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狐さんはわからない

 優維視点からですが、ほぼシューマ視点です。まだ凛とローブおじが話している時です。


9/29 鳥ばあのことすっかり忘れてたので一文付け足しました。ヒーラーが全滅したら困りますからね。





 ローブおじがなんか話してる。あんまりいい内容ではなさそうだ。それを凛さんは無表情で聞いている。ちょっと怖い。


 さて、こっちはこっちで何とかしないと。



「カルヴァロさん、術者以外で結界をどうにかすることはできないんですか?」

『うーん、現状無理だね。結界の要に触れればもしかしたらって感じだね。でもそうなると————』

『あの男をどかさなくてはならない』

『ああ。今はおとなしく話しているだけだが、初手で優維を攻撃してきた。あの剣に触れようとすれば、なにかしらまた妨害してくるだろう』



 ですよねー。

 あの剣をどうにかしない限り、条件を変えることも外に出ることもできない。

 あれ、詰んでね?



『ひとまず、シューマに連絡する。長たちの力も借りよう』

『そうだね』



 いやいや、諦めちゃいけない。

 今は何とかしなくちゃいけない時だ。




 ——————シューマ視点———————


 優維達が中に入って完全に姿が見えなくなってからすぐ、ディグが話しかけてきた。



「優維達、大丈夫かな?」

「どうでやすかねぇ…」

「煮え切らない答えっすね」



 そりゃそうでさぁ。

 今まで誰も入れなかった所、何があっても不思議じゃあねぇでしょう。



「でも、意外だぜ」

「何がでやすか?」

「シューマさんが、人間に無料(タダ)で物をあげたこと」

「…………リコの友達だからでさぁ」

「いーや、絶対それだけじゃないね」

「何が言いたいんでさぁ」

「ちょっとは信じてみようと思ったからだろ?」

「…………」



 どうしてこうもこいつら土竜は鋭いんでやしょう。やりづらくてかなわねぇ。



「無言は肯定ととるぜ。んで、理由は?」

「……自分でも分からないんでさぁ」



 リコの友達、それは大きい。だが、それだけで信じようと思ったわけではない。

 ぽっと出の子供、それも素性が一切わからない人間に。



「優維ちゃんは、ただのクロが拾ってきた異世界人ってだけでやしょう。それ以外は何も知らねぇ」

「そうだな。オレも最初はそうだった。でも、何回か会うたびにそんなことどうでもよくなった」

「それは諜報員としてどうでやしょう……」

「ハハッ!確かに!」


 

 諜報員が疑わないで、誰が疑うってんだ。

 ディグは分かっていってるから、質が悪いと思いまさぁ。



「あいつが色んなこと一生懸命やって、生きようとしてるのを見てたらさ、生い立ちとかそういうのどうでもいいかなって。そりゃあ、今まで何やってたかとかそういうのが一切気にならないわけじゃないし、今でも疑わしい部分がないか探しちまう」



 職業病かなと、困った顔でディグが笑う。

 しかし、すぐに表情を曇らせた。



「オレ達はさ、嫌ってくらい他人の感情がわかる。目が見えない代わりに、そういう感覚ばっかり鋭くなっちまった。

 そんなオレ達でも優維と過ごすのは楽しい。あんなに裏表の少ない人間は初めてだ。ヒミが懐いてるのがその証拠だ」



 確かにディグはフレンドリーな方だが、ヒミはディグよりも感覚が鋭かったせいで口数が少なく、かなり内向的な性格だ。誰かと親しくしているのは家族以外では数えるくらいしか見たことがねぇ。

 


「…………人間ってのはよくわからないでさぁ」

「誰も他人のことを全部わかるやつはいない。獣人も魔族もいろんなやつがいる。それに、オレ達だって、考えてること全部が分かるわけじゃない。ただ、何となく信じていいやつ悪いやつって判断してるだけで、それが当たっていただけ。もちろんちゃんと情報も集めての結論でもあるけどな」



 それで信じた理由は?と、ディグはいつもの声色で笑って言った。

 そんな感覚的に判断していたとは、今だけはグダグダ考えるのが馬鹿らしくなりまさぁ。



「リコが信じた人間を、親が信じねぇでどうするんでさぁ」

「ふーん」

「……その顔やめなせぇ」



 人がまじめに答えたのに、ディグはニヤニヤと曖昧な返答をしてきた。


 それからもぽつぽつと会話をしつつ、中の結界が壊れるまで連絡がないことを祈りつつ待っていた。



『シューマ、ディグ、聞こえる?』

「カロの旦那、何がありやした?」

『優維が結界の中から出られなくなっちゃった』

「なんだって!?」

「っ……説明を要求しやすぜ」



 カロの旦那が簡潔に経緯を説明されて、ディグがすぐに長の家まで向かった。鳥ばあは中で何かあったときのためにここに残ると行ったので、一応護身用アイテム数個を渡して中に入った。

 通信があったと思ったら、これだ。

 どうしてあっしが信じた人間は、皆こんな目に遭うんでさぁ!





 


「で、どういう状況でさぁ?」



 封印場所についたが、思ったよりも深刻な雰囲気ではなかった。

 それどころか緊迫感のかけらもねぇのはどういうこって?



「やあ、シューマ。んー、どうしよっかなーって」

「……なんでこんな緊迫感がないんでさ?」

「あー、すまん」

「いや、リーの旦那が謝ることじゃねぇでさぁ」

『深刻になりすぎるのもよくないかなーって』

「凛の姫さんの状況が一番わからないんですが!?」



 なんで優維ちゃんにモフモフされながら、平然と話してるんで!?

 おかしいと思うのはあっしだけでやすか!?





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