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三人寄れば文殊の知恵って言うけど、でないときはでない

 最初優維視点、後半シューマ視点です。




「………ぷっ正直すぎない?」

「だって本当のことだし」



 あ、凛さんもとに戻った。なんのためにこんなところまで来たって、楔梛様助けるために来たんだもん。



「…………もうどうでも良いわ。貴様ら、どうせこれの封印を解きに来たのだろう?」



 む、楔梛様を指さしてこれ呼ばわり。

 いーけないんだ、いけないんだ、せーんせいにいってやろ。



「この封印は我の最高傑作。二重結界を張れるだけではなく、その周囲にも結界を張りその空間を歪めることができる。壊す方法は、要となっている剣を壊す以外にない」

「ご説明ありがとう。でもそんなん教えちゃってもいいの?」



 自信満々に話してるけど、こういうことする人って絶対壊されないっていう自信があるからペラペラとしゃべっちゃうんだよね。

 ほら、案の定口元笑ってる。



「構わんさ。どうせ、壊すことなどできん。

 —————我がいる限り」

「っ……!」


   

 ピリッと空気に変わる。

 そろそろ話は終わりかな。解決策は見つかってないけど、やっていくうちに考えるしかないね。



「さあ、久々の客人だ。精一杯の演奏でもてなして魅せよう」



 指揮をするかのように手を挙げる。

 それと同時に周りに色とりどりの玉が浮かぶ。



「優維、ずっと結界張ってて。途切れさせちゃダメ」

「はい」

「来るよ」



 声と同時に、まずは右から水色の玉が迫ってくる。少しだけ横にずれてよけると、後ろでバシャンと聞きなれた水の音。

 次は左から黄色の玉。なんかバチバチしてるから多分雷、さっきより距離を取った方がいいかも。前に跳んで避ける。



「うわっ」

「優維!?」

「ほお……」



 あっぶな!もう少しでぶつかるとこだった!

 跳んだら、目の前に小さい竜巻みたいな玉があったよ!色がないからわかんなかった。

 その玉は地面に当たると、一気に風が吹き出してきた。



「よく避けたな」

「間一髪だったよ!魅せるためならちゃんと色付けてよ!」

「怒るとこそこ!?」

「クククッそれはすまなんだ」



 全くもう、びっくりしたよ!置きエイムはやめてほしい! 




 ——————————————シューマ視点——————————————



「クソッ始まっちまった!どうしたらいいんだ!」

「クロ、落ち着いて。まずは今までの情報を整理しよう」



 こういう時、冷静なカロの旦那がいてくれると助かりやすね。

 さて、現状を整理しやしょう。


・結界の条件が変更されて『すべての生き物の出入りを禁止』になったので、優維ちゃん達は結界   を壊さない限り出られない。

・門番はカパプというかつての王宮最上級魔道士

・結界を壊すには要の剣を壊すしかない。

・強力な魔法で攻撃し続ければ、結界にヒビを入れることは可能。しかし修復されてしまう。


 こんなところでやすかね。



「カロの旦那、これでいいでやすか?」

「ありがとう、シューマ。ねえ、そのボードどこから出したの?」

「このリュックからでさぁ。ドラゴンも入る超大容量、生ものも鮮度を100%保ったまま重さを気にせず運べる優れものでさぁ!」



 あっしが使いやすいように改良を重ねた多目的リュックでさぁ。

 ただし、生ものといってもまだ生きているものは駄目でやすよ。どうなるか保証はできやせんからね。



「おお、すごいね。でも宣伝はあとでね」

「すいやせん」

「…………」

「リーの旦那、どうしやした?」



 もともとリーの旦那は無口で表情もあまり変わらないが、少しだけ目がピクッと上に上がったので声をかけてみた。



「いや。状況を整理すればするほど、(おれ)達ができることはないのではと……」

「そうでやすね……」

「それでも何かできることがあるはずだよ。じゃないとクロが無駄に結界殴りを始めちゃう」

「カロさん、それは大丈夫だ。さっきよりは落ち着いたよ」

「あら~、じゃあ鎮静剤は必要なさそうね~」



 急に入口の方から声が聞こえたと思ったら、スルク先生がヒメに抱えられて入って来た。

 その少し後ろから、ディグが長をおぶって入ってきた。

 長がおんぶされているのは分かるが、なんでスルク先生も抱えられてるんでさ?



「ヒミ、ありがとう。もういいわ」

「ん」

「ヒミ、なんで抱えてきたんでさ?」

「秘密」

「うふふ、そうね~。私たちだけの秘密よ~」



 まあ、今は時間が惜しいんでスルーしまさぁ。



「それで状況は?」

「そこのボードを見て下せえ」

「ホッホ、分かりやすいのぅ」


 

 ボードに書いておいてよかった。説明の手間が省けまさぁ。



「……なかなか大変なことになってるわね~」

「あれくらいの攻撃が続くなら、優維や凛が当たることはないとは思うが体力がいつまで持つか、だな」

「ん………」


 ディグが結界の中を見ながら言う。隣でヒミも心配そうに見ていた。



「カパプ、か。久しい名じゃな」

「知っているのか、長?」

「知っているも何も、一戦交えたことがあるぞ」

「「ガウ(ワ゛ン)!?」」



 本当にこの人、いつから生きてるんでさぁ。



「ふむ、厄介じゃの。今は第何楽章じゃ?」

「だいなん……なんて?」

「よくわからないけど、始まったばっかりだよ」

「ホウ……あやつは魔法を音楽になぞらえる。最初の第一楽章は春、第二楽章は夏、第三楽章は秋、第四楽章は冬。一つの長さはその時々で変わるが、この順番だけは変えたことがない。特に夏と冬は攻撃が激しい、その前には何とかせにゃならん」

「聞こえた、優維ちゃん、凛ちゃん」

『よくない、状況だってのはっ、わかり、ました』

『……すっかり忘れてたわ。まだ第一楽章なのが救いね』



 優維ちゃんは通信中声が途切れ途切れで、少し息が上がっているのが分かった。凛の姫さんはまだ余裕そうだが、声色から少し苦々しい顔をしていると思われる。


 何か策を講じなければ、だがどうすればいい?



「……この条件だけど、対象は生き物だけなのかしら~?」

「奴が言ってたのはそれだけだ。オレもさっき殴ったが、弾かれてしまった」

「うむ。さっき雪蜘蛛が結界に近づいたが、結界にはじかれていた」



 生きているものだけ…………なら石などの無機物なら?

 試してみやすか。

 

 結界に近づきそこら辺の石を投げてみる。



 カンッ



 弾かれやすか。

 これはあんまり使いたくねぇが、そうもいってられやせんね。

 ガチャッと銃に弾を込めて、放つ。



 バシュッ



 結界に小さな穴があき、銃弾は弾かれずに結界内の地面に穴があいた。

 結界の穴は瞬時にふさがっちまったが、これならいけまさぁ。



「旦那方、外からでも何かできるかもしれやせんぜ」



 見てるだけなんて、できやせんぜ。


 




 カパプの魔法はヴィヴァルディの四季をモチーフにしています。あと、シューマの銃はサイレンサー付きです。

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