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拉致犯グループの行方、正規、非正規。そして、変わり行く日常。

やっぱり闇の組織って居るんですね?

結論から言うと、第3の鐘には間に合わなかった。

冒険者の街ルソーレの城門は閉じられてしまったので、臨時の門から詰所を通ってから街に戻る。


「おう! マコト! お疲れさん! ……って、どうした?」

「あっ! エリックさん、お疲れ様です! いえ! 急いでまして!」

「そっか、呼び止めて悪かったな! 気を付けろよ!」

「は、はい!」


詰所に丁度居たエリックさんとも軽く挨拶を手短に済ませつつ、冒険者ギルドへと急ぐ。


「……あ、でもケイトさん今日は……」


そうだった、朝方出る時はスーザンさんと落ちていたような。


あれ? 回復してるのかな? 冒険者ギルドに居るのかな?


「うーん? いや、でも急いでるし……とりあえず、なるようになるか?」


うん、考えるのを放棄したとも言える。

これもまた冒険さ……!

どこかで全知全能さんの溜め息っぽいのが感じた気がするけれども、気のせいさ。


「さてと……ケイトさんがダメなら……アランさんかな?」


冒険者ギルドの裏手側から、勝手知ったる他人の家のように入ってはアランさんを呼んでみる。


「ギルドマスターですか……?」

「うん。火急の知らせと言って貰えたら……」

「わ、分かりました!!」


わぉ! 職員さんが疾風のごとく走り去っていった……。

なんだろうね、いくつかダンジョンを踏破したり功績を残してくうちに、魔石の提供量やら、確定したのはブラックランクに昇格したタイミングだろうけれども、職員さんの対応が子供を見る目から対等の……いや、一流の冒険者のそれと同じような扱いになった気がする。


「ど、どうした? マコト?」

「あっ、アランさ……ん?」

「ん? どうした?」

「アランさんですよね?」

「そうだが?」

「そうですか。見間違えましたね……」

「あぁ、この姿か。まずは見た目から入ろうと思ってね。周りからは同じように言われるさ。まぁ、格好いいパパへの第1歩さ!」

「は、はぁ……」


いつもはちょっとダウナー系な雰囲気のアランさんがピシッと決めてる姿になっている。

違和感が……強いっ!

いや、これがパパ効果なのか?!

そう言えば、アイクさんも何だか若返ったというか艶っぽくなったような気がしたな……。

あれ? おめでたとかなって覚悟決まるとそんな効果が出るのか? いやいや、そんなバナナ。


うん、まぁ、それは横に置いておこう。


「ごめんなさい、終わり間際の時間に。でも、連絡は急ぎの方が良いかと思いまして」

「ん? それは一体どういう……いや、分かった。俺の部屋で聞こう」


一瞬怪訝な顔をしたアランさんだったが、すぐに察したのかギルドマスターの部屋へと僕を招き入れてくれる。


「俺はブラックだが、マコトはどうする?」

「砂糖とミルクが欲しいです」

「あー、ミルクか。ミルクは……どこだ? ケイトー……は居ないもんな。……ミルク無しはダメか?」

「大丈夫ですよ、砂糖だけでも」

「そっか、すまんな」

「いえいえ」


うん、アランさんはアランだった。

本当にまずは見た目からだったらしい。

ケイトさんが居ないとダメというのもあるのかも知れないが、良く見て知っていくうちに、ケイトさんが全てをやりたがるから、自然とアランさんがダメンズになってしまってるようには見えていた。

ケイトさん……恐るべき女性だった。

良くも悪くも、アランさんは身も心もケイトさん無しでは生きられないように骨抜きにされている一端が垣間見えてしまった。


「あー、じゃぁ、これ砂糖と珈琲だ。珈琲は詳しく無くてな……ケイトが美味しいというのを毎回置いておいてくれるんだ」

「な、なるほど……」

「いつも、淹れて貰ってしまってるから、こうやってたまに自分で動いて淹れられるのが楽しいんだ。ははっ! 可笑しいだろうけれども、秘密だぞ?」


くっ! ……アランさん! 健気ッ!

