未来の予定って意外と大事
優維視点で、目が覚めたあたりからです。
「ゲホッ……うーん」
『「優維!」』
「あー、凛さん、クロさん………うーなんかまだ頭がぐわんぐわんする~」
なんかグルグルしてちょっと気持ち悪い。
『優維ちゃん、立ち上がれそうかしら~?』
「んー、うわっ!」
「あぶなっぐえ」
「わっ凛さんごめん!」
「大丈夫~」
立ち上がろうとしたら視界が揺れて、前に転びそうになったところに凛さんが滑り込んできたのでそのまま踏んずけてしまった。
凛さん、ほんっとごめん!でもおかげで地面にこんにちはしなくてすんだよ、ありがとう!
『ちょっと三半規管が狂ってるかもしれないわね~』
「ええ!?」
「…………音魔法ね」
『そうね~。少し休めばよくなると思うわ~』
そっかー、あれが音魔法かー。なんとも強力な魔法だ。
あー、さっきよりは楽になってきたかも。
「…………優維、ありがとう」
「……え?」
凛さん、なんでここでお礼を言うの?
「もう休んでて。優維は自分を守ることに専念、あたしがアイツを引き付けておく」
「え、え?」
『凛さん?』
凛さん、何を言ってるの?
「ほら、皆も持ち場に戻った戻った」
『でもッ!』
「戻って」
真剣な凛さんの声に皆、渋々ながら戻っていく。
なんか、変だよ、凛さん。皆もなんで何も言い返さないの?
このまま行かせちゃいけない気がする!
「ストップー!!」
「うわっ優維!?」
凛さんが腕輪に手をかけたので、止めるために走り出そうとしたらまた立ち眩みがして転ぶような形で抱き着いた。
「どうしたのよ!?」
「いや、なんか、何となく……」
「何となくって?」
「…………このままいかせたら凛さんがいなくなりそうな気がしたから」
本当に何となくだけど、ここで止めないと後悔するような気がしたから。
「大丈夫、あたしはいなくならないよ」
「本当?」
「…………」
無言。
やっぱり、なんかとんでもない無茶してそのまま消えるつもりなんだ。
凛さんは最初からそうだ。楔梛様を助けた後のことを、全く考えてない。だからこそ、あの時指切りまでしたのに。
「約束………」
「え?」
「約束、忘れたの?」
「覚えてるよ」
覚えてるなら、私言ったよね?
「私は、楔梛様もだけど、凛さんもいなきゃ嫌だよ?」
「…………」
凛さんと向き合うように抱きなおして伝える。
すると凛さんは一瞬悲しそうな顔をした後、少し怒りをにじませて言う。
「あたしだって皆とお花見したいよ!でも!」
「私は、凛さんと楔梛様、私の家族、リコちゃん、ヒミちゃん、ディグ君、リーンヴォックさん、お世話になった皆とお花見がしたい!」
凛さんの言葉を遮るように自分の気持ちをぶつける。
これが私のわがまま、今一番やりたいこと!
『ウッハッハ!楽しみだな、お花見!』
『フッ己も食事を頼まれている』
『ボクも!ボクも行っていい?』
『あら~私もいいかしら~?』
『あっしもいいでやすか?』
「喜んで!」
『ん、ん!』
『ハハッ楽しみだな!』
『ホッホッホッ』
クロさんも、この場にいる皆も同じ気持ちみたいだ。
凛さんはちょっと面食らったような顔をした後、顔をゆがめた。
「ほら、皆もお花見したいって」
「…………いいの?」
そんなの———————————
「いいに決まってんじゃん!」
『ウッハッハ!もちろんだ!』
『無論だ』
『うん!』
『そうね~お酒でも持っていこうかしら~』
『じゃああっしは細々した物品を持っていきまさぁ』
『ん!(グッb)』
『おう!(グッb)』
『ホウホウ、ええんじゃよ』
皆が口々に肯定すると、凛さんの目に徐々に涙がたまっていった。こぼれそうになったので、指で拭ってあげた。
「ねえ、凛さん」
「グスッ……何?」
「私たちのお願い、叶えてくれますか?」
「叶えてやろうじゃないの!でも、その前に」
「うん、楔梛様助けて、一緒に逃げよう!」
逃げ姫と我が儘姫、なめんじゃねぇぞ。