大人の土下座ってなんか悲しいよね
ボガンッ
「ッ!??!」
え!?何の音!?なんか堅い物が落ちたような音だったよ!鳥婆は平然としてるけど、部屋の外大丈夫なのかな?
「イッヒッヒ。クロ坊でも帰ってきたかね」
「なんでそこでクロさんが出てくるんですか?」
「出てみればわかるよ」
なんか鳥婆ニヤニヤしてるんだけど、いや、来てからずっと笑ってたけど、今は笑顔じゃなくてニヤニヤって感じ。なんなんだ、そんな顔されるとなんか企んでるんじゃないかって疑うじゃないか。
「何も企んどらんよ。ただ大切にされとるの~っと」
「???」
自然と心を読まないでいただきたい。とりあえず、このままだと堂々巡りなので扉を開けて見てみることにした。
ガチャッ
「………………」
パタンッ
思わず、そっとじしちゃったよ!一瞬だけど、カオスな状況なのはわかったよ!?だって、さっきの黒豹さんがたんこぶ作って地に伏してるし、セージ君とクロさんは野生に戻ってるし、ロジーさんはただ立ってるだけだし!
……ふう、ちょっと落ち着こう。深呼吸、ひっひっふー、あ、これラマーズ法だ。違うわ、ベタだよ、ベッタベッタだよ。うん、落ち着いた。よし、行くぞ!
ガチャッ
「あ、あの」
「おう、優維ちゃん、ただいま」
「お帰りなさい、クロさん。それでこの状況は?」
「ん?不届き者にちょっと制裁をな」
ニカッといい笑顔で制裁とか言わんでください。
「お姉ちゃん大丈夫?」
「うん、まあ事故だったし。びっくりはしたけど、まあ、大丈夫だよ。だから、そんなに怒らなくても大丈夫だよ?」
「事故でもなんでも、お姉ちゃんに仇なすやつには怒るよ!」
「そうだぞ。でも、オレが戻るまでよく手を出さなかったな、セージ。偉いぞ」
「うん、我慢した。ぼくよりお父さんがやったほうがダメージ大きいから待ってた」
セージ君意外と策士!じゃあ、帰ってくるまで野生の顔でずっと引き留めてるつもりだったのか。それもそれですごい。
「イッヒッヒ。お邪魔しとるよ、クロ坊、ロジーさん」
「鳥婆、おはようございます。でも、勝手にどこだり行かんでください」
「リー坊と同じこと言うね~。せっかくこの子の怪我を治してやったのに」
「それに関してはありがとうございます。ですが、それとこれとは別です」
「まあまあ、いいじゃないか。それより、お客様に茶の一つも出さないのは、失礼さね。せっかく寒い中来てくれたんだ。さあ、リーンヴォックさんもそろそろ起きな!」
「ブワッ!?……ああ、意識が飛んでいた」
「あの、大丈夫ですか?」
「ああ、君には大変申し訳ないことをした。本当にすまない」
「い、いえいえ事故でしたし大丈夫ですよ!だから顔を上げてください!」
なんて綺麗なDO・GE・ZA!こんな綺麗なの見たことないよ!?てか、大人に土下座されるとは思ってなかったよ!?
クロさんとロジーさんはやれやれみたいな顔してるし、セージ君はフンスッて顔してるし、鳥婆は相変わらず笑ってるし、もうワケガワカラナイヨ。
「まあ、突発的な行動は控えるこったな、リーさん」
「ああ、わかってはいるんだがどうしても考えるより先に行動してしまう」
「イッヒッヒッ、だから脳筋と言われるんじゃよ」
「~ッ!?……もう、何とでも言ってくれ」
なんか、黒豹さんが可哀想になってきた。
「はいはい、お茶の用意ができたから皆座ってちょうだい」
「「「はーい(おう)」」」
「すまないねえ」
ようやく廊下からリビングに移動して一息つくことができた。
「初対面はまあ不運だったが、自己紹介をしよう」
「そうだねえ、わしはフチカ、皆からは鳥婆と呼ばれとるよ」
「リーンヴォックだ。さっきはすまなかったな」
「もういいですよ。私は神無呂優維といいます。よろしくお願いします」
「優維だね、よろしく。でも、フルネームは安易に教えない方がいいよ。呪いに使われることがあるからねぇ」
「の、呪い!?」
「鳥婆、怖がらせるのはよくない、といいたいところだが、そうだな。今度自己紹介をするときは、名前だけのほうがいいな。ファミリーネームがないやつもいるしな」
「そうなんですね、気をつけます」
そこからは和やかにおしゃべりをして時間は過ぎていった。クロさんが猟師で近くの森にはどんな動物がいるかとか、リーンヴォックさんが毎回鳥婆を町に迎えに行っていて、住人からそのたびにお使いを頼まれるとか。いろんな話を聞いて、リーンヴォックさんは苦労人だと思いました、まる。
今回全然話進まなかった。次は、土竜兄妹を合わせる予定。