いや、健気なのか? と、意味合いに疑問を持ってしまったが……何だろう、アランさん……頑張ってください。


「それで、火急の知らせとはやっぱり先日ケイトから話されていたと思うが、エルフの里付近の不穏な気配の調査依頼の件だよな?」

「は、はい。ある程度、情報を出揃えて、後は進展と報告しなければいけないことが出てきたので、急ぎ戻ってきました」

「ん? そうか……。普通ならこのスピードはあり得ない事なんだが、マコトだものな」

「まぁ、その一言で片付けられてしまってるから、何とも言えませんが……その認識でも良いです」

「まぁ、事実だから仕方ないだろう。それに最近はもう、あれだよな……。察しが良い奴はマコトには気付いてるだろう?」

「そうですね、アランさんでも分かりますか?」

「まぁ、な。少し早いけれども、身の振り方を考えていった方が良いかも知れないな」

「ケイトさんとも似たような話をしました。とりあえず、良く考えてみます」

「あぁ、そうしてみてくれ。冒険者ギルド、俺個人としても出来ることなら手伝うからな」

「……ありがとうございます」


うん、アランさん良い人。

あれから早くて2年。

それなりの期間を過ごしていて、この人の人柄の良さは好感を未だに持てている。


「あぁ、話の腰を折ってしまってごめんな」

「いえ、大丈夫です」

「それで、なんだ……とりあえず、まずは全部聞こう」

「それだと助かります。長くなりそうなので」

「分かった」

「まずは、早朝マイナの宿亭から僕は件の場所の調査の為に駆け出して向かいました。それで、現場付近の魔の森に近づいたので速度を落として周囲を警戒しつつ調査をしようとしていたら、遠くから女の子の助けを求める声と、男性の野太い声が数人分聞こえて来たのです。それで、警戒心を高めつつ、僕は近付いて見るとエルフの女の子を拐おうとしていた誘拐犯グループとかち合いました。そのまま、誘拐犯グループは生け捕りには出来なかったのですが、亡骸はマジックバックにしまってはエルフの女の子を助ける事が出来まして。そのまま、調査をしつつ、エルフの里に近付いていたようで、エルフの守人が現れたので、彼らに女の子を預けて、事情を説明して、今回は実害が無いので責任の追及は無かったのですが、説明する為に件の誘拐犯グループの亡骸を見せては説明をし、身柄はこのまま僕が持ち帰る事を許して貰えたので、急ぎ報告をしないと判断して、この場まで来ました」

「……今日1日で、そんな濃い体験をしたのか?」

「……はい」

「……はぁ」


アランさんの長い溜め息は久しぶりに聞くな。

これはだいぶ深刻なやつかも知れない。


「そっか、まずはマコト……ありがとう。多分、ベストな判断だ。1歩間違えればエルフとの交流にヒビが入っては大問題に発展していてもおかしくは無かったはずだ。未然に防いだ事と、出来うるなかでのベストなフォローをありがとう」

「い、いえ……!」

「いや、本当にありがとう。結構な深刻な問題なんだ。一時期は王自らがエルフの里まで赴いて侘びを入れたという位なんだ」

「えっ?」

「密約の話は聞いた事あるか?」

「はい、軽くケイトさんには触れて貰いました。内容は分かりませんでしたけれども」

「そっか、ブラックランクになったマコトになら伝えても大丈夫だろう」

「何か分かっているのですか?」

「まぁ、な……。マコトはどうして魔の森から、魔物が常日頃から溢れて来ないか分かるか?」

「うーん……」


いや、全知全能さんが反応しようとしたけれども……全知全能さんを自身が敢えて、考えられるようにスルーした。


「まぁ、ピンと来ないよな。まぁ、単純な話でエルフの里があることが大きい」

「そうなのですか?」

「あぁ、エルフの里は魔の森の中に位置しながら結界を保っている。その結界の余波があって、俺たちの街とかへの魔物の侵略が抑えられてるって側面があるんだ」

「なるほど……あれ、そうなると帝国の立場って」

「あぁ、話だけで見るとエルフの里に守って貰ってるような印象になるよな。いや、ある程度は冒険者で間引いたりとか、国の近衛などの騎士団体が定期的に討伐しているみたいだが、まぁ、何て言おうが結果論としては守られているっていうのが正しいかも知れないな」

