表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/129

理由はそれだけ

 凛視点です。人によっては胸糞悪いと思うのでご注意ください。


 こいつは今なんて言った?エラムを黒魔術の糧に?

 いくらクソ爺でもそこまではしないと思ってた。本当に?



「あんたの弟子でしょ?」

「そうだな」

「エラムはあんたを父親のように思ってたって、恩人だって」

「我が育てたからな」

「そんな人を、あんたは————」

「黒魔術の生贄にした。それがどうした」



 ぶわっと全身の毛が逆立った感じがした。

 こいつは自分の弟子を殺して、あまつさえ黒魔術の贄にした。



「あんったは人の命を何だと思ってる!?」

「何を怒ることがある。我の所有物を、何に使おうと我の勝手であろう」

「は?所有物……?」



 意味が分からない、分かりたくもない。

 こいつは人を人と思っていないのか。



「そうだ、我より下級の存在はすべて我の所有物(もの)。部下もメイドも、王族も民も!我の願いを叶えるために自分の所有物(もの)を使って何が悪い?すべては我のためにいればいい、壊れたのなら捨てれば良い」

「イカれてる……」

「我を認めぬすべてが憎い!一番憎いのはあの獣と貴様だがなぁ!貴様らは我からすべてを奪った!貴様らを苦しめるのが我の願い!」



 本当にイカれてる。人はモノじゃない、誰かのものでもない!



「だったら……だったら!あたしたちに復讐すればよかったじゃない!貴方たちなら監視を搔い潜ってでも、すぐに牙を向けられたはず!でも何もしなかった!

 その怨みはあたしたちの代で終わらせるべきだった。受け継ぐべきじゃなかった。あたしたちにぶつけるべきだった!」



 あたしの声が嫌に響いた。

 一瞬の静寂のあと、静かにクソ爺が話始める。



「…………そのままぶつけるのでは芸がない。我は貴様らが憎い、だが我はいずれ死ぬ。我は貴様らが、未来永劫苦しむような呪いが欲しかった。そこで我は考えた。

 転移の魔術を使えばいい、と。我が王に乗り移り、それを代々続けて貴様らをずっと苦しませる。だが、エラムはいち早くその計画に気が付き、止めようとしてきた。まあ、我が王に黒魔術をかけ続けていたから、ずっと疑ってはいただろうからな」

「待って、王に黒魔術をかけ続けていた?それじゃあ、王がおかしくなったのは……」

「ふんっ我を認めぬウェンカが悪いのだ。我を認めてさえいれば、操り人形になることはなかっただろう。馬鹿な奴だ」



 これでなぜ王が急に暴君となったのかが分かった。

 

 ”我は悪い夢を見ていた”


 あの時、ウェンカ王の黒魔術は解けかかっていた。あの言葉は本当だった。

 現実なのか夢なのか訳が分からなくなっていた。恐らく精神掌握系の黒魔術をかけ続けていたのだろう。



「我は数年かけて準備をした。エラムに邪魔されぬよう秘密裏にな。だが、あやつは執事にもそのことを伝えた。忌々しい、王のガードが固く、結局実行できたのは死ぬ間際だった。

 我の魔力、エラムの魔力すべてを使い転移した。程なくして王は亡くなったが、すぐ王子に乗り映ることができた。ウェンカ王を継ぐ者に転移するという条件を付けたから当然だ。

 何代かは魔力の回復に費やさねばならなかったが、それも終わった。貴様はすでに亡くなっていたが、もうどうでもいい。この獣を苦しめることさえできれば—————」

「子孫は関係ないでしょ!」

「そんなことはない。貴様らの血が混じっているというだけで、怨みの対象だ」

「そんなの理不尽よ!」

「貴様がそれを言うのか!”理不尽(わがまま)姫”よ!」

「————っ!」



 言葉に詰まる。

 我が儘姫の能力で理不尽なことはしてきていないと、反論できなかった。自分では理不尽と思っていなくても、相手がどう思っていたかなんてわからない。



「ハッ!言い返せぬか、自覚はあるようだな。

 まあよい、これはあくまで復讐の第一歩だ。最後は獣人を、我を認めなかった者どもをすべて根絶やしにすることが目的。我の転移はそのためのもの。

 これからも王族達には復讐の道具として働いてもらう、さぞ光栄なことだろうな」

「あんたは自分が何を言ってるかわかってるの!?」

「分かっているとも」

『グルルルァア!!!』



 突然結界の外から、獣の咆哮と爆音が聞こえた。



『獣人を根絶やしにするだぁ!?オレたちが何をした!!お前らは何をしたァッ!!!』

『クロッ!落ち着け!!』

『クロの旦那ァ!』



 今まであたしもはらわたが煮えくりかえっていたが、クロの言葉で急速に冷えていく。

 そうだ、クロたちは何も悪くない。あたしたちの過ちの被害者だ。もう起こってしまったこと、どうすることもできない。あたしがすべての元凶…………。



「何も?」

『…………は?』

「貴様らは何もしていない。しいて言えば、奴と同じ獣人であっただけだ」



 絶句した。

 さも当然のように答えるあいつが、同じ人間だと思いたくはなかった。





 書いてるときもでしたが、読み返しても腹立ちますね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