕を弁護してくれるっぽい事を当の本人から聞けて嬉しさの余り手を掴んだしまったが、慌てて離す。


「えーと、そうなりますと、どうしましょう?」

「……どうしましょう?」


うーん? コテンと首をかしげる姿は可愛らしいけれども、うん。

そっかぁ……お姫様か。

護衛必要だよね。

うん、僕が一掃しちゃったけれども。

それに隠密でお出掛けだったのかな?

それなら、護りも精鋭じゃないと……僕が倒しちゃったけれども。


「あー、本当にやっちゃった奴だ」

「? やっちゃったとは?」

「あー、いえ、気にしないで下さい。少しお待ち……いえ、1人にするのは危ないですよね」

「い、いえ……多少なら……」

「いえ、何かあれば責任取れませんので……とりあえず、すみません。少し人を呼びますので……あっ、この街のギルドマスターと騎士団長なので、心配しないで下さい」

「わ、分かりました……」


そして、僕は手早く風魔法を用いて、風に音を乗せては届けたい人にだけ届くように空間転移の魔法を織り混ぜて、2人の近くで声を届ける。


「2人ともこちらに来てください。内容は分かりました。やらかしちゃって、すみません」


2人はその声が届いたのは少し驚いた表情をしつつ、僕の方へと来てくれた。


「やっと、事の重大さが分かったかマコト?」

「エルザ様、ご無事ですか?」

「早く教えてくださいよ……避けられませんって」

「いや、マコトが家紋は自然と覚えると言っていただろう?」

「あー……いや、でも王家は流石に街中で会うのは想定出来ませんでしたよ」

「……あー、いや、でもマコトというイレギュラーが居るなら、このくらいは……」

「それを言います?」

「あぁ、言わせて貰う」

「えっと、確か……クリス姉様の上司のアンドレでしたよね? は、はい。私は大丈夫ですが……皆様は……」

「あー、皆は……その大丈夫です。強い力で昏倒してるだけなので……身体が弱かったら打撲痕が出来る位かと。いえ、先に言わせてください。命を取りに来ていた者も居たので、その……少しは大目に見てください。ほら、武器は使わなかったので……」

「はぁ……騎士団からは何も言えん。武装もしていない一般人に……、いや、ブラックランクの冒険者に対してだとしても一方的にここまで武器を構えても返り討ちになっているのだからな。それに国の精鋭の護衛部隊や諜報部隊も同じだ。問題には上がるだろう。揉み消す事もこんなに人が居るならば無理だろう」