「……不味くないですか?」

「あぁ、もう気付いたか?」

「えぇ、そのエルフを拐っては隷属の首輪で奴隷落ちにさせては高位の物好きな貴族連中が飼っているなど聞かされましたから」

「そうだ、不味い。いや、対外的にというのもあるが、現実的にもだ。結界の余波がコントロール出来るなら、それが来ないようになれば、今この一瞬で魔物が魔の森から人の街へ、その牙を向けて来るのかも知れないのだからな……」

「想像はしたくないですね」

「あぁ、本当にだ。それで実行犯はマジックバックに有るんだな?」

「は、はい」

「そっか、蛇の道は蛇だな。冒険者ギルドでも懇意にしている奴隷商をこれから連れてくる。ちょっと待っててくれ」

「この時間帯でも大丈夫でしょうか?」

「……多分、大丈夫だろうな。彼らは歴とした商売人だ。それに正規で真面目にやっている奴ほど、今回みたいな件は反吐が出る程、嫌なはずだからな」

「そういうものなのですね」

「そういうものだ。少し待っててくれ」

「分かりました」


そして、アランさんは僕を残してギルドマスター部屋から出ていく。

手持ち無沙汰になった僕はとりあえず、砂糖を入れた珈琲を啜ってみるが……うーん、まだ子供舌なのだろう、苦味が美味しいと感じるのはまだ遠いみたいだった。


そんなこんなで待っていると、ドタドタと音がしてくると思ったら部屋の扉が開かれてはアランさんと、もう1人……見るからにちょっと私怪しいですよ? って、露骨にアピールしているシルクハットとタキシードスーツを着こなした丸い人が入ってきた。


「待たせたな、マコト」

「いえ、そんな待っては……」

「あ、あぁ……。そうだよな、そんな反応になるよな。分かるぞ、俺もなったからな」

「ウヒヒ、そんな事もありましたな」


ウヒヒ……?

なんだ、この特徴的な……怪しい人は?!


「イヒヒ、それであなた様が最近巷で噂の麒麟児ですかな?」

「え? 麒麟児……?」

「おやぁ? ご本人はまた御存知では無いとぉ? これはこれは……イヒヒ」

「えっと……? アランさん……この方は?」

「あー……そうだな、そんな嫌な顔をしないでやってくれ。これでも非常に有能というか、なんというか……俺も言うのも変だが信用はしていい」

「えぇ、えぇ、人と人との商売。信用が1番ですから」


うぉ、真っ当な事を言ってる。

姿や雰囲気は見事に怪しさ満点なのに?!


「では、私めはご紹介に預かりました……。我がノルトメ一族が経営するノルトメ商会の奴隷商を商っている、私……ゴードン・ノルトメと申します。以後、ゴードンとしてお見知り置きを頂きたく存じ上げますゆえ」

