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ゴース〇バスターズでも無理


 ピチャッ



 結界を触ると前と同じように、水のような音がなった。



「優維、結界張って」

「はい」



 凛さんを抱っこして、自分を覆うように結界を張る。

 

 手から少しずつ結界の中に入れてみる。自分の結界を張っているからか、前のような刺すような空気は感じなかったが、代わりに纏わりつくような悪意を感じる。あんまり長居はしたくないな。



『あー、あー、テステス。優維ちゃん、凛ちゃん、聞こえる?』

「聞こえます」

「聞こえるよーカロさーん」



 インカムからカルヴァロさんの声が聞こえてきた。

 雑音もなく、声もクリアに聞こえる。電子レンジとかそういうのはないのに、こういうところだけ妙にハイテクだ。いや、魔法で温められるからいらないだけか。



『思った通り、通信は問題ないみたいだな』

『少し心配はしていたがな』

『リーって意外と心配性だよね』

『む・・・・・・』



 インカムから3人の普段の会話が聞こえる。ちょっとだけ気持ちが軽くなった気がした。



『何か見える?』

「ん~?」

「・・・・・・あれ」



 凛さんが指さした方向には、白い石に剣が1本まっすぐ刺さっていた。その後ろには、楔梛様が水晶のようなものの中に入っていた。

 ただ、なんか外から見た時より距離があるような?



「白い石に突き刺さった剣が1本と、楔梛様が見えます。ただ・・・」

『どうした?』

「なんか外から見た時より、遠い気が・・・」

「・・・・・・・おそらくだけど、結界の中が空間魔法で広くなってるのかもしれないわ」

『なるほど。楔梛様まで目測でどれくらいだ?』

「大体優維9~10人分くらい」

「どんな単位!?」



 私、今の身長140センチないくらいだけどそれで伝わるの!?



『ふむ、大体100m弱ってとこか』

『「何故分かる(の)!?」』

『え~だってクロだし?』

「さっすがクロ!(グッ)」

『おうよ!』



 伝わったよ!思わずリーンヴォックさんとセリフかぶっちゃったよ!

 凛さんとクロさんはなんかわかりあってるし!二人ともグッじゃないよ、グッじゃ!



『と、とりあえず此方から見た分より大分遠いな』

「そ、そうですね」

『う~ん、それは厄介だね。二人ともちょっと前に進んでみてくれる?』

「え、はい」

「はいよー」



 カルヴァロさんに言われた通り、数歩前に進んでみる。



『止まって』

「おっと」

「はいよ。で、なんかわかった?」

『今どれくらい進んだ?』

「結界の前から30歩くらいです」

『・・・こっちからだと歩いてはいたけど、せいぜい10歩くらいしか進んでないように見えるよ』

「え?」



 自分では確かにそれ以上歩いていたはずだ。なのにそれしか進んでいない?



「あー、じゃあ空間拡張魔法かかってるね」

「空間拡張魔法?」

『任意の空間だけ、外観よりも広くすることができる魔法のことだよ。演習場とか病院でも使われてたよね』

「ああ・・・」



 ほんとに便利な魔法だな。リフォームの匠いらずだよ。



『他にも何か違う魔法がかかってる可能性があるから、注意して進んでね』

「わかりました」



 とりあえず、剣が突き刺さっている石のところまで行ってみることになった。

 足元や周りに罠などがないか慎重に進んでいく。


 ちらりと凛さんの方を見ると、ちょっとだけ顔がこわばっていた。心なしか毛も逆立っているような気がした。



「凛さん、大丈夫ですか?」

「ん?うん、大丈夫だよ」

「辛かったら言ってください」

「うん、ありがとう」



 それ以降は特に何も言わなかった。依然として凛さんの顔はこわばったままだ。



「剣のところが近づいてきました」

『特に周りには何もなさそう?』

「いえ、特に変わったものは・・・」

『地面に変な模様や、地面が削れているところもないか?』

「地面?」

「・・・・・・・」



 一度立ち止まって、地面をじっくり見てみる。

 うーん、変な模様はないな。地面は少し削れているところはあるけど、途切れ途切れだし、不自然な感じはしなかった。年月が経って、風とかで浸食された感じだった。



「所々床が削れてたり、はがれたりはしてるけど特に誰かがつけた感じはしないです」

「・・・うーん、なんか丸みたいだけど途切れ途切れだから正直よく分かんない」

『そっかー。魔法陣があったとしても、そんな状態ならもう発動はしないかな?』

『ふむ、そうかもな。まあ、それでも用心して進んでくれ』

「「わかった(はいよー)」」



 もしかしたら昔は魔法陣が描かれていたけど、消えちゃったのかな?もう50年もたってるみたいだし、そうなっても仕方はないか。

 でもまあ、なんか胸のあたりがザワザワするから用心して行こう。


 