「あー……そういう流れですか……」

「マコト、すまん。諦めろ。流石に国が動いたら、庇うのは流石に俺も難しい」

「すまない、マコトくん。私も同じだ。街の騎士団長ごときでも同じように言える」

「はぁ……」


肩を落とすしかない。

やるなら徹底的に……毒を食らわば皿まで……。

その毒の皿は大きな大きな国家権力だったらしい。


「マジか……」


つい、敬語も何もない。

向こうの言葉を使ってしまったが、周囲の3人は何となく、僕が絶望っぽく言ったのは伝わったらしい。


「あ、あの……わ、私も何とか言ってみせますから……その、はい……わ、私……頑張りますから、ね?」


「……よろしくお願い致します」


何とか絞り出した言葉がそれだった。

うん、逆に今は背中を撫でてくれて、お姫様は僕を慰めてくれていた。


「えっと……それよりもお姫様……エルザ様? はどのようにしたら?」

「え、えっと……マコト様?」

「は、はい? あー、様じゃ無くても、良いですよ。僕は一般人で、何者でも無いですから」

「わ、分かりました……。では、マコトさん……えっと、どのようにとは?」

「それはこのまま護衛も居ない、現場は騒然としている。無理じゃないですか?」

「あー……確かに」

「それなのだが……マコト? 俺のギルドマスター室に飛べるか?」

「……」


飛べるか? と言うことは空間転移を2人に知らせると言うことだ。

それはリスクが大きすぎる。

けれども、これを招いたのも一重に自分か。


「はぁ……アンドレさんにエルザ様? 約束出来ますか? 他言無用だと」

「……? 私は良く分からないがエルザ様が護れるのならばお願いしたい。他言無用も分かった」

「わ、私も……良く分かりませんが……他言無用なのは約束致します」

「……まぁ、はぁ……。信じますよ? では、アランさん? 落ち着いたら助けに来てくださいね? 後は、ギルドマスター室にある飲み物とか頂いても良いですか?」

「あぁ、有るものは何でも食べて良いぞ? あ! だが、お酒はアルコールはダメだからな?」

「分かってますよ。では、エルザ様? 僕の手を握ってください」

「は、はい……」

「飛びますよ? 最初は酔うかも知れないので目を瞑るのを推奨します」

「目をですね……、分かりました」


そして、エルザ様が目を瞑ったのを確認して僕は空間転移を発動させる。

空間がグニャリと歪んでは浮遊感に包まれる。

そして、少しの下降する感覚と景色がギルドマスター室へと固定されていく。


トンっ……と、足が地に着く。


「着きましたよ、目を開けても大丈夫です」

「えっと……、は、はい……。って、ここは? あれ? 馬車は?」

「空間転移しました。ここはルソーレのギルドマスター室です」

「空間転移……? そんな魔法聞いた覚えは……古の魔法とかかしら?」

「そうですね、もし皆が知らないのなら忘れ去られた魔法なのかも知れませんね」

「……す、すごい」

「はは……そんなでも無いですよ、まだまだ飛べる範囲も限られてますから」


スキルレベルが上がれば飛距離が伸びるのも分かっている。

付与と同じく将来性が大き過ぎる魔法なのだ。


「さて、と。そうなると現場が落ち着くまでは待機していましょうか? 何を飲みますか? ミルク? コーヒー? 紅茶?」

「え、えっと……紅茶でミルク……多めなら嬉しいです」

「りょーかい」


少しだけ恥ずかしそうに言ってきたけれども、まだ11歳なら子供舌なのだろう。

僕も同じようなものだ。

少しだけ苦笑しつつ、僕は丁寧に淹れる。


「はい、どうぞ」

「ありがとう……ございます……。お、美味しい……」

「それなら、良かった。ここの茶葉は良いものが揃ってるから」

「ううん、それ以上に大切に淹れてくれてるのが分かりますから……」

「そ、そう?」

「はい」


そこからは事件現場が落ち着くまではエルザ様と紅茶を楽しみつつ、お昼を過ぎてもまだ来ないので、魔法鞄からご飯を取り出してはビックリさせては2人で食べて……やっと第3の鐘が鳴る少し前にアランさんとアンドレさん……そして、クリスさん……例の女性の騎士団の隊長さんが室内に帰ってきた。


「悪い、マコト。待たせたな?」

「エルザ様、大変お待たせ致しました。処理に時間を掛けてしまい……」

「いや、結構世間話が……いや、色々と家紋とか貴族や王族に関して教えて貰えていたから助かっていた所だよ」

「はい、私もマコトさんと楽しく話せていたので大丈夫ですよ。それに……クリス姉様……ご無事で良かったです」

「あ、あぁ……。はい、うん……エルザが無事で良かった……」

「ゴホン……クリス。しっかりと謝りなさい」

「ハッ! ……すみませんでした。しっかりと確認もせず、攻撃をしてしまい……」

「い、いえ。こちらこそ、常識に疎く、更に最近はまた絡まれていた部分も会って、似たようなものだと不躾な対応、申し訳ございませんでした」


スッと立ち上がっては頭を下げると、周りの4人は少しだけ慌てた雰囲気を出していた。


「い、いや、マコトくんが頭を下げるのは……命を奪おうとしていた輩も居たのは事実……。手違いからこのような対応は許されるべき事では……」

「そ、そうだ。その辺は父……いや、宰相からも話があるはず私も先ほど、事実と言伝を飛ばしたから、後程謝罪の場があるはずだ」

「えっ?」


ん……?

宰相? クリスさんの父上? ……謝罪の場?