「えっと……ノルトメ商会……?」

「あー……そっか、マコトは基本的には必要なものは自分で揃えてしまうものな……」

「おや? 我が商会を知らないと? ふむ……それはまだまだ研鑽が必要みたいですな」

「あっ、まともにも話せる……ん、だ……」

「イヒヒ……どちらもいけます、よー?」

「……」


うっかり、言葉を溢してしまったが、しっかりと拾われてしまった。

ゴードン……やりよる。


「それでノルトメ商会とは?」

「あー、すまんな。マコト……ノルトメ商会は……帝国でも1、2を争うくらいの大商会なんだ。他国……王国や神国にも出店してる位だ」

「へぇー……って、凄くないですか?」

「いえいえ、まだまだで御座います。目の前に我が商会を知らない麒麟児がいらっしゃる位ですから……ウヒ」

「……いえ、なんか……すみません」

「いえ、これから仲良くさせて頂けましたら、私めからは何も申すことは有りませんゆえに」

「はぁ……」

「まぁ、そんな溜め息を溢さないでやってくれ。ゴードンは一応、一族の中では……いや、一族皆こんな感じだが、その中でもポジションは別格なんだ」

「いえ、私めはもう隠居みたいなものですよ。後は若い世代に託すのみですよ……イヒ」

「何を言ってるんだか、ゴードン……お前が1番取り扱いに気を付けないといけない奴隷商をすることで、その他を自由にさせて学ばせているのだろう?」

「おや? 経営の目がおアリで?」

「やめてくれ、俺はこのギルドマスターとしてで一杯だ」

「それは残念……ウヒヒ」


何だか、仲良さそうですね……。

意外とお互いに付き合いは長いのだろうか?


「あー、さっきからすまん。どうも、コイツと居るとテンポがズレるんだ」

「あー、何だか分かりそうな気がします」

「イヒヒ……ズレてもしっかりと合わせますので安心してくださいませ」

「「……」」

「……さて、私めがここに呼び出された理由は何で御座いましょう?」

「マコト、やっとだ。すまない、待たせて。まだしっかりとゴードンには説明していないんだ。説明するのが面倒だったと言うわけでは……無いのだが……と、とりあえずだ。まずは先の話して貰った誘拐犯グループを出して貰っても良いか?」

「このまま、この部屋で大丈夫でしょうか?」

「構わない……が、後でピュリフィケーションをお願いしても良いか?」

「分かりました。では、出します」

「おやおや? 何が出てくるんですかねぇ?」


そうして、ゴードンは少しだけソワソワする様子を見せて……いや、もしかしたら演技かも知れないが、自分が何を取り出すのか待っているので、気兼ね無く自分は先ほどマジックバックにしまった犯人達の亡骸を部屋に出す。


「ふぅむ……? ほうほう……これはこれは……説明を頂いても?」

「あぁ、構わない……が。何か分かりそうか、ゴードン?」

「ふぅむ、詳しくは聞かないと何とも言えませんが……彼らの首筋から覗くマークには見覚えがありますねぇ……イヒ」

「首筋か……ちょっと、待っていてくれ。マコト、そっち側を頼めるか?」

「ええ、問題無いです」


首もとが隠れる服を着ていたので、首もとが見えるように服をはだけると、首もとに描かれた入れ墨が見えた。


「ジャハトか……」

「ジャハトですか……?」


初めて聞く言葉だな。


「知らないのも不思議なものですね……?」

「あぁ、ゴードン。マコトはたまに常識が疎い時があるんだ……いや、最近はほとんど無いのだが、そっか、この手の話はしないものな」

「ふむ、左様ですか。ですが、赤子は……分かりませんが、物心付く子供には与太話としては聞かされそうなものですが……イヒ」

「色々あるんだ」

「えっと、それでジャハトとは?」

「えぇ、えぇ、では、私めから。ジャハトとは魔王国とは分かりませんが、帝国、王国、神国を跨がっては根付いてる暗部で御座います。非合法、非正規でまかり通っており、存在が怪しまれておりますが、共通しているのは首もとにある特徴的な蛇と蛇とが喰い合うマークの入れ墨で御座います。……ウヒ、どうやら彼らにはしっかりとお有りのご様子……さてはて、どんな関係で彼らを見つけたので御座いますか? 私めがここに呼ばれるのには、確かに分かりやすい物証で御座います」