 サクサク



 剣の方に近づくにつれて、霜が多くなってきた。楔梛様の魔力の影響なのか、さらに寒くなってきた。羽織のおかげで今は結構あったかいけど、それでも長くいたら風邪ひきそう。



「うわ、ずっぷり刺さってる」

「だね」



 結界の要と思われる剣のところまで来た。

 石はまるで元から剣を指す専用の穴があったかのように、亀裂もなくスッと剣が刺さっていた。ファンタジーでよくある、抜ければ勇者になれる剣みたいだ。あれってどうやってあんなに綺麗に刺したんだろうね、不思議だよね。

 ん?剣に文字が描かれてる?彫られてる?あ、これ、凛さんの腕輪に書いてあるやつみたいな文字だ。読めないやつだ、これ。



『剣はどんな感じだ』

「剣自体は綺麗ですけど、なんか文字が彫らさってます」

「あー、剣の形状から見て、一般的に流通してた長剣だと思う。それに封印のまじないが彫ってあるから、これが要で間違いないと思う」



 凛さん、補足ありがとうございます。私には全く分かりませんでした。



『それ、触れそう?』

「・・・・・・・・ちょっとやってみます」

「気を付けてね」

「はい」



 恐る恐る剣に手を伸ばす。

 なんかすごい緊張する。爆弾処理班のコードを切るときの心境ってこんな感じなのかな?


 


「小娘、何をしている」

「———っ!!!」

「え?ぬわぉ!!!」



 ビュンッ!

 ダッ!ズザァ



 いきなり後ろから低い声が聞こえたと思ったら、氷の礫が顔めがけて飛んできた。瞬時にその場から、横に跳んで離れた。

 あっぶな!今、顔の真横飛んでった!ビュンってなってた、ビュンって!



「ほお、良い反応だな」

「大丈夫!?」

『大丈夫か!?』

「だ、大丈夫!心臓バックバックしてるけど!」

『・・・・・・あれは、誰だ?』

『何もないところから、いきなり現れたね』



 封印の剣のちょっと後ろ、丸っぽい円があったかもしれない場所に、金で縁取りされた黒いローブを着てフードをかぶった人がいた。

 今の今まで結界の中に私たち以外の人なんていなかった。カルヴァロさんの言う通り、()()()()()()()()()()()()()出てきた。



「あのー、何方様ですか?」

「ククッ名を訪ねるならば、先に名乗るのが筋ではないか?」

「あ、はい、すいません。えっと、ゆ「だめ」え?」

「む?」



 名乗ろうとしたら凛さんから、待ったがかかった。名前くらい大丈夫じゃない?



「初対面の、ましてや魔道士に名前を教えちゃだめ。最初に言われなかった?」

「・・・・・・・あ」



 そうだった!鳥ばあから安易に名前教えるなって言われてた!あっぶね、喋るところだった!



「その精霊は、魔道士との戦い方を心得ているらしいな」

「・・・お褒めにあずかり光栄だわ」

「クロさん、この人が誰かわかりますか?(小声)」

『・・・いや。人自体に見覚えはないが、来ているローブは旧国の宮廷魔道士のものだ』

『そうだね。それも階級が上位の人しか着れないものだよ』

『ああ。しかし、王族も魔法大会の時には着ていたものでもある』



 クロさんたちの話から推測すると、この人は楔梛様のお爺ちゃんが建国する前の国の王族に近しい位の人らしい。

 え、そんな昔の人生きてるわけないじゃん!そういえば、いきなり現れたって・・・・・・・・ゆ、幽霊!?Ghost!?だ、だれかー!ゴー〇トバスターズ呼んでー!



「外にいるのは獣人か・・・・・・」

「貴方には関係ないでしょ?」

「いやいや!関係大有りだ。何しろ我は、獣人が大嫌いでな・・・・・・」



 ゾワッ!!



 あ、嫌だ。この人、関わりたくない。関わっちゃいけない。

 あの人の周りが真っ黒だ、なんで見たときに気が付かなかったんだろう。あの時の刺すような悪意は、この人のだったんだ。



「魔道士には名乗るべきではない。しかし、我は名乗ろう。

 

 我は、ウェンカ王。貴様らを、心底恨んで死んだ王だ」




 ホラーゲームをやっている時にゴースト〇スターズのBGMを流すだけで、怖さが半減するのはすごいと思います。

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