うーん? いや、うん、分かる。

これは呼び出しが有ると言うことだ。

ダンジョン都市は……お預けになりそうな未来が見えた気がした。


「す、すまん。マコト……成人になったら自由になると思っていたが……俺も……出来る限りはサポートはする」

「私も申し訳ない。事が事で大きすぎて、報告しない訳には行かなかったんだ……。大丈夫、手紙では私からも父上……宰相には良くして貰えるように念を押してお願いしておいた」

「騎士団からも、その件はしっかりとこちらに非があったと伝える。だから……巻き込んでしまい申し訳ない……」

「あー……はい。諦めます。どうにかなるとは思いませんから、嫌だったら国を相手取るしか有りませんからね」

「あー……マコト?」

「冗談ですよ」

「そ、そうだよな?」


アランさんだけは僕の実力を知ってるからか、少しだけ青ざめた表情をしていたが、冗談だと分かると胸を撫で下ろして安心した表情になっていた。


「マコトさん……私からも父上に……国王には話しますので……余り実力的には第2王女としては立場はあれですが……頑張りますから……」

「……第2王女なのですか?」

「は、はい……その、一応ですが、継承権は有りませんがクリス姉様も……一応、王家の血を引いています」

「えっ?」

「あぁ……私は騎士団に……騎士になりたくて、王位継承権はお断りして今の立場があるがな」

「な、なるほど……」

「だから、安心してください……。それに私がクリス姉様に会いたいと口実で、外に出掛けたいと我が儘を言ったせいで……本当にごめんなさい」

「ははは……王室は良くも悪くも堅苦しいからな……。それにそろそろ、学校が有るのだろう? その前の息抜きで、外を見てみたいと言うのは分かるものさ」


相当に堅苦しいのだろう。

どこかクリスさんは遠い目をしては同意していた。


「まぁ、もともと12歳からの行動はまた未定だったので大丈夫です。何かに巻き込まれるのもまた冒険だと思います」

「そうか、マコトも後少しで12歳だものな……。ダンジョン都市の予定もあったのに申し訳ない」

「まぁ、謝罪の場? へ行くだけなのでしょう?」

「だと、良いがな」

「不穏なことは言わないでくださいよ」

「そうなりますとマコトさんは今は11歳なのですか?」

「ん? そうですよ?」

「……そうなのですね」


少しだけ、嬉しそうな声でエルザは呟いていた。


「でだ、マコトくんは今日は予定は大丈夫だったのかね? 本来は目的があって、普段は出歩かない日中に出掛けていたのだろう?」

「あー……実はそろそろ産まれるマイナとニコラへの生誕のプレゼントを買おうと思いまして……」

「……! ニコラのプレゼントか! それはありがとう!!」


おお……急にアランさんがパパの目になってしまった。

親バカ……という筋金入りの症状だから……もう、アランさんは使えないだろう。


「う、うむ。アラン殿の産まれてくる息子殿のプレゼントか……」

「今日はもう遅い……」


カーンカーンと丁度第3の鐘が聞こえてくる。


「はい、今日はもう遅いので、明日にでも市場に見てみようかと」

「……」

「どうしましたか?」

「わ、私も市場……見てみたいです」

「えっと?」

「マコトくん、すまない。良ければ……案内と護衛をしてくれないだろうか? エルザは王室に居たものだから、外の世界は知識はあれど、実際の景色は疎いんだ……」

「……お願い出来ますか?」

「……はぁ。分かりました。乗りかかった船です。任せてください。頼って貰って良いですよ」

「助かる……!」

「ありがとう! マコトさん!」


乗りかかった船だ。

仕方ない。

それに1人で買うよりは女の子の視点も交えて買うのは良いだろう。

うん、そんな理屈を加えながら、僕は明日、エルザ様と一緒に街の市場へ買い物に出掛ける事に決める。


「えっと、それで明日はどの様に合流すれば?」

「あー! エルザは私の別荘に一緒に過ごすから、その期間は私の別荘に来てくれたら、マコトくんを通すように家の者には伝えておこう」

「分かりました」

「明日……! 宜しくお願いしますね?」

「畏まりました」


そして、行儀良く礼を取ると、アンドレさんとクリスさんは少しだけ虚を突かれた様な顔をして、エルザ様は少しだけ嬉しそうに微笑むのだった。


そして、翌日。


「うーん……!」


しっかりと伸びをして木窓を開けては外の陽射しを室内に取り込んで目を覚ます。


「ウォーターボール」


ポチャンとタライに落として水を溜めては「ファイアーボール」……をソッと落として、お湯にする。


うん、そして、身綺麗にしては髪を整えて服を着て……よし、大丈夫かな?