そう言ってはゴードンはつぶさに死体を検分していく。

「ほぅ……」「なるほど……」「ふむ……」と、それぞれの死体を見ては頷いている。


「彼らはエルフの里の近くでエルフの女の子を拐おうとしていた者達です。生け捕りが難しく、このような形になりました」

「……なるほど、なるほど。それにしても上手に殺されてなさいます。えぇ、美しいです。損傷がほとんど見られない」

「え、えぇ……」

「おや、そんな引きつることは御座いません。これもまた才能で御座います」

「ゴードン……。誰も殺しの才能を褒められて嬉しいとは限らんぞ?」

「殺しの才能……あぁ、そうとも言えますね。これは失礼。いえ、どちらかというと、出来る限り死を薄くした殺し方が出来るのに尊敬をしていたのですよ。さぞ、魔物の素材等の卸す品質は良いのでしょう」

「あ、あぁ……そういう側面もあるのか。それはそうだな。マコトの手腕は凄いぞ」

「マコトさん、何か有りましたらうちも贔屓にしてください。私めは奴隷商ですが、幅広く顔を利かせられますゆえに」

「は、はぁ……。分かりました」

「ウヒヒ……待っていますよ」


まぁ、うん。

悪い人では無さそうだとは何となく肌感で分かる。

それに毎回、毎回必要あれば錬金術で作製したり、素材とかも自分で得たりとかしていたけれども、限界はあるだろう。

いつかは御用達とまでは言わないけれども、自分が懇意に出来るお店の人とか憧れもあったし、それがこういう機会に巡り会えたのだから、大切にするのも一興だろう。


「えっと、そうなると……後程、色々とご相談する機会があるかも知れません」

「イヒヒ……それはそれは……心よりお待ち申しております」


そう言うと、大変嬉しそうに見える……感じでゴードンは頷く。


「さて、それで悪いが話を戻すがゴードン何か分かるか?」

「私めが分かるのは……予想になりますが良いですかな?」

「あぁ、構わない」

「ダンジョン都市ロマレン……そこでの大規模なオークションが差し迫っているはずです」

「ん? オークション?」

「……はい。ただ、その反応のように基本的には合法、正規のオークションで御座います。私めが言っているのは非合法、非正規の方で御座います」

「……あるのか?」

「ウヒ……ええ、しっかりと。光が明るいほど、闇も色濃くなるのです」

「えっと、すみません。そうなると、今回はその非合法、非正規のオークションの為にエルフ狩りがあったかも知れないと言うことですか?」

「左様で御座います。……が、私めの予測。間違っているかも知れません」

「それにこいつらが、ただの模倣犯の可能性もあるのか?」

「いえ、それは限りなく薄いかと」

「ん? どうして、そう言える?」

「こちらを……」


ゴソゴソとゴードンが服をまさぐったかと思うと、隠しポケットが有って、そこから印が描かれた紋章が取り出された。


「紋章か……」

「えぇ、先ほど検分していましたら違和感がありましたので、ふむ……この紋章は……」

「どこのか分かるか?」

「えぇ、汚れも無く、損傷も無いので。これは……マンチーニ公爵家の紋章で御座いますね」

「よりにもよって、そこか……」

「マンチーニ公爵とは? えっと、どういう方なのでしょうか?」

「あぁ……そうだな。いや、しっかりと説明出来る程、あの公爵を知る人は少ないんだ。どちらかというと皆忌避している位でな。色々と黒い噂が絶えない公爵なんだ」

「そうで御座いますねぇ。うちの商会も唯一、踏み込んでは商売はしておりませんねぇ」

「……なるほど、そんな貴族との繋がりが……こいつらには有ったと」

「そうなるな」

「イヒ……それに、ジャハトの件も有りますしねぇ」

「……アランさん、どうします?」


うん、完全に僕の手のひらでは収まる問題ではない。

アランさんに投げよう。


「とりあえずは遺体は……」

「私めの方で処理致しますか?」

「お願い出来るか?」

「ええ、ご贔屓にして頂いておりますので。そして、流石に見過ごせませんからねぇ……。土足で、私達商売のテリトリーに入り込んで来る存在は看過出来るものでは有りませんから……イヒ」


おぉ……ちょっと、ちゃんと商売人っぽい!

