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音がやんだ



「だめ、なの?」

「……ッ!」



 クロさんが攻撃をぶつけているのに、一向に結界が壊れる気配がない。

 剣は石から抜けてるのに、その石も壊れてるのに!

 


「クソォォ!貴様ら、何をした!?」



 ローブおじは片手で耳と目を覆ったまま、ふらふらとこちらを見据える。

 うっそ、回復早くない!?



「”虎鯨の波(レプンカムイ)”!」

「ぐおぉお!!?」

「凛さん!?」



 凛さんがいきなり大きな水のシャチを、ローブおじを巻き込み要の剣にぶつける。



 パキッ



 剣に少しヒビが入ったようだが、壊れる気配はない。



「”虎鯨の波(レプンカムイ)””虎鯨の波(レプンカムイ)””虎鯨の波(レプンカムイ)ィィ”!!!!」

「ヌオオオオオオ!!」



 凛さんが狂ったように水のシャチを連打する。それでも、壊れない。



「レプン「凛さん!」ッ優維、止めないで!!」

「くっ………!」



 凛さんに抱き着いて無理やり止める。呼吸が荒いし、毛皮が汗ばんでいる。さっき約束したはずなのにまた無茶してる。

 ローブおじは凛さんの巻き添えを食らって伸びていたので、この際放置だ。



「凛さん!さっきの約束、もう忘れたの!?」

「忘れて、ない!けど、もうちょっと、もうちょっとなのに!なんで………ッ!」

「凛さん………」



 凛さんの目には、ゴーグル越しでも分かるくらい涙がたまっていた。

 

 まだクロさんは結界を殴ってる。カルヴァロさんやココ爺も魔法をぶつけ始めた。皆、このチャンスを逃さないために必死になっている。

 なのに、私は何もできないの?


 そんなの—————

 嫌だ!!!



 パリッ



 あ、この感覚。

 あの時と、一緒だ。



「凛さん」

「……優維?」

「少し、離れてて」


  

 何もできない自分が嫌だ。

 

 皆で作ったチャンスを無駄にするのは嫌だ。


 凛さんを泣かせる、この状況が嫌だ。



「小娘ぇ!何をする気だ!」

「——ッ!」

「ッの、まだ!」



 ローブおじ、まだ動けるの!?

 まずい、この状態じゃ避けられ—————————— 



 カッ!



「ヌォオォオ!また目がぁぁ!!」

『いいやしたぜ、サポートは任せなって』

「ナイス、シューマ!」



 どうやら今の閃光弾はシューマさんが撃ったみたいだ。



『何する気かわかりやせんが、思う存分やりなせぇ』

「ありがとうございます」



 何より——————————————

 こんな最高な人たちと、お花見ができないなんて、嫌だ!!!



 ドゴォオオォオオン!!!



 結界から黒い稲妻が一直線に、要の剣まで伸びていく。



「いっけえええ!!!」



 バキィンッ

 バリィィィン!!



 小気味いい音を立てて、要の剣が真っ二つに折れた。と同時に結界も大きな音を立てて、壊れた。




「よくも!よくもよくもよくもォォオ!!」

「耳障りだ」

「…………あ?」



 リーンヴォックさんの声が聞こえたと思ったら、いつの間にかローブおじの後ろにいた。



「二刀流居合・終霖(しゅうりん)



 ローブおじの横を通り過ぎながら、リーンヴォックさんが鞘に刀を収める。キンッという音が響いたと同時に、黒い靄とローブおじの体が横にずれて倒れた。



 




 リーンヴォックは基本二刀流です。技名は雨の種類を文字っています。

二刀流居合・終霖(しゅうりん):目にもとまらぬ早業で相手を真っ二つに切る、技の中では一番静かな技。切られた本人は、倒れるまで何が起きたか理解できない。名前は秋霖から、そのまんまですね。


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