「おはようございます」

「おはよう、マコト。昨日は大立ち回りだったみたいだね」

「すみません……」

「良いんだよ、マコトくんらしくて逆に安心だよ。ご飯はどうする?」

「軽く頂いてから行きます」

「なら、少し待っててね」


アイクさんは嬉しそうに笑いながら厨房に入っていく。

うん、他にも宿泊している冒険者の方も居たが、皆まったりと過ごしている。

まぁ、僕の日常はここに居る人達にとっては当たり前の範疇なのだろう。


そして、アイクさんの手料理を軽く堪能して僕はクリスさんの別荘へとエルザ様を……エルザを迎えに来た。


「すみません、マコトと申します」

「おや、お待ちしておりました。すぐに案内の者を寄越しますので、少々お待ち下さいませ」


外に立っては……僕の事を待っていたのだろう執事さんが僕が声を掛けると直ぐに家のメイドを呼んでくれる。


「お待たせ致しました! えっと、エルザ様がお待ちしております。案内致しますので、着いてきて下さると助かります」

「はい、分かりました」


そしてメイドさんの案内で別荘の客室に案内されるとエルザが既に待っていた。


「街娘然の姿なのに……気品さが醸し出されてて……ははは、不思議な感じ」

「え、えっと、これでも頑張ったらしいのですが……」


僕の評価は自分でも思っていた事なのか、少しだけクルクルと回りながらエルザは困ったような表情をしていた。


「まぁ、僕が隣を歩けば街娘っぽくなるかな? 僕はそんなに目立たないからね」

「えっ? いえ、そんなことは……綺麗な黒髪で……綺麗な瞳で……」

「大丈夫、大丈夫……そんなに言わなくても、分かってるから」

「えー……?」


ちょっとだけ、不満そうな表情をしているエルザに手を差し伸べると嬉しそうにしながらも、ソッとその手を繋いでくれた。


「一応、街中は何かあるか分からないから、手を繋ぐのは許してね」

「えっ? いえ、そんな……」

「後はゆっくり見て回ろうか。僕もどんなプレゼントにするか悩んでるからさ」

「……えっと……はい。」


ちょっとだけ、不満があったのだろうか?

うーん? とりあえず、でも嬉しそうな表情もあるから大丈夫かな?

僕とエルザは街中……市場へと出掛ける。


「これも良いね……」

「は、はい。それにしても人が沢山です……」

「王都は人が多くないの?」

「いえ、王都は人が多いそうなのですが……私は基本的には王室に居ますから……」

「そっか……」


市場の中で、僕たちだけが少しだけ切ない雰囲気になってしまったかも知れなかった。

エルザがお姫様だと知ったのは本当に先日だ。

その生活はどんなものかは僕には想像しがたいものなのだろう……いや、聞いてみれば良いのか。


「エルザは普段はどんな生活だったの?」

「私ですか……? 私はずっと家の中で、家庭教師がついては常に学んでいましたね。本当にそれだけです」

「そ、そっか……」


あちゃー、流石に王室とは言わなかったけれども、生活スタイルは想像し難く……はなかった、容易に想像できてしまった。

常に、生活とは学びだったのだろう。

まぁ、確かに年相応の所は随所に垣間見える時はあるけれども、それだけなのだ……。

僕なら発狂ものだろう。

いや、でも前世? あの世界では起床から学んでは更に学ぶ時間を設けていたから……そんなに変わらないのか?