あっ、商売人なのか……。

とりあえず、お言葉に甘えて彼らをゴードンさんに預ける。


「何か売り物になるようなもの。金銭が発生しましたらマコトさんにお知らせして宜しいでしょうかね?」

「あー、マコト、どうしたい?」

「こちらは大丈夫です。宜しくお願い致します」

「えぇ、えぇ、畏まりました。では、そのようにご対応させて頂きますゆえ」

「後は、俺の方ではこの件はギルド本部の信頼のおける者へは伝えておく」

「私めの方でも一族の信頼のおける者にはお伝えしておきましょう……ウヒ」

「とりあえず、僕はこれでクエスト達成で大丈夫でしょうか?」

「ん? あー、そうか、最初はそんな話だったものな。ここまで話が大きくなって、本当にすまん。報酬は色を付けておくように言っておく。期待してくれ」

「ありがとうございます」

「では、私めにも何か?」

「ゴードン……お前にはケイトが散々、色々と貴重なの買ってるだろう?」

「イヒヒ、確かに。そちらの珈琲も楽しまれているようで何より」

「えっ? こういうのも取り扱っているのですか?」

「ウヒヒ……私め、先ほども言った通り。奴隷商ですが、幅広く顔を利かせられますゆえに。ご相談頂けましたら、要望を叶えられるように動きますゆえ」

「……!」


要望を叶えられるように……!

そうなると、色々と作ってみたい、向こう側の食べ物ももしかしたら……。

いや、でも今は少しずつやっていこう。


「そうなのですね……。これは本当にお願いする時がありそうです」

「巷で名高い麒麟児のマコトさんからのお願い……期待でゾクゾクしちゃいますね……ウヒヒ」

「えっと、その麒麟児というのは……」

「この街ルソーレでは、そう呼ばれておりますよ? 表立っては言う人は少ないですが、ね。イヒヒ」

「はぁ……」

「でも、お気をつけ下さいませ。噂が噂を呼んで、力試しと称したり、仲間として雇おうとしたり、面倒な手合いが増えるかも知れませんゆえに。後は……この街の騎士団もマコトさんの事を探っていると小耳に挟んでおりますよ」

「え? そんなに……ですか?」

「ええ」

「アランさん……もしかしたら、僕は早めに対応を考えないといけないかも知れないですね」

「そ、そうだな……。俺もそんなになってるとは予想外だった」

「皆、噂は好きですから。それに対象はまだ成人年齢としては迎えていない子供と来てますからねぇ……イヒ。私くめから話せるのはこの辺ですかねぇ」

「いえ、ゴードンさん……ありがとうございます。自分じゃ分からなかったので、いつかその分のお礼をさせて貰います」

「いえいえ、ご贔屓にして貰えたらそれで私めは満足で御座います」

「……分かりました」


うん、ゴードンさん。

ゴードンさんだな。

ゴードンさんにお礼をいつかしよう。

でも、とりあえずは身の振り方か。

流石に騎士団まで嗅ぎ付けて見てるとなるとややこしくなりそうだ。


「とりあえず、今日は僕はこれで失礼しようと思います」

「あぁ、そうだな。悪かったな。あ、後はすまん。ケイトに明日も辛かったら休みで良いと伝えておいてくれないか? すれ違ったら、その時は伝わらなくても大丈夫だ」

「分かりました」

「イヒヒ……そうなりますと、私めのこの辺で退場させて頂きますゆえ。今後ともご贔屓に」

「あぁ、ゴードン助かった」

「ありがとうございました、ゴードンさん」

「いえいえ、ではでは……」


そして、僕はそのまま別れを告げてマイナの宿亭までそそくさとなるべく人に会わないようにして帰る。

帰った際にはアイクさんが出迎えてくれたので、まだケイトさんはスーザンさんと仲良く眠っているようだったので、アイクさんにアランさんの伝言をケイトさんに伝えて貰えるようにお願いして、僕は自分の部屋に戻ったら自身にピュリフィケーションを施して、ベッドに倒れ込む。


