叫びだけ聞くと動物園
おはようございます!昨日はぐっすり眠れたので、元気いっぱいです!
明日はココ爺の所に行かなきゃいけないので、今日は最近の定番となった鬼ごっこをします。
ええ、結果もいつも通りですよ。
え?ギリギリで負け越しですが何か?
これは凜さんが悪い、最後の最後に本気出すんだもん。絶対勝たす気ないよ、あの人!
でも、手加減されるのもそれはそれで嫌だ。そのうち負かすんだ、見てろよ凜さんめ!
「ん、なんか言った?」
「ナニモイッテナイヨ?」
「ふーん、あたしにも意地があるからね。簡単には勝たせないよ?」
「心読まないでください」
「ははっ!優維わかりやすいもん」
「むー」
「ぼくはそこがユイ姉のいいところだと思うよ」
「そうだねー話すの下手だもんねー」
セージ君、マジ優しい。
そして凜さんは一言多い。
――――――――――
さてさて、ココ爺の家に行く日当日ですよ。私、かなり緊張しております。
「大丈夫だ。ほとんどココ爺が話すし、優維に話が振られることはないと思う」
「・・・うん」
「ほらほら、深呼吸しよ!」
すーはー、すーはー。
よし、少しも落ち着かない!
顔見知りが多くても、人数が多いだけで緊張するんだよ!大学の研究室内での発表でも緊張するくらいの緊張しいだからね!
もうどうにもならないのでこのまま行くよ!?女は度胸!
「そこは愛嬌じゃない?」
「いいんですよ。てか声に出てました?」
「女は度胸だけ聞こえたな」
「うん、それ以外は表情でなんとなく」
もう何も思うまい。
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「長、クロです」
「ホッホ、開いておるぞ」
「失礼します」
「お主らが最後じゃ」
中に入ると、すでに皆集まっていたようだ。待たせてしまったようで申し訳なくなった。
「そうでしたか、すみません」
「ううん、まだ時間じゃないから大丈夫だよ~。ボクたちが早く来ただけだから」
「エイア先生、揃ったんで起きてください」
「ん~?おー起きておるぞー」
「ちゃんとしてください。今日はスルク先生もケヒト先生もここにいないんすから」
カルヴァロさんがクロさんに大丈夫だと伝えた後、優維ちゃーんとヒラヒラ手を振ってくれた。この雰囲気で手を振り返すのもなんなので、会釈をすると笑って返してくれた。
ディグ君の隣に白衣を着た亀の獣人がいた。スルク先生達の名前が聞こえたので、あの亀さんもお医者さんなのだろうか。
今この場にいるのは、ココ爺、リーンヴォックさん、カルヴァロさん、ディグ君、亀さん、シューマさん、私たちの9人だ。
「さて、では始めようかの。今日お主らを呼んだのは他でもない。楔梛様についてじゃ」
楔梛様の名前が出て、一気に空気が張り詰めた感じがした。
特にリーンヴォックさんの顔がいつも以上に険しくなっていた。
「クロとカルヴァロにはすでに話しておったが、楔梛様の封印を破れるかもしれんのじゃ」
「――ッ!」
「ッ・・・長ッ!それは、本当ですかぃッ?」
クロさんとカルヴァロさん以外は、驚きと疑いの目をココ爺に向けていた。
ただ、ディグ君だけは普段より落ち着いているように見えた。
「落ち着け。まあ、やってみんことには分からんがな」
「・・・今までそんな話はなかったはずだが?」
「そうじゃ。あらゆる知恵、手段を講じてもできんかった。もう皆、諦めかけていたから話にも出なかった。
じゃが、今は違う。」
ココ爺が私を一瞥してから、話を続ける。
「優維が直接結界の中に入り、封印の要である剣を折る。」
バッと皆の視線が私に向けられる。
その勢いが凄くて、思わずビクッとなってしまった。
「・・・本当にそんなことができるんでさぁ?」
「――っ!」
シューマさんが普段見せない薄目を開けて、私に問いかける。
その視線が怖くて、目をそらして拳を握ることしかできなかった。
「シューマ」
「・・・すぃやせん。怖がらせてしまいやした」
「いえ・・・・・・」
クロさんに咎められると、いつものシューマさんに戻った。シューマさんは悪くない、私がすぐ答えられなかっただけ。
助けるって決めたはずなのに、そのことを話せなかった。
どうにもこの雰囲気は苦手だ。さっきから心臓の音がうるさい。
「・・・さっきから気になっていたのだが、そのヒグマはなんだ?」
「おお、この方は「ココ爺」彼女は精霊じゃ」
「精霊の凜ちゃんです!」
「「「・・・・・ニ゛ャアアァアア(ワォオオオォォオ゛)(ワ゛ン)!?」」」
ビックリした!動物園かな!?
今までの雰囲気をぶち壊すかのように、明るい声で凜さんが自己紹介をすると、リーンヴォックさん、シューマさん、カルヴァロさんが揃って叫んだ。
あ、なんかこれココ爺の時と一緒だ。
毎度うちの凜さんがすいません。
大人のパンダはあんまり鳴かないけど、驚いたときはワン!と犬みたいに鳴くようです。因みに発情期の恋鳴きという鳴き方ではメェーとかキュルルル、怒ったときはウォーとか10種類ほど鳴き声があるそうです。