「んー?」

「? どうかしましたか?」

「あー、いや、何でもないよ。少しだけ考え事をしていただけだから」

「? そうですか……」


流石に前世の話をしても仕方なかろう。

それに前世といっても違った異世界の話だ。

この世界に異世界人という認識があるのかは分からないけれども、むやみやたらと話すことではないと自分でも分かる。


「あっ……これとはどうですか?」

「これは……確かに良いかも」

「ふふ……良かった」


エルザが嬉しそうに微笑むのを見つつ、選んでくれたペンダントを見る。

魔石を嵌め込む形のペンダントで魔石も付与された物なら魔力を流せば効果を得られる物に出来るだろう。


「うん、これなら良さそうかも」

「満足いく結果になりそうですか?」

「そうだね。後は嵌め込む魔石だけれども、これは僕が幾つかあるから見繕えば良いかも」

「……なるほど」

「そうなると、これを購入して作製に入ろうかな」

「……」

「ん? どうしたの?」


少しだけ、どんなものを付与するか考えていたら、こちらをジッと見てくるエルザがいるので、つい問い掛けてしまった。


「あっ……いえ……その、作製するのを見られたらな……って」

「うーん? 別に構わないけれども、面白いものでもないよ?」

「! 良いのですか? えっと……嬉しいです!」

「そ、そう?」

「はい!」


エルザが大変嬉しそうな表情をするものだから、自然と頷いてしまった。


「あれ? でも、困ったな……そしたら、どこで作製しようかな。自室でやろうと思ってたけれども……」

「クリス姉様の別荘ではダメなのですか?」

「うーん……」


付与とか錬金術は余り見られたくないというのが本音だ。

いや、使える人は限られているし。

何故、使えるのかと話が出回れば面倒なことになりかねない。


「私から誰も入らないようにお伝えしますが……」

「そっか、それなら別荘でお邪魔しようかな?」

「はい!」


ニコニコと微笑むエルザを見つつ、頭では全知全能さんに一応、周囲の警戒を頼んでみる。

久しぶりに頼られたのが嬉しいのか、一気に色んな情報が得られてビックリしたけれども、ポーカーフェイスが上手くなったのだろうか? 表面的には驚いた反応はしなくて済んだのだった。


「誰も入ってはいけませんよ……? 良いですね? 良いですね?」

「「は、はい!」」


おぉ……凄い、念押ししてる。

いや、確かにエルザが扉を閉めてから、しっかりと皆離れてるようだ。

全知全能さんも離れてるのをお墨付きしてる。


「本当に離れてくれてるみたい」

「……? 分かるのですか?」

「うーん、ちょっとだけだよ」


少しだけ笑って誤魔化す。

誤魔化すくらいしか出来ないからね。


「さて、ではやろうかな……。どうしようかな……やっぱり赤ちゃんの頃は大変だから……お母さんの負担が軽くなるようにあれかな……」

「……? 魔石に何かするのですか?」

「あー……そうだね。付与をしようと思って」

「付与……ですか? ですが、それって専属の人しか出来ないと教わりましたが……」

「だから、内緒だよ」

「内緒……。わ、分かりました!」


なんだか、2人だけの秘密っていうのに嬉しそうにエルザははにかんでいる。

その間に魔法鞄から手頃な品質の良い魔石を取り出す。


「白い……魔石ですね?」

「そうだね、聖属性の強い魔石かな」

「これが……そうなのですね。綺麗……」

「ちなみに光属性も少しだけ似ていて、でもこっちは淡い黄色が混ざったような感じだから……見間違えないようにね」

「確かに学びはしましたが……実物はなかなか……」

「実物は余り見ないの?」

「いえ、学ぶ機会の時は見る時もあるのですが……そこまで覚えられなくて……」


ちょっとだけ恥ずかしそうにエルザが笑ったので、自分も勉強はそんなものだよと笑い返した。


「さて、まずは大きさをペンダントのサイズに合わせないとね」

「どうするのですか? 工房とかで普通はカットして合わせるのですよね?」

「普通は、ね。でも、僕は……」


魔石をフワッと風魔法を応用して浮かせて、錬金術を発動していく。

フワッと浮いた時点で目を丸くしてエルザは魔石を見ていたけれども、魔石が輝きを放っては大きさを凝縮されていくのには更に目を見開いていた。


「うーん、もう少しだけ小さいかな。そうなると、もう少しだけ……うん、このくらいかな」


コトンっと、フワフワと落下していき、錬金術で大きさに合わせて凝縮された魔石が机の上に転がる。


「なに……これ?」

「ん?」

「魔石……って、自由自在に大きさが変わるの……? 私、そういうのは学んでない……」

「うーん、錬金術の真髄にも近いから……それに魔石を弄るのはそれなりに魔力も必要だから……出来ない人が多いのかも?」

「え? でも、マコトさん……マコトは簡単に出来て……」

「ははは……マコトって呼んでくれたね。その方が楽で僕は良いよ」

「……! あっ、うっ……」

「あぁ……ごめんごめん。意地悪みたいになっちゃったね。うん、錬金術というのも秘匿された技術みたいだから、内緒でお願いね。それに僕はほら、ブラックランクだから、魔力が多いんだよ」