「身の振り方を考えない……と……」


そう、考えようと思って……思いながらも、僕は疲れはやはり溜まるのだろう。

そのままぐっすりと眠りに落ちて行くのだった。


「おい! お前が噂の麒麟児か!」

「舐めてんのか? あ?」

「一緒に冒険してやろうじゃないか!」

「うるさい!!」


「「「アァ~~~~……!」」」


うん、始まりは突然だった。

アホはやっぱり居るのだ。

突然、お前のせいで! とか言いながら襲いかかって来たので、軽く返り討ちに合わせてから、変に尾ひれが付いたのか、挑むこと自体が目的になったり、はたまた、強引にパーティーに誘おうとしてきたり。


最初の頃は柔らかく行こうかと悩んだりもしたが、途中からは考えるのも面倒……いや、億劫……いや、正直にいうと邪魔! と、なっては手加減をたまに忘れてはしっかりと返り討ちにするようになっていた。


「ケイトさん~! 今日の報告になります!」

「あー……お疲れ様!」

「いえ、ケイトさんこそ、お疲れ様です。そろそろ、お休みに入るのですか?」

「うーん、そろそろ動くのも大変だからね。でも、そうなったら、マコトくんの対応どうしようかと思ってたけれども、問題は無さそうね!」

「そうですね、前みたいに裏側とかじゃなく。今は堂々と表側でやってますからね」

「あはは……お手柔らかに、ね? 一応、マコトくんの対応は色んな職員が出来るようには、伝えておくから」

「ありがとうございます」


うん、ケイトさんのお腹……スーザンさんもだけれども、結構大きくなって来ている。

そろそろ、何かあってもと言うことで、お休みに入るようだ。


そして、マイナの宿亭の方もアランさん含めて、エリックさん、ボブさんが常に誰かが居るような環境になっていた。


僕関連で絡んでくる輩が居たら困るという話からだったが、今はただ、楽しくて一緒に居る感じに見える。

むしろ、僕に関しては触らぬ神に祟りなし……いや、まぁ、本当に半分は神なんだけれども、そんな状態になっている。

たまに、本当に冒険心とか度胸試しなのか、腕試しで挑んでくる輩が居るので、そういう手合いもしっかりと返り討ちにしている。


やるんなら徹底的に……完膚なきまでだ!

じゃないけれども、それを地に行くようなスタイルだ。

後はゴードンさんの方もお世話になり始めている。

錬金術で色々とやれると言っても限界はある。

あるのと同じくらいに日常で使えるレベルのものが僕には足りなかった。

お金に関しては魔石を大量に提供しては売り払っているので潤沢だ。

途中からは資産を数えるのを辞めている。


ただ、錬金術である程度は作れたとしても限界はあるし、既存の製品で良いものがあるのか? どうなのか?

僕はそこら辺が欠如しているのをゴードンさんと話していて、早々に気付かされた。

なので、時間があったり、たまに何かあればあしげく通ってはゴードンさんと日常会話をしたりして、その端々から知識を得ていた。

ゴードンさん自身も得られるものがあるのか、楽しそうに話してくれていて……いや、未だに怪しさは満点なのだが、不思議と嫌な気配とかは全く感じなくなっていた。


ただ、奴隷商にあしげく通っている風に見えるからか、第3者からは色んな意味で噂を更に立てられていたのを知ったのは後の祭りだった。


まぁ、うん。

でも、過ごしやすくはなってるとは思う。

このまま、上手く12歳になって、ダンジョン都市を目指してみるのも良いのだろうな。

っと、この時の自分は呑気に、いや……悠長にし過ぎていたのかも知れない。

ただ、緩やかに生活は日常は変わり行く。

マコトも無事に生活しております。

ただ、草原に立ちぼうけの頃に比べるとだいぶ環境が変わってきましたが。

怪しいけれども、怪しくない。

そんなゴードンさん。

その見た目は多分、狙ってだと思います、はい。

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