師匠であり友達
バシャンッ
「そこまで!」
「あ゛ー!今のはずるくないですか!?」
「そんなことないよ?これで騙されるとは甘いの~♪」
「ぐぬぬぬ」
だって急に「あ、足下に大きな蜘蛛が!」って言われたらえってなるじゃん!そしたらバシャンって!
「大人げね~」
「まあ、凜ちゃんとユイ姉が楽しそうだからいいんじゃない?」
「そうだな」
ね~、大人げないよね。まあ、楽しいのは否定しないけど。
「ははっ優維ちゃんは素直だね~。でも、実戦の時は相手から目を離さないように。それだけは頭に入れておいてね」
「はい」
カルヴァロさんはいつもの口調で言っていたけど、実感のこもった言い方だったので真面目に答えたった。
「よし、じゃあ今日は終わり!」
「「ありがとうございました!」」
「凜、先生みたいだな」
「私にとっては先生と言うより師匠に近いかな。ね?」
「う~ん、ぼくは先生って感じ」
そっかといって、凜さんをみるとちょっと嬉しそうな顔をしていた
「優維にとっては師匠か。うん、それもいいね」
「普段は思ってないけどね」
「なんだとー」
「うわっ」
ドフッと凜さんがお腹に突っ込んできて、そのまま頭をグリグリしてきた。突進は地味に痛いよ、凜さん。
だって普段は友達感覚なんだもん。師匠って思ってるのは、魔法を教わってる時だけ。
「何じゃれてんだ」
「仲良しだね~」
「だね~」
そこの3人、私たちを見て和まないで。なんか恥ずいから!
――――――――――――――
「じゃあね~」
「またな」
「じゃあね!」
「ごちそうさまでした。それに、家まで送ってくれてありがとうございました」
「いいよ~。今日は楽しかったからそのお礼」
「気にすんな!オレは兄ちゃんだからな!」
「あははっ!ホントにありがとね」
「おう!」
あの後、皆で買い食いをして暗くなってきたので家に帰ることになった。因みにコロッケをディグ君とカルヴァロさんが奢ってくれた。
そして、夜道は危ないからとディグ君達が家まで送ってくれた。夕飯も一緒に食べないか誘ったが、いきなりだと悪いからまた今度と断られてしまった。
「「「ただいま」」」
「おかえり。今、カルヴァロさん達来てなかったかい?」
「うん、家まで送って貰った」
「あら、じゃあ夕飯食べてけばいいのに」
「誘ったんだけど、いきなりは悪いからまた今度って」
「そうかい?気にしなくてもいいのにね~。お客さんが増えても、クロの食事を減らせばいいのにさ」
「ロジー!?」
「ははっ冗談さね」
クロさんよく食べるからね。まあ、ロジーさはいつも朝とかお昼まで食べられるくらい、大量に作ってるから足りなくなるってことはないと思うけどね。
「さあ、手を洗ってきな。もう少しでご飯できるからね」
「「「はーい」」」
今日のご飯はなんだろな♪
――――――――――――――――
「「「「「ごちそうさまでした」」」」」
今日のご飯はメインに魔鹿のロースト、パン、リンゴがあえてあるサラダ、野菜のポタージュだった。
この魔鹿は今日クロさんが獲ってきたものだそうだ。下処理が上手いのか全然臭みがなく、お肉も柔らかくとてもおいしかった。リンゴのサラダは、なかなかどうしてドレッシングの酸味とリンゴの甘さが妙に合い、これもおいしかった。フルーツが入ったサラダに抵抗があったが、これはおいしい。少し抵抗なくなったかも。
いつもならそのまま食後のまったりタイムに入るが、今日は違った。
「ああ、そうだ優維」
「なに?」
「決行の日が決まったぞ」
「「・・・っ!」」
食後の柔らかい雰囲気が、一瞬にして吹き飛んだ。いや、そう思ったのは私と凜さんだけかもしれないけど。
「今日からまた1週間後、午後1時からだ」
「はい」
「そんな緊張するな」
「そう言われましても・・・」
「敬語」
「あ・・・」
緊張して意図せず敬語になってしまった。
「まずは安全第一。メンバーはオレとリーさん、カロさん、外にディグとシューマ、鳥婆が待機することになった。長は家でスルク先生とヒミと待機しているから、何かあってもすぐ対処できる」
「町の警備は?」
「ちょうどヒナタさんが帰ってきたらしくて、あの人に任せれば大丈夫」
「あら、ユキヒョウのあの子かい?」
「おう、ようやくカンナ山の遠征から帰ってきたみたいだ」
「その人も獣人さん?」
「おうよ、騎士みたいに凜々しい人だ」
へ~、ユキヒョウの獣人さんもいるんだ。そっか騎士っぽいのか。
「まあ、色々と準備はしているってこった。だから、一人で背負わなくていいんだぞ」
「・・・・・・うん」
「そーそー、頼れるところは頼っていいんだよ?」
「ふふっ凜さんがそれを言うんですか?」
「なんだとー」
「わー」
本日二度目の頭グリグリ。
でも、うん、ありがとね。