「そうなの?」

「そういうことにしておいて貰えると助かるかな?」

「うー……わ、分かった」

「うん、お願いね?」

「……そ、それで、その魔石に付与? をするのよね?」

「そうだね、今回はピュリフィケーションにしようと思っているよ」

「ピュリフィケーション? どうして?」

「ほら、赤ちゃんは結構汚しやすいからね。衛生面も関してかな」

「なるほど……」

「それに変に豪華だと狙われちゃったり大変だからね」

「確かに……でも、この魔石は……その綺麗よ?」

「うーん、そこら辺はギルドマスターに、元ゴールドランク冒険者の子供だから……その時の良い品質の魔石だと思われれば普通だと思うかな?」

「なるほど……」

「ま、そういう訳で、この魔石にピュリフィケーションを付与するよ」


そう言って、元の大きさからペンダントに嵌め込むサイズに凝縮されて、輝きも増した魔石にピュリフィケーションの魔法を付与していく。


魔石内にピュリフィケーションの魔法式を刻んでいく要領だ。

まぁ、魔法の発動を誘導する装置と言い換えても良いかも知れない。

僕はこれがピュリフィケーションの魔法式だと全知全能から得られてはいるけれども、人によっては時が経過することで認識にズレが生じているかも知れないからね。


ただ、この魔石にピュリフィケーションの魔法を付与していく過程も魔石が輝いては僕が魔力を流してる光景は端から見たら幻想的なのだろう。

エルザは殊の外、目をキラキラに輝かせながら僕の手元を見ては付与魔法の光景を目に焼き付けるように見ていた。


「うん、良い感じかな」


魔力を流してみて、ちゃんとピュリフィケーションが発動するのを確認する。

対象は身に付けている人だ。

だから、親が汚れてしまっても身に付け変えたら同じく効果を得られるのも大きい。


「す、凄い凄い……!」

「ぉ、ぉぅ……」

「あっ……私ったら……ごめんなさい」

「あぁ……うん、大丈夫。なんだか、僕がちゃんと魔法を使うと皆同じような反応をするから慣れてるから」

「そ、そうなのね……ちなみに誰かしら?」

「え? アランさんに、その奥さんのケイトさん。それに僕が寝泊まりさせて家族だと言って貰えているスーザンさんに、その旦那さんのアイクさんかな?」

「……私が5人目?」

「あー……確かに、そう数えると5人目だ」

「それって結構、大変な事なんじゃない?」

「確かに。うん、絶対に秘密で頼むよ?」

「は、はい……えっと、うん。分かった……約束する」


凄い意思を持って頷いて来てくれて嬉しいけれども、その気迫に押され掛けていた自分も居た。


「とりあえず、もう一式作るから」

「……! お願いします!」

「う、うん」


なんだろう。

凄くすごーく、エルザさん、いや……エルザ様が構えて見てくる。

とりあえず、まぁ、作ることにする。

これはニコラの分だ。

まだ見ぬ、2人を想いながら僕はペンダントを作り上げるのだった。


それから1週間後の事だった。

教会から火急の連絡がアイクさんとアランさんに入っては2人は未だに見たことがない顔と速度で教会へと向かっていってしまった。

ギルドではあのマスターが普段が……いや、前まではダラけ放題だったアランさんが動いたと話題にあがって、アイクさんも普段はしっかりと仕事をこなして柔らかい雰囲気なのに、急に人が変わったようにお仕事を放り投げて決死の表情で教会に向かったものだから、あれがパパなのか! と、宿泊者でも話題にあがった。

……まぁ、僕はアイクさんが放り投げたお仕事を片付けてから、急いで向かった。

ちゃんと手元にはあのペンダントを持ちながら。


「オギャァァ……オギャァァ」

「オッギャ……ギャ」


教会に着いては待合室に通されると、待合室の向こうから元気な赤ん坊の声が早速2人聞こえてきた。


「おぉおおおおお!!!」

「こ、これが……僕たちの子供!」


アランさんとアイクさんの魂の咆哮が聴こえてきた。

うん、感動なのだろう。

感動なんだろうな……なんだか、緊張してきた。

前世では……あれ……そっか、子供とかは出来なかったのか。

なんだろう、前世に関して少しだけ記憶が垣間見ても、前みたいな頭痛は起こらなかった。

けれども、また記憶が揉み消されていくような……。


バタンっ!


そのタイミングで扉が開いてはアイクさんとアランさんが僕を迎えに来てくれた。


「マコト……!!」

「マコトくん!」


2人の後ろに教会のシスターも出てきては入室しても良いと案内される。


案内された先ではケイトさんとスーザンさんが、それぞれ元気な男の子と女の子……。


「ふふふ、マイナよ」

「ニコラよ」


そう、2人が憔悴しきってはいるけれども、満たされた顔で僕へと2人を紹介してくれる。


「……!」


なんとも言えない、幸福感が僕を襲ってきた。

祝福したい。

そう自然と思った。

それと同時に魔力を大きく吸われたけれども、全知全能さんが祝福の仕方を教えてくれる。


「この尊い生命に祝福を……加護を」


そっと、マイナとニコラの手と呼ぶのには小さすぎる手をそっと触れて僕の半神……神としての加護を2人にそっと授ける。

僕の言葉を聞いて2人は先程までは泣き叫んでいたのにキョトンとした顔で僕を見てきたので、ニッコリと微笑んでは頷いた。

それを皮切りにまた2人はこれがお仕事なのだと産声をあげ始めた。


「えっと、今加護って聴こえたような?」

「気のせいですよ、これから宜しくねと言ったのです」


アイクさんには軽く聴こえていたのか、そう聞かれたけれども、首を振ってはそう答えておいた。

うん、アイクさんも今は感動でそこまで覚えては居ないだろう。


マイナとニコラのステータスを見てみると、extraskillの部分にしっかりと《天神真の加護》と載っている。

まぁ、加護の効果は2人が順調に安定した歳まで育つまでで、その加護も出来る限り大きな怪我や病気に見舞われないようにおまじないに近いものだ。

うん、普通にステータスを覗き見ても分からないようになっているし大丈夫だろう。


「あっ、そうだ。2人にはプレゼントがあります。後で、アイクお父さんと、アランお父さんにお渡ししますからね」


そう、まだ言葉の分からないマイナとニコラに言うと、背後ではお父さんというワードに見るからにデレッとした2人が居た。


そして、2人には誰も聞かれていないのを確認してプレゼントのペンダントとその効果を軽く説明する。


「良いのかい? こんな高価な物を……」

「僕の方もだよ」

「2人にはお世話になったので」

「そんな、お世話だなんて、俺はお前にマコトに助けられてばかりだよ」

「僕もだよ。スーザンのことは君が居てくれたから、今この幸せに立ち会えているんだ」

「嬉しいです。そう言って貰えて、僕もこの幸せは2人に出会えたからだからこそと思っています。だから、受けっと下さい。それに後少ししたら、王都から御手紙が届くとクリスさんとエルザは言っていたので、僕がルソーレの街から旅立つのはそろそろだと思いますから……」

「そっか、悲しいな。出る前はケイトに会ってくれないか? あいつも心配していたからな」

「僕の方もスーザンに会って貰いたい。マコトくんを抱き締めたいと言っていたから。お願いだよ?」

「……はい! 絶対に会いに行きます」


そして、そのままアランさんとアイクさんは一緒に教会で寝泊まりするらしく、僕はアイクさんの変わりに働くのも含めてマイナの宿亭に戻る。


それから、数日後には王都から予想されたようにクリスさんとエルザに向けて手紙がお返事が返ってくる。

そう、僕のこともしっかりと書かれた内容の手紙だ。

僕の12歳に向けての人生はまた大きく変わろうとしていた。

応援頂けましたら、励みになります……!

いつもお読み頂けてる方はありがとうございます!

遂にまたヒロインっぽい子が?!

っと思った矢先に王都ウェレギュアに御呼びだしされそうな予感。

一体全体どうなることやら……。

マコトの幸先に幸多からんことを